2018年 02月 09日 ( 2 )

75歳以上「後期高齢者」のコストは削減可能だ
社会保障費は人口変動を踏まえて決めるべし

1月23日に開催された経済財政諮問会議で、内閣府が「中長期の経済財政に関する試算」(以下、「中長期試算」)の更新版を公表した。これは2018年度予算案が決まったことを受け、わが国の経済財政の今後について、一定の仮定を置いて試算するもので、毎年1~2月と7~8月に2度公表している。
今年の「中長期試算」が示す値の焦点は、今夏にも取りまとめる予定の「経済財政運営と改革の基本方針2018」(以下、「骨太方針2018」)で定めることとなっている、基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化の達成時期とそれを実現する具体策だ。特に、消費税率を10%超に上げないことを前提とした財政健全化を検討するなら、歳出の効率化、無駄な支出の削減を積極的に進めていくしかない。

第2次安倍内閣以降でも、歳出改革には取り組んできた。2015年6月に閣議決定された「骨太方針2015」の中では、「経済・財政再生計画」として、2018年度予算までの財政運営について定めた。2016~2018年度を集中改革期間と位置付け、第2次安倍内閣以降の当初3年間で、国の一般歳出の総額の実質的な増加が1.6兆円程度となっていること、うち社会保障関係費の実質的な増加が高齢化による増加分に相当する伸び(1.5兆円程度)となっていることを踏まえて、その基調を2018年度まで継続させていくこととした。これらの金額(一般歳出で1.6兆円、社会保障関係費で1.5兆円)は、「歳出改革の目安」と呼ばれた。

3年間で1.5兆円増」の目安は守るが…
「歳出改革の目安」は、2020年度の国と地方の基礎的財政収支黒字化という、財政健全化目標の達成を目指すために設けられた。特に、社会保障関係費の実質的な増加を「3年間で1.5兆円」とすることが、2016~2018年度の予算編成で主要な攻防となっていた。この「3年間で1.5兆円」は、「自然増を年5000億円に抑える」とも解釈されていた。
そして、昨年末に閣議決定された2018年度予算政府案では、その歳出改革の目安を達成することができた。与党内ではいろいろな意見が出されたものの、最終的には安倍内閣として”目安を守る”ことで、規律を維持したのである。
ただし、歳出改革の目安は達成したものの、2016年6月に消費税率の10%への引き上げを2019年10月へ延期すると決めたことと、2017年9月に2019年10月の消費増税時に使途を変更し歳出を拡大すると安倍晋三首相が表明したことによって、2020年度の基礎的財政収支黒字化は達成が困難となってしまった。
これを受けての今夏の「骨太方針2018」である。本連載の拙稿「『年収850万円超の人は増税』がなぜ妥当か」で詳述したように、12月8日に「新しい経済政策パッケージ」として、基礎的財政収支黒字化を目指すという目標自体はしっかり堅持すること、そしてその達成時期と実現するための具体策を「骨太方針2018」に盛り込むことについて、閣議決定がなされた。だから、安倍内閣として基礎的財政収支黒字化を財政健全化目標とするのをやめることはできないし、それを実現するための議論を怠るわけにはいかないのだ。

では具体策の内容をどうするか。もちろん、これからの半年弱で、2020年代にまたがる社会保障をはじめとする諸改革の仔細を事細かく決めることは難しい。そうなると、消費税率を10%超とはしないなら、前掲した「歳出改革の目安」のように、どの程度に歳出を抑制できれば財政健全化目標が順調に達成できるかについて、メドをつけなければならない。
その歳出抑制の要は、やはり社会保障費にならざるを得ない。
政策的経費である一般歳出の半分以上を社会保障費が占めており、社会保障費で何もできなければ、歳出抑制は実効性を失うからだ。
ならば、2016~2018年度に「3年間で1.5兆円」という目安を達成できたのだから、今後も「3年間で1.5兆円」、つまり「自然増を年5000億円に抑える」という目安で、社会保障関係費を抑制しようという話になるのだろうか。
「自然増を年5000億円に抑える」のは、かなり困難だという見方がある。というのは、団塊世代が2022年度から順に75歳以上の”後期高齢者”となり、社会保障費がますます増えると予想されているからだ。2025年度に団塊世代は全員75歳以上となる。75歳以上人口の増加率は、2022~2024年度にかけて、年率約4%と近年にない高い水準となる。

