高齢者対象の高血圧診療ガイドライン

高齢者対象の高血圧診療ガイドライン完成
JSH2014で曖昧だった部分にも系統的レビューを行い詳説

日本老年医学会は7月20日、「高齢者高血圧診療ガイドライン2017」(JGS-HT2017)を発表した。『日本老年医学雑誌』への掲載に先立ち、本日から同誌ウェブサイト(こちら)に、ガイドライン本文とその解説が公開されている。本ガイドラインの対象は実地医家としているが、誰でもダウンロードし閲読が可能だ。
わが国で最も普及している高血圧診療ガイドラインは、日本高血圧学会による「高血圧治療ガイドライン2014年版」(JSH2014)といえる。日本老年医学会が今回発表したJGS-HT2017では、JSH2014との整合性に配慮しながらも、降圧目標値や身体・精神機能低下など高齢者高血圧を診療する上で考慮すべき問題について新たに臨床的課題(CQ:clinical question)を設定し、系統的レビューを行ってエビデンスを検証し直した。
CQは全部で19題。高血圧治療の主目的である心血管疾患の発症予防だけでなく、認知症予防やADLへの影響をアウトカムとした視点も重視した。降圧下限域や降圧薬の減量・中止など、具体的な推奨や結論が得られない問題についても検証しており、例えばJSH2014では抽象的な表現にとどまり議論を呼んでいた「降圧は緩徐に行う」「認容性があればより低い(降圧目標)値を目指す」などについても、CQを立てて系統的レビューを行っている。

具体的な高齢者の降圧目標値は「65~74歳では140/90mmHg、75歳以上では150/90mmHgを当初の目標とし、認容性があれば140/90mmHg未満を目指す」であり、JSH2014と変わらない。
ただしJGS-HT2017では、「自力で外来通院ができないほど身体能力が低下した患者や認知症を有する患者では、降圧薬開始基準や管理目標は設定できず個別に判断する」ことを推奨。身体・精神機能が保たれている健常な高齢者と、認知症・ADL低下、フレイルを合併している高齢者での管理目標を明確に切り分けた。さらに、エンドオブライフにある高齢者への降圧治療に関しては「予後改善を目的とした適応はなく、降圧薬の中止も積極的に検討する」とした。
高齢者に限定した高血圧診療ガイドライン策定の意義について、執筆委員統括者を務めた大阪大学大学院老年・総合内科学教授の楽木宏実氏は、ガイドラインと同時公開された解説の中で、「フレイル患者、多数の合併症を持った患者、認知症合併患者などを考慮したガイドラインは極めて重要」と強調。その上で、年齢だけでなく個別の病態や療養環境への配慮、心血管疾患予防に加えて生活機能全般に対する視点が必要と指摘している。JSH2014と同様、JGS-HT2017も今後の新たなエビデンスに応じて適宜改訂する方針だ。
なお、日本老年医学会では高齢者の生活習慣病ガイドラインを順次発表しており、今回の高血圧は2017年5月の糖尿病に次ぐもの。今後、脂質異常症、肥満についても発表を予定している。

(日経メディカル)
by kura0412 | 2017-07-20 15:00 | 医療全般

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