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IT企業と医療

米中の巨大IT企業が狙う医療スタートアップ

米グーグルの持ち株会社米アルファベットや米マイクロソフトなどの巨大IT(情報技術)企業が、医療関連のスタートアップに積極投資している。彼らが商機を見いだしているのが、新薬開発から病院まで様々なところで無駄が目立つ医療業界の非効率性だ。そこに新興企業のデジタル技術でメスを入れ、新ビジネスにつなげる考えだ。どんな企業にITマネーが流れ込んでいるのか、大手IT企業の投資動向をまとめた。
ヘルスケアは規模が大きく、非効率的な業界だ。米国ではこの業界の規模は国内総生産(GDP)の19%に上るが、一部の研究によると支出の20~25%が無駄だとされる。
こうした効率の悪さは業界全体で目につく。医師や病院の報酬を計算する医療事務の従事者は17万5000人を超え、新薬が市場に投入されるまでの費用は平均で25億ドルにも上る。企業が拠出する医療費は今や年間2万ドルに達している。
世界各地で市場が拡大し、無駄なコストがかさみ、より優れた医療への需要が高まっているため、この業界は世界の大手テクノロジー企業にとって格好の投資対象になっている。
2018年の米デジタルヘルス部門のスタートアップ企業への投資額は前年比16%増の110億ドルと過去最高を記録した。今年に入り、医療保険の米クローバーヘルス(Clover Health)がシリーズEで5億ドルを調達、遺伝子解析の米ギンコ・バイオワークス(Ginkgo BioWorks)がシリーズEで2億9000万ドルを調達して企業価値が42億ドルに、薬局の米カプセル(Capsule)がシリーズCで2億ドルを調達するなど、技術革新に取り組む企業が、多額の資金を調達している。
一方、世界第2の経済大国である中国は、高齢化やより優れた医療への需要を背景に国家政策としてヘルスケアに多額の資金をつぎ込んでいる。こうした取り組みは09年の新医療制度改革や(16年に発表された)「健康中国2030計画」により促進された。その結果、世界保健機関(WHO)によると中国のヘルスケア市場は年17%のペースで成長している。
デジタルヘルス市場の成長に伴い、医療関連以外の企業もこの分野に関心を抱くようになっている。19年の大手テクノロジー企業によるデジタルヘルス企業への投資件数はこれまでに38社に上っており、過去最高だった18年の49社に並ぶペースとなっている。
本稿では、デジタルヘルス部門への投資件数が最も多い大手テクノロジー企業上位10社について調べる。

■投資家の戦略のトレンド
大手テクノロジー企業で最も多くのデジタルヘルス部門のスタートアップに投資しているのは、米グーグル、米マイクロソフト、中国の騰訊控股(テンセント)だ。3社は大手テクノロジー企業によるデジタルヘルス部門への投資全体の7割以上を占めているが、投資先や戦略はそれぞれ異なる。

