「入院・差額ベッド代・必要?」

入院「差額ベッド代」必要? 患者同意が前提、返還例も

個室などに入院した場合にかかる「差額ベッド代」。1日数万円になることもあるが、全額自己負担だ。実は、患者の同意がないと病院は差額ベッド代を請求できない。厚生労働省が病院に対し、「患者に請求してはならない」と通知しているケースを確認していこう。

■「同意が大前提」
差額ベッド代は4床以下の部屋で、一定条件を満たせば対象になる。全病床数に占める比率は2006年には17%だったが増加基調で、16年には約21%に達した。個室だと2割近くが「1日1万800円」を超える。特に都市部では高額な病床が目立つ。

健康保険が適用される医療費には、患者の自己負担上限額を定める高額療養費という仕組みがある。一般的な所得なら1カ月の医療費が100万円かかっても、自己負担は9万円弱だ。一方、差額ベッド代は全額自己負担。高額療養費を知っていても、差額ベッド代への不安から民間の医療保険に入る人も多い。
差額ベッド代は本来「患者の自由な選択と同意が大前提」(厚労省)。病院が患者に病室の構造や料金を説明した上で、患者が納得し同意書に署名をする必要がある。
しかし現実にはそうではない請求も多く、トラブルになってきた。長く医療問題に取り組む認定NPO法人「ささえあい医療人権センターCOML」の山口育子理事長は「今も年間100件前後の問い合わせがある」と話す。

厚労省も1974年から何度も病院側に通知を出してきた。最新の通知は今年3月。
(1)同意書による確認がない
(2)治療上の必要がある
(3)患者の選択でなく病棟管理の都合
――の3つの場合は差額ベッド代を請求できないと明記し、それぞれの例を挙げている。

(2)の「治療上の必要がある」例としては、手術後などで病状が重篤なため安静が必要な場合、がんの終末期で医師から個室を指示された場合など。こうした場合は「同意書を求めること自体が不適切」というのが厚労省の見解だ。ただし、手術後などでも「大部屋で大丈夫」と言われたのに、自ら個室を希望したのなら差額ベッド代が必要だ。
今回の通知では(3)の「病棟管理の都合」の例として初めて「他が満床なので差額ベッドの部屋に入院させた場合」という例を入れた。ただ、快適な療養環境を望む患者が同意書に署名すれば請求は可能で、「絶対に差額ベッド代を請求できないという趣旨ではない」(厚労省)。
一方、入院の必要があるのに「差額ベッド代が嫌なら他の病院に行ってください」というケースなどは、「個々の事情に即して判断する必要があるが、差額ベッド代の徴収は不適切」(厚労省)だ。

■返還ケース数多く
山口氏によると、「過去、不当な請求を受けた患者が厚労省の通知を病院側に見せ、差額ベッド代が返還されたケースは全国に数多くある」。厚労省の今年3月の通知はインターネットで「厚労省 保医発0305第6号」と検索すれば出る。このうち「12 特別の療養環境の提供」が差額ベッドの関連事項だ。
本来は病院が差額ベッド代を請求すべきでないケースでも、よくわからないまま同意書に署名したことにより、差額ベッド代を負担せざるを得なくなることもある。山口氏は「いったん同意書を書くことを留保して周囲に相談することも必要」と話す。困った場合は各地方厚生局やCOMLなどに相談する選択肢もある。

(日経新聞)
by kura0412 | 2018-06-30 15:20 | 医療政策全般

コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


by kura0412