保険者が集って勉強会

「保険者よ、柔整師になめられるな」、約80の保険者勉強会
医師も参加、「柔整施術は捻挫と打撲がほとんど」

柔道整復師の施術などの療養費の適正化に向けて、国内の約80の保険者や医師が集まって、7月11日に大阪市内で、「第1回療養費適正化勉強会」を開催した。保険者間の連携がないことや、公的医療保険の保険者の場合、異動などでノウハウが蓄積されないことから、保険者が集まって、事例共有や医学的知識を学んで、適正化に向けて動くことが狙い。参加者からは、後期高齢者医療広域連合について、柔道整復師から、「(審査が甘く)広域連合はドル箱」などと言われた経験が紹介され、不正請求の摘発や報道発表などを活用して「なめられない保険者に」との声が出た。参加した医師は、適正な支給に向けて、柔整師の施術は、応急手当を除くと、「捻挫と打撲」に限定される点などが紹介された。

北海道や宮崎県の保険者も参加
企画したのは、和歌山県海南市保険年金課の宇尾祟俊氏。
柔整療養費については、多部位、長期、頻回の請求、不正と疑われる請求が目立つ傾向にあり、財務省の財政制度分科会も適正化を求めるなど、社会的な問題になっている(『財務省、「マイナス改定必要」の考え示す』を参照)。ただ、保険者において、審査のノウハウが共有されないことや、政治的な働きかけがあり適正化が進まない状況にある。

今回の勉強会は、保険者が、他の保険者や医師と連携して、事例や医学的知識を共有することが目的。関西圏を中心に、北は北海道、南は宮崎県から参加者があったほか、従業員が1万人を超える民間企業の健保も含めて、約80の保険者が参加した。
宇尾氏は、「療養費適正化に向けて保険者にできること」と題して講演。
異動を繰り返す公共における保険者についてはノウハウがたまらないなどの事情があり、「和歌山県後期高齢者医療広域連合に所属していた際、ある柔整師の団体から『広域連合はドル箱』と言われた」との事例を紹介して、適正でない請求が多くある点を指摘し「なめられない保険者にならないといけない」と述べた。その上で、医学知識や、実際の規程を調べる習慣を付けた上で、「不正請求の摘発と報道発表もしていく必要がある」と指摘した。 
行政が運営する公的な保険者の問題点として、支出を抑えようとするモチベーションがある民間保険者と比較して、「国民福祉の向上」を名目に適正化につながりづらい点を指摘した上で、「市町村国保や、後期高齢者広域連合は行政の一部という意識が抜けにくい。保険者の対応がばらばら」と発言。

さらに、保険者機能として、支給の可否判断ができる点に言及し、「(学ばないまま)垂れ流して(支給する)のは単なる怠慢」と述べ、慣例にとらわれず、請求を点検した上で、不適当な支出をしないように求めた。さらに、公的保険者は、民間事業者に審査を委託しているケースもあるが、宇尾氏は、「民間の点検業者の知識は不足している」として、安易な委託で、審査を終わらせないように求めた。
宇尾氏は、保健者以外にも、厚生労働省や被保険者の問題点も指摘。柔整においては、厚労省が「多部位」「長期」「頻回」など明確な定義をしていない背景があり、適正化するためのスクリーニングの基準もない実情がある中で、療養費を請求する側の拡大解釈が横行している側面があることを指摘して、保険者に医学や制度の知識を学ぶように求めた。被保険者については、行政の広報よりも、新聞などのマスメディアの方が影響が大きい点にも言及した。
宇尾氏は具体的な作業として、申請書を一枚ずつめくるところから始めるように求めて、「負傷部位の確認、接骨院など機関ごとの傾向など、素人目線でおかしいと思うところを(施術者に)問い合わせれば、プレッシャーになる。不正請求ならば、詐欺罪に問われるもので、刑事告訴も1つの手段になる」とした。具体的に、広告規制や医科レセプトとの突合などの取り組みが始まっている例などを挙げ、「正解は1つではない。それぞれの立場でできることを考えてほしい」と呼び掛けた。

「突き指で受診」、41%が骨折
保険者向けに、柔整師の施術と関連する医学的知識を、参加者に解説したのは、大阪臨床整形外科学会理事の岸本成人氏。冒頭で、柔整師の施術が認められているのは、「捻挫、打撲、骨折、脱臼のみ」とした上で、応急手当を除くと、「捻挫と打撲」に限定される点を指摘。「単なる肩こり、筋肉疲労に対する施術は、療養費の支給対象外」と強調した。さらに、柔整師が、「原因のはっきりしない痛みは、亜急性の外力による損傷」と主張する「亜急性」についても、「あり得ない」と述べた。
負傷の実態についても解説。不正請求が疑われる事例では、「負傷個所3カ部位以上」というケースが少なくないが、日本臨床整形外科学会の調べによると平均負傷個所は1.22部位となっている点を指摘。さらに捻挫打撲の治療期間については、大阪臨床整形外科学会理事の骨折を除いた1113例で、「平均通院期間は6.2日、平均通院日数は1.9日」とするデータを示した。ともに、多部位、長期、頻回の日数について、実態が伴わない可能性を示した。

医学的な判断を伴わない施術が悪影響を及ぼす可能性にも言及。筋内圧が何らかの原因で上昇して、循環器障害を引き起こし、筋壊死などにつながる「急性コンパーメント症候群」を紹介。加えて、大阪臨床整形外科学会で2014年10月と11月に突き指で外来受診した患者のうち、41%が骨折していた点を紹介して、医学的知識を伴わない施術が、治癒の遅れや、重症化につながる点を懸念した。
さらに、医療機関で治療継続中に、柔整師が施術をしても、療養費の支給対象外となることや、按摩、鍼灸でも、「医療保険との併用は認められていない」と紹介。適正な支給申請かを判断する上で参考となる知識を紹介した上で、「定義を理解して、被保険者に伝えてほしい」と呼びかけた。

【m3.com】



予てから問題視されている柔道整骨療養費の問題ですが、保険者が問題点を共有しようとする動きは今後注視する必要があるようです。
by kura0412 | 2015-07-15 09:58 | 医療政策全般 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラーを片手に歯科医師の本音

回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。

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