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歯科が終末医療、看取りにどう関わるか

終末期医療に歯科医師も参加 口腔ケアで尊厳を守る

病院や在宅で、終末期のチーム医療に歯科医師が積極的に関わり始めた。口の中の衛生を保ち、口臭や感染症にかかるのを防ぐ。こうしたケアは、最期までその人らしく生きることにもつながっており、本人や家族の大きな支えとなっている。 

「お父さんよかったね。口をきれいにしてもらって安心したよね」
東京都八王子市の陵北病院。歯科衛生士が専門の器具を使って口の中の汚れを落とすと、既に意識がない男性(89)に、妻が声を掛けて涙ぐんだ。男性は脳梗塞の後遺症で要介護になり、誤嚥(ごえん)性肺炎で入院。口からでなく点滴で栄養を摂取するようになってからも、口腔(こうくう)ケアを受け続けた。意識があるころは「口で食べさせたい」との妻の強い希望もあり、数日間、歯科医師らが立ち会い、一日一回、くだいたゼリーを食べることができた。
終末期の口腔ケアは、口の中の乾燥を防いで臭いが出るのを抑えたり、粘膜を保護して感染症にかかりにくくしたりする効果がある。「人生の最終段階に歯科が関わると、患者が安楽な状態を保てることが分かってきた」。同病院副院長で歯科医師の阪口英夫さん(56)は言う。
在宅診療でも、歯科医師がみとりまで関わるケースが広がってきた。東京都世田谷区で開業している粟屋剛さん(40)は、脳梗塞で寝たきりとなり、経管栄養の男性=当時(73)=の訪問診療をしたことがある。
男性は重い嚥下(えんげ)障害で口の中の乾燥がひどく、舌の上や上あごなどにあかのような汚れがこびりつき、呼吸困難の原因にもなっていた。粟屋さんは男性が亡くなる三日前まで二週間に一度、歯科衛生士とともに訪問し、汚れを除去する処置をした。すると、男性は穏やかな表情になり、介護していた兄も男性に「ゆっくり眠れるね」などと声を掛け、安堵(あんど)した様子だったという。
「最期にいつもの口腔ケアを」と、病院での臨終場面で、頼まれたこともある。粟屋さんは、みとりに歯科医師がかかわるのは「最期まで人間らしく生きたいという思いをかなえること」と話す。

◆介護保険や歯科教育も対応
高齢者が穏やかに暮らすための介護・医療の多職種による「地域包括ケアシステム」では、歯科医師の関与が重視されている。
寝たきりになっても、食べる能力がどれだけ残っているかを診断し、誤嚥予防や食事の指導をするのは歯科医師の仕事。体調が悪化し、食べ物などをのみ下せなくなった後も、誤嚥性肺炎の防止や、穏やかな呼吸のために乾燥を防ぐなどの口腔ケアは不可欠だ。
介護保険でも口腔ケアは重視されている。医師や歯科医師、介護職、嚥下に問題がある人を支援する言語聴覚士(ST)らのチームが、施設の入所者の食事の様子を観察する「ミールラウンド」は、二〇一五年度の報酬改定で加算の要件になった。
大学教育での対応も進み始めた。大阪歯科大の高橋一也教授によると、歯学部のある国公私立大全部で老年歯科の講義があり、90%で口腔ケアや摂食嚥下リハビリなどの実習を実施している。高橋教授は「歯科医師の意識を、虫歯治療から口腔という消化器を守る仕事へシフトさせたい」と話す。

(東京新聞)



歯科が終末医療、看取りにどう関わるか。歯科界での議論と内外でのコンセンサスが必要です。
by kura0412 | 2018-11-29 15:03 | 歯科 | Comments(0)

