『伊勢志摩サミット「本当のテーマは」』

日本人だけが知らない伊勢志摩サミット「本当のテーマ」〜焦点は財政問題でも南シナ海でもない!
話題の中心は間違いなく「あの男」

財政問題でも南シナ海でもなく
来週に迫った伊勢志摩サミットの焦点は何か。財政問題? 中国が我が物顔でふるまう南シナ海? それともクリミア半島? 会議の参加者にとっては、そのどれでもない。首脳や官僚たちの話題をさらうのは「トランプ大統領の可能性」だ。
まず確認しておこう。サミットの議題とその結論は会議が開かれる前に、実はほぼ決着がついている。シェルパと呼ばれる首脳の個人代表たちが月に一度くらいのペースで会って、中身を詰めているのだ。
その過程で問題があれば、シェルパがそれぞれの国に持ち帰って譲れない論点と妥協点を絞り込む。そうやって落とし所を探り、開幕直前には合意の結論が見える状態にまでもっていく。
首脳たちが本番で何をするかといえば、シェルパたちが議論し合った論点を確認したうえで、最後のペンディング部分を固めるだけだ。会議の時間は実質、数時間程度である。そんな短い時間で世界のあらゆる出来事を語り合い合意に至るためには、こうした作業方式でなければまとまらない。かつここが重要なのだが、メディアにも見栄えする結論にはならない。
メディアが「財政出動で意見が一致するか」などと書いていても、知らないのはメディアだけで、実は結論と文書の書きぶりはほぼ決着が着いているはずだ。たとえば、ドイツや英国は財政出動に慎重だが、だからといって全体をぶち壊すようなマネはしないだろう。
開催国は持ち回りだ。今回、安倍晋三首相のメンツを丸つぶれにするような事態を引き起こせば、自分のところに議長が回ってきたときに揉めるのは目に見えている。「シェルパは何をしてたんだ!」という話にもなる。

日本が遅れているところ
そもそもサミットを大騒ぎしているのは日本だけ、という事情もある。欧米の首脳たちはG7サミットにかぎらず、実はしょっちゅう顔を合わせている。
たとえば今回、日本のメディアは安倍首相の欧州歴訪をサミットの下準備として大きく報じたが、オバマ大統領だって4月に欧州を歴訪し、キャメロン英首相やメルケル独首相らと会談している。単独会談だけでなく、国際会議などで複数の首脳が顔をそろえる機会も多い。
1990年代に私が新聞のブリュッセル特派員をしていたころ、欧州ではそれこそ毎月のように「サミット」という単語が新聞の見出しになっていた。欧米の首脳同士は電話会談も含めれば、月に数回は会談しているのだ。
だから伊勢志摩に首脳たちがやってきても、オバマやキャメロンにすれば「それじゃ先月の続きをやろうか」というノリなのだ。日本は残念ながら、まだこういうレベルに達していない。
なぜかといえば、国会事情があるからだ。安倍政権になってかなり改善されたが、なかなか首相が気軽に欧米に行けなかった。いきおい海外に行けるのは5月の連休期間中とか秋の国連シーズンくらいに限られてしまう。加えて、日本の新聞は基本的に日本を軸にして世界を眺めているから「首脳たちがそろって日本に来る」というと大騒ぎになる。
以上を踏まえたうえで本論に戻せば、サミットで本当に大事なのは、どうなるかわからない問題、まだ議論の形も結論も見えていない問題について、首脳たちがどう考えているのか、互いの腹を探るときである。それにはコーヒーブレイクやメディアにオープンにしない立ち話、食事会などが絶好の機会になる。それは官僚たちにとっても同じことだ。
今回でいえば、その焦点は間違いなく「トランプ問題」である。11月の大統領選結果そのものは予測しがたいが、それでもトランプ陣営の実態や力量を探る絶好の機会になる。
各国首脳はもちろん随行の官僚たちもそれぞれのレベルで米代表団に「トランプ陣営はだれが仕切っているのか」など質問を浴びせまくるだろう。もしもトランプが大統領になれば、世界は激変する。もしかすると来年のサミットさえどうなるか、予想もつかない。「中国を加えよう」と言い出すかもしれない。

世界で高まる「自国優先主義」
私は先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/48651)で「トランプ氏は日本にとって最大のリスク要因になった」と書いたが、トランプ問題は日本だけでなくサミット参加国を揺るがす猛烈な破壊力を持っている。
トランプ氏が日本やドイツ、韓国に対して米軍駐留経費の大幅負担増を要求し、応じなければ日韓の核武装を容認する立場を表明しているのはよく知られている。さらに環太平洋連携協定(TPP)に反対し、日本や中国の輸出品に高関税を課すこともほのめかしている。
「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げるトランプ氏が米大統領になれば、アジア太平洋のみならず世界の平和と繁栄を目指す枠組みを揺るがす。
現状を「トランプ」という変人が突然変異で出現した特異現象とみるのも正しくない。むしろ現れるべくして現れた世界の潮流とみるべきだ。
国際法を無視したロシアや中国の無法行為、それに刺激されたイスラム国のようなテロリストに対して「強い米国の復活」というキャッチフレーズと核心を突いた(!?)暴言の数々で米国民の気持ちをとらえた。
トランプ氏は「自分たちがしっかり城を築いて、強いアメリカを取り戻そう」と言っている。その姿勢は極右の国民戦線が躍進しているフランスや、欧州連合(EU)離脱論が勢いを増している英国にも通じている。
世界から一歩、身を引いた「自国優先主義」は世界的に強まっているのだ。この潮流は伊勢志摩サミットの議論にも影を落とすだろう。

「ところで、トランプは勝つのか?」
たとえば、南シナ海問題で各国は必ずしも一枚岩ではない。
欧州勢にとって中国は軍事的脅威でないから、経済交流で利益が得られるなら中国に甘い顔も見せる。実際、欧州勢は中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加した。
半面、欧州勢はロシアを警戒している。陸続きの欧州にとってクリミア侵攻は対岸の火事ではない。逆に、日本はロシアと敵対したくない。中国とガチンコ対決しているのに、ロシアとも対立するのは戦略的に悪夢だ。
日本はロシアと北方領土問題を抱えている。奪われた領土を返してもらいたい相手とケンカをする必要はない。日本にとってクリミアは対岸の火事なのだ。
サミット参加国が自由と民主主義、人権、法の支配、市場経済という理念と制度を共有していても、各国が国益優先なのはいまに始まった話ではない。だが無法がはびこった結果、自国優先主義が一段と強まっている。G7といえども合意形成は難しくなった。
トランプ氏はそんな時代の申し子である。だから焦点はトランプなのだ。オバマ大統領は広島で「核なき世界」を訴えるだろう。それは人類の夢であり、美しい。
だが広島でスポットライトが光る前、首脳たちは伊勢志摩でオバマの顔をじっと見て尋ねているに違いない。「ところで、トランプは勝つのか?」。このやり取りを報じるメディアこそが報道合戦の勝者だ。

【長谷川幸洋:ニュースの深層】
by kura0412 | 2016-05-20 15:00 | 政治 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラーを片手に歯科医師の本音

回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。

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