財務省は官邸と経産省に「反撃」を始める

森友問題・佐川氏辞任で財務省は官邸と経産省に「反撃」を始める

3月9日、森友問題発覚時に財務省理財局長を務めていた佐川宣寿国税庁長官が辞任した。これで「財務省は森友問題で窮地に立たされた」といった見方があるようだ。しかし、本当にそうなのであろうか。元官僚であった筆者からすれば、財務省はむしろ身軽になったように見える。

佐川国税庁長官の辞任は“詰め腹”を切らされたというわけではない
3月9日、森友問題発覚時に財務省理財局長を務め、その後国税庁長官に昇任した佐川宣寿氏が長官の職を辞任した。
その理由として(1)理財局長時代の国会対応において丁寧さを欠いていおり混乱をもたらしたこと、(2)行政文書の管理について多くの指摘を受けたこと、(3)いわゆる「決裁文書」についての担当局長であったところ管理不行届きがあったこと、の3点が挙げられている。
あくまでも佐川氏本人からの申し出を受けての辞職であり、懲戒免職処分ではない。なお、国家公務員の辞職は任命権者である大臣の承認が必要であり、外局の長たる国税庁長官の任免については閣議を経る必要がある(筆者も総務省退職時には「辞職を承認する」との大臣名の辞令をもらって辞職している。ちなみにその時の総務大臣は麻生太郎氏であった)。
また、佐川氏は単に辞職だけではなく、3ヵ月の減給という懲戒処分も受けている。しかし、これは在職者を前提とした処分であり、辞職とは別のもの。したがって佐川氏には退職金はしっかり支給される。
要するに今回の辞職はあくまでも“本人の意思”によるものであって、減給処分についても「辞職したい」とする理由が理由だから、それを聞いてしまっては何かせざるをえないので減給といったところであり、引責のような彩りを添えてはいるが、実際には引責辞任ではない。
つまり森友問題やいわゆる「決裁文書」を巡って“詰め腹”を切らされたというわけではない、ということである。

財務省は佐川長官辞任で身軽になり官邸や経産省に反転攻勢!?
さて、今回の佐川氏の辞任によって「財務省は森友問題で窮地に立たされた」といった見方があるようだ。
しかし、筆者からすれば、何度も国会への招致を求められるもこれを拒否していた佐川国税庁長官を、“自らの辞任”という形で財務省から切り離し、ある意味で逃がして、財務省は身軽になったように見える。
では、その身軽になった財務省、これから何をすることが想定されるかといえば、一言でいえば反転攻勢であり、その矛先は野党ではなく、官邸であろう。
森友問題、安倍総理や昭恵夫人と、森友学園理事長の籠池氏との関係や、「総理の御意向」を忖度した国有財産の大幅値引きといったことが当初問題の核心とされてきた。しかし国会質疑での答弁者が国有財産管理を所管する財務省理財局長になると、野党からの追及の集中砲火は必然的に理財局長に集まるようになり、いつの間にか森友問題は“財務省の虚偽答弁疑惑問題”にすり替えられてしまった。
その答弁を中心的に担当したのが佐川氏であり、定期的かつ通常の人事異動であるにもかかわらず、理財局長から国税庁長官への昇任は安倍官邸を守った“ご褒美人事”とされてしまった(佐川氏を含め、直近の国税庁長官は4代続けて理財局長からの昇任であり、過去にも理財局長からという例は見られ、そうしたことからすれば特例的な人事でもなんでもないと言える)。
かくして財務省は野党のみならず“世論の批判”の標的にまでなってしまったわけであるが、この状態が続けば、森友問題は財務省の現場、つまり近畿財務局の担当職員による不正であると結論付けることができ、そうした担当職員や関係幹部職員に責任を取らせれば問題を収束させることが可能となる。
しかし、そうなれば財務省にとっては組織を揺るがす一大事であり、地位の低下、影響力の低下は避けられない。
しかも、それを望むのは他でもない官邸であり、その背後にいる経済産業省であろう。これまでも財務省と経済産業省は消費税増税をはじめとするさまざまな政策で対立してきた。
無駄な歳出の削減や税制の適正化を志向する財務省に対し、経済産業省はあの手この手で対抗、政務秘書官をはじめとする官邸の主要ポストや、安倍政権の重要政策を担当する内閣官房や内閣府のポストに経済産業省からの出向者等を次々と送り込んできた。重要ポストを奪われたのは財務省に限られない。また、安倍昭恵夫人付という不思議なポストにも経産省は出向者を送り込み、森友学園等との中継ぎ役を担っていた疑惑が持たれたことは記憶に新しい。