単身高齢者増加

単身高齢者、三大都市圏で1割超え 財政圧迫の懸念

一人暮らしの高齢者が大都市で急増している。日本経済新聞が国勢調査を分析したところ、三大都市圏(1都2府5県)は2000年以降の15年間で2.1倍の289万人に達し、15年に初めて世帯全体の1割を突破した。単身高齢者は介護や生活保護が必要な状態に陥りやすい。社会保障の財政運営が厳しくなる懸念が強まり、在宅を軸に自立した生活を支える「地域包括ケアシステム」の構築が急務となる。

最新の15年国勢調査によると、65歳以上の単身者は00年比9割増の593万人。長寿・未婚化の影響で00年時点の予測より5年ほど早い勢いで増え、一般世帯に占める割合は11.1%に達した。
日経新聞は単身高齢者の動向を探るため、全国1741市区町村のデータを独自に分析した。浮かんできたのは高齢化が先行した地方より、大都市での増え方が深刻になっている実態だ。

■横浜市、名古屋市で10万人突破
15年間で単身高齢者が2倍以上に増えた自治体は4割弱。三大都市圏を構成する関東1都3県、近畿2府1県、愛知県に集中していた。団塊世代が持ち家を求めた埼玉や千葉の郊外の多くが3倍強に膨らんだ。三大都市圏の単身高齢世帯比率は10.9%と4.8ポイント上昇した。
実数で最も増えたのは横浜市で、2.3倍の17万1千人となった。名古屋市は12万人に倍増し、東京23区全体は8割増の53万9千人となった。いずれも単身高齢世帯比率は1割を超えた。三大都市圏で1割を超す自治体は11倍の221市区町村となり、全体の6割を占めた。
都市は地域で助け合う基盤が弱く、一人暮らしを支える自治体の負担は地方より重くなる。

■要介護認定率は2~3倍に
顕著なのは大阪市だ。単身高齢者は05年に1割を超え、いまは最多の20万人強。介護保険課は「単身高齢者の増加が介護給付費の上昇につながっている」と断言する。
単身高齢者の17年の要介護認定率は36%で、同居人がいる場合の2倍強だ。介護サービス利用率も8割と高く、18~20年度の介護保険料は月8千円弱で1千円以上高くなった。横浜市も認定率に3倍近い開きがあった。
公共政策に詳しい一橋大の小塩隆士教授は「単身高齢世帯の1割超えは危険な兆候」と訴える。単身高齢者は低年金が多くて生活保護の対象になりやすく、影響は社会保険にとどまらないからだ。「対象は少数と想定した生活保護制度の財政基盤は脆弱だ」と語る。

■未婚化で変わる単身者の「質」
市町村決算や総務省のデータと重ねて分析すると、単身高齢者の増加は老人福祉費や生活保護費など扶助費の伸びと強い相関があり、自治体財政を圧迫していた。
大阪市は05年に財政改革を迫られ、人件費や公共投資のほか、新婚向け家賃補助や幼稚園の予算を削減した。「高齢者への義務的支出は簡単に減らせず、財政の硬直化は進んでいる」(財源課)。支出に占める扶助費の割合は当時の22%から18年度は32%に増えた。
国立社会保障・人口問題研究所によると、40年の単身高齢世帯比率は18%弱の見通し。みずほ情報総研の藤森克彦主席研究員は「単身高齢者の質が変わる」と、都市での未婚率上昇を注視する。「配偶者や子供がいない人が増え、想定以上に介護保険の需要が高まる」

