社会保障費ぶれる推計

四半世紀で160兆円も減 社会保障費推計なぜぶれる

年金、医療、介護などの給付に将来いくらかかるのか。政府は5月に「2025年度に今の2割増の140兆円が必要」との最新の推計をまとめたが、過去を振り返ると推計は下方修正の繰り返しだった。1994年には2倍以上の「300兆円超」との推計も。社会保障制度の持続性を測るための重要な推計がなぜこんなにぶれるのか。

下方修正の歴史
「団塊の世代」が全員75歳に到達するのが2025年度。この年の社会保障給付費の推計は、年金、医療などのあり方を検討する上で重要な基礎データになる。
ところが5月中旬に最新推計を説明した厚生労働省の担当者は「推計は相当程度の幅をもってみる必要がある」と釈明めいた言葉を口にした。
実は「25年度の推計」は下方修正の歴史だ。1994年の300兆円超が、2000年には200兆円超まで減額。その後も06年に約160兆円、12年に約150兆円と新たな推計が出るたびに引き下げられてきた。
直接の理由は日本経済の見通しが変わったためだ。将来の給付費の必要額は経済成長に関する推計を基にはじく。賃金や物価が上がると年金額や診療報酬が上がり給付額を押し上げるからだ。
94年の推計では2000年度までの国民所得の伸び率を平均4~5%、それ以降は3~4%としていた。この結果、25年度に300兆円を超す推計ができあがった。
これに対し最新の推計は名目国内総生産(GDP)の伸びを年1~2%台として計算。しだいに落ちた日本経済の成長力を反映させたことが、四半世紀で推計額が約160兆円も減った理由だ。
今回の推計は成長シナリオ(3%前後)と基本シナリオ(1~2%台)の2つある内閣府の見通しのうち保守的な基本シナリオをメインにした。ただそれでもいずれ下方修正される可能性がある。実際のGDPは00年度から15年度に0.7%増にとどまったからだ。

あえて「過大」に
ではなぜ推計方法を見直さないのか。政権が打ち出した成長率の推計を脇に置き、より慎重な独自の成長率推計に基づいた試算は出しにくい、というのが理由の一つ。
もう一つは「過大な推計」のほうが、何かと都合が良いという理由だ。
「見積もりが甘い」。今回の推計をつくる過程では財務省が厚労省にこうかみついた。医療技術の進歩で医療費が増える分などが未反映といった主張だ。厚労省は「医療の高度化による増加分は大きくない」と反論。最終的には留意事項として財務省の指摘を明記することで折り合った。
意見が対立したかのような両省だが、より少ない推計を求めなかった点で財務省と厚労省が向いた方向は実は同じだ。
財務省がさらに高額の推計を求めたのは、それを根拠に給付の削減を迫りたいからだ。特に技術進歩が原因で医療費が膨らむ構図に何らかのメスを入れるべきだと考えている可能性がある。
一方、厚労省は推計を下方修正していく構図のほうが、「効率化が効いている」と改革努力を主張できる利点がある。
同床異夢にみえる両省だが、思惑が一致している部分が一つある。
「『ポスト一体改革』の議論を始めないといけない」。最近、厚労省の幹部はこんな言葉を口にする。一体改革とは5%から10%への消費増税と社会保障の充実をセットで決めた「社会保障と税の一体改革」を指す。来年10月に消費税率を10%に上げた後でさらに改革が要るという意味だ。
高齢化で増える社会保障の財源を賄うため、「消費税率の一層の引き上げは避けて通れない」という声は財務省にも多い。そうであれば将来もっと費用がかさむ推計を出すことは「議論を前に進める上で必要なこと」(厚労省幹部)になる。
過大な推計には両省の思惑が込められている。その結果、負担増という形で割を食うかもしれないのは国民だ。
適切なデータを踏まえて高齢化で膨らむ給付にどう対応するのかを議論するのは必要なことだ。だが、過大に見積もった推計を基に増税の議論を進めるのであれば、官僚が都合の良い方向に国民を誘導するのと同じだ。

(日経新聞)



2025年問題に注目することは必要ですが、こうゆう検証をすることは大切です。
by kura0412 | 2018-07-17 17:01 | 医療政策全般 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラーを片手に歯科医師の本音

回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。

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