■グーグル(アルファベット)
グーグル(アルファベット)は誰もが認めるデジタルヘルス投資のリーダーで、投資件数は93件、投資企業は57社に上る。こうした投資の7割以上をコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)のグーグル・ベンチャーズ、キャピタルG、グラディエント・ベンチャーズが担っている。
生命科学分野について研究する米ベリリー・ライフサイエンス(Verily Life Sciences)など、アルファベット傘下の「ムーンショット(野心的な研究に取り組む)」企業は、自社のプロジェクトに直接関連する企業に投資している。例えば、ベリリーは個人の健康記録を手がける米スタートアップ、シチズン(Ciitizen)に資金を投じている。
グーグルが運営するスタートアップ向け育成・起業支援プログラム「グーグル・ローンチパッド・アクセラレーター」はデジタルヘルス企業17社に投資している。
グーグルの主な投資分野は「遺伝子解析」(18件)、「臨床研究」(15件)、「保険&福利厚生」(12件)だ。
遺伝子検査サービスの米23andMe、がん解析ソフトなどを手がける米フラットアイアン・ヘルス(Flatiron Health)、がんの早期発見を目指す米フリーノム(Freenome)などグーグルから出資を受けている企業は、患者のデータを大量に収集し、最先端の人工知能(AI)や機械学習を使って有意な知見を得たり、商業化を推進したりしている。これはグーグルが検索帝国を築いたのとよく似た戦略だ。
グーグルはさらに、オンラインで医療保険を提供する米オスカーヘルス(Oscar Health)と米クローバーヘルスという米国で最も企業価値の高い未上場の医療保険スタートアップにも出資している。両社は既存大手と差別化するため、最先端のデータアナリティクス(解析)と患者との革新的な関係構築モデルを活用している。
グーグルは以前は「患者の遠隔モニタリング」分野の企業に直接投資していなかったが、19年に米フォッシル・グループのスマートウオッチ研究開発部門を4000万ドルで買収し、この分野に初めて投資した。この分野はグーグルのヘルスケア、特に臨床研究戦略を進める上で極めて重要になるだろう。ベリリーは既に自社開発したウエアラブル機器「スタディーウオッチ」を複数の研究で使っている。

■マイクロソフト
マイクロソフトの投資の大半はグーグルとは違い、「マイクロソフト・スケールアップ」や「マイクロソフトAIファクトリー」といった育成・企業支援プログラムから出ている。これらのプログラムは草創期のデジタルヘルス企業を対象としたもので、プログラムを修了したデジタルヘルス企業は35社に上る。
AIを活用した理学療法ツールを提供するポルトガルのスウォード・ヘルス(SWORD Health)、遺伝子解析の米ジノークス(Genoox)、医療データプラットフォームの米ケンサイ(KenSci)、医療システムの開発を手がけるインドのシグタプル(SigTuple)など多くの企業はその後、追加の資金調達を受けている。
一方、マイクロソフトのCVC「M12」は、慢性疾患を管理する米リボンゴ・ヘルス(Livongo Health)のプレIPO(新規株式公開)ラウンドや、医療データプラットフォームの米イノベーサー(Innovaccer)のグロースラウンドなど、中後期段階のスタートアップの資金調達ラウンドに参加している。
マイクロソフトはヘルスケア部門の戦略を個人の健康データから、大手ヘルスケア企業によるこうしたデータの保存・活用の推進へと転換しており、投資先も変わっている。16年以降の投資の大半は「データ管理&アナリティクス」「遺伝子解析」企業に向けられている。

■テンセント
中国のテンセントはデジタルヘルス部門で3番目に活発に投資している大手テクノロジー企業だ。投資件数は52件、投資企業は40社に上る。そのうち31件の投資を同社の顧客基盤がある中国で実施している。
注目すべきなのは、18件が米国企業への投資である点だ。これはテンセントが海外展開を狙っていることを示している。残りはインド企業への投資だ。
テンセントは広範な企業に投資していることで知られており、18年時点での投資件数は700件以上に上る。テンセントによるデジタルヘルス投資のうち、テンセント本体による投資は84%で、残りはAI育成支援プログラムを通じて実施している。
テンセントは事業対応力の強化を目標に掲げ、「臨床研究」と「管理ツール」に積極投資している。一方、同社は「医療コンテンツ&マーケティング」への投資額が最も多い企業でもある。対話アプリ「微信(ウィーチャット)」だけで月間利用者が11億人に上るため、投資企業に貴重な顧客獲得ルートを提供している。

■その他の企業
10年以降に5社以上のデジタルヘルス企業に出資したその他の大手テクノロジー企業は、米インテル、韓国・サムスン電子、中国のネット通販最大手のアリババ集団、米アマゾン・ドット・コム、米メディア大手コムキャストだ。