■「ハコモノ」から在宅へのシフト急務
だが各市の介護保険事業計画をみると、特別養護老人ホームなど「ハコモノ」に重きを置く事例が目立つ。大型施設はサービスを効率化できるが、建設や修繕の費用負担が重い。都市部は適地も限られ、施設中心の政策は早晩行き詰まる。
限りある財源を在宅サービスにシフトする必要がある。その柱が住み慣れた場所で介護、医療、生活支援を継ぎ目なく提供する地域包括ケアだ。見守りや介護予防もまじえ、単身高齢者の自立を支えれば社会保障費の削減につながる。
千葉県柏市の豊四季台団地。単身高齢者の増加に危機感を抱いた市は14年に見回りなどのサービス付き高齢者住宅に建て替え、医療・介護施設を集約した。住民は訪問サービスを受け、入院しても再び自宅に戻れる。学童保育などで高齢者が働き、支え合う仕組みを取り入れた。埼玉県和光市は在宅型の介護予防や地域交流に注力し、要介護認定率を引き下げた。
ただ、こうした成功例は少ない。国は新たな定期巡回事業を介護保険に導入するなどして地域包括ケアを促すが、使い勝手が悪く、浸透しない。
介護を社会で支えるために00年に創設した介護保険。負担軽減を狙い給付ルール改定を繰り返すが、効果は薄く、むしろ利用者の実態からかけ離れていった。国の推計では40年度の介護分野の社会保障費は18年度比2.4倍の26兆円に膨らむ。
国や自治体は単身高齢者の実態と向き合った地域包括ケアの仕組みを築かなければ、社会保障制度は漂流したまま持続性を失ってしまう。

(日経新聞)




「単身高齢者」の対応もこれからの介護・医療のキーワードにようです。
by kura0412 | 2018-11-26 16:55 | 介護 | Comments(0)

すべて院内処方すれば1兆7千億円の差額

薬局6万店 再編の風圧 手厚い報酬、問われる機能

今や社会のインフラともされるコンビニエンスストアを上回る業態が日本にある。医師の処方をもとに医薬品を出す「調剤薬局」だ。コンビニより多い6万店弱の薬局は地域医療を支えてきたものの、扱う医薬品は公定価格で競争は乏しい。厚生労働省は在宅医療などの新しい施策に対応できる薬局を育て、再編を促す方向にカジを切る。医療費の抑制に向け、薬のインフラも変革を迫られている。
病院で医師の診察を受け、受付で処方箋をもらう。スリッパから靴にはきかえて自動ドアが開くと、小さな「お薬屋さん」が何軒か目に飛び込んでくる。誰もが経験するこんな風景が今、批判にさらされている。

指導役機能せず
「期待されている役割を果たしていないのではないか」。8日に厚労省が開いた審議会で、薬剤師の代表に有識者からの厳しい指摘が続いた。この日のテーマは今後の薬局や薬剤師の役割をどう考えるか。関係者の脳裏には、病院のそばにある「門前薬局」が浮かぶ。
厚労省は1970年代から、もうけの誘惑にかられる医師の過剰な投薬を薬剤師にチェックさせる「医薬分業」を推進するため、院外処方を進めてきた。
日本薬剤師会の乾英夫副会長は「患者に適した処方が可能になり、いわゆる薬漬けは死語になった」と語る。国は調剤報酬を手厚くして院外処方を進め、できあがったのが門前薬局だ。
国内の薬局は2017年度末で約5万9千店ある。厚労省のサンプル調査では常勤換算の薬剤師が2人以下の薬局が半数弱にのぼる。17年度の薬局への技術料と薬剤料を合わせた「調剤医療費」は、処方箋1枚あたり9187円。半数以上の薬局は特定の病院の処方箋に頼り、少数の薬剤師が調剤して患者に渡すだけのビジネスが成り立った。
「薬局大国」の足元は危うい。
薬剤師に求められる役割は、患者のアレルギーや過去の副作用を把握したうえでの服薬指導だ。だが厚労省が調べたところ、電話などでの継続的な指導をしたことのある薬局は4割ほど。8割は必要性を感じていると答えたにもかかわらず、半数以上はできていない。
薬の値段は公定価格で院内でも院外でも変わらないが、院外は薬剤師の技術に対する報酬が手厚い。同じ薬を受け取るのに病院から薬局へ移動すると、健康保険に高い請求がまわる。負担するのは患者だ。日本医師会の中川俊男副会長によると「院内ですべて処方すれば、現状との差額は年1兆7千億円になる」。身内のはずの医師からも批判が出る。
厚労省は薬局にある矛盾の解消に動く。過去の診療報酬改定では、門前薬局への調剤報酬を下げてきた。次の一手が薬局の機能を高め、事実上の再編を促す施策だ。
厚労省は社会保障費の抑制に向け、お金がかかる入院を抑えて自宅で診療する「在宅医療」への移行を進めている。在宅を担う「かかりつけ医」にあたる仕組みとして、「地域密着型」の薬局をつくる。休日や夜間でも対応できるだけの薬剤師を持ち、患者を訪問して服薬を指導する。

