診療報酬引き下げへ 厚労省など、社会保障費抑制めざす

厚生労働省と財務省は2016年度の診療報酬を引き下げる調整に入った。
薬の公定価格にあたる「薬価」と医師らの技術料にあたる「本体」を合わせた全体でのマイナス改定は8年ぶりとなる。病院の収入が減る一方、患者や国・地方の負担は減る。社会保障費の伸びを抑制する政府目標に向け、診療報酬を下げざるをえないと判断した。

診療報酬は医療サービスの公定価格で2年に1回見直している。前回の14年度改定は消費増税分の上積みを除くとマイナスで、実質的には2回連続の引き下げとなる。
医療費の総額は15年度の見通しで43兆円。診療報酬を1%引き下げると医療費を4300億円削減できる。これにより国費の負担が1110億円減るほか、患者の窓口負担も540億円減る。
政府は6月に閣議決定した経済財政運営の基本方針(骨太の方針)で、高齢化による社会保障費の伸びを年5000億円(国費ベース)に抑える目標を掲げた。厚労省が8月末に財務省に提出した16年度予算要求から1700億円の削減が必要になる。
政府は27日の臨時閣議で、6月の社会保障費の抑制目標を踏まえて来年度の予算を編成する方針を確認した。16年度は年金や介護で大きな制度改正はないため、1700億円の大半を診療報酬の引き下げでまかなう必要がある。
診療報酬のうち薬価部分は薬の実勢価格に応じて毎回下がっており、近年は1.4%前後のマイナス改定が続いている。技術料の本体部分は財務省が引き下げを求める一方、厚労省は引き上げを求めている。今年末にかけての予算編成の過程で攻防が続きそうだ。
仮に本体部分が小幅なプラス改定になったとしても、薬価のマイナス幅を埋めることは難しく、全体ではマイナスになる見通しだ。

【日経新聞】



薬価差額を財源とした本体部分へのアップは、これで今後厳しくなったようです。
前回の改定時にこのような状況が予測されていたのに・・・
# by kura0412 | 2015-11-28 14:40 | 医療政策全般
日歯連 来年参院選に候補者擁立せず

政治資金を巡る事件で前会長らが起訴された日歯連=日本歯科医師連盟は27日、内部の会議を開き、来年の参議院選挙では組織を代表する候補者を擁立しない方針を決めました。

日歯連の前会長、高木幹正被告(70)ら3人は参議院議員を後援する日歯連関連の団体に寄付した際、収支報告書にうその記載をしたなどとして先月、政治資金規正法違反の罪で起訴され、団体としての日歯連も起訴されました。
日歯連はこれまで診療報酬などを巡って政治への働きかけを強めるため、参議院選挙の比例代表に組織を代表する候補者を擁立してきましたが、日歯連は27日、地域の代表を集めた会議で来年の参議院選挙では組織代表の候補者を擁立しない方針を決めました。また献金などの政治活動もいったん自粛し、弁護士や有識者などで作る第三者委員会が組織改革や再発防止策などについて検討を進めているということです。
会議のあとの記者会見で日歯連の高橋英登会長は、「候補者の擁立断念は苦渋の決断だったが前会長ら幹部や日歯連自体が起訴されている状況で選挙運動を行うことは難しいと考えた」などと説明しています。

【NHKnewsweb】




昨日開催された日歯連盟臨時評議員会で、既に組織代表候補決定者を擁立して次期参議院選挙に臨むことを白紙撤回すると共に、現執行部を信任することを可決しました。
# by kura0412 | 2015-11-28 08:47 | 歯科

医師の本音

薬の大量処方で医者が儲かるという「大ウソ」
薬が減らないのには2つの原因があった

医者は金儲けのために薬を出しているのではない
日本人は、諸外国と比べて、医者に行った時の薬の処方が多い。それに疑問を感じているのか、「薬漬け」ということばもよく使われる。
その理由について、医者が利益を得るために薬を必要以上に大量に出しているからだと考える人が少なくない。だから一般の人と比べて医者の収入が多いと思われているフシもある。
どうも日本には医者の「性悪説」のようなものがあるようだ。
たとえば、かつて老人医療費が無料になった時代があるが、当時、病院の待合室が高齢者であふれ返っていた。高齢者のサロンとさえ揶揄された。
その際に待合室で元気そうな高齢者が、次に行く旅行の相談をしているとか、いつも来ているおじいさんが今日は顔を見せないので聞いてみると「風邪をひいてるから」というようなオチになっている。要するに、病気でも何でもない高齢者を医者が集めて金儲けをしていて、本当に病気のときは来ないという話である。
しかし、ここでよく考えてほしい。高齢者の通院患者というのは、風邪をひいたなどの急性の病気で医者にくるほうが珍しく、多くの場合は、高血圧や糖尿病、骨粗しょう症など慢性の病気で医者に来ているのである。体調がいいのであれば、待合室で旅行の相談をするのは何の不思議もないし、むしろ待合室でよぼよぼしているとすれば、薬の出し過ぎか、医者がちゃんと体調を管理できていないことになる。私の外来に通う認知症の患者さんだって、風邪をひいている時は、代わりに家族が来ることなどざらにある。
しかし、日本の医者は薬を出すことで金儲けをしていると厚生労働省(当時は厚生省)も考えたようで、90年代後半くらいから医薬分業を強烈に推し進めた。要するに院内で処方するのではなく、院外薬局で薬を患者がもらうシステムに変えていった。そうするといくらたくさん薬を出しても、医者に入るお金は処方箋料だけとなる。たくさんの薬を書くと余計に手間が増えるのに入るお金は同じというシステムだ。
結論的にいうと、これでほとんど処方は減らなかった。世間や厚生省が考えるほど、医者は金儲けのために薬を出していたのではなかったのだ。

