人生100年時代

人生100年 伸ばせ「性格力」 大学・生涯教育に反映を

ポイント
○性格スキルはAIにも代替されない能力
○「真面目さ」が仕事の成果や所得にも影響
○幼児期だけでなく成人後も伸ばせる余地

「人生100年時代」という言葉がブームだ。震源地は英ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授らの著書「ライフシフト 100年時代の人生戦略」である。安倍政権もグラットン氏をメンバーに入れた人生100年時代構想会議を立ち上げ、政権の新たなキーワードである「人づくり革命」について検討を進めている。
人生100年時代においては、就業も80歳まで見据えることができるようになる。昨今の技術革新のスピードの速さを考えれば、我々が学ぶべき対象も大きく変化している。年齢に関係なく学び続けることが重要だし、機会をみつけて本格的な学び直しをすることが必要になってくる。リカレント教育(生涯にわたって教育と就労を交互に行うことを勧める教育システム)のあり方が重要な政策課題になっているゆえんである。

しかし、我々は何を学び直す必要があるのか。それは学校の教室で先生が一方的に教える新たな知識であろうか。単に知識の蓄積とその引き出しだけでする仕事であれば、高度な仕事にみえても将来はAI(人工知能)に代替されてしまうであろう。それでは、AIに代替されないような普遍的な能力やスキルとは何であろうか。
そのカギとなるのが「性格スキル」である。
性格スキルとは、心理学や経済学で「非認知能力」と呼ばれてきたものだ。性格スキルについては、筆者は2014年1月20日付の本欄で取り上げ、2月刊行予定の拙著「性格スキル 人生を決める5つの能力」で包括的に論じている。
これは心理学の世界では5つの因子(ビッグ・ファイブ)に分解できることがコンセンサス(合意)となっている。それらが組み合わさって性格が形成されていると考えるわけだ。「開放性」(好奇心や審美眼)、「真面目さ」(目標と規律を持って粘り強くやり抜く資質)、「外向性」(社交性や積極性)、「協調性」(思いやりや優しさ)、「精神的安定性」(不安や衝動が少ない資質)――の5つである。
中でも、「真面目さ」が職業人生に大きな影響を与えることがわかっている。
例えば、業績評価など仕事のパフォーマンスとビッグ・ファイブとの関係についてこれまで行われてきた多くの海外の研究をまとめて評価した、米テキサスA&M大学のマレイ・バリック教授らの研究によれば、仕事のパフォーマンスとの平均的な相関係数をみると、「真面目さ」は0.22に対し、「外向性」は0.13、「精神的安定性」は0.08、「協調性」は0.07、「開放性」は0.04となっており、関連の強さではビッグ・ファイブの中で「真面目さ」が一番高いことがわかる。
また、日本においても筆者らは経済産業研究所が実施したウェブ調査を使って分析し、「真面目さ」の代理変数である高校時の無遅刻は、その後の学歴を高め、初職および現職で正社員になりやすいことを示した。さらに、大阪大学の大竹文雄教授らは、同大学が実施した日米調査を利用し、男性の場合、日米とも「真面目さ」が年間所得を高めることを示した。
「真面目さ」と並んで職業人生に強い影響を与える性格スキルとしては、「精神的安定性」の側面の1つである「自力本願」(行動や評価を他人よりも自己に求める傾向)や「自尊心」が挙げられる。就業以前の自力本願や自尊心が強いほど、将来の賃金が高くなることがいくつかの研究で明らかになっている。例えば、米シカゴ大学のジェームズ・ヘックマン教授らも、青年時の自力本願と自尊心を合わせた性格スキルが高いほど成人以降の賃金が高くなることを見いだしている。
加えて、彼らの同じ研究では、性格スキルが賃金に及ぼす影響の大きさは対象者の学歴の違いとあまり関係がないことも明らかにしている。つまり、どんな学歴の人でも性格スキルが高まれば賃金が高まるという関係があるということだ。

さらに興味深いのは、「協調性」の職業人生への影響である。
先の大竹氏らの分析では、日本の場合、男性では年間所得に対し「協調性」が高いほど年間所得も高くなっているが、米国では男性、女性とも「協調性」が高いほど、逆に年間所得が低くなっている。米国においても、男性のみであるが、やはり「協調性」と賃金が負の相関関係であることを見いだしている研究がある。こうした日米の違いは、職場でも集団主義が強い日本と、個人主義が強い米国の違いを反映していると解釈できるかもしれない。
それでは、職業人生に大きな影響を与える性格スキルはいつ伸ばすべきであろうか。1960年代に米国で家庭環境に問題のある就学前の幼児に行われた支援プログラム「ペリー就学前計画」の実験は、こうした就学前教育で幼児の性格スキルを伸ばすことにより、その後の人生に好影響を与えたことはよく知られている。こうしたエビデンス(証拠)が幼児教育無償化に向けた現政権の政策にも反映されているようだ。

しかし、性格スキルは大人になってからも、そして年をとってからも伸ばしていけることを忘れるべきでない。米イリノイ大学のブレント・ロバーツ教授らはこれまでの研究を総合し、「外向性」を「社会的優越」(自己主張が強い性向)と「社会的バイタリティー」(一人を好まず群れたがる性向)に分けた上で、年齢によるビッグ・ファイブの各因子の変化をみた(図参照)。
これをみると「社会的優越」「真面目さ」「精神的安定性」「協調性」は長い人生を通じて伸び続けることがわかる。一方、「社会的バイタリティー」「開放性」は10代で伸びるが、後の人生ではむしろ低下している。ビッグ・ファイブの中でも人生の成功で特に重要な役割を占める「真面目さ」「精神的安定性」「協調性」については、10代の伸びよりもむしろ、20代、30代の伸びが大きいことが着目される。
これは大人になってからも十分性格スキルを鍛えられることを如実に示すエビデンスだ。人生100年時代、性格スキルを伸ばせれば、どんな道に進もうとも人生が開けていくのだ。

それでは、就業期以降、性格スキルをどのように伸ばしていけばよいだろうか。実は、日本的雇用システムに性格スキルを鍛える仕組みが内在化されていたと考えられる。
例えば、転勤だ。転勤に伴い、仕事の難易度が上がり、よりリーダーシップを要求される役職を任されることも多いが、必要な職業能力を身に着けるとともに、新たな環境や苦労の中で粘り強く適応していく「真面目さ」が求められるし、養われるといえる。また、新たな人間関係を構築しなければならないという意味では、「協調性」と「外向性」も重要となる。
しかし、転勤も含め、職務、勤務地、労働時間が事前に限定されていないという無限定正社員システムを見直すのは働き方改革の根幹であるし、時代の流れ・要請でもある。転勤などに頼らずに企業の中でどう性格スキルを伸ばしていくのか。企業の人事部は大きな課題をつきつけられているといえるし、大学教育やリカレント教育にも性格スキルを向上させる視点を入れていくことが求められている。

(鶴光太郎・日経新聞)



人生100年時代を考えての歯科医療政策とは何があるのでしょうか。
by kura0412 | 2018-02-09 16:41 | 思うこと | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラーを片手に歯科医師の本音

回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。

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