質の良さで差
薬局に差も付ける。特殊な抗がん剤の副作用などについて適切な指導をできる薬局を「高度薬学管理型」とする。19年の通常国会に医薬品医療機器法の改正案を提出し、2つの薬局を法的に位置づける。
そのうえで、要件を満たす薬局は20年度にも調剤報酬を増やす方向で議論する。厚労省幹部は「しっかりコストをかけた質の良い薬局を作りたい」と話す。
調剤医療費は17年度に7兆6664億円と、5年前の12年度に比べて16%増えた。高齢化に伴って薬にかかるお金は増え続け、税や保険料を通じて国民の負担になっている。
コンビニは顧客のニーズを満たすことで市場を作り出してきた。街角の薬局は患者のニーズを満たしているかどうか。医薬分業がもたらした非効率を見直すには、ニーズを満たさない薬局には市場からの退出を迫るといった政策も必要になる。

(日経新聞)



調剤にとっては凄い流れが出来るかもしれません。
by kura0412 | 2018-11-24 14:27 | 医療政策全般 | Comments(0)

医療内容の高度化、高密化が経営を悪化させる可能性

地域医療構想、医療の計画経済化がもたらす死角

2014年6月に成立した医療介護総合確保推進法により、「地域医療構想」が制度化された。地域医療構想とは、人口推計をもとに2025年に必要となる病床数(病床の必要量)を高度急性期病院、急性期病院、回復期病院、療養病院という4つの医療機能ごとに推計し、現在より効率的な医療提供体制を実現する取組みである。
地域医療構想は、その名称からいっても地域医療の話であり、病院の競争力を高めようといった視点はない。むしろ明確なのは病院の機能分化と、それに伴う医療費の削減である。
とりわけ前者の視点は、いままでブラックボックスとされていた病院内の医療の中身がデータによって透明化されたことによるものであり、医療の世界では画期的なこととされている。しかし、データに基づいて病院を区分できれば、計画的に医療サービスの供給体制を作ることができるのだろうか。

病院の区分の仕方には色々な考え方がある。わかりやすいのが大きさで区分する方法で、アジア諸国には、この方法が多い。一方、日本では大きさと無関係に医療機能で区分している。それが地域医療構想における高度急性期病院、急性期病院、回復期病院、療養病院である。最終的には、各病院の医療機能報告から得られたデータが示す医療機能によって区分を行おうとしている。

一方、診療報酬の面から病院を区分しているのが現行の DPC 制度である。当初、DPC 制度に病院の区分はなかったが、大学病院、大学病院に準じる群、その他の一般病院を「一群」「二群」「三群」に区分した。しかし、野球の1軍、2軍を想起させ、病院のランキングにもとられるためか、現在は、「大学病院本院群」「DPC 特定病院群」「DPC 標準群」という名称になっている。
医療をデータで透明化するDPC 制度は日本で独自の進化を遂げたとはいえ、もともと米国の制度である。したがって、この制度を厳格に適応すれば、平均在院日数の短縮化など、米国流の医療になることは明らかである。
日本では、病院での平均在院日数が長かったために、1日の医療密度は薄かった。病院を受診する患者や必要な治療は、病気を厳密に定義すれば世界でそんなに大きな差がないと思われるので、在宅医療やDPCなどで病院での在院日数を減らすように努力すればどうなるだろう。患者数が同じという前提であれば、回転数が上がった分だけ空きベッドが増えることになる。
そうなると、病院の医療従事者は減り、人件費も減る方向に進むはずだが、そうでもなさそうだ。大きく変わったのは、病院での医療の変化である。医療内容が高度化、高密度化したのだ。医療が高度化、高密度化することにより、病院の雇用必要者は増え、診療報酬の増加以上に人件費が増加し、経営状態が悪化(状況に応じては赤字化)する病院が増えたのだ。
東京商工リサーチによれば、2018年1-8月の病院・医院の倒産は32件と急増し、前年(27件)をすでに超えているという。このまま推移すれば、リーマン・ショックの影響を受けた2009年の年間59件に次ぐ多さになる可能性がある。

