医師会は圧力団体ではなく「命と健康をあずかる団体」ならば・・・

医師会は圧力団体ではなく「命と健康をあずかる団体」、会長が反論

日本医師会は、その政治力と、政策提言能力には定評があり、日本最強にして最後の「圧力団体」と呼ばれる。しかし、日本医師会の会長は「圧力団体ではない」と反論する。医療改革や診療報酬について聞いた前編に続き、日本医師会の横倉義武会長のインタビューをお伝えする。

「圧力団体」というイメージを払拭したかった
──横倉さんが会長を務める日本医師会(=日医)は、その他の業界団体が力を落とし、存在感を薄めていく中で、日本最強にして最後の「圧力団体」とも呼ばれています。政官界への政策提言力の強さには定評があり、一強状態となっている安倍政権でさえ、その存在は無視できません。しかも、横倉会長は連続4期当選で、坪井栄孝第15代会長(1996~2004年、元世界医師会長)以来、凋落を続けていた日医に勢いを取り戻し、近年まれに見る盤石な基盤を持つ会長と見られています。

横倉 そんなことはないと思いますが(苦笑)、私が医師会会長になって一番やりたかったことの1つに、日医の持つ「圧力団体」のイメージを払拭したかったというのがあります。

メリットをうまく伝えられず会員数は頭打ち
確かに日医は、下部組織として47都道府県医師会、全国891の郡市区等医師会を持ち、現在17万人が会員となっています。しかし、医師免許を持った人が約30万人程いるので、60%程度の加入率なんです。1916年(大正5年)に北里柴三郎博士によって創立されたときは、3万人にすぎない組織でしたから、そのときと比較すれば大幅に伸びていますが、頭打ちになっているという側面は否定できません。
背景には、今の若い医師や医学生が、医師会の会員となることに疑問を感じていることがあります。メディアからは、「政治を裏で操っている圧力団体」というイメージをつけられてしまっていますし(笑)。でも、一番の原因は、医師会の会員となる意義を若い医師にうまく伝えてこられなかったことだと感じています。
例えば、学問的な部分は学会を中心にしてやっているんですが、医師会には生涯教育制度というのがあって、組織的に日々進歩する医学を学んでいます。これは若い医師にとって非常に有意義なものです。
もう1つのメリットとして、各地域で連携して顔の見える関係が作れるということもあります。どういう医師が、どういう力量をもって診療を行っているのかといった情報を得ることができるわけですね。また、行政とのやり取りについてもスムーズに進めることができます。
医師個人という点では、医師年金制度があります。民間では最大規模ですし、国民健康保険組合も持っていますので、健康保険に入ることもできるのです。

──日医に「政治を裏で操る圧力団体」としてのイメージがついたのは、何かきっかけがあるのでしょうか。診療報酬改定時には、「厚労族議員」と呼ばれる政治家がプラス改定を目指す厚生労働省と共闘し、官邸や財務省と丁々発止の争いを繰り広げることはよく知られています。実質的な有権者の年齢層を考えれば、族議員の動きは当然ではありますが、やはりここまで発言力のある団体は他に見当たりません。

批判の声をいろいろ頂戴していることは、われわれも承知しています。しかし、「日医の実態とは乖離しているな」というのが本音です。日医は、決して圧力団体ではありません。
圧力団体と呼ばれるようになったのは、日本国民全てが「公的医療保険」に加入する「国民皆保険制度」が全国的に整備された際に、一致団結して戦った歴史を指しているのだと思います。1961年のことです。それまでは「自由診療」といって、診療側が診療費用を勝手に決めることができたので、医師によっては「金持ちしか診ない」という時代がありました。それを平等にしたのが、国民皆保険です。
実は国民皆保険がスタートするとき、「高い薬を使ってはいけない」といった制限があったのですが、日医として「制限医療はすべきではない」という論陣を張り、「1日保険診療をしない」「保険医の辞任届けを全国的に提出する」といった対抗策で、徹底抗戦したことがありました。
実際は、保険診療こそしなかったものの、通常診療は全部やっていたのですが、マスコミは、「国民の健康を人質にとるのか」とわれわれを批判した。“喧嘩太郎”の異名を取った武見太郎第11代会長(1957~82年、元世界医師会会長)の時代です。
武見先生は、外相や総理大臣を歴任した吉田茂と親戚だったので、政治的な力を非常にお持ちでした。私は1度だけ、武見先生の講演を聞きに行ったことがありますが、オーラが違った。今の日医執行部で武見先生に会ったことがあるのは、私だけになってしまいましたが(苦笑)。
いずれにしても、そのときにマスコミともかなりもめて、かつ一歩も退かなかったことが「圧力団体」としてのイメージを決定づけたようなところはあります。

