日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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「口腔機能低下症」「要介護性口腔症候群」「オーフス(オーラルフレイルの略)」

日本老年歯科医学会 第25回学術大会 開催される

6月13日(金)~14日(土)電気ビルみらいホール(福岡市中央区)において,標記の学術大会が「生活に寄りそう歯科医療と高齢社会」をテーマに開催された.大会長は柿木保明氏(九州歯科大).約1,300名が参加する盛会となった.
初日に行われたミニシンポジウム1「超高齢社会における高齢者の歯科診療を考える」(座長:櫻井薫氏・東京歯科大)では,
細矢哲康氏(鶴見大)が高齢者の根管治療について,福島正義氏(新潟大)が高齢者の根面齲蝕とその対応としてのフッ化ジアンミン銀の使用について,角保徳氏(国立長寿医療研究センター)が口腔ケアを主体として口腔機能の維持・向上を目指す「高齢者歯科医療」を確立する必要性について,それぞれ解説した.
特別講演「高齢者医療と緩和ケア」(座長:森戸光彦氏・鶴見大)では,
佐藤英俊氏(佐賀大)が,米国・英国での緩和ケアのあり方を参考に設立された同大緩和ケア病棟での取り組みを紹介.緩和ケアにおける他職種によるチームアプローチの重要性を強調するとともに,「最期まで口から食べる」ことを支える歯科医療職の役割についても言及がなされた.
特別企画「高齢者の口腔乾燥症への対応」(座長:柿木保明氏・九州歯科大)では,
小笠原正氏(松本歯科大)が口腔乾燥の患者にみられる口腔内付着物の形成機序およびその予防としての口腔保湿のあり方について,中村誠司氏(九州大)が口腔乾燥を引き起こす代表的疾患であるシェーグレン症候群について,佐藤裕二氏(昭和大)が口腔乾燥による義歯の維持力低下への対応について,それぞれ解説した.
シンポジウム1「医科歯科連携における歯科の役割」(座長:羽村章氏・日本歯科大)では,
林田裕氏(北九州中央病院)が,自身が関わった事例をもとに,連携において「向きは同じでも温度差がある」現実を紹介し,"face-to-face"で向き合うことの重要性を訴え,大渡凡人氏(東京医科歯科大)は自大における医科病院・歯科病院の連携の現状と問題点を紹介した.藤本篤士氏(札幌西円山病院)はPAP(舌摂食補助床)による嚥下補助の例などを挙げ,医科歯科連携において歯科が「歯科にしかできないこと」を認識することの重要性を強調し,中村真理氏(北九州八幡東病院)は,療養型病院における連携の現状を報告した.
歯科衛生士シンポジウム「いつまでも自分の口から食べるために~食べるを支える歯科衛生士の力」(座長:大野友久氏・聖隷三方原病院,石黒幸枝氏・地域包括センターいぶき)では,
西川利恵氏(東名厚木病院),梶原美恵子氏(フリーランス),髙野ひろみ氏(高野歯科医院),西岡心大氏(長崎リハビリテーション病院)の4氏が急性期病院,在宅,回復期リハ病棟での経験を紹介し,高齢者の「食べる」の支援における歯科衛生士の役割と他職種協働の実際について述べた.

翌日に開催されたミニシンポジウム2「高齢者の口腔機能低下」(座長:下山和弘氏・東京医科歯科大)では,
昨年開催された本学会ワークショップ「高齢者の口腔機能低下を病名にできるか」における討論内容について,上田貴之氏(東京歯科大),山本健氏(鶴見大),渡邊裕氏(国立長寿医療研究センター研究所)の3氏より報告がなされ,病名として「口腔機能低下症」や「要介護性口腔症候群」,また広く国民に普及させるための通称として「オーフス(オーラルフレイルの略)」などといった提案が紹介された.森戸光彦氏(鶴見大)における指定発言でも,早急に名称を策定することの必要性が強調された.
教育講演「認知症の予防・治療の最前線」では,
西野憲史氏(西野病院)が,まず認知症の進行過程や診断基準,研究の現状などについて説明.その上で,自院における取り組みを紹介し,認知症患者に対して園芸療法などを通じてアクティビティを提供することが生活意欲の活性化につながると述べた.また,残存歯数や歯周病と認知症の関連など,歯科と認知症との関係性についても言及した.
シンポジウム2「終末期高齢者における歯科の対応」(座長:平野浩彦氏・東京都健康長寿医療センター研究所)では,
まず小原由紀氏(東京都健康長寿医療センター研究所)が,テキストマイニングといわれる手法を用いて各医療職種へのアンケート結果を分析した研究を紹介し,終末期医療における歯科の役割として経口摂取の支援への期待が大きいことを報告した.清水哲郎氏(東大大学院人文社会系研究科)は,"End-of-Life Care"に携わる上で求められる医療・介護従事者の倫理的姿勢について,哲学者の立場から提言した.阪口英夫氏(大生病院)は,終末期ケアという概念の先駆者である歯科医師のAustin Kutscherの考えを紹介し,終末期ケアに歯科がどのように関わっていくべきかを論じた.
シンポジウム3「アジアにおける高齢者歯科の連携に向けて」(座長:小野高裕氏・大阪大)では,
黄純徳氏(台湾・高雄医科大),Orapin Kaewplung氏(タイ・Chulalongkorn大),下山和弘氏(東京医科歯科大)の3氏により,急速に高齢化が進むアジアにおける歯科医療の現状と課題についての紹介と,日本とアジア諸国との高齢者歯科の分野における連携の必要性についての提言がなされた.
次回第26回学術大会は,パシフィコ横浜(横浜市西区)にて開催予定.

【Ishiyaku Dent Web】



私もこの学会に参加しきましたが非常に熱気のある学会でした。
その中でも、今だ口腔機能低下に対しての病名がないのは色々な意味で大きな問題であること感じました。
by kura0412 | 2014-06-23 09:29 | 歯科 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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