旧ソ連などの計画経済の失敗から生まれた反省は、計画する側は「事前に何が正しいのかわからない」という当たり前の謙虚さが持てなくなり、現場に創意工夫が生まれにくくなるということだろう。医療を行う現場である病院には、やはり創意工夫の余地を残した方がいいのではないか。
たとえば下記のような話がある。
日本赤十字社医療センター(東京)が「同じ効果、同じ副作用なら価格が安い抗がん剤を使う」との院内方針を決めたことが(2016年)7月21日、分かった。化学療法科の国頭英夫部長は「国民皆保険制度のもと、日本では高額薬であっても医師は価格を気にせず処方してきた」と指摘。海外では同様の決定が報じられた後に薬価引き下げにつながった例もあるが、薬価を比較した上で使用する薬を決めるのは国内で異例とみられる」(産経ニュース2016年7月22日付)
「地域医療構想」は医療の計画経済化を進めるもので、このような現場の創意工夫が生まれにくくなると思うが、いかがだろうか。

(真野俊樹・JCER)
by kura0412 | 2018-11-22 10:08 | 医療政策全般 | Comments(0)

医療と介護の一体データ、20年度に外部提供

医療と介護の一体データ、20年度に外部提供 厚労省

厚生労働省はそれぞれ別々に集めている医療と介護のビッグデータを一体にして分析してもらおうと、2020年度から研究機関などに情報提供を始める。例えば病院での治療や処置の内容が、その後の要介護度にどう影響したかといった傾向がわかり、健康寿命の延伸のための分析などに役立つ。19年度に介護保険法などを改正する。

提供するのは、レセプト(診療報酬明細書)や特定健診の情報を集めた医療のデータベースと、要介護の区分や利用した介護サービスの種類を集めた介護のデータベース。いずれも個人の特定につながる情報が削除されたうえで厚労省が集めて保有しているが、別々に外部提供している。
データを一体にすれば、医療と介護の総費用をもとにした最適な医療・介護の提供体制のあり方などについて研究できるようになる。厚労省が設置した有識者会議が第三者提供への考え方を盛り込んだ報告書をまとめた。研究が公益目的に適しているかや、個人の特定につながらないかなどを厚労省が審査して提供の可否を決める。提供先から費用を請求することも可能とした。

(日経新聞)
by kura0412 | 2018-11-19 10:40 | 医療政策全般 | Comments(0)

健保の破綻回避には「外国人」受け入れが必須

5年間で最大34万人の外国人人材を受け入れ
安倍晋三内閣は外国人労働者の受け入れ拡大を目指す出入国管理法改正案を2018年臨時国会に提出、本格的な議論が始まった。新設する「特定技能1号」「特定技能2号」の資格で、5年間で最大34万人の外国人材を受け入れるとしている。安倍首相はあくまで「移民政策ではない」として期間終了後は帰国させることが前提だとしているが、職場で常に多くの外国人が働くことが当たり前になっていくに違いない。
それでも新資格だけでは人手不足を賄うことは難しい。政府の試算では2019年度に不足する労働者は61万~62万人で、新資格で受け入れるのは3万3000~4万7000人としている。今まで労働者受け入れの「便法」として使われてきた「技能実習制度」や「留学生」を今後も大量に使い続けるのか、それとも新資格の枠を広げていくのか、注目されるところだ。
働く外国人が当たり前に社会に存在するようになる中で、様々な社会のセーフティーネットにどう外国人労働者を受け入れていくのかが、大きな課題になっていく。労災や失業に備えた労働保険や、年金、健康保険、生活保護といった枠組みだ。「しょせん出稼ぎなのだから、無保険で構わない」「日本のセーフティーネットを使わせるのはおかしい」といった声が存在するのは、安倍首相が「移民ではない」と言い張っていることが大きい。実際に、そうしたセーフティーネットの外側にいる外国人を増やせば、社会不安の種になり、先進各国が経験してきた「社会の分断」を生むことになる。
そんな中で、早急に対応が必要なのが、健康保険の制度設計の見直しだ。