安倍政権の重要政策の中身を書いているのも経済産業省出身者である。
要するに経済産業省は官邸を使って自分たちの政策を実現、というより各府省に押し付けてきたわけであるが、それは経済産業省と官邸、安倍政権が一蓮托生であることを意味する。
従って、現官邸に矛先が向かうように仕向けられれば、経済産業省をその地位から引きずり降ろすことができる。
森友問題をめぐる反転攻勢はその絶好の機会というわけである。

財務省に理解のある麻生大臣は是が非でも守らなければならない
財務省はこれまで、国有財産の売却価格を大幅値引きした証拠となる文書、改ざんの疑いが持たれている国有財産の売却を決定した決裁文書の原本の公開を、存否不明として事実上拒んできた。
ところが、佐川氏辞任の翌日、3月10日になって、文書の書き換えを認める方針を固めたとの報道や、決裁文書の原本の写しを提供することが可能との報道が出るに至った。そして、3月12日には文書の書き換えを認めた。
これは、さんざんこの問題で野党や世論の関心を引っ張るとともに安倍政権のイメージを低下させた上で、適切なタイミングで全ての真実を公表することで一気に安倍政権に“これまでにないダメージ”を与えようという意図があってのことのように思われる。
つまり、ずっと“秘密兵器”を抱え、隠しておいて、今まさに発射ボタンを押そうということである。
しかしそうなれば、麻生大臣の進退にも直結してくるのではないかとの懸念は、当然財務省に生まれてくる。
なんといっても大臣、特に財務省に理解のある麻生大臣は、こちらも財務省と一蓮托生であり、麻生大臣の引責辞任ということにでもなれば、かえって自分たちの首を締めることにつながりかねない。
従って、財務省としては是が非でも麻生大臣を守らなければならない。そのためには、調べてみたら官邸の強い意向があり、現場の担当職員は半ば強制的にそれを汲んだ対応をせざるをえなかった、麻生大臣もあずかり知らぬことであった、といったように結論づける必要がある。
そこに至らせるための全省を挙げての調査であり、ノラリクラリの対応での時間稼ぎであったのではないかと考えられる。
もちろん、そうはいっても、財務省は「無傷でまったくお咎めなし」ということでは、国民が納得感を得られないばかりか要らぬ反感を買うことになりかねない。強い意向や強制があったとはいえ、「不適切な行為であった」として、一定の幹部職員等に対して戒告、厳重注意といった処分は行われることが予想されるが、財務省の屋台骨を揺るがすほどのものにはならないだろう。

一方、野党のみならず与党内からも財務省の対応を非難する声は上がっている。
そしてそれは、その段階では財務省の対応を巡って野党側が国会審議に応じることを拒否し、国会が空転したことによるものであるが、第2次安倍政権になって以降、官邸で決められたことを有無を言わさず押し付けられてきた自民党側としては、与党である以上直接的な批判はしにくいものの、絶好の反論の機会と捉えたとしてもおかしくはない。

「モリ・カケ疑惑」への対応を受けて昨年の自民党内は「ぐちゃぐちゃ」
そもそも、昨年のいわゆる「モリ・カケ疑惑」への対応を受けて安倍政権の支持率が急落して以降、自民党内は「ぐちゃぐちゃ」と言われるような状況になり、昨年の衆院選を経てもまだその状況は程度の差こそあれ続いてきたようであり、まさに「昨年の状況の再来」といったところにまで行く可能性はある。
加えて、ポスト安倍を見据えた派閥間の撃ち合いも断続的に続いており、不規則に出てくる閣僚や与党議員のスキャンダルはまさにその象徴である。そうなると、財務省批判に形を借りた官邸批判のみならず、伸張する麻生派への絶好の対抗策としての財務省批判といったものも出てくる。
この段階での佐川氏の国税庁長官辞任は、こうした動きをもすり抜ける、絶妙なタイミングを狙った、まさに「時宜」にかなったものであったように思われる。

以上、筆者の得ている情報等に基づく推論であるが、森友問題を巡る状況は霞が関内の対立と与党内の小競り合いが絡み合ったものであり、野党はそこに乗っかっているか振り回されているといったところである。政権に対する大きな打撃になり、今後の重要政策の在り方も変わってくるものと予想され、今後の進捗はいろいろな意味で要注意である。

(室伏謙一・DAIMOND ONLINE)



この問題は官僚制度の縄張り争いも複雑に絡み合っているように感じます。野党はそれに乗じて攻勢をかけていますが、官僚対政治との対立ならば何か落とし穴があるかもしれません。
by kura0412 | 2018-03-13 10:17 | 政治 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


by kura0412

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ミラーを片手に歯科医師の本音

回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。

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