日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
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『薬剤師・薬局は今まで通りではいられない』

果たすべき役割が明確に示された2016年度調剤報酬改定
薬剤師・薬局は今まで通りではいられない
日本薬剤師会常務理事/中央社会保険医療協議会委員 安部 好弘氏

2月10日、中医協は2016年度診療報酬改定について厚生労働大臣に答申した。かかりつけ薬剤師・薬局の機能の評価や、いわゆる門前薬局の評価の適正化などが色濃く示された印象だ。中医協委員として議論を重ねてきた日本薬剤師会常務理事の安部好弘氏に、改定に込められたメッセージについて聞いた。(聞き手は本誌編集長、佐原 加奈子)

─中医協委員の立場から、2016年度調剤報酬改定の印象は、いかがですか。
正直なところ、非常に厳しい議論でした。
財源が限られた中での改定であり、規制改革会議や財政制度等審議会で様々な課題が示されていたことに加え、昨年起こった薬歴未記載問題の影響は少なくありませんでした。
残薬の解消や疑義照会など、これまで薬剤師が一生懸命、取り組んできた成果をいくら説明しても、「やるべきことをやっていないじゃないか」と言われてしまい、こちらの主張が聞き入れられず難渋する局面が何度もありました。
しかし全体としては、薬剤師・薬局に求められる機能や姿などについての議論がなされ、メッセージ性の高い改定になったと思います。2025年に向けて日本の医療全体が病院完結型から地域完結型へとシフトしようとしています。地域医療が変われば薬局の在り方も当然、変わらざるを得ません。その中で、薬局がどのような機能を果たすべきか、幾つかの新しい視点が示されたと思います。

─特に「かかりつけ薬剤師指導料」に戸惑う薬剤師も多いようですが。
調剤報酬体系では、これまで人に特化した点数はありませんでしたので、違和感を覚える薬剤師も少なくないでしょう。しかしこれまでも、「あの薬剤師がいるからあの薬局へ行こう」と、薬剤師との関係性で薬局を選んでいた患者が少なからずいたはずです。点数としては新しいですが、実際にはこれまでやってきたことであり、それを評価したものといえます。
ただ、点数化されたことで、これまで以上に患者とコミュニケーションを取り、薬学的知見と経験を用いて患者の問題を解決するよう求められます。そうしたサービスを提供してくれる薬剤師がいる薬局を選ぶべきだと国民が理解し、「かかりつけ薬剤師を持つ」という意識が広がるような仕事をすることが大切です。
70点という点数は、調剤報酬の中では非常に大きな点数です。それだけ期待されている業務といえます。基本的には、全ての薬剤師がかかりつけ機能を持つべきであり、算定する薬剤師の裾野を広げていきたいと考えています。
とはいえ4月1日からすぐに、全ての患者を対象に算定していくような点数だとは思っていません。まずは今、信頼関係を築いている患者に、(1)かかりつけ薬剤師指導料という点数ができたこと、(2)費用は掛かるけれど、服用する全ての薬について自分が責任を持つこと、(3)家族との付き合い、過去からの経緯や服用歴を踏まえ、薬剤師が重複投与や相互作用、不必要な薬が出ていないかなどのチェックをすることで、より安全に薬物治療が受けられること、(4)その結果、薬が減ってトータルの費用が安くなることもあること──などを説明し、理解を得ることから始めていただきたい。
結果的に、かかりつけ薬剤師指導料が効果的に機能して、医師との連携の下、残薬や重複投与、相互作用などが解消され、処方の適正化が進めば、次回以降の改定で評価され、さらに高い点数になることも考えられます。

