今までの厚労大臣とはタイプが大きく違うかもしれません

内閣改造:株価を急騰させた「塩崎効果」の読み方 - 磯山友幸
市場の期待値は異常とも言えるほど高いが……(C)時事

安倍晋三首相は9月3日、内閣改造を行い、第2次安倍改造内閣が発足した。
首相を除く18人の閣僚のうち6人を留任させ安定感を維持する一方で、ポスト待望から大型改造を求める党内の声に応え、8人の初入閣大臣を誕生させた。さらに、女性閣僚を2人から5人に増やし、安倍首相が主張する「女性活躍」を実践してみせた。だが、安倍内閣の高い支持率の背景にあるのは経済再生への期待である。景気の息切れが懸念される中で、アベノミクスを貫徹することはできるのか。改造内閣の布陣が盤石なのかどうか、検証してみよう。

「口先だけ」という欧米からの批判
「引き続き、経済最優先で、デフレからの脱却を目指し、成長戦略の実行に全力を尽くしてまいります」
改造を終えた安倍首相は会見でこう述べた。
政権発足から600日あまり。安倍首相はこの間の成果として、有効求人倍率が22年ぶりの高水準となったことや、過去15年間で最高の賃上げとなったことを挙げ、「この道しかありません」と述べた。そのうえで、「景気回復の実感を、必ずや全国津々浦々にまで届けることが、次なる安倍内閣の使命であります」とした。集団的自衛権など安全保障政策への傾斜で支持率が弱含みになった安倍内閣が、もう1度ここで「経済最優先」にカジを切る意思を明確にしたわけだ。
内閣の新布陣にもそれが表れている。
甘利明・経済再生担当相を留任させたことで、6月に閣議決定した成長戦略「日本再興戦略 改訂2014」の路線が不変であることを示した。また、麻生太郎副総理兼財務相兼金融相もそのままとしたことで、法人減税や消費税率の再引き上げなどの懸案を巡る財務省との距離感も維持した。さらに規制改革の司令塔役を務めてきた菅義偉・官房長官も留任したことで、アベノミクスによる「経済最優先」の布陣であることを示した。
もっとも、成長戦略はすでに完成しており、重要なのはいかにそれを実行するか。欧米の一部メディアからも、アベノミクスは「口先だけで実行が伴っていない」という批判が出始めている。それを意識したのだろう。首相も記者会見で、「日本の将来を見据え、有言実行、政策実現に邁進する『実行実現内閣』として国民の負託に応える」と述べた。
安倍首相が経済最優先で長期政権を目指すには、アベノミクスで具体的な成果を上げることが重要になるのだ。

GPIF、医療、雇用
もちろん、内閣改造ではそこに配慮した布陣も敷いた。
改造前日の9月2日、東京株式市場では日経平均株価が192円高と大幅に上昇、1万5668円で引けた。7月30日の終値1万5646円を抜き、およそ7カ月半ぶりの高値水準を付けた。きっかけは塩崎恭久・政調会長代理が厚生労働相に内定したという報道だった。党側で成長戦略策定の実務を担ってきた塩崎氏は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用体制・ガバナンス体制の改革を提言してきた。その塩崎氏が所管大臣になることで、資本市場が期待するGPIF改革が進展するという見方が広がり、期待感から買われたというのである。
GPIF改革だけでなく、塩崎大臣はアベノミクスの成否を決する重要な政策を担うことになる。
「改革をしっかりと。中でも年金・医療・介護、子育て支援、労働法制についてもしっかりやるように」
報道によれば、安倍首相からは任命に当たって、広範な指示があった、という。
年金や医療・介護の持続可能な仕組みを再構築できるかどうかは国家の命運を左右する最重要課題。2012年度に109兆円あまりだった社会保障費は、団塊の世代がすべて75歳以上になる25年度には149兆円近くに膨らむと試算されている。政府の財政健全化を実現するためには制度改革が不可欠だが、ここで国民の反発を食らえば、政権の足元を揺るがしかねない。第1次安倍内閣の足元をすくったのは、「消えた年金記録」問題や民主党による医療崩壊キャンペーンだった。
アベノミクスで首相が「打ち破る」と繰り返し主張してきた「岩盤規制」は、農業、医療、雇用制度である。塩崎大臣はこのうちの2つを担うことになる。

