既に歯科領域でも3Dプリンターで保険適用
2017年 02月 17日
「3Dプリンターで作成した骨格モデルは形成外科の手術を底支えしてくれる、なくてはならない存在」。国立成育医療研究センター副院長(医療安全・感染防御担当)感覚器・形態外科部長の金子剛氏はこう話す。
3Dプリンターの臨床現場での活用として最も進んでいるのが、患者のCTなどの検査画像を基にした臓器立体モデルの作成だ。3Dプリンターを用いることで、安価かつ迅速に臓器モデルを作れる。
臓器モデルは術前の手術計画やシミュレーションに有用性が認められ、「実物大臓器立体モデルを用いた手術支援」として、2008年に整形外科と形成外科の一部の手術で保険適用された(診療報酬点数は2000点)。2016年度の診療報酬改定では、四肢骨を対象にした2つの手術が追加され、現在は整形外科と形成外科領域の25手技で保険診療の対象となっている。
症例1・臓器モデルが有用だった下顎形成術の一例(金子氏による)
9歳女児。Goldenhar症候群に伴う下顎変形を生じており、顎2分の1個分ずれた状態で下顎の右奥歯が顔面の中央に位置していた。上下の顎の咬合(噛み合わせ)を改善する目的で狭窄した下顎の開大術を実施することになった。
手術では下顎の中心部からくさび型の骨片を採取し、これを下顎の右側の骨切り部に移植する計画だが、立体構造が複雑なため、くさび型骨片の切り込み角度をコンピュータ上でシミュレーションし、下顎の中央部から30度の角度が最適と判断。その後、骨格モデルを使って実際に切除と再建のシミュレーションを行った。Bの骨片を中心角30度にし、ABCDと並んでいた骨片をACBDとすることで下顎の再建が可能なものと判断。術前シミュレーションの計画通りに手術を行うことで、目的とした噛み合わせの改善を達成した。
実物大の立体モデルが手元にあることで、「術前にインプラントや人工骨が患者の骨格に適合するかどうかを確かめられる」(藤井氏)。さらに、同氏らは骨格モデルを滅菌処理して手術室に持ち込み、手術を施行しながら、骨格モデルを使って術野では見ることのできない部分の構造を再確認している(症例2)。
【日経デジタルヘルス】