『厚労省のずさんな政策の犠牲者であるといっても、言いすぎではないでしょう。』

歯科業界の悲惨な実態!コンビニより多く過当競争、破産・夜逃げも続出…

30年近く前のバブル景気の頃、脱税御三家といわれた職種は「歯科医・産婦人科医・パチンコ店」の3業態でした。歯科診療においては1970年代に画期的な診療技法が加わったことで、保険外の自由診療の治療を望む人が多くなり、歯科診療所には患者があふれました。予約がひっきりなしでレジには万札がうなった診療所も少なくなかったといいます。
ところが90年代に入り、次々と保険診療の幅が広げられたことで、高額な自由診療による儲けは期待できなくなります。そのうえ、厚生労働省は歯科医師が不足と見立て、歯科大学の新設・定員増で、歯科医の数が毎年3000人単位で増えるまでの状況にしたのですから、業界はたまりません。30年前は子供の9割に虫歯がありましたが、今では歯磨き習慣と早期治療でどんどんよくなり、半分以下に減っています。患者の人数そのものも減少傾向なのです。
しかし、診療報酬は20年以上横ばいのままで、マイナスとなった項目まであり、近年の日本歯科医師連盟(日歯連)による政治家へのヤミ献金事件や、つい最近の迂回政治献金事件を引き起こすまでに業界は追いつめられました。診療報酬が上がらないのでは、政治家に献金してアップを働きかけるよりなかったからです。
かつての脱税御三家はいずれの業態も右肩下がりですが、今日とりわけ悲惨な状況に置かれているのは歯科医なのです。

●「憧れの職業」からの転落
「結婚するなら医師」と今でも女性の多くが憧れる職業ですが、医師は医師でも歯科医は70~80年代頃は猛烈に稼げたものの、今では年間1600件もの廃業が相次ぐ職業になっており、うち2~3割は「夜逃げ」や「倒産」といわれています。厚労省はこうした事態に慌てて04年から歯科医師国家試験の難易度を上げてきましたが、もはや手遅れでした。
82年と12年を比較すると、医師免許保有者数と歯科医師免許保有者数は、いずれも1.6倍程度に増えています。しかし、医師のほうは多くの診療科目を有する全体での数字ですが、歯科診療は事実上、単独診療科目での数字です。
厚労省の統計で12年の医師免許保有者数は約30万人、これに対して歯科医師数は約10万人です(日本医師会公表データでは、現役稼働医師数は約17万人)。これでは、いくらなんでも多すぎです。

●コンビニよりも多い?
歯科医師の場合は、病院での診療科目になっているところも少ないため、大きな病院である程度勤めると、自らが診療所を開業するケースが7割近くに及びます。そのため、全国に約6万8000の診療所となり、約5万3000店のコンビニの数より多くなってしまっているのです。80年代は、人口10万人当たり30数人だった歯医者さんが、今では80人近くになったのです。
14年の勤務医の平均年収1146万円に対して、勤務歯科医は734万円です(厚労省「賃金構造基本統計調査」)。前年の13年には勤務医の平均年収が1072万円で、勤務歯科医は621万円でしたから、どういうわけか医師が74万円増、歯科医師が113万円増と、かなり異常な増加で持ち直しています。 
公表上の報酬があまりに安いままだと医大経営にも響くとばかりに、厚労省が集計方法を一部都合よく修正したのではないかとの見方も多いですが、本当に上がったのならば喜ばしいことでしょう。たしかに東京都内は診療所乱立で過剰ですが、地方に行くと、家賃が安いので勤務医の報酬も高くなる傾向があります。

●独立開業は「命がけ」
ちなみに、6年制の歯学部卒業には、公立で600万円、私立だと3000~6000万円もかかります。私立に行くのは親が開業医の場合も少なくないとはいえ、3000万円以上もの学費をかけたら元を取るのも大変です。それでも「開業医になれば勤務医よりは儲かるだろう」と考えて開業する人が、年間2000人は下らないわけです。
しかし、診療所のテナント代だけで300~500万円、床上げ配管や内外装工事に1500万円、医療機器に1200~1500万円、広告費や開業時の材料費、事務機器費用、運転資金に1000万円は必要です。東京都内だと4000~5000万円かかり、毎月の家賃も割高です。自己資金1000万円が工面できたとしても、残り3000~4000万円は金融機関からの借金です。
診療所の経営が1年経っても2年経っても軌道に乗らなかった場合、これはもうやっていけません。その結果、夜逃げによる失踪、自己破産という結末になってしまう開業歯科医が少なくないのも現実です。
14年12月、東京都北区で歯科医院を経営していた夫(56歳)に1億円の借金があることを知った歯科衛生士の妻(51歳)が激怒、連日「自殺して保険金で借金を返せ!」と罵り、実際に夫が自殺する――という事件がありました。妻は「自殺教唆」でいったん逮捕後、書類送検されたものの、1億7000万円の保険金を受け取ったそうですが、こういう事件も起こるようになってきたのが歯科医師業界の地獄の現実なのです。

厚労省のずさんな政策の犠牲者であるといっても、言いすぎではないでしょう。

【Business Journal】




前回とは違い、今回の件でこんな見方をするマスコミもありました。
by kura0412 | 2015-10-24 14:21 | 歯科 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラーを片手に歯科医師の本音

回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。

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