「薬価制度の抜本改革、メーカーの成長戦略か」と疑念
中川日医副会長、「中医協の自主性低下」も危惧

中央社会保険医療協議会薬価専門部会(部会長:西村万里子・明治学院大学法学部教授)は12月21日、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」を議論した。同基本方針は、薬価調査を毎年実施し、価格乖離が大きい品目について、薬価改定を行うことが骨子で、前日20日に開かれた塩崎恭久厚労相ら4大臣会合で合意していた。

日本医師会副会長の中川俊男氏は、基本方針に対し、「改めて読むと、非常に大きな問題がある。薬価改定財源を国民皆保険制度の維持ではなく、製薬企業の成長戦略のために充てる方針のように見える」と疑念を呈した。毎年の薬価改定を打ち出す一方、「費用対効果の高い薬には薬価を引き上げることを含め、費用対効果評価を本格的に導入」「より高い創薬力を持つ産業構造への転換」などと記載しているからだ。
さらに中川氏は、薬価専門部会でも薬価制度改革について議論しており、本来は中医協マタ―であるにもかかわらず、「4大臣合意」として基本方針が取りまとめられたことを踏まえ、「中医協の自主性が少しずつ失われつつあるのではないか」とも懸念、中医協での主体的な議論を訴えた。
一方、支払側の全国健康保険協会理事の吉森俊和氏は、薬価の毎年改定に向けた薬価調査の在り方をはじめ、基本方針には「来年中に結論を得る」とされている点について、その主体を質した上で、「一方的に経済財政諮問会議からボールが投げられることがないように留意してもらいたい。検討項目は多岐にわたり、相当ハードな議論になるだろう。優先順位を付けて、納得性のある議論をするためにも早く議論を開始してもらいたい」と中医協で主体的に議論していくよう、釘を刺した。
厚労省保険局医療課薬剤管理官の中山智紀氏は、吉森氏の質問に対し、2017年の年初から、薬価専門部会で議論を開始し、基本的な内容については同部会で議論を深めていくと説明。ただし、その結論は、関係省庁や経済財政諮問会議と最終的に調整をして、2017年末までに得るとした。
健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、各論について質問。薬価の毎年改定のための薬価調査が、「大手事業者等を対象に行い」とされている点について、大手4社で取り扱う医薬品の数量シェアは約75%だが、中小卸を外すことで、実勢価格を正しく評価できるか」と質問。さらに、DPCなど薬剤費が包括されている点数の扱いのほか、薬価制度と同様に特定保険医療材料の価格算定方式についても検討が必要だとした。

抜本改革の基本方針には、薬価の毎年改定のほか、
(1)オプジーボに代表されるように効能追加等に伴い、市場が一定規模以上拡大した薬については、新薬収載の機会を最大限活用して、年4回薬価を見直す、
(2)新薬創出・適応外薬解消等加算制度をゼロベースで見直し――が盛り込まれており、12月21日の経済財政諮問会議に報告される。
今後の焦点は、毎年改定の薬価調査の方法、「価格乖離の大きい品目」の定義、毎年薬価改定の財源の取り扱いだ。通常の薬価調査の在り方なども含め、2017年中に結論を得ることになっており、2017年の年明けから議論がスタートする。

「最大の目的は国民皆保険の維持」のはず
中川氏はまず、「このような基本方針を、中医協が主体的かつ自律的にまとめることなく、4大臣合意という形でまとまったのは、非常に遺憾」と述べ、「来年末までに結論を得る」などと指示されていることなども踏まえ、「中医協の自主性が少しずつ失われつつあるのではないか」と指摘し、診療側と支払側ともに自戒すべきと語った。
吉森氏が、今後の議論はハードであり、時間がかかると見通した点については、中川氏はこれまでも議論を重ねてきたことから、それほど時間はかからないとし、厚労省に対し、スピード感を持って議論を進めるよう求めた。「のんびり議論していたのでは、経済財政諮問会議が何らかの意見が出てきかねない。そうした危機感を持ってやってもらいたい」(中川氏)。

その上で、中川氏は、基本方針が、安倍政権がかかげる成長戦略を狙った方針に映ると指摘した。
基本方針は、序文に「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」の両立を基本理念として掲げている。中川氏は、オプジーボ(一般名ニボルマブ)の薬価引き下げを求めていたのは、公的国民皆保険の維持が最大の目的であり、現実にはこれらの両立は容易ではないと指摘。
基本方針には、「革新的新薬創出を促進するため、新薬創出・適応外薬解消等促進加算をゼロベースで抜本的に見直すこととし、併せて費用対効果の高い薬には薬価を引き上げることを含め、費用対効果評価を本格的に導入」「我が国の製薬産業について、長期収載品に依存するモデルから、より高い創薬力を持つ産業構造に転換するため、革新的バイオ医薬品およびバイオシミラーの研究開発支援方策等の拡充を検討、ベンチャー企業への支援」など、イノベーション評価や研究開発投資の促進を狙った記載が多い。

