2008年 01月 05日 ( 1 )

服が小さい

社説:社会保障 「内なる国防」を固めよ

社会保障全体が転換期を迎えている。昨年は、年金不信、医療では医師不足、介護ではコムスン問題が起き、積年のウミが噴出した。制度疲労もあろうが、それだけで片付けられない。
虫の目から鳥の目に転じてみると、いまの社会保障のシステムが、人口減少と超高齢社会に直面し、持続可能かどうかが突きつけられている。
どんな世であれ、社会保障の課題を突き詰めれば、負担と給付のシーソーゲームに行き着く。いまの政策を続けていけば、将来どんな負担と給付になるのか。私たちは立ち止まって考える地点に来ている。
グラフを参照していただきたい。厚生労働省のデータをもとに、縦軸に国民所得に占める社会保障給付費の割合、横軸に高齢化率を置き、欧州先進国と比較してみた。

◇「服」が小さい
2025年の日本は、高齢化率30%を超え、国民所得に占める社会保障給付費の割合は26%となる。給付費割合は現在の水準より2ポイント高いだけで欧州諸国の今より低い。少子高齢化があまり進まない米国はこの際除外する。
グラフから読み取れるのは、社会保障に関する限り、わが国はすでに「小さな政府」を実現し、欧州に比べると社会保障は将来も「低負担、低給付」ということだ。 財政再建路線がいや応なく続く中で、社会保障費のパイはあまり変わらないのに、高齢者だけは超スピードで増える。その結果、パイの食い合いから、現在の給付は維持できなくなることが当然予想される。
この状態は、年を重ね体形がどんどん変わっているのに、相変わらず小さいときの衣服で我慢せよ、と言っているのに等しい。
これまでの社会保障の議論は、改革を放置したら社会保障費はこんなに膨れるので、改革によってこれだけ抑えられるという財政論に偏重していた。将来、負担と給付がどんな水準になっているかの視点はないがしろにされてきた。
20年後も窮屈な服を我慢して着続ける社会保障のかたちでいいのかどうか。その可否を選択することは、私たちが目指そうとする国のかたちを決めることにも通じる。
 今年は衆院選が行われるだろう。国も政党も、将来の社会保障の姿についてグランドデザインを描いて提示し、国民的議論を巻き起こしてほしいものだ。
仮に優れた仕組みを作ったとしても、システムを支える人材や財源がしっかり底支えしていなければ、何事も思うようには稼働しない。だから、制度論を抜き出して議論するだけでは十分ではない。
制度の持続可能性を高める改革はもちろん必要だが、より根源的に社会保障をうまく機能させるには、同時に、かかわっている人の力を生かすこと、過不足なき財源という両輪が必要となる。人に目配りを欠き、財政的裏付けのない政策は、いま起きている問題も解決できないだろう。
国のかたちや社会保障のあり方を議論するとき、社会保障が経済の足を引っ張っているかのごとき論調がまかり通っている。本当なのだろうか。
社会保障には、セーフティーネット機能のほか、内需拡大機能があり、経済を引っ張りあげ、底支えする機能を持つという説を唱える人もいる。
財政再建は避けて通れない道であるが、社会保障が国民経済に与える効果をどのように考えるかによって、財政再建のシナリオも変わってくるはずだ。そのあたりの精緻(せいち)な議論が必要である。
福田康夫首相は、社会保障について議論する「国民会議」の設立を明らかにした。メンバーは有識者、経済団体、労働組合の代表という。年金財源など複雑に利害のからむ当面の問題での合意づくりも必要だが、目線を遠くに据え社会保障の負担と給付のあり方もぜひ議論してほしいものだ。
せっかく国民会議と銘打った舞台だ。マクロの姿をミクロに移し替えたとき、国民が実際に受けるサービス・給付がどうなっているのかの論議は欠かせない。
社会保障には「内なる国防」という言い方がある。内も外も「国防」がしっかりしていないと国は危うくなる。目指すところは社会の総合力を高める社会保障の質と量でありたい。

【毎日新聞 2008年1月5日】 



服が小さいですか、歯科の場合はもう20年以上小さな服、それも古い服のままで、継はぎだらけです。
しかし今回のように一部マスコミの医療への論調が、ただ抑制というだけでなく、少しずつ変化してきています。しかし、服が小さいからといってダダッコのように要求しても新しい服は着れません。
by kura0412 | 2008-01-05 12:09 | 歯科 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラーを片手に歯科医師の本音

回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。

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