75歳以上の医療費は64歳以下の5倍!
75歳以上となると、1人当たりの医療費も介護費も、それより若い年齢層より格段に多く必要となってくる。年間の1人当たり医療費(2014年度)は、64歳以下で平均約18万円なのに対し、75歳以上は平均約91万円と約5倍。年間の1人当たり介護費(2014年度)は、介護サービスが受けられる65歳以上74歳以下で平均約5.5万円なのに対して、75歳以上は平均約53.2万円と約10倍だ。このように、75歳以上人口が増えると、社会保障費が増大することが予想される。
2022年度からは、団塊世代が順に75歳以上となる時期と、財政健全化を図る時期とが重なる。これでは社会保障費を抑制できないのではないか。そんな時期に「自然増を年5000億円に抑える」という目安を社会保障費で置くのは乱暴だ。そんな見方がある。
が、確かに2022~2024年度はその通りだが、直前の2020~2021年度は、むしろかつてないほど、高齢者人口の増加率が小さくなる時期でもあるのだ。全体の人口が減る中、高齢者がほぼ増えないなら、社会保障費はほぼ増えない。2020年度と2021年度は、医療や介護の単価(診療報酬や介護報酬の単価)が同じならば、高齢者人口もほぼ同じだから、逆に「自然増を年5000億円」も必要としない、可能性が高い。
何せ、2016~2018年度で「3年間で1.5兆円」を達成したが、そのときでさえ、75歳以上人口の増加率は年平均3.31%と、それなりに高い増加率だったのである。また65歳以上人口の増加率も、低下傾向だったとはいえ、年平均で約1.7%だった。それだけ高齢者人口が増えて、それに伴い社会保障費も増えて不思議ではないのに、「3年間で1.5兆円」としても、医療や介護の体制を根底から崩壊させるようなことを起こさずに乗り切ってきたのだ。
これには、介護や医療で人材不足なのに、処遇改善ができなかったのは、「予算をケチったからだ」との見方もあるが、国民が増税に応じるならまだしも、そうでない以上、給付と負担のバランスを何とか取りながらうまく維持してきた、といってよい。
確かに、2022~2024年度に「3年間で1.5兆円」という社会保障費の抑制の目安を立てるのは、医療や介護で無理を強いることになりかねないが、65歳以上人口や75歳以上人口の増加率がかなり下がり、高齢者人口の増加率が一服する2020~2021年度には、高齢者人口が増えない分、社会保障費も増えないという実態をしっかりと反映した、予算編成が必要である。2020~2021年度には、社会保障費をこれまで以上に抑制しても、高齢者人口が増えない分、抑制が可能になる時期なのである。

65歳以上は2020年代に実はほとんど増えず
おまけに、65歳以上人口は2000年代に年率約3%で増えていたが、2020年代には小数第1位を四捨五入すれば0%になる。つまり、ほとんど増えないといってよい。65歳以上人口がほとんど増えないということは、医療や介護ではなく、65歳から基礎年金を受け取るという前提に立てば、年金の給付費が(物価や賃金に連動する分を除き)ほとんど増えないということだ。これも社会保障費の自然増が少なくて済む要因になる。
今夏の「骨太方針2018」に盛り込まれる財政健全化目標を達成するため、具体的かつ実効性の高い計画として、社会保障分野では、こうした人口変動の”機微”をしっかり踏まえたものにしてもらわなければならない。

(土居 丈朗 ・東洋経済ONLINE)




このあたりの年代別のシュミレーションを詳しく分析をする必要があるようです。
by kura0412 | 2018-02-09 16:47 | 医療政策全般 | Comments(0)

人生100年時代

人生100年 伸ばせ「性格力」 大学・生涯教育に反映を

ポイント
○性格スキルはAIにも代替されない能力
○「真面目さ」が仕事の成果や所得にも影響
○幼児期だけでなく成人後も伸ばせる余地

「人生100年時代」という言葉がブームだ。震源地は英ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授らの著書「ライフシフト 100年時代の人生戦略」である。安倍政権もグラットン氏をメンバーに入れた人生100年時代構想会議を立ち上げ、政権の新たなキーワードである「人づくり革命」について検討を進めている。
人生100年時代においては、就業も80歳まで見据えることができるようになる。昨今の技術革新のスピードの速さを考えれば、我々が学ぶべき対象も大きく変化している。年齢に関係なく学び続けることが重要だし、機会をみつけて本格的な学び直しをすることが必要になってくる。リカレント教育(生涯にわたって教育と就労を交互に行うことを勧める教育システム)のあり方が重要な政策課題になっているゆえんである。