薬漬け医療を生む「専門分化主義」の弊害
では、なぜ、たとえば高齢者だと15種類も出されるような、多剤処方、いわゆる薬漬け医療が蔓延するのだろうか?拙著『だから医者は薬を飲まない』でも解説しているが、私は基本的に医学教育の在り方に問題があるのだと考えている。
ひとつは「専門分化主義」、もうひとつは「正常値至上主義」である。
大病院、とくに大学病院に行ったことがあればお気づきになるだろうが、内科という科はその手の病院では消滅している。代わりに、呼吸器内科、内分泌科、消化器内科、循環器内科という臓器別の診療科が並んでいる。
このような専門分化は、特定の臓器の病気と診断がついている場合、とくに珍しい病気に対して、専門的に治療を行うには望ましい。しかし、それによって専門外の分野の治療はお粗末になってしまうということは珍しくない。
一般に大学病院や大病院の医師などが開業する場合、糖尿病の専門医や消化器内科の専門医として開業できればいいが、それでは広く患者が集めきれないので、一般内科ということで開業するケースが多い。ところが高齢者の場合、一人でいくつもの病気を抱えているほうがむしろ通常だ。高血圧で血糖値も高く、そのうえ、骨粗鬆症も始まっているなどということがざらだ。
その際、循環器の専門医であれば、高血圧に関しては、自分の専門知識で治療ができるだろう。しかし、糖尿病や骨粗鬆症については、専門外の素人のような感じで治療をすることになる。
そういう際の医者向けのマニュアル本はいっぱい出ている。それぞれの病気についての「標準治療」が紹介されている本だ。どんな検査をして、どんな治療をすればいいかが書かれているから、確かに大外れの治療にはならないだろう。しかし、多くの場合は標準治療として、2、3種類の薬を飲ませればいいという話になっている。すると、4つ病気を抱えたお年寄りに「標準治療」を行うと12種類の薬を飲ませることになる。
ところがこの手の標準治療は、ほかの病気が合併していることはほとんど考慮に入れられていない。基本的にその病気の専門家が作るのだが、その病気に詳しくてもほかの病気に詳しくないことには変わらない。そして、多くの場合、ほかの薬を飲んでいる場合に、その処方をどうすればいいのかなどは書かれていない。

結果的にほかの分野のことを知らない専門医が次々と開業していくうえに、患者層の多くが高齢者(これからはその傾向がどんどん強まっていくだろう)なので、多剤併用の傾向がさらに進んでいくことになる。
ところが大学病院というのは、基本的に教育スタッフがほとんどこの手の「専門家」である。こういう人が医学教育を牛耳っている以上、多少制度をいじっても、むしろ受けた教育に忠実なまじめな医者ほど薬をたくさん使ってしまうことになる。

本当は正常ではない「正常値」
もうひとつの問題は、「正常値」主義である。
要するに検診などで異常値が出れば、ある病気の早期発見ができたということで、治療が開始されてしまうということだ。
2012年の人間ドック学会の発表によると、人間ドックでどの項目も異常がなかった人はわずか7.8%しかいなかったという。92.2%の人は何らかの形で異常を抱え、それを医者に見せるとその異常値を正常化させるような治療が行われてしまう。
ここでも、専門分野の病気なら、「この程度の異常なら大丈夫」と言えるのかもしれないが、専門外の場合は「一応、治療しておきましょう」になりかねない。
実際、血圧の正常値などは大規模調査の結果などで、ときどき変更されるが、検査の正常値というのは、平均値プラスマイナスアルファなどという「雑な」決め方をされていることが多い。身長が平均よりひどく高くても、ひどく低くても病気とは言えないように、「平均を外れていること=病気である」とは言えないだろう。
どの値を超えれば病気になりやすいという大規模調査をすればいいのに、それがほとんど行われていないのが現実だ。また検査データを正常にしたら、本当に病気が減るのかもわからないということも珍しくない。
本当に「正常な値」と、薬を使うことで「正常にした値」というのは、体に与える意味が違う。たとえば、ピロリ菌があると胃がんになるというので、最近は除菌が盛んに進められるが、生まれつきピロリ菌がない人は確かに胃がんにならないのだが、長い間ピロリ菌が胃の粘膜に影響を与えていた人は、菌を殺しても胃がんにならないとは限らないそうだ。
検査値を正常にしないといけないというイデオロギーに、医者(患者の多くも)が染まっている限り、異常値にはつい薬を使うということになって、どんどん薬が増えていってしまう。

