「アベゲドン」

[FT]アベノミクスかアベゲドンか、今年が正念場
 
ここ何年もの間、アジアで本当に重要な意味を持つのは中国経済の動向だった。
地域の経済成長を10年以上も支えてきた中国は、年を追うごとにアジア経済(ひいては世界経済)の温度を決定する唯一にして最大の要因となってきた。しかし、今年について言えば、中国は国内問題に明け暮れるとみられている。そして、ほとんどの人にとっては初めてのこととなるだろうくらいに日本経済に大きな関心が集まっている。

日本では「量的・質的金融緩和(QQE)」という気の利いた名前をもつ金融政策の大胆な実験が進行中だ。今年はその効果が明らかになる。可能性は3つある。

■金融緩和がもたらす3つの可能性
まず1つ目は、マネタリーベース(資金供給量)を2年で2倍にする目標が失敗に終わる可能性だ。
すると物価上昇率は低下してゼロに近づくだろう。
2つ目の可能性はさらに重大だ。安倍晋三首相の「アベノミクス」が「アベゲドン(“安倍”と、大混乱や終末を意味する“アルマゲドン”を組み合わせた造語)」に転落する危険性だ。
物価は制御不能となり、金利が高騰し、資本が流出する。
3つ目の可能性はQQEが実際に効果を上げることで、これを期待したい。
もし実現すれば、2%の物価上昇率が持続し、経済成長率は1.5%に達するかもしれない。

英HSBCのフレデリック・ニューマン氏は直近のリポートで、アジアの最近の成長を支える2つのエンジン、米連邦準備理事会(FRB)の緩和マネーと中国の急拡大にブレーキが掛かり、第3の力として2014年は日本が久々に影響力を盛り返すと指摘した。

■アジアに巨額投資をしてきた日本
日本はアジアに巨額の投資をする一方、過小評価されているが企業レベルでは強力なライバルだ。
市場規模は英国の2倍あり、巨額の流動性も供給している。
「史上最大の金融刺激策」(ニューマン氏)に勢いがつけば、日本から(アジアへ)の流入資金が米量的緩和縮小によるギャップを埋めるのに役立つだろう。アジアの銀行への出資などを通してアジアの内需を取り込んできた日本の銀行は東南アジアだけで今後600~1400億ドルを供給するだろうと同氏はみる。タイへの海外直接投資(FDI)の60%は日本からだ。日本企業は日本を飛び出し、アニマルスピリットを呼び覚ましつつある。サントリーホールディングスは資金力を背景に160億ドルを投じて米蒸留酒最大手ビーム社を買収すると決めた。

日本では消費者物価がカギとなる。
2年以内に2%のインフレ目標を達成できるかどうかが安倍氏の評判を左右する。
今のところ順調なペースだが、今年は持続可能かどうかが試される。昨年11月の統計では生鮮食品を除くがエネルギーは入っている指数(コア)が1.2%だった。しかし円安に伴う輸入エネルギー価格の上昇を反映しているにすぎないとの見方もある。もしそうならばインフレが息切れする可能性もある。だがおそらく物価の動きは本物だ。エネルギーを除く指数(コアコア)でも0.6%増と15年ぶりの水準に達した。
もし賃金が上がらなければ、これも消滅しかねない。安倍氏はインフレ機運を後押しする賃上げへの協力を大企業に求めている。企業側が求めに応じるとしても、雇用の大半を担う中小企業にとっては大きな負担だ。
マイナス面としては消費税率を現行より3%ポイント引き上げ8%にすることの消費への悪影響がある。
首相のブレーンの本田悦朗・内閣官房参与でさえも、この引き上げには否定的だ。4月の増税後に需要が冷え込む危険はある。

■経済成長の維持が重要
中期的には需給ギャップを埋めるために経済成長を維持することが極めて重要だ。
日銀の黒田東彦総裁は先月フィナンシャル・タイムズ紙に対し、需給ギャップはマイナス1~1.5%との見方を示し、すでに「大幅に縮小した」と述べた。1、2年で「若干のプラス」に転じるペースだと言う。
ただ、2%の物価上昇率が全てを解決するわけではない。
本紙のコラムニスト、マーティン・ウルフ氏が指摘しているように、2%の物価上昇率は、日本の人口減少から生じる危機的な問題の解決に対して何ら効果はない。しかも、女性が働きやすい職場や農業の生産性の効率化にも直結しない。それでも日本が2%のインフレと1.5%の成長率を達成できれば、日本経済はここ何年もなかった元気な姿を見せるだろう。アベノミクスの実現かアベゲドンか、2014年は正念場の年となる。

【英フィナンシャル・タイムズ・日経新聞】



「アベゲドン」が流行語大賞に成らないように。
by kura0412 | 2014-01-21 15:58 | 経済 | Comments(0)

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