しかし、我々は何を学び直す必要があるのか。それは学校の教室で先生が一方的に教える新たな知識であろうか。単に知識の蓄積とその引き出しだけでする仕事であれば、高度な仕事にみえても将来はAI(人工知能)に代替されてしまうであろう。それでは、AIに代替されないような普遍的な能力やスキルとは何であろうか。
そのカギとなるのが「性格スキル」である。
性格スキルとは、心理学や経済学で「非認知能力」と呼ばれてきたものだ。性格スキルについては、筆者は2014年1月20日付の本欄で取り上げ、2月刊行予定の拙著「性格スキル 人生を決める5つの能力」で包括的に論じている。
これは心理学の世界では5つの因子(ビッグ・ファイブ)に分解できることがコンセンサス(合意)となっている。それらが組み合わさって性格が形成されていると考えるわけだ。「開放性」(好奇心や審美眼)、「真面目さ」(目標と規律を持って粘り強くやり抜く資質)、「外向性」(社交性や積極性)、「協調性」(思いやりや優しさ)、「精神的安定性」(不安や衝動が少ない資質)――の5つである。
中でも、「真面目さ」が職業人生に大きな影響を与えることがわかっている。
例えば、業績評価など仕事のパフォーマンスとビッグ・ファイブとの関係についてこれまで行われてきた多くの海外の研究をまとめて評価した、米テキサスA&M大学のマレイ・バリック教授らの研究によれば、仕事のパフォーマンスとの平均的な相関係数をみると、「真面目さ」は0.22に対し、「外向性」は0.13、「精神的安定性」は0.08、「協調性」は0.07、「開放性」は0.04となっており、関連の強さではビッグ・ファイブの中で「真面目さ」が一番高いことがわかる。
また、日本においても筆者らは経済産業研究所が実施したウェブ調査を使って分析し、「真面目さ」の代理変数である高校時の無遅刻は、その後の学歴を高め、初職および現職で正社員になりやすいことを示した。さらに、大阪大学の大竹文雄教授らは、同大学が実施した日米調査を利用し、男性の場合、日米とも「真面目さ」が年間所得を高めることを示した。
「真面目さ」と並んで職業人生に強い影響を与える性格スキルとしては、「精神的安定性」の側面の1つである「自力本願」(行動や評価を他人よりも自己に求める傾向)や「自尊心」が挙げられる。就業以前の自力本願や自尊心が強いほど、将来の賃金が高くなることがいくつかの研究で明らかになっている。例えば、米シカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授らも、青年時の自力本願と自尊心を合わせた性格スキルが高いほど成人以降の賃金が高くなることを見いだしている。
加えて、彼らの同じ研究では、性格スキルが賃金に及ぼす影響の大きさは対象者の学歴の違いとあまり関係がないことも明らかにしている。つまり、どんな学歴の人でも性格スキルが高まれば賃金が高まるという関係があるということだ。

さらに興味深いのは、「協調性」の職業人生への影響である。
先の大竹氏らの分析では、日本の場合、男性では年間所得に対し「協調性」が高いほど年間所得も高くなっているが、米国では男性、女性とも「協調性」が高いほど、逆に年間所得が低くなっている。米国においても、男性のみであるが、やはり「協調性」と賃金が負の相関関係であることを見いだしている研究がある。こうした日米の違いは、職場でも集団主義が強い日本と、個人主義が強い米国の違いを反映していると解釈できるかもしれない。
それでは、職業人生に大きな影響を与える性格スキルはいつ伸ばすべきであろうか。1960年代に米国で家庭環境に問題のある就学前の幼児に行われた支援プログラム「ペリー就学前計画」の実験は、こうした就学前教育で幼児の性格スキルを伸ばすことにより、その後の人生に好影響を与えたことはよく知られている。こうしたエビデンス(証拠)が幼児教育無償化に向けた現政権の政策にも反映されているようだ。

しかし、性格スキルは大人になってからも、そして年をとってからも伸ばしていけることを忘れるべきでない。米イリノイ大学のブレント・ロバーツ教授らはこれまでの研究を総合し、「外向性」を「社会的優越」(自己主張が強い性向)と「社会的バイタリティー」(一人を好まず群れたがる性向)に分けた上で、年齢によるビッグ・ファイブの各因子の変化をみた(図参照)。
これをみると「社会的優越」「真面目さ」「精神的安定性」「協調性」は長い人生を通じて伸び続けることがわかる。一方、「社会的バイタリティー」「開放性」は10代で伸びるが、後の人生ではむしろ低下している。ビッグ・ファイブの中でも人生の成功で特に重要な役割を占める「真面目さ」「精神的安定性」「協調性」については、10代の伸びよりもむしろ、20代、30代の伸びが大きいことが着目される。
これは大人になってからも十分性格スキルを鍛えられることを如実に示すエビデンスだ。人生100年時代、性格スキルを伸ばせれば、どんな道に進もうとも人生が開けていくのだ。

それでは、就業期以降、性格スキルをどのように伸ばしていけばよいだろうか。実は、日本的雇用システムに性格スキルを鍛える仕組みが内在化されていたと考えられる。
例えば、転勤だ。転勤に伴い、仕事の難易度が上がり、よりリーダーシップを要求される役職を任されることも多いが、必要な職業能力を身に着けるとともに、新たな環境や苦労の中で粘り強く適応していく「真面目さ」が求められるし、養われるといえる。また、新たな人間関係を構築しなければならないという意味では、「協調性」と「外向性」も重要となる。
しかし、転勤も含め、職務、勤務地、労働時間が事前に限定されていないという無限定正社員システムを見直すのは働き方改革の根幹であるし、時代の流れ・要請でもある。転勤などに頼らずに企業の中でどう性格スキルを伸ばしていくのか。企業の人事部は大きな課題をつきつけられているといえるし、大学教育やリカレント教育にも性格スキルを向上させる視点を入れていくことが求められている。

(鶴光太郎・日経新聞)



人生100年時代を考えての歯科医療政策とは何があるのでしょうか。
by kura0412 | 2018-02-09 16:41 | 思うこと | Comments(0)