会社員が対象の健康保険は現在、加入者本人に扶養される3親等内の親族にも適用される仕組みになっている。家族が日本国内に住んでいるか、海外に住んでいるかは関係ない。この仕組みをそのまま放置すれば、外国人労働者の母国にいる親族らが日本の健康保険でカバーされることになる。
報道によると、実際に、こうした親族らが母国や日本で医療を受けて健康保険を利用する事例が相次いでいるとされる。政府は2019年の通常国会に健康保険法改正案を提出し、保険加入者が扶養する親族が保険の適用を受けるためには、日本国内に居住していることを要件とすることなどを検討している。

健康保険組合の42%が赤字決算に
もちろん、不正利用を防ぐのが狙いだが、そうなると、日本人で海外に居住している留学中の子弟などをどうカバーしていくのかなど、制度設計に工夫が必要になる。本来、健康保険制度は、収入に応じて保険料を支払っている人とその扶養親族らが、等しく医療を受けられることが前提になっている。外国籍だからといって仕組みから排除していけば、保険そのものが成り立たなくなっていく。
そうでなくても健康保険の仕組みは窮地に立たされている。日本の健康保険制度の一翼を担ってきた大企業などの健康保険組合の解散が相次いでいるのだ。
世の中の関心を呼んだのは、加入者16万4000人の日生協健康保険組合と、加入者51万人の人材派遣健康保険組合が解散を決めたこと。人材派遣健保は国内3位の規模だ。そうした主要健保までが解散に追い込まれているのは、保険財政が急速に悪化しているのが理由だ。
健康保険組合連合会が2018年9月25日にまとめた1394組合の2017年度の収支状況によると、42%に当たる580組合が赤字決算だった。健康保険組合は、加入している社員の保険料で、社員やOBの医療費を賄うのが建前だが、国の制度で導入された、高齢者の医療費を賄うために拠出する「支援金」の負担が年々増加しているのだ。2017年度決算での全組合の「支援金」合計額は3兆5265億円と前年度に比べて7%も増えた。保険料の収入合計は8兆843億円なので、何と半分近い44%が支援金に回っている計算になる。
厚生労働省がまとめた2017年度の「概算医療費」は42兆2000億円と前年度比2.3%増え、過去最大となった。概算医療費は労災や全額自費の医療費を含んでいない速報値で、総額である「国民医療費」の98%に相当する。
概算医療費の増加が続く最大の要因は、75歳以上の医療費が大きく伸びていること。2017年度は4.4%も増加し、75歳未満の1.0%の伸びを大きく上回った。
これは、高齢者の数が増えているためばかりではない。高齢者ひとり当たりの医療費で見ても75歳以上は大きく増えている。2017年度は94万2000円と、前年度の93万円に比べて1万2000円も増えた。ちなみに75歳未満は22万1000円だ。75歳以上の高齢者が使う医療費が現役世代など若年層に重くのしかかっている。しかも、働く現役世代の人口はどんどん減っているので、そうなると若年層ひとり当たりの健康保険料負担はどんどん大きくなっていく。
同じ職場環境にある社員で組合を作り、その保険料で組合員の医療費を賄う健保組合の「相互扶助」の仕組みは、まさに保険の原理を使った効率的な仕組みだった。保険料は加入する社員と会社が折半で負担、企業が成長を続けていれば、若い健康な社員がたくさん入るため、医療費の負担も分散される格好になってきた。世界がうらやむ国民皆保険が成り立つ上で、企業の健保組合の果たした役割は大きい。

