朝鮮半島の激変に備えを

朝鮮戦争の休戦から65年。戦火を交えた米朝のトップが12日、シンガポールで握手した。つい半年前まで、核実験や弾道ミサイルの発射で双方は緊張状態にあった。これほどの米朝接近を、誰が予想しただろうか。

トランプ大統領と金正恩(キム・ジョンウン)委員長による首脳会談の焦点は、金委員長が体制のよりどころである核を本気で放棄する意志があるかどうか確認することだった。残念ながら、結果は安堵ではなく懸念が先に立つ内容だったと言わざるを得ない。
「朝鮮半島の完全な非核化」こそ共同声明に盛ったが、いつまでに、どうやって放棄するかなど細部は今後開く米朝高官級協議に委ねるという。対話が続く間は、金委員長は一息つける。時間稼ぎを図り、日米韓の言動に難癖をつけ、見返りを求めてくるだろう。
完全かつ検証可能で不可逆的な核放棄どころか、時間切れでトランプ氏が大統領を退くかもしれない。「それが金委員長の狙いだ」とみる専門家は少なくない。
一方で、絶対権力を持つ独裁者が、世界一の軍事力を擁する国の指導者に直接、非核化を約束した事実をあまり過小評価するのも適切とはいえない。ウソをつくなら再び軍事オプションも選択肢に入れた「最大限の圧力」が待っている。トップダウンで進める非核化プロセスは、これまでと違い進展をみせるかもしれない。少なくとも、それを全否定する材料も、今はない。
おそらく間違いないのは、好ましい方向と悪い方向のどちらにも、朝鮮半島情勢が大きく動く可能性がでてきたということだ。
仮に北朝鮮が核武装すれば、日米が防衛力を強化するのは間違いない。中国がそれを座視するとは思えない。軍拡の動きが懸念される半面、韓国の革新政権は北朝鮮にすり寄る形での緊張緩和に動きかねない。日米韓の分裂である。

反対に、核問題が解決に向かうなら、米朝関係は国交正常化が視野に入る。
拉致問題の解決にむけた日朝交渉も始まるだろう。国際社会の北朝鮮支援や開発投資も本格化する。同時に在韓米軍の縮小など、安保環境が激変する望ましくない動きも現実味を増すかもしれない。
北朝鮮をめぐる核問題は今後、日韓両国に加え、米国を中心にした世界秩序に挑む中国、ロシアも絡むパワーゲームの様相を呈するはずだ。世界の成長センターである東アジアの平和は日本にとって死活問題。日本は局面の変化に敏感であるべきだ。
米朝首脳会談が実現するまでの間、日本は不安な視線で成り行きを見つめざるを得なかった。当事者なのに主役になれないのは、安全保障を米国に頼る宿命である。
しかし、トランプ氏が期待する北朝鮮への経済支援で日本は、脇役以上の存在だ。
日朝交渉では主役そのものである。情勢を分析し、国内世論をまとめ、外交力を発揮して国益を守らなければならない。安倍晋三首相に備えはあるだろうか。

(日経新聞)



朝鮮半島が比較になり平和が訪れる、そんな単純な流れだけではない会談結果になったようです。日本も防衛だけでなく、外交、経済の大きな変換を求められました。韓国はどうするのでしょうか。現時点でも相当経済が悪くなっていると聞くのですが。
by kura0412 | 2018-06-13 10:46 | 外交 | Comments(0)

中国公船が操る漁船230隻と習近平氏の狙い  編集委員 中沢克二

中国海警局の公船と中国漁船が軌を一にして尖閣諸島の領海に侵入した。同時進入は歴史的にも初めての事態だ。接続水域には230隻もの中国漁船が集結。一時は15隻の公船が領海と接続水域にいた。その一部は機関砲に似た武器を搭載している。意図的に緊張をつくり出す異常な行為だ。
特に230隻の中国漁船というのは驚くべき数である。中国当局の明確な指示がなければできない“集団行動”と言ってよい。
「意図は3つだ。まず南シナ海へ手を出す安倍政権への懲罰。そして(意図的に危機を作り出すことで)日本の背後にいる米国の動きを試している。(中国が着々と島の整備を続ける)南シナ海から世界の注目をそらす目的もある。ポイントは(中国)軍艦ではなく、多くの漁船がいることだ」
中国の安全保障の内情を知る関係者の声である。少し話が複雑なので順を追って説明したい。

■1978年は100隻、政争絡みとの指摘も
実は中国には過去に“実績”がある。38年前のことである。1978年4月、尖閣諸島はいきなり緊迫した。海上保安庁の記録によると、魚釣島の北西海域に100隻の中国漁船が到着。五星紅旗を掲げ機銃も装備した約十数隻の漁船が領有権を主張しながら日本の領海に侵入した。
日本側は巡視船10隻と航空機4機で対応し、1週間後、ようやく全漁船を領海外に退去させた。しかし、中国漁船は、漁船領海線付近の操業をやめなかった。緊迫した事態が約1カ月も続いた。当時は、日中平和友好条約の締結に向けて厳しい折衝が続いていた頃だった。福田赳夫内閣は中国に抗議した。だが、中国側はこう繰り返す。「偶然、発生した事件だ」
この頃、中国では文化大革命などで失脚した鄧小平が復活し、最高指導者としての地位を固めつつあった。政治的には極めて微妙な時期だ。この姿は今、国家主席、習近平が置かれている微妙な状況に似ている。習は汚職撲滅を旗印に権力を固めつつあるが、敵も極めて多い。
中国側は78年夏になると、今後、同様の事件は起きない、という趣旨の回答をしてくる。そして同年8月、双方は日中平和友好条約に署名した。
68年、国連アジア極東経済委員会が尖閣周辺を含む東シナ海の大陸棚に、多くの石油資源が眠っているとの報告を出した。中国はこれを受けて尖閣諸島の領有権を強く主張し始める。だが、鄧小平は78年当時、外相の園田直との会談でこそ尖閣問題に触れたが、深追いはしなかった。
中国にとって重要だったのは、関係が悪化していたソ連へのけん制だった。改革・開放政策にカジを切るため、日本の協力も必要だった。鄧小平は日本との安定した関係構築を優先させた。