コムキャストは通信会社として唯一このリストに登場するユニークな投資家だ。同社は22万5000人に上る従業員と家族のために、医療費に年約13億ドルを費やしている。そこで、従業員の医療体験を改善し、医療費をより適切に管理するために、医療システムを手がける米アコレード(Accolade)、健康アプリの米Kヘルス(K Health)や米シャイン(Shine)などのスタートアップに出資している。
米アップルはヘルスケア業界への投資件数が少ないため、10位以内には入っていない。だがこの分野では買収を重視する戦略をとっており、これまでにデジタルヘルス企業3社を買収している。
買収したのはいずれも「個人の健康データの管理&モニタリング」分野の企業で、アップルがヘルスケアで目指す方向に沿った事業を手がけている。例えば、個人の健康情報を管理する米グリンプス(Gliimpse)は、iOS端末に搭載されている革新的なアプリ「ヘルスケア」の土台になった。
グリンプスの最高経営責任者(CEO)はその後、シチズンを創業した。同社はグーグルの出資を受けている。

■分野別の投資トレンド
新たなテクノロジーの台頭や規制内容の変更に伴い、テクノロジー大手各社が注目するデジタルヘルスの分野も移り変わっている。
18年のテクノロジー大手によるデジタルヘルス部門への投資件数は過去最高に達した。18年に投資件数が最も多かった分野は「臨床研究」だったが、19年に入り投資ペースは減速している。18年には「慢性疾患の管理」への投資はわずか1件だったが、サムスン電子による出資が相次いだため、19年の投資額は増えている。
19年で投資額が最も多いのは「データ管理&アナリティクス」だ。中国のAI医療エアドック(Airdoc)、肺疾患の検出支援ツールを手がける米リバーレイン・テクノロジーズ(Riverain Technologies)、中国の万里雲(Wanlicloud)、イノベーサーなど画像を手がける企業が多額の出資を受けている。
一方、16年に投資額が最も多かったのは「遠隔治療」で、その直後の17年には遠隔治療の利用が急増した。利用が急増したのは保険の適用範囲の拡大といった制度変更などの追い風を受けたのが要因だった可能性が高い。

2社以上のテクノロジー大手から出資を受けている企業は8社だ。血液検査でがんを発見する米グレイル(GRAIL、グーグルとテンセント、アマゾンが出資)、インドの医師検索サイト運営プラクト・テクノロジーズ(Practo Technologies、グーグルとテンセント)、AIによる推論を可視化する米コグニティブスケール(CognitiveScale、インテルとマイクロソフト)などだ。
12年以降で世界のテクノロジー大手による投資企業の数が最も多いのは「データ管理&アナリティクス」「健康」「遺伝子解析」だ。
投資件数別では「遺伝子解析」が「健康」を上回り2位につけている。

「コンテンツ&マーケティング」分野の企業はコミュニティー構築やコンテンツ生成(利用者が生成することも多い)に取り組んでおり、ヘルスケア企業へのウェブアクセスの商業化を最終目標に掲げている。この分野の企業には中国の美容整形医療プラットフォームの新氧(SoYoung)、中国の外科医向けサイトの唯医骨科(Weiyi)、教育用医療コンテンツなどを手がける米アウトカムヘルス(Outcome Health)などがある。
「補助&リハビリツール」分野のスタートアップは、テクノロジーを使って身体障害者を支援したり、患者の機能回復を助けたりしている。例えば、マイクロソフトの「スケールアップ・プログラム」を修了したスウォード・ヘルスは、デジタル理学療法ツールを販売している。
「医薬品の配送」には薬局のサプライチェーン(供給網)に注目しているスタートアップなどが含まれる。

(日経新聞)





歯医者が株でもやっていない限りIT企業のことは知らないで良いと思っていましたが、この記事のこと位は一般的な知識として知っておく必要があるのかもしれません。現在、将来の歯科領域はどうなのでしょうか?
by kura0412 | 2019-11-15 16:38 | 経済 | Comments(0)