これからの時代に必要な医者とは
最近になって高齢者が増えてきたこともあって、専門医でない総合診療医や、地域の患者への往診を含めて(要するにその患者さんの生活状況もみる)サポートしていく地域医療医が再評価されているという。
総合診療医というのは、専門医ほど各臓器には詳しくないが、人間全体をみて、その人に何が大切かの優先順位がつけられる。15種類の薬を飲んでいる人に、これだけは飲んでくれという5種類が選べるような医師だ。
総合診療や地域医療、そして彼らによる啓もう活動が盛んな長野県は平均寿命が男性1位、女性1位になっていながら、ひとり当たりの老人医療費は全国最低レベルだ。つまりきわめてコストエフェクティブ(コストがかからず、患者さんの健康長寿につながる)な治療を行っていることになる。いっぽうで、大学病院の多い県ほど、平均寿命が短く、老人医療費も高いという傾向がある。検査値の正常主義はむしろ時代遅れなのだ。
高齢化が進んでいるのだから、医学教育の大幅な改変が求められる。しかし、大学の医学部の教授というのは、一度なると定年までやめないし、各医局が定員を削る気がないから、専門医ばかりが養成され、総合診療医がなかなか教育できない。
だとすれば、旧来型のダメな大学病院は半分くらいスクラップして、総合診療や心の治療、がんへの特化などのニーズにあった医学部をどんどん新設すべきなのだ。
厚生労働省は医療費を制度で削ろうとばかりするが、医学教育改革こそが、もっともコストエフェクティブな制度だと私は信じている。

【和田秀樹:東洋経済ONLINE】




本音の部分が満載で面白い内容です。
歯科医師が医科の知識をもって取り組めば、医科のセカンドオピニオンとして患者さんに接することも夢ではないのかもしれません。
# by kura0412 | 2015-11-26 12:02 | 医療全般

「総合医療政策課」

日医には「総合医療政策課」という部署があるんですね。

凄いわけです。
# by kura0412 | 2015-11-26 09:44 | 思うこと
2016年度予算、医師の技術料引き下げ焦点 財制審「下げ不可欠」

財務省の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は24日、2016年度予算に向けた建議を麻生太郎財務相に提出した。社会保障費の伸びを年5000億円弱に抑えるように主張し、医師の技術料の引き下げを求めた。一方、厚生労働省は引き上げを訴える。診療報酬全体は引き下げが濃厚だが、技術料を巡って年末の予算編成まで曲折がありそうだ。

「(6月末に決めた財政計画は)初年度からきちんとした方向性を出すことが一番大事」。麻生財務相は同日の閣議後の記者会見で、今後3年間の高齢化による社会保障費の伸びを1兆5000億円に抑える計画の達成を強調した。厚労省は8月末の概算要求で社会保障費の伸びとして6700億円を求めており、達成には2000億円程度の切り込みが必要だ。
焦点は医療サービスの公定価格である診療報酬の改定だ。診療報酬は医師の技術料に当たる「診療報酬本体」と「薬価」に分かれる。薬価は薬の卸売価格に合わせて毎回下がる。12月上旬にも公表する薬価調査で引き下げ率が決まる。

焦点は診療報酬本体の改定だ。
財制審は「一定程度のマイナス改定が必要」と主張した。薬価の引き下げ幅は毎年1400億円前後。社会保障費を2000億円程度減らすには薬価に加えて本体のマイナス改定が欠かせないとみる。本体の引き上げは保険料や患者負担の増加を招き「経済成長の足を引っ張る」(財務省幹部)とも訴える。
厚労省は本体のプラス改定を求める。厚労省の調査では、医療機関の損益は消費増税や人件費の増加で悪化。16年度改定で本体を引き下げれば、医療機関の経営が一段と厳しくなると訴える。政策への影響力が大きい日本医師会も本体のマイナスには反対だ。
本体と薬価を合わせた診療報酬全体では8年ぶりのマイナス改定が濃厚だ。
厚労族議員や医師会も全体のプラス改定を求める声は乏しい。「国家財政が破綻しても困る」(日本医師会の横倉義武会長)ためだ。

【日経新聞】




もはや薬価引き下げによる財源ねん出どころか、本体そのものを引き下げるような議論になっているようです。
その結果、更に医療現場が混乱して大きな傷跡を残すことを前回の本体マイナス改定で経験しているのに、その反省が生かされていません。
# by kura0412 | 2015-11-25 08:50 | 医療政策全般

コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


by kura0412