2015年 09月 15日 ( 1 )

ワタミが介護事業譲渡

ワタミの介護事業に同業が手を挙げないワケ

居酒屋チェーン「和民」などを経営するワタミは9月10日、介護事業「ワタミの介護」の譲渡を協議していると発表した。
ワタミは、2015年3月期で連結売上高は1553億円、連結最終損益が126億円と、2期連続の赤字を計上した(前期は49億円の赤字)。こうした厳しい財務状況から、2015年3月期の決算短信で初めて、「継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております」と記載された。
2016年3月期の第1四半期も、低迷は続いている。連結売上高は前年同期に比べて12.5%減り、経常損益は12億4500万円の赤字となった。自己資本比率は6.2%まで落ち込んでいる。
創業者である渡邉美樹氏(現自由民主党参議員)が度々メディアに取り上げられた効果もあり、ワタミは一時、外食産業や介護事業で成功企業と目されていた。しかし、今のワタミには継続企業の前提(ゴーイング・コンサーン)に注記が付く状態が続いている。

稼ぎの柱だった介護事業を売却へ
業績不振の影響は、金融機関との契約にも及んだ。これまでワタミは金融機関と財務制限条項付きの契約を結んでいたが、業績不振でこの条項に抵触。そのため、今年7月には「連結ベースの純資産額を2015年3月期末に対して100%以上維持する」との主旨に変更した。純資産を維持するには、黒字化が必須であり、そこで浮上したのが介護事業の売却とみられる。

ワタミの介護は、介護付き有料老人ホームの「レストヴィラ」など112施設(6月末現在)を展開。2015年3月期で売上高354億400万円、営業利益は23億9900万円の黒字だった。
今でこそ、「ブラック企業」との批判のあおりを受けて入居率は70%台に落ち込んでいるが、かつては入居率は9割台を維持していた。2013年3月期には54億3800万円の利益を出し、ワタミグループの中で稼ぎ頭だったのだ。
今年6月の株主総会後のインタビューで清水邦晃社長は、「金融機関などから売却の話を出されるが、その予定はない」と語っていた。だが水面下では、売却に向け模索していたようだ。ある介護大手の幹部は「今年2月頃に買収を打診されたが、断った」と明かす。
今回、ワタミの介護買収に手を挙げているのが、損保ジャパン日本興亜など「異業種参入組」で、大手介護からは関心を示す声すら聞こえてこない。なぜなのか。

有料老人ホーム業界は競争が激化
その一つが、同業の多くは有料老人ホーム事業の将来性を不安視しているからだろう。有料老人ホームは既に参入企業が多くいて、都市部を中心に料金やサービス内容で競争が激しくなっている。また、有料老人ホームよりも相対的に低額で、バリアフリーの建物に主に賃貸借契約で住み、介護サービスを外部の業者からも受けられる「サービス付き高齢者向け住宅」の普及も、競争環境を一段と厳しくしている。
利用者が入居する際の年齢の高齢化も、懸念材料だ。これまでの有料老人ホームは、高額な入居一時金を支払った上で利用料を月々支払うタイプが主流だった。だが、高齢になってから入居する人が増え、入居一時金なしで月額利用料を支払うタイプを選ぶ人が増える傾向がある。人員を配置し、設備投資も必要な有料老人ホーム事業にとって、入居一時金は大きな収益の柱だったが、そのビジネスモデルは崩れつつあるのだ。
さらに、社会保障費の抑制による介護報酬の引き下げは今後も続くと見られる。一部の大手では、スタッフの配置を手厚くしたり、施設での看取りを強化したりして増収を目指す動きもみられるが、資本力が不可欠となる。
こうした経営環境の厳しさから、「大手介護の中には、有料老人ホーム事業の売却に動いているところもある」(介護大手幹部)ほどだ。

買収による現場の士気低下も課題
もう一つ、同業が手を出さない理由として、前述の介護大手幹部が挙げるのが、「現場のオペレーションや経営方針などの相違」だ。ワタミの介護は、渡邉美樹氏の強いリーダーシップの下で拡大してきた。こうした動きは同業他社から見れば「扱いづらい」(大手幹部)というわけだ。
いちよし経済研究所企業調査部第二企業調査室の永田昌寿・主任研究員は、「こうした問題は介護業界ならではと言えるかもしれない。利用者への説明と従業員のモチベーションの維持が重要だ」と話す。
実際、ワタミもかつて買収をめぐり“苦い思い”をしている。2005年に「アールの介護」を買収した際に、アールの介護のスタッフの多くが、社風の違いを理由にワタミを去ったという話もあるからだ。

ワタミは、今回の売却先に対して、(1)サービスの質の維持、(2)従業員の雇用の確保、(3)食事はワタミのサービスを利用する──といった条件に加え、経営理念の継続を求めている。
「売却先に介護事業をこれから手掛けていくような企業を選べば、介護の現場スタッフにとっては、主導権を取りやすいだろう」と永田主任研究員は話す。
ワタミの介護は、今期から落ち込んだ入居率を高める施策を打ち始めた。
広告に頼る入居者の獲得から、各施設の入居相談員を増員し、医療機関からの紹介による入居を強化している。また、看護師が常駐する「ナーシングホーム」やサービス付き高齢者向け住宅、低価格帯のホームを展開するなど、様々な取り組みを始めてはいる。

ただ、ワタミのこうした動きを「遅すぎる」と見る業界関係者は少なくない。
2004年の介護事業参入から10年余り。おいしい食事と懇切丁寧なケアを売りに介護業界で一躍名をはせたワタミの介護だが、外食同様、時代のトレンドに取り残された感も否めない。新たな買い手の下で、培ってきたサービスを継続して提供できるのか、まさに瀬戸際に立たされている。
介護事業の売却額は不明だが、200億円程度と見積もられている。
その収益があれば、2016年3月期に3期ぶりの黒字化達成の可能性は高まる。だが、主力事業の外食では、依然として売上高や客数は前年割れが続いている(7月のみ既存店の客数は前年同月比を上回った)。介護事業が思惑通りに売却できたとしても、予断を許さない状況に変わりはない。

【日経ビジネス・河野紀子】




この記事は介護はまさにビジネスという一面を見ることができます。
それが正しいとか誤りとかいう議論は一旦おいて置いておいて、歯科もそのビジネスの中にいることを再確認する必要があるようです。ちなもにワタミの介護の売りは配食サービスです。
by kura0412 | 2015-09-15 16:07 | 介護 | Comments(0)