このままでは「国民皆保険」が瓦解しかねない
それが高齢者医療制度で「支援金」の負担が年々大きくなり、健保組合の財政は一気に赤字となった。赤字から脱するためには、保険料を引き上げるしかないが、それも限界に近づいている。健保組合が解散すれば、国の仕組みである国民健康保険(国保)や、中小企業などを対象とする「協会けんぽ」に加入することになる。これも自立運営が建前だが、財政は厳しく毎年1兆円以上の国庫補助などを受けている。
協会けんぽの保険料率はおおむね標準報酬月額の10%(労使合算)前後になっている。また、国保は保険料が高いことでも知られ、保険料が払えずに「無保険」状態に陥る人もたくさんいる。
このままでは「国民皆保険」が瓦解することになりかねない。上昇し続ける医療費を抑制することも重要だが、保険を構成する人口構造が、逆ピラミッドになってしまえば、仕組みそのものが成り立たない。負担する人よりもらう人が増えれば相互扶助は限界なのだ。
1つは健康保険財政を支えてくれる、若くて健康な働き手を増やしていくことが、国民皆保険を永続的な仕組みとする上でも不可欠だ。ズバリ、外国人労働者を積極的に受け入れ、その上で、彼らにきっちり保険料を負担してもらうことが必要なのである。日本の社会保障制度、セーフティーネットを支える一員になってもらうということだ。
ともすると、不正をして利益だけを得ようとするフリーライダー(タダ乗り)にばかり目が向きがちだ。だが、多くのまじめな外国人労働者は、きちんと税金を払い、社会保険料を負担して、日本社会の一員としての義務を果たそうとしている。
いや、日本社会の一員として、きちんと義務を果たしてもらう仕組みを整え、その恩恵として質の高い医療を受けられるようにしなければならない。外国人労働者を単なる労働力とだけ考えるのではなく、社会を構成する一員、生活者として受け入れる仕組みを早急に整えなければならない。
健康保険だけでなく、年金制度も同じだ。日本人でも米国勤務が一定以上の期間に及んだ人なら、米国から年金をもらっているという人も少なくない。日本できちんと働き、厚生年金を掛けた外国人には年金が支払われる仕組みを整えなければ、日本で長期にわたって働こうという外国人も出てこない。外国人受け入れ拡大を機に、社会保障制度を抜本から見直す必要がありそうだ。

(磯山友幸・日経ビジネス)



現在臨時国会で論議が進む出入国管理法案は、歯科においても他人事の問題ではありません。
by kura0412 | 2018-11-16 10:31 | 医療政策全般 | Comments(0)

介護5年で最大6万人の外国人受け入れ

外国人労働者の受け入れ拡大に向けた出入国管理法改正案をめぐり、政府が2019年4月の法施行後に想定する外国人労働者の受け入れ規模がわかった。
対象になる14業種別に見通しを示した。介護では19年度から5年間で5万~6万人の受け入れを想定。全体で5年間で26万2700~34万5150人を見込む。

(日経新聞)

by kura0412 | 2018-11-14 16:48 | 介護 | Comments(0)

入浴習慣ある高齢者は要介護リスク低くなる

千葉大学などの研究グループは、入浴が健康に与える影響を調べようと、全国18の市町村に住む要介護認定を受けていない高齢者およそ1万4000人を対象に、3年間かけて大規模な調査を行いました。
調査では、ふだん、どれくらいの頻度で風呂につかっているかなどを事前に調べたうえで、3年後の状態を確認し、そのデータを統計的な手法を使って分析しました。
その結果、冬場に週7回以上、風呂につかっている高齢者は、週2回以下の高齢者より介護が必要な状態になるリスクが29%低くなったということです。
研究グループは、高齢者の入浴は、事故や病気などに十分注意することを前提に、介護予防対策としてより活用すべきだとしています。
千葉大学附属病院の八木明男医師は「入浴が健康にいいことが学術的にも立証できた。1人暮らしの高齢者には、施設などでの入浴をうまく組み合わせて入浴を促すことが大切だ」と話しています。