中川氏は、創薬支援の対象となる「我が国の製薬産業」とは、内資系企業に限るのか、外資系企業も含まれるかを質問。「新薬創出・適応外薬解消等促進加算で恩恵を受けたのは、内資系ではなく、外資系企業であるという歴史的な経緯がある」(中川氏)。厚労省保険局医療課長の迫井正深氏は、「我が国に必要な医薬品を提供するという制度設計を行っている」と述べ、内資系か外資系かを問わず、日本の医療において薬を提供する企業全体を指すと説明。
そのほか、現在は試行的に導入されている「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」について、ゼロベースで見直すとされている点も質問。中川氏は従来から、革新的新薬創出の支援は、診療報酬ではなく、補助金等で対応すべきと主張してきた。中山薬剤管理官は、「現行の加算について、どのような課題があるかを洗い出して、研究開発投資の促進という観点で見た場合、どんな制度であるべきかをしっかり考え直すことだと理解している」と述べるにとどまった。
中川氏はそのほか、オプジーボの類薬に当たるキイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)の薬価の問題にも言及。
キイトルーダは12月19日、悪性黒色腫に続いて、PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対する効能・効果について薬事承認された。オプジーボはセカンドラインに使用するが、キイトルーダはファーストラインにも使用可能だ。早ければ2017年2月にも薬価収載される見通し。この点も踏まえ、中川氏はオプジーボの患者からの変更だけでなく、対象患者の拡大が見込まれる上、今後も他の癌種でも効能・効果の拡大が検討されていることから、厚労省に対し、迅速な対応を求めた。

【m3.com】
by kura0412 | 2016-12-22 10:24 | 医療政策全般 | Comments(0)

薬価にメス、医療費抑制 毎年改定 品目など次の焦点

政府は20日、薬価制度の抜本改革に向けた基本方針をまとめた。2年に1回変えてきた薬の公定価格を毎年の改定に改めるのが柱だ。市場の実勢に近い価格に下げやすくし、医療費の抑制につなげる。日本医師会や製薬業界の反対が強かった毎年改定に踏み込んだが、改革がうまくいくかどうかは今後の具体策づくりがカギを握る。
塩崎恭久厚生労働相、菅義偉官房長官、麻生太郎財務相ら関係4閣僚が20日、会合を開いて基本方針を決めた。21日に開く政府の経済財政諮問会議で示し、新制度の具体策は中央社会保険医療協議会(中医協)を中心に決める。

薬価の毎年改定は2018年度から実施する。
公的保険を適用する薬の価格は国が決定権を持つ。今の制度では2年に1回見直す決まりだ。1度決まれば2年間、薬価(公定価格)は変わらないが、医療機関の仕入れ値に近い市場価格は後発薬の普及などで下がる傾向にある。
この差額は製薬会社や医療機関の収益となっている。超高額のがん治療薬オプジーボのように海外より2倍以上高い薬が登場し、政府は見直しの頻度を高める必要があると判断した。

今後は(1)対象品目(2)薬価見直しの条件(3)浮いた財源――の3つが焦点になる。
市場で流通する医薬品は2万~3万。対象品目を巡っては、日本医師会の横倉義武会長が今月14日の記者会見で「オプジーボや外国に比べて高いものは一定の理解をせざるを得ない」としつつも、品目は限定すべきだとの認識を示した。
政府の経済財政諮問会議の民間議員は全品目を対象にすべきだとの立場だった。しかし、最後は医師会などに配慮せざるを得なかった。
もう1つの焦点になる毎年改定の条件として、基本方針は実勢価格と薬価の差が大きいことを盛りこんだ。この条件次第で品目は大きく変わる。厚労省が15年に実施した2年に1回の医薬品価格調査(速報値)では実勢価格と薬価の差は平均8.8%だった。単純計算で年間の下落率は5%弱だ。例えば、毎年改定の条件を5%以上の価格差とすれば、対象は大幅に狭まる見通しだ。
毎年改定で浮いた財源の扱いも現時点では不透明だ。医師会は薬価の引き下げ財源は医師の技術料など診療報酬本体に上乗せすべきだとの立場だ。医療費の伸びを抑制して、財政再建につなげる必要がある。

【日経新聞】
by kura0412 | 2016-12-22 10:18 | 医療政策全般 | Comments(0)