今月の文芸春秋

【特集】健康寿命はまだまだ延ばせる

[歯科治療]「80歳で28本」歯を残そう 石井謙一郎

[誤嚥性肺炎 ]「左向き寝」「歯磨き」「バナナ」で防ぐ 大谷義夫

[ウォーキング]高齢者の「大股」「腕ふり」は間違い 田中尚喜

[排尿]「色」と「出方」で分かる重大病リスク 近藤幸尋

[脱水]水のがぶ飲みは「水中毒」にご用心 木村雄弘

[気象病]めまい、腰痛……その症状「天気痛」!? 佐藤 純

[頭痛]脳の「過剰な興奮」が痛みを起こす 清水俊彦

舌がん「ステージIV」からの生還 堀ちえみ

(文芸春秋HP)



この特集以外にも面白い内容です。珍しい。
by kura0412 | 2019-11-09 12:08 | 思うこと | Comments(0)

チャンス到来、具体的なアクションプランは

予防医療、不足なら「罰則」 自治体交付金を減額
厚労省が来年度から 健康教育・検診の強化促す

厚生労働省は2020年度から、予防医療への取り組みが不十分な自治体に「罰則」を科す。事業ごとに加減点数を設け、実施率が低い自治体には減点に応じて交付金を減らす。一方で実施率が高い自治体には手厚く交付金を配分する。企業と連携した健康教育など新たな指標もつくる。厚労省と財務省は関連予算枠を今より5割増の1500億円規模に拡大し、予防医療の強化を促す。

国民健康保険(国保)の保健事業では、特定健診(メタボ健診)の実施率や健康診断の受診率、後発医薬品の使用割合などが高い自治体に交付金を手厚く配分する制度がすでにある。19年度までは1000億円の予算枠を設けてきた。20年度以降は1500億円を原資に、これらの項目の一部で「マイナス評価」による減点方式も採用する。
過去の実績よりも実施率が下がったり、全国平均より低かったり、といった項目があった場合、獲得点数が減る。点数が低いほど交付金も減る。ある項目で高い点数を取っても、ほかの分野の実施率が低いと相殺される。予防医療や健康づくりにまんべんなく取り組まないと交付金が増えない仕組みに改め、自治体による予防医療への動機づけを強める。
交付金を減らされかねない自治体の警戒心は強い。政府内には「激変緩和措置として、段階的に減点の幅や対象事業を広げることもあり得る」との声もある。厚労省と財務省は年末の予算編成過程で詳細を詰める。

現行は1000億円の関連予算策も拡充する。厚労省と財務省は20年度当初予算案で新たに500億円の予算枠を追加する方向で調整に入った。
500億円のうち、一部は新たに設ける予防・健康づくり事業に必要なお金に充てる。具体的には医療機関の専門職による保健指導、住民の健康や医療情報のデータベース構築、各種検診へのICT活用などに使ってもらう。残りはこれらの事業の達成度合いに連動して自治体に交付する原資にする。
国保の被保険者数は06年度の3678万人をピークに減少に転じた。国民健康保険中央会によると、17年度(速報値)は2945万人と3千万人を割り込んだ。
被保険者の4割超を医療費がかかりやすい65歳以上の高齢者が占める。その比率がさらに高まるのは確実だ。高齢化と医療技術の進歩を理由に、1人あたりの保険給付費は16年度で年30万7500円と5年間で約2割増えた。
予防医療を充実させれば、健康寿命が延びて医療費や介護費が増えるとの試算はある。しかし、高齢化に伴う病気を事前に防げれば、高齢者が元気に働くことができ、納税を通じた社会保障費の負担の担い手を増やす効果が期待できる。予防医療や健康管理、生活支援サービスといった「ヘルスケア市場」が新たな医療関連ビジネスとして育つ下地にもなる。
政府は6月に閣議決定した成長戦略実行計画で「公的保険制度における疾病予防の位置づけを高めるため、保険者努力支援制度(国民健康保険)の抜本的な強化を図る」と明記した。関連予算枠の拡充と成果に連動した交付金の減額制度の導入はその具体策で、予防医療や健康づくりへの取り組みを推進する狙いだ。

