「不採算で常設をやめようとした歯科口腔外科も」

当事者の証言(3)病院なくすとは言えない

熊本県を最大震度7が襲った昨年4月。熊本市民病院は天井などが崩壊。約310人の入院患者が転院を余儀なくされた。
あれから1年強。地元では市民病院の移転・新築計画が進む。ただ熊本市は人口10万人当たりの病床数が全国平均の1.7倍に達する。復興は大事だが医療費膨張の点で見るとどうか。記者(31)は現地に向かった。
一部閉鎖中の市民病院。近隣の熊本赤十字病院を訪ねると混雑をわびる貼り紙があった。市民病院に通っていた男性(64)は「早く再開を」と待ち望む。
市民病院の再建が決まるのは2度目だ。5年前、建設費133億円で建て替えを決めたが、資材の高騰などで209億円に膨れ、計画は凍結。そこに地震が起きた。新計画では約160億円かかるが、復興の補助金約90億円で一部は賄われる。
入院・外来患者数は2015年まで6年連続で減少。病床利用率を上げるため、移転後の病床数は3割減の392床だ。だが熊本市全体の必要病床数が25年に14年比で約2300床減とされるなか、過剰感は否めない。

再建計画づくりでは、医師の代表として県と市の医師会長が、診療科の編成や計画の文言に注文を付けた。
不採算で常設をやめようとした歯科口腔(こうくう)外科も、医師会の要望で復活した。地域のクリニックからの紹介率を引き上げ、来院数を増やしたい市民病院。人口減を見据えた「最適解」を探る議論は不足していた。

とはいえ、病床過剰の結果、患者の奪い合いが起きるのではとの不安も地元ではよぎる。
民間病院の院長は「市民病院と別の赤字病院を統合する話もあった」と明かす。別の院長は「開業医が中心の医師会は医師の代表だが、病院の代弁者とは思っていない」と計画の一部に反対を唱える。
熊本県医師会の福田稠会長は「3~4年かければ、市民病院の機能を他病院に振り向けることはできた」と吐露した。ただ復興に向け再建ありきの議論の中、「医師会の立場で病院をなくそうとはとても言えない」。
目先の治療か、10年先の医療体制か。社会保障費の膨張を食い止めたいと考え、これまで取材してきたが、震災の爪痕が残る地元を見て「将来の医療費のことも考えて」と単純には言い切れない惑いが残った。
新病院の建設予定地を散歩していた男性(70)が記者につぶやいた。「病院できる分には誰も反対せん。市にいくらお金があるのか知らんけど」

(日経新聞)
by kura0412 | 2017-06-29 14:55 | 歯科医療政策 | Comments(0)

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