地方創生と農業再生
アベノミクスの真価が問われるのは、首相自身も言うように「景気回復の実感を全国津々浦々にまで届ける」ことができるかどうか。この役割を担うのは、新設した地方創生相に就けた石破茂・前自民党幹事長だ。規制緩和の恩恵はどうしても経済活動のベースが大きい大都市に出やすい。2020年の東京オリンピックに向けたインフラ整備などでも東京圏だけが恩恵を享受することになりかねない。地盤沈下が言われて久しい地方経済をどう立て直すかが焦点になる。地方はアベノミクスのウィークポイントでもあるのだ。
メディアでは、来年の自民党総裁選に立候補を目指していると言われる石破氏と首相の「駆け引き」にばかり焦点が当たったが、結果的にはアベノミクスの中核を石破氏が担うことになった。「地方創生」で失敗すれば、石破氏にも安倍首相にも未来はない。さらにこれまでは総務相が兼務していた「国家戦略特区担当相」も石破氏が兼務することとなった。国家戦略特区も首相自身がアベノミクス改革の突破口と位置付けてきたもの。法律に基づき、担当相は昨年12月に新設されたばかりだ 。岩盤規制を打ち破るための実験場として特区をどう使いこなすかも、アベノミクスの成否に直結する。
その国家戦略特区を使って「岩盤規制」を取り除こうとしている典型的な領域が農業である。農業委員会が握っている農地転貸の許可権限を、特区では市町村の首長に移管するなど、既得権に風穴をあけることを目指す。
昨年来、農村所得の倍増計画など「強い農業」を掲げている安倍首相が、地方創生と農業再生が不可分だと考えているのは間違いない。農政に通じ、改革派としても知られてきた石破氏に、本気で改革を委ねるつもりなのだろう。
一方で、農業改革を担うことになる農林水産大臣には、西川公也衆議院議員を当てた。農水族で農業団体などとのつながりも深い。もともとはTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加にも反対していたが、自民党のTPP対策委員長として党内をまとめ、安倍首相によるTPP交渉参加に道筋を付けた。農業の既得権層につながりを持つ西川氏に改革を担わせることで、岩盤に穴を開けようという戦略だろう。

「最大の問題官庁や」
アベノミクスで描く改革がなかなか実現できない背景には、既得権層を背後に持つ霞が関の官僚の抵抗が大きい。中でも改革に最も抵抗している「岩盤」が厚生労働省だという。医療制度改革や健康保険改革の背後には、日本医師会などの政治力の強い団体がある。年金も、日本年金機構(旧社会保険庁)などの巨大な“官僚機構”を抱え、役所の権力基盤になっている。労働規制の背後にはもちろん労働組合などの権益が存在する。
内閣官房 参与を務める堺屋太一氏が、8月末に都内で開かれた会合でこんな事を言っていた。
「官邸のいろいろな会議に出て聞いているだけですが、安倍内閣はいろいろと改革をやろうとしている。それにことごとく抵抗していたのが厚生労働省の役人です。会議に大臣が分厚い資料を持ってきて、改革論議が出るたびに、それはこういう理由で難しいと、役人が作ったペーパーを大臣が読み上げる。最大の問題官庁や」
厚生労働行政に詳しい関係者によると、厚労省の幹部の中には、「安倍内閣発足以降、わが省は全戦全勝だ」と公言している人もいる、という。大臣を手玉に取って、役所に切り込ませずに思い通りに収めた、というのである。
民主党政権下では、年金改革を掲げて厚労相として初登庁した長妻昭・衆院議員を拍手ひとつなく出迎え、ほとんど成果を上げさせずに1年で追い出した。官僚からは大臣のネガティブキャンペーンが流され続けた。それぞれの専門分野に浸った官僚が牛耳る、改革志向とは縁遠い組織だというのだ。果たして塩崎新大臣は、この巨大官庁をうまく使いこなし、アベノミクスと平仄が合った改革的な政策を実行に移すことができるのかどうか。

目に見える成果が必要
岩盤規制も打ち破れず、地方経済の構造にも何の変化も生まれなければ、やはりアベノミクスは「口だけ」だった、という評価が定着することになりかねない。そうなれば、外国人投資家は日本株を一気に売り崩しにかかるだろう。
自民党総裁選が行われる来年秋まで時間は1年。安倍総裁が再選され、長期政権への地盤を固めるためにも、アベノミクスの目に見える改革成果が必要だ。石破地方創生相と塩崎厚生労働相。自民党の中でも政策通として知られる2人の大臣の手腕が注目される。

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by kura0412 | 2014-09-06 11:32 | 政治 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラーを片手に歯科医師の本音

回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。

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