(日経新聞)


チャンス到来。果たして歯科界の具体的なアクションプランは?
by kura0412 | 2019-11-08 08:53 | 医療政策全般 | Comments(0)

医療のこと知っている経済学者だと思っていたのですが

財務省、診療報酬「マイナス改定」案の衝撃
年内の決着に向け、改定率めぐる攻防始まる

財務省は11月1日に開催された財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で、2020年度に実施される診療報酬改定について、国民負担を抑制するためにマイナス改定を行うことを提案した。
診療報酬とは、公的医療保険での診療における医療行為等の対価として、病院・診療所や薬局が患者・保険者から受け取る報酬で、原則2年に1回政府が改定する。
2020年度の診療報酬改定については、年内に財務相と厚生労働相が合意して診療報酬全体の改定率を決めることとなっている。その後、各診療行為の報酬や個別の薬価等について、年明けに中央社会保険医療協議会(中医協)で改定案を取りまとめ、厚生労働相に答申して決定する。

過去10年間で保険料負担は35万円増加
目下の焦点は、年内に決める診療報酬全体の改定率である。これにより、2020年度の医療費総額(予算ベース)が決まる。診療報酬は大きく、医師の人件費など技術・サービスの評価に関わる「診療報酬本体」と、薬の値段などモノの価格評価に関わる「薬価等」に分かれる。
もちろん、医療にはお金がかかる。ただ、お金をかければかけるほどよくなるわけではない。医療にかかる財源は、誰かが何らかの形で負担しなければ確保できない。
診療報酬は、1%引き上げると4600億円の負担増となる。そのうち、税負担が1800億円、保険料負担が2300億円、患者負担等が600億円である。そして、それらが病院や診療所、薬局、製薬会社、医療機器メーカーの収入になる。
2%の消費税率引き上げで負担増はつらいというなら、診療報酬引き上げに伴う負担増も看過できないところである。2007年度と比べて2017年度は、1人当たりの年間保険料負担は約35万円、患者負担等は約4万円増えた。この10年で毎年のように増えた。
そうした観点から、医療の無駄を省き、診療報酬をマイナス改定、つまり患者の負担を抑制することを財務省は提案したというわけである。
財務省による診療報酬のマイナス改定提案は、今に始まったことではない。2年に1度の診療報酬改定に合わせて、2017年にも同様の提案があった。しかし、医療関係者の心中は穏やかではない。診療報酬がマイナス改定になれば、診療報酬単価を下げられる可能性が高くなるからだ。
単価が下がっても、高齢者が増えて患者数が増えれば、医療機関の収入は増えることもありうる。診療報酬の改定率には、患者数の変動の影響は含まれていない。従って、マイナス改定が直ちに医療機関の収入減少を意味するわけではない。
とはいえ、マイナス改定となると、医療関係者の間で「パイの奪い合い」が激しくなる。

小泉政権期以外、診療報酬本体はプラス改定
第2次安倍内閣以降の過去3回の診療報酬改定(消費増税対応分を除く)をみると、診療報酬全体では、2014年度はプラス0.1%、2016年度はマイナス0.84%、2018年度はマイナス0.9%だった。
その内訳をみると、2014年度は診療報酬本体でプラス0.73%、薬価等でマイナス0.63%、2016年度は本体でプラス0.49%、薬価等はマイナス1.33%、2018年度は本体でプラス0.55%、薬価等でマイナス1.45%だった。財務省は否定するが、薬価を下げて浮いた財源を診療報酬本体に振り替えているようにみえる。
薬価を下げられると困るのは製薬会社である。診療報酬本体が増えると喜ぶのは、病院、診療所、薬局である。
薬価は、先発薬の特許が切れて価格が安い後発医薬品(ジェネリック)が出ることで単価が下がる効果があり、1990年度以降はずっとマイナス改定だった。診療報酬本体は小泉内閣期に、2度のマイナス改定と1度のゼロ改定はあるが、それ以外はプラス改定である。
ただ、今年の議論は、少し様相が異なる。これまで薬価は2年に1度改定していたが、2018年度以降は実質的に毎年改定されることになった。
2019年度には薬価改定が行われ、すでにマイナス改定を実施している。2年に1度の改定時には2年分の薬価の下落をまとめて反映するようにマイナス改定をしていたが、2020年度改定では1年分の薬価の下落しか反映できない。
薬価を下げて浮いた財源を診療報酬本体に振り替えようにも、下げられる薬価は大きくないかもしれない。診療報酬全体をマイナス改定にするなら、診療報酬本体を大きくプラスに改定できない可能性がある。