かかりつけ医の拡大に注力した
──横倉さんが会長に就任して以降、ずいぶん医師会が“開かれた”感はあります。以前は、閉鎖的な雰囲気で何をしているのかよくわかりませんでしたが、イメージアップのキャラクター「日医君」ができたり、メディアでも積極的に発信なさっているせいか、明るくなったように感じます。

今、私は4期目ですが、日医の持っていたイメージに変革をもたらし、医療制度の改革を目指すには、これだけの年数が必要でした。
医療制度でいえば医療提供体制の改革、具体的にいえば「かかりつけ医」を広めることに注力してきました。かかりつけ医とは、「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」です。日常的な診療や健康管理などを家族ぐるみで行ってくれる医師です。
入院医療は、高度急性期、急性期、回復期(リハビリテーション)、慢性期の4つのカテゴリーに分かれていて、高度急性期と急性期の改革はだいぶ進みました。日本の場合は「介護」という優れたパッケージがあるので、今は慢性期の医療と介護との垣根をできるだけ低くしようとしています。
そうした改革と前後して、日医の中から「もっと患者さんに寄り添う医療を定着させなくては」という声が上がり、うまれたのが「赤ひげ大賞」です。地域医療の大切さをアピールする事業として創設されたもので、「地域に密着して人々の健康を支えている医師5人」に毎年1回、贈られます。
今年で7年目ですが、表彰された医師からは、「総理大臣賞をもらったような気分だ」という感想をいただいています。事実、安倍晋三首相にも出席いただいたこともありますし、皇太子殿下にもご来賓いただきました。

診療費の取りこぼしを防ぐためのIT化を進める
── 一方で、開業医の中にも格差が生じています。儲かる病院かそうでないかは、医術以外の能力、例えば場所や信頼感など総合的な要因が背景にあるとは思うのですが。

そうですね。難しい問題ですが、少なくとも、診療費の取りこぼしがないようにはしたいと考えています。2019年度予算には「ICT化促進基金」が300億円ついています。オンラインでの資格確認(マイナンバーカードのリーダーを医療機関に整備する際の補助)と、標準化された電子カルテの普及を促進させるための費用です。
これまでは月末にならないと、被保険者の保険証が使用できるか分からなかったため、現場では「診療報酬が支払われないのではないか」という不安が少なくなかった。中には、同じ保険証を持って1日に何ヵ所も医療機関を回り、薬を入手して、ネットで転売していたという悪質なケースも確認されています。しかし、機械を導入することで、そうした事例を防げるだけでなく、医療機関が診察費を取りこぼすといったこともなくなります。

都市部と地方で格差,過重労働解消が必要
保険外診療で多額の利益を得ている病院も都市部にはありますが、安全性・有効性が確認された医療は保険診療で行うべきです。「混合診療」は経済格差が医療を受ける際の格差に直結するのでよくない。医療の本質は、公的な医療保険でカバーすべきであると考えているからです。
そのためにも、現場の過重労働を減らさなくてはいけない。人を増やすだけの診療報酬の手当てがなされていないので、地域医療を支えるために相当な時間外勤務がなされているのが現実です。
働き方改革の一環として、時間外勤務を抑制していこうという議論が始まっていますが、その人件費に見合うだけのお金の負担については、一切、話し合われていません。今年、議論しなくてはいけない課題の1つです。
私たちは、あくまで国民の皆さんの命と健康をあずかる団体だと受け止められるようにこの8年、努力をしてきたつもりですし、今後、国民の皆さんにもそう理解をいただきたいと考えています。

(DAIAMOND ONLINE)



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by kura0412 | 2019-01-31 09:35 | 医療政策全般 | Comments(0)

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