医科歯科大・大学の課題は知名度向上と基礎研究の支援

「学長企画室」と「統合戦略会議」で改革進む-烏山一・東京医科歯科大副学長に聞く
大学の課題は知名度向上と基礎研究の支援

小規模大学(生徒数5000人以下)の大学ランキングで世界12位(日本1位)、医学部生の医師臨床研修マッチング(中間公表)では、応募者数が3年連続1位となるなど人気、実力ともに日本の医学部のトップを走り続ける東京医科歯科大学。近年は大学改革の在り方を巡っても注目を集める。
 理事・副学長(企画・大学改革担当)の烏山一氏は、吉澤靖之学長の就任に伴い設置された「学長企画室」と「統合戦略会議」の2つの組織が改革を牽引していると説明する。改革の状況や東京医科歯科大の将来像を尋ねた(2016年11月18日にインタビュー)。

――2014年4月の吉澤靖之学長就任以来(2017年4月より2期目に入る予定)、矢継ぎ早に大学改革が進んでいるように見えます。現在の学内の運営体制についてご説明ください。
2014年度に新たに設置されたのが、学長直属の学長企画室と統合戦略会議の2つの組織でした。学長企画室は学長がやりたいということを最初に取り組む組織で、従来は総務企画課が担っていたガバナンス関連の案件を直接担当しています。スタッフは4-5人で、若手中心。室長はまだ40代で、女性が多いのも特徴です。専属のチームを作ったのが、改革の肝だったと思います。
一方の、統合戦略会議は理事同士で情報共有をしっかり行うための会議体で、当初は月2回、現在は月1回のペースで開催しています。国立大学法人法では、理事が参加する役員会の設置が義務づけられていますが、議論をすると言うより最終決定機関という色合いが近いです。
統合戦略会議はざっくばらんに議論をすることが目的で、議事録も取りません。ゼロからどんなことをやろうかという話ができます。メンバーは理事5人、副学長2人、学部長2人で、学長と監事は“陪席”という立場です。基本的に学長はしゃべりません。法人化後には学長の権限は強化されましたが、だからこそ我々の考えにも耳を傾けようとしているのだと理解しています。

――2016年3月には「統合教育機構」と「統合国際機構」が設置されましたが、どのような組織でしょうか。
どこの大学でも同じでしょうか、大学組織は増築、増築で、全体を俯瞰することができづらくなる面があります。国際関連の組織も複雑な構造になり、リソースも分散していました。私が機構長を勤める統合国際機構は(1)留学生、海外からの研究者を支援する「Global Gateway」、(2)タイやチリ、ガーナなどの世界各地にある本学の海外拠点、(3)「グローバル企画・推進部門」――の3つの部門を柱に構成されています。
機構設置に当たってはまず、人と建物をまとめようとしました。これまでは海外から来た留学生や研究者がしばしばたらい回しに遭っていましたが、「Global Gateway」としてワンストップで対応できるようにしました。こちらは海外に日本人学生を派遣するときの窓口にもなります。
「グローバル企画・推進部門」はさらに6つのチームに分かれており、外国人向けの書類や生活情報などのバイリンガル化を進める「グローバル環境推進チーム」では、学内や病院の標識の英語併記などにも取り組んでいます。2020年の東京五輪・パラリンピックに備えて、英語の問診票なども製作中です。
統合国際機構の専任教員が9人でうち3人が外国人です。事務職員にも外国人がおり、新人採用では英語を喋れる人を優先するようにしています。

――「統合教育機構」はどのような取り組みを進めていますか。
入試から、学部、大学院、生涯教育まで一貫して取り組むことを目指しています。7つのチームがあります。
アドミッション(入試)チームでは、一部の学科で行われていた推薦入試を全学科に広めます。帰国生入試やバカロレア入試も2018年ごろから行うつもりです。東京医科歯科大は知名度ではまだまだ十分ではなく、特に関西以西では名前が知られていません。今は医学部というだけで関心を持ってもらえる状況ですが、近いうちにそうはいかなくなるでしょう。これから若者の人口がさらに減って、いかに良い学生に入ってもらえるかが、大学の生きる道になると思います。大手予備校の元職員を特任助教として雇用して全国の高校に本学を売り込んでもらっています。
2014年度には「スーパーグローバル大学創成支援(タイプA)」に採択されましたが、英語での教育も重要になります。ただ、医療系の場合は、最終的には患者のほとんどが日本人ということもあり、医学教育は日本語でやらざるを得ない。教養科目が英語でやるのに一番適しており、「教養教育チーム」「グローバル教育推進チーム」が連携して、科目作りを進めています。

――「統合教育機構」設立で新たに立ち上がったIRチームはどのようなことをしているのでしょうか。
IRはInstitutional Researchの略で、データに基づいて改革をするためのチームです。これまでは“勘”みたいなもので教育が行われた面もありますが、今は学生もデータを見せないと納得しない。継続的な学生の指導にはデータが必要ですが、これまではばらばらに管理されていました。全学生を対象に、入試から教養、学部、大学院までの成績やさまざまな活動、卒業後の進路などを個人ごとにデータを蓄積し、教育改革・改善に役立てて行く予定です。

――「統合機構」を作ったのはどのような事情があったのでしょうか。
ご存知のように医科歯科大は小さな大学で、医療系に特化しているとはいえ、大学院では2つの研究科、学部も医学部、歯学部があり、研究所も2つあります。また、新しいことをする際には、文部科学省の「○○プログラム」という支援を受けることが多いですが、その度に受け皿となる「○○センター」を作り、いくつもセンターができてしまうということになりがちです。結果として、大学全体を横断するような取り組みが必ずしもできていませんでした。
そこで、機構を作ってグランドデザインを持ってやろうという考えになりました。これまでに教育、国際の2つの統合機構ができましたが、新たに「研究」と「情報」を作ろうとしています。

――改革の成果は出ているでしょうか。
学長が変わってからスピード感が増していますが、改革の成果はそんなにすぐ出るものではないと思っています。特に教育や研究といった分野は簡単には進まないのは当然です。こうした改革は自分たちで、無い知恵を絞って考えています。大学の改革案を考えてくれるコンサルタント会社もあり、この間も説明に来ましたが高いのですよ。とても使えません。そして何より、コンサルは最終的に効率化のために「人を切れ」「無駄を排除しろ」ということになります。しかし、それは果たして、大学の姿でしょうか。
もちろん変わっていくことは不可欠です。個人的な感想では、医療系の人は、普段から目の前の患者にどんどん対応していかなくてはいけないということで、いい意味でいい加減というか、環境の変化に柔軟だと思います。総合大学だと全学的な改革はなかなか難しいかもしれませんが、本学はどの人もベクトルが近くてやりやすいのだと思います。

――今後はどのようなことに力を入れていく予定ですか。
本学の課題は、知名度が足りないということが大きいです。そのため広報にも力を入れています。専任で5人、兼任で8人のスタッフがいます。英語でのプレス発表に力を入れたり、大学の取り組みを紹介する記者懇談会を定期的に開催したりしています。
新たに設置する統合研究機構では、若手研究者の支援に力を入れたいです。医学部以外では教授と准教授はそれぞれ独立して活動しています。若手でも自分のラボを持って研究ができます。医学部はなかなかそうはいきませんが、若手でもできる人には、時限的でもラボを持てるような仕組みを考えようとしています。専門医指向の高まりもあり、基礎研究に進む若手が減少傾向にあるので支援をしていくつもりです。

【m3.com】
by kura0412 | 2017-02-07 11:08 | 教育 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラーを片手に歯科医師の本音

回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。

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