診療報酬本体をめぐり、早くも前哨戦
そうなると、医科、歯科、調剤という診療報酬本体の中でのメリハリづけが重要になってくる。
それを察してか、早くも前哨戦が繰り広げられている。医科と歯科で報酬を減らさないなら、調剤の報酬を減らすことが考えられる。それを意図しているかわからないが、調剤報酬の構造転換を促す声は、財務省のみならず中医協でも出始めている。
中医協では、薬剤師が薬局で医薬品を調剤する際の技術料である調剤料の見直しが取りざたされている。薬局で内服薬を調剤すると、処方日数が14日(14日分のお薬を処方してもらうという意味)までは、1日長くなるにつれて調剤料がどんどん増える仕組みになっている。
入院時など院内で医薬品を調剤するときは、処方日数が何日であっても調剤料は定額である。しかし、同じ内服薬でも薬局で処方されると、日数が長くなるほど金額がかさむことになる。したがって、診療報酬本体を大きく増やせないとしても、調剤報酬を抑えられれば、医科と歯科の取り分は増えることになる。
他方、医科と歯科も問題なしとは言えない。目下注目されているものの1つに、医師の働き方改革を診療報酬にどう反映するかという点がある。病院勤務医の過労を抑えるために、医師にも時間外労働上限規制が適用されることになった。
医師の働き方改革を進めるには追加的な人件費がかかり、診療報酬を増額して対応すべきとの声がある。病院勤務医の人件費を増やすには、病院勤務医がより多く従事する入院医療に対する診療報酬を増やす方策が考えられる。

2025年までにメリハリのついた医療改革を
しかし、前述の診療報酬本体の改定率を内閣で決める際に、入院と外来を分けて改定率を決める方式は近年採られていない。2010年度に1度だけそうしたことがある。病院勤務医を対象とした診療報酬改定ということであれば、入院と外来を分けて改定のあり方を考える必要が出てくるが、そうすると、入院医療に携わる病院と外来医療が主の診療所との「パイの奪い合い」を顕在化させる懸念もある。
それよりも、病院勤務医の超過勤務を減らす分を看護師など他の医療従事者の勤務で補い、人件費が増えないように工夫することもできる。病院勤務医の中でも、診療科や病院の種別によって時間外労働の状況に大きなばらつきがあり、病院勤務医が十把一絡げに過重労働というわけではない。そうした工夫がなされれば、すべてを診療報酬の増額で対応しなくてもよい。
年内の医療に関する議論は、診療報酬改定ばかりではない。世代間の負担の公平化を目指して、高齢者の患者負担割合の見直しを図ることも重要な議題である。団塊世代が75歳以上になる2025年までに、メリハリのついた医療制度改革を着実に進めていくためには、今年の残り2カ月は空費できない。

(東洋経済ONLINE・土居 丈朗 )



いろいろな政府の委員をやられている筆者ですが、この論文を読むと意外と医療のことを知らないことを感じます。現在の看護師不足を知らないようです。
ちなみに診療報酬の部分100億円ほど足し算があいません。
by kura0412 | 2019-11-06 11:27 | 経済 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


by kura0412

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ミラーを片手に歯科医師の本音

回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。

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