─かかりつけ薬剤師になるには、薬剤師としての実務経験、在籍期間や就労時間、研修認定の取得などが要件にあり、ハードルが高過ぎるという声も聞こえてきますが。
かかりつけ薬剤師は、患者の服用薬などを一元的に管理し、薬に関する問題を解決することが求められますから、ある程度の経験が必要です。また、かかりつけ薬剤師が薬局にいる時間が短いと、患者は相談したいときに相談できず不便を感じることもあるでしょう。それらをある程度勘案し、ルールを決めました。
今回は、例えば実務経験を3年以上にしたり、「ほぼ常勤」という条件を週に40時間ではなく32時間の勤務に落ち着かせたりしましたが、それらが妥当かどうかの検証は、これからです。子育てや介護をする薬剤師への配慮なども必要だと思っています。実際に取り組んだ現場からの意見に耳を傾け、丁寧に議論していきたいと思っています。
薬学や医学の進歩に対応するためには、薬剤師は一生学び続ける必要があります。そのための生涯学習への取り組みの実績が算定要件に加わったことも注目すべきことでしょう。
対象となる認定や研修は、現在調整中です。基本は「頑張った人が評価される仕組み」ですが、評価のための客観的な指標は不可欠です。研さんを積んできたが認定は取得していない人は、ぜひ何らかの形で必要な要件を満たすようにしていただきたいと思います。

─調剤基本料が細かく分けられ、チェーン薬局には厳しいと言われています。
中医協では、薬局の規模や立地によってではなく、薬局の機能と役割、その実績で評価してほしいと言い続けてきました。ただ、医療経済実態調査などで、病院門前の大型薬局は圧倒的に経営効率が良いという結果が出ています。調剤に限らず診療報酬体系の中では、突出して効率が良い部分は、抑制の対象となります。社会保障費で賄われており、完全な自由主義経済にはなり得ない部分だと思います。
ただし、近隣に他医療機関や薬局がないために特定医療機関からの集中率が高く、応需処方箋枚数は多いものの、かかりつけ薬剤師がたくさんいて在宅医療にも取り組んでいるなど、地域医療を支える役割を果たしている薬局は、除外されます。
基準調剤加算についても、これまで基準調剤加算1(12点)を算定していたけれど、新たな基準調剤加算の要件を満たせない薬局では、経営上の影響は少なからずあると思います。そこは、在宅や地域医療連携に取り組むなどして、地域に密着した薬局になるための1歩を踏み出し、ぜひ算定を目指していただきたい。

─薬剤服用歴管理指導料は、初回は50点、2回目以降で患者がお薬手帳を持参した場合は38点、手帳の持参がない場合は50点と、今までに例のない点数配分になっています。
お薬手帳についてはこれまで、薬剤服用歴管理指導料に包括すると「何もせずに点数だけ取っている」と言われ、出来高では「点数算定するためにお薬手帳を出している」と言われ、いずれにしてもすっきりしない点数となっていました。
お薬手帳を持参すれば、薬物治療における安全性は高まります。持参することで点数が安くなれば、患者の医療に参加する意識を促すことにもつながります。薬局にとっては、手帳があれば患者から他科受診や服用薬に関する聞き取りの手間が省け、情報収集の客観性と効率性が大幅に向上します。その分、費用も安くなるという考え方です。うまく活用してほしいと思います。
今回の改定は、昨年、厚労省が「患者のための薬局ビジョン」で示した考え方が色濃く出ているわけですが、これまでに日薬が公表した「薬剤師の将来ビジョン」「薬局のグランドデザイン2014」、医療薬学会の「薬局の求められる機能とあるべき姿」と、基本的な考え方は同じです。ただし、行政として大きく舵を切ったという点が新しい。目指す姿は今までと同じだけれど、決して今までと同じではいられないというのが、今回の改定です。
患者にとって最善の薬物治療を提供しながらも、医療経済上、医療費削減、効率化という観点で一定の結果を出すことも求められています。その結果いかんによって、次の改定の議論が変わってくるでしょう。

インタビューを終えて
今改定で新設された「かかりつけ薬剤師指導料」について、現場では賛否が分かれています。しかし安部氏が指摘するように、「点数としては新しいが、実際にはこれまでやってきたことであり、それを評価したもの」です。目の前の患者と1対1の関係を築き、治療と健康をサポートし、患者から信頼を得るべく努力しよう、というメッセージと捉え、前向きに取り組んでいくことが大切ではないでしょうか。結果として、患者からの「○○さん、ありがとう」という言葉が増え、薬剤師の職能を社会に知らしめることになると思います。(佐原)

【DI ONLINE】
by kura0412 | 2016-03-10 10:32 | 医療政策全般 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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