「21世紀の資本」

「21世紀の資本」が指摘する格差問題 グラフで解説  

 「我々は99%だ」。ちょっと前に話題を呼んだ、米金融界に対する抗議運動「ウォール街を占拠せよ」のキャッチフレーズである。全人口の1%のカネ持ちに所得や資産が集中する。そんな格差社会への抗議である。
確かに格差は広がっているようだが、実態はいまひとつハッキリしない。そのモヤモヤを歴史的なデータに基づいて解きほぐしたのが、パリ経済学校のトマ・ピケティ教授である。
誰でも分かるグラフを使って、格差の実態を浮き彫りにした。それが、日本でもベストセラーになっているピケティ著『21世紀の資本』だ。700頁余りの本書は荷が重いと感じるなら、新聞への寄稿を収録した『トマ・ピケティの新・資本論』にエッセンスが記してある。

■格差拡大は「資本収益率が経済成長率を上回っているから」
格差が拡大した理由について、ピケティ教授は明快な回答を示している。歴史を通じて、資本(財産)から上がる収益(資本収益率)は、経済活動の伸び(経済成長率)を上回っているからだ。資本収益率をr、経済成長率をgと表せば、「r>g」となる。今後、世界の経済成長率が低下していくとみれば、資本収益率との開きは一段と広まってく勘定だ。
自称インテリたちの間では、今やこの不等式(r>g)は大はやり。意味するところは、真面目に働いて得られる所得よりも、財産を運用して得られる所得の伸びが大きいということだ。いきおい、財産を持っている人と持っていない人との格差は、広がっていく。

■「市場だけに任せていては格差は拡大し続ける」
結果として、国全体でみた財産、つまり国民資本も膨らんでいく。今や国民資本の残高は、毎年の国民所得の5倍から6倍に達している。これは毎年の稼ぎ、つまり所得の5~6年分ということだ。日本だけは例外的に国民所得に対する国民資本の割合が低下しているようにみえるが、これは1990年以降のバブル崩壊の結果だ。
もう少し巨視的にみれば、国民所得に対する国民資本の割合は19世紀から20世紀初めにかけて、ものすごく高かった。第1次、第2次の両大戦で財産が失われたことで、国民資本の比率はいったん大幅に低下した。そして1980年ごろから、レーガン、サッチャーによる市場重視の経済改革を経て、再び拡大していく。
ピケティ教授が強調するのは、市場経済には所得に対する資本の拡大を自動的に是正するメカニズムが存在しない点だ。しかも米国を中心としたアングロサクソンの経済圏では、ごく一部の経営者(スーパー経営者)が並外れた報酬を得る仕組みが定着し、大きな所得格差をもたらしている。かくして、市場だけに任せていては、格差は拡大し続ける、という。

■「所得だけでなく財産にも累進課税を」
格差に対する教授の処方箋のひとつは、お金を持っている人には高い税率を課す累進課税である。レーガン、サッチャー改革の本場である米英では、税の累進の度合いは緩められる方向にある。教授の提言はその逆である。
さらにピケティ教授は一歩進めて、所得や相続ばかりでなく、資本(財産)に関しても累進課税を導入すべきだという。注目すべき提言だが、各国ごとに資本税を導入したのでは、国外に財産を持ち出す動きが増えかねない。
こうした資本逃避を封じるには、各国が税の面での協調体制をつくる必要がある、というのである。税の国際協調は、言うはやすく、行うは難しい。とはいえ、先進国の首脳たちも格差の問題をもはや避けて通れなくなっている。

改めて注意しておきたいのは、ピケティ氏は経済成長そのものを否定しているわけではない点だ。
不等式「r>g」からも明らかなように、成長の低下は格差拡大を招く。格差是正に熱心な論者が、成長に無頓着なのは変だ。ピケティ理論に立っても、バブル崩壊後に著しく低下した成長率をできるだけ回復させることが、この日本では重要な課題となる。

【日経新聞】



これが流行語大賞になるほどの話題となれば政局に大きな変化があるのかもしれません。
この動きに対して歯科界の対応は。
by kura0412 | 2015-01-31 09:11 | 経済 | Comments(0)