(NHK NEWS WAVE)


この種の調査なら歯科で話題となる結果はいくらでも出るように感じるのですが。


by kura0412 | 2018-11-12 11:13 | 介護

消費増税巡り医師会攻防 税還付を要求 財務省は「現制度で」

消費増税巡り医師会攻防 税還付を要求 財務省は「現制度で」

診察料などが非課税の医療界が2019年10月の消費増税で損失を被るとして、税制での対応を政府に求めている。病院は医療機器などの仕入れに課税されるため収支が悪化しやすい。日本医師会は「負担分は税で還付を」と新制度を要望。財務省は主に診察料の引き上げで増税分を補填する既存の制度で対応できるとの立場だ。双方の攻防は年末の予算編成・税制改正に向けて焦点の一つになっている。

「なんらかの新たな仕組みが必要だ」。31日に開かれた中央社会保険医療協議会(厚生労働相の諮問機関)。消費増税への対応が議論されるなか、医師会は抜本的な対策を改めて訴えた。
1989年に消費税が導入された時、保険証を使って医療を受ける費用は非課税とされた。病院は仕入れにかかる消費税を負担するが、診察料は公定価格で消費税を上乗せできない。
病院の収支が悪化する対策として、消費増税のたびに政府が全国一律で診察料を引き上げて病院の負担を補填する仕組みがとられてきた。ただ、個々の医療機関で収支の内訳は様々。大病院は高額な医療機器の仕入れで消費税の負担が膨らみやすい。医療界全体の数字上は十分に補填されたとしても、個別には十分でない例もあるという。医療界では補填不足を「損税」と呼び、医師会は長年不満を抱いてきた。
7月、その不満を噴出させる事態が起きた。消費税率が8%に上がった14年度の補填状況について、厚労省の調査結果に誤りが判明した。「十分に補填されている」とされた補填率(増税負担分に対する補填額の比率)が83%にとどまっていた。原因は単純な集計ミス。医師会の横倉義武会長は「大変な怒りを感じている」と断じた。
16年度の調査結果も補填率は85%で、補填不足の実態が露呈した。持ち出しは1病院あたり、年約300万円。医療界の全体で200億円規模の補填不足になったとの試算もある。医療界には「そもそも十分に補填されてこなかった」との不満が強かっただけに、抜本的な対策を求める声が強まっている。

医師会は主に診察料の引き上げで補填された分と、消費増税に伴う負担増の差額を病院ごとに集計し、補填が足りない分を税で還付を受ける仕組みを要望している。これなら補填不足が生じない。
ただ、財務省は従来と同様に「制度内で対応する」との立場だ。税制上、還付を受けるには診察料などを消費税の課税対象にする必要があるが、保険医療にはなじまない。医師会の要望通りに税制改正で対応するとしても、財源が明確でない限り実現のメドも立ちにくい。
政治力の強い医師会の訴えに対し、与党は17年12月に策定した18年度の税制改正大綱で「19年度の税制改正の際に総合的に検討し結論を得る」と明確な期限を切った。消費増税に間に合うぎりぎりのタイミングで決着がつく可能性がある。
いずれにしても増税分は患者も一部を負担することになる。だがそれを自覚している人は多くない。目に見えない形で増税される今の制度は「透明性に欠ける」(日本総合研究所の西沢和彦主席研究員)との指摘もある。

(日経新聞)



消費税増税がスケジュールに入っている中、小規模経営が殆どの歯科において日歯はどんな対応を考えているのでしょうか。
by kura0412 | 2018-11-01 08:54 | 医療政策全般 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラーを片手に歯科医師の本音

回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。

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