78年の尖閣への漁船侵入事件を巡っては、一部で鄧小平らに打倒された江青ら「四人組」との関係を指摘する向きもある。上海で大勢力を持っていた「四人組」の残党が、鄧小平らの対日融和方針に異議を唱えた、というのだ。政争絡みとの見立てである。真相はいまだに謎に包まれている。
ただ、大きな意味では、日中平和友好条約の締結前に、日本に圧力をかける意図があったのは間違いない。主導していたのは農漁業・海洋資源などの担当部門である。ここは中国軍との関係が深い。尖閣に集結した100隻の中国漁船には民間人を徴用した「海上民兵」も乗っていたとされる。

■安倍政権への“懲罰”、新内閣と防衛白書けん制
似た動きは、2012年9月の日本政府による尖閣諸島国有化の際にもあった。大規模反日デモが発生する前日の9月14日のことだ。中国の複数の海洋監視船が尖閣諸島の領海に侵入。東シナ海への出漁解禁を受け、浙江、福建両省から出航した中国漁船団が尖閣諸島の周辺で操業し始めた。
中国側は識者による座談会を北京で開催し「『国有化』は現状を変更し、法理的な地位を強化する許し難い措置だ」と反発していた。
今回の大量の漁船の動きが78年と違うのは、機関砲まで備えた中国海警の公船が事実上、指揮している点だ。機関砲に似た武器を備えた「海警33115」と「海警2703」などである。
中国海軍の艦船は今年6月初旬、尖閣諸島の接続水域に進入している。これも歴史的に初の行為だ。13年、正式発足した中国海警局は軍と関係が深いとはいえ別組織だ。「軍が動いた以上、海警局も張り合って活動する必要がある」。中国駐在のアジアの外交官の分析である。比較的、新しい組織である海警局の権限維持と予算獲得のための「示威行為」との見方だ。
組織の成り立ち上、中国海警局が動かせるのは中国漁船である。仕組みは複雑だが、尖閣諸島に“自主的”に向う浙江省や福建省の中国漁船に地元組織を通じて事実上の補助金を出すことも可能だ。油代などの補てんである。これは過去の例で確認されている。

今、日中の防衛当局間では、偶発的な衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」の発効に向けた折衝が続いている。利害が錯綜(さくそう)する詰めの交渉が行われている場合、中国側が漁船を使った「示威行為」に出ることがあるのは、78年の例からも分かる。
8月上旬、漁船団が出発した地域から遠くない上海の地元テレビでは「対日関係」をテーマにした特別討論番組を放送していた。多くの中国人識者は、先に公表された日本の防衛白書に関して「中国の脅威を宣伝する日本には、別のよからぬ思惑がある」などと批判していた。
この他、国営中国中央テレビも新防衛相、稲田朋美の人物像について「右翼女政客」などと批判的に紹介していた。冒頭に紹介した安保関係者が指摘したように、中国の公船と漁船の尖閣領海侵入は、参院選で憲法改正が視野に入る議席を獲得した自公政権と、安倍新内閣へのけん制である。


■米国を試し、南シナ海から目をそらす陽動か
そして中国は、日本と同盟を組む米国も試している。中国海軍の艦船が大挙して尖閣の領海に侵入すれば、日米安保条約に基づき、米軍が介入する恐れがある。しかし、海警局の公船と漁船である限り、米軍は出てこれない。
米政府が“紛争”の平和的解決を安倍政権に働きかけるよう仕向けたい――。これが中国が描くシナリオかもしれない。米政府がそうした動きに出れば、尖閣を巡って領土争いがある事実を米国が認めることになる。「領有権問題は存在しない」と突っぱねてきた日本政府は危機に陥りかねない。
中国は現在も南シナ海の島しょの建設を続けている。7月の仲裁裁判所の判決は完全に無視された。しかし9月には中国・杭州で20カ国・地域(G20)首脳会議がある。習近平の晴れ舞台が南シナ海問題でぶちこわしになるのは避けたい。そこで、いったん東シナ海の尖閣問題で摩擦を激化させ、南シナ海から注意をそらす。一種の“陽動作戦”である。

もう一つ重要な要素がある。中国の内政である。
現在、河北省の保養地、北戴河では、長老らと習近平ら現指導部が重要課題を巡って意見交換している。南シナ海、東シナ海の安全保障問題も大きな話題だ。「海洋強国」を掲げる習近平としても、この局面では弱腰と批判されかねない動きはとれない。内政上は、強硬姿勢をとるのが安全である。
いずれにせよ日本側も対策をとる必要がある。
現在の尖閣諸島周辺での海上保安庁の巡視船数ではあまりに足りない。既に尖閣周辺では、中国公船の数が、日本の巡視船数を上回っている。これでは中国による「既に日本の実効支配を崩した」という宣伝に対抗できない恐れがある。日本各地からの動員、新造船の投入を含め、警備体制の抜本的な強化が求められる。(敬称略)

【日経新聞】




どんな意図があっての行動かは分かりません。ただ偶発事故が起きる可能性は十分考えられます。
尖閣諸島は沖縄県ですよね。
by kura0412 | 2016-08-10 15:25 | 外交 | Comments(0)