『「医療のことに口出しするな」怒られたケアマネ』

「医療のことに口出しするな」怒られたケアマネ

「医療のことに口を出すな!」「家族に対して余計なことを言うな!」――。これらは、ケアマネジャーが開業医の先生方からよく浴びせられる言葉です。

在宅介護におけるケアマネジャー(介護支援専門員)とは、介護保険制度の利用者が住み慣れた住まいで継続した日常生活を送るために必要なフォーマルサービス(介護保険サービス)とインフォーマルサービス(介護保険外サービス)を組み合わせてケアプラン(居宅サービス計画)を作成し、各サービスの日時の調整やマネジメントまで行う役割を担っています。ケアマネジャーが仕事を行う上で苦労するのが、医療機関との連携。特に在宅医療を担う開業医の先生は、多くのケアマネジャーにとって敷居が高すぎる存在のようで、連携するにも数々の困難があるようです。

「お世話になっている先生にそのようなことは言えない」
先日、こんな事例がありました。褥瘡が発生している要介護5の利用者Aさんは、介護保険サービスとして訪問看護、訪問介護、訪問入浴などを利用していました。地域の診療所の主治医による訪問診療も月2回程度ありました。
ケアマネジャーのBさんがAさんの担当になって約2か月たった頃、訪問看護師からAさんの褥瘡の状態について相談がありました。「褥瘡の状態を主治医に診てもらっているがどんどん悪化している。主治医は皮膚科専門ではないので、『一度皮膚科の往診医に診てもらった方がよいのではないか』と家族に提案しているが、家族が『お世話になっている先生に対してそのような話は申し訳なくてできない』と拒否されている」とのことでした。
確かに、Aさんの主治医はとてもプライドが高そうな雰囲気で、普段の診察時に、Aさんの家族からも主治医に聞きたいことが聞けていない状況でした。「Aさん本人のことを思うとすぐにでも皮膚科の専門医に診てもらいたい……」。ケアマネジャーのBさんや訪問看護師がそう思っていても、家族の了承が取れなければ動き出すこともできません。
その後、Aさんは家族のレスパイト目的で介護施設のショートステイを15日間利用することになりました。Bさんと訪問看護師は、これはチャンスとばかりに、ショートステイを利用する間、施設に併設されたクリニックに褥瘡の状態も診察してもらえるよう、家族の了承を取った上で依頼。併設クリニックの医師と、施設の看護師がしっかりした褥瘡治療とケアを行ってくれたおかげで、自宅に戻ってくる頃にはAさんの褥瘡は回復傾向となっていました。
ところが、在宅生活に戻ると、見る見るうちに褥瘡の状態は悪化。このままではAさんに申し訳ないと思い、Bさんがついに勇気を出して主治医に「褥瘡の状態が悪くなっているので皮膚科の専門医に診察を依頼するのはどうでしょうか」と提案します。
すると主治医は、「医療のことに口を出すな!」「家族に対して余計なことを言うな!」とBさんに激怒しました。しまいには、主治医から家族に対して「今の担当ケアマネジャーを変更しなさい!」と指示して、家族はやむなく了承。Bさんは担当ケアマネジャーを外されることになりました。家族は、何も言えず主治医の言う通りにするしかなく、訪問看護師も申し訳なさそうにしていたようです。

医師に対する恐怖心が強いケアマネ
ここまで極端なケースではなくとも、冒頭のように医師から心ない言葉を投げかけられた経験を持つケアマネジャーは少なくなく、彼らは医師との関係に気を揉んでいます。利用者のことをどのように主治医に相談したらよいか悩み、結局主治医に言い出せないまま、結果的に利用者が不利益を被ってしまうケースは少なくありません。
もちろん、在宅医療を手がけられている先生方の多くはチームでの医療介護サービスの提供を大切にしておられますし、まだまだケアマネジャーの力量に問題があるのも事実です。しかし、特に介護職種からケアマネジャーになった方の場合、元々医師に対する敷居は非常に高く、医師に対して必要以上の遠慮や恐怖心もあるようです。そんな中、事例のようなことが一度でもあると、医師への恐怖心が倍増してしまうのです。
在宅医療を手掛けられる先生方には、ケアマネジャーなどの職種がこういった心理状態にあることを知っていただければありがたいと思っています。
今後、高齢者が住み慣れた地域で在宅生活を継続できるよう支援するためには、医師をはじめとした医療職種と介護職種、そしてケアマネジャーが何でも情報交換できるフラットな関係を築き、協働で支援していくことが欠かせません。それぞれの専門職が互いに笑顔で相談できる関係こそが、患者や利用者の笑顔につながるのではないかと思うのです。

【日経メディカル・樋口 昌克】



歯科医師も気をつけなければいけませんし、逆に医師に対しても同じようなケースもあります。
by kura0412 | 2017-01-14 09:58 | 介護 | Comments(0)