日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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専門学会から指針が示され

「高血圧治療ガイドライン2014」最終案公表,欧米を踏襲せず
わが国の疾病構造を反映

第36回日本高血圧学会総会(10月24~26日,大阪市)の最終日に,「高血圧治療ガイドライン2014」〔作成委員長:島本和明氏(札幌医科大学学長)〕の最終案(JSH2014,以下「最終案」)が公表された。
今年(2013年)8月に同学会が公開した原案へのパブリックコメントについても十分検討した上で,最終案に盛り込んだ。最終案では,海外で糖尿病合併高血圧の降圧目標値が緩和される中にあって,わが国では脳卒中発症リスクの観点から厳格な目標値が維持されるなどの独自性を示した他,合併症がない高血圧患者における第一選択薬からβ遮断薬を除外し,あくまで心疾患合併患者への積極的適応に位置付けるなどの方向性を打ち出した。

初診時の高血圧管理計画を「高血圧」に特化
今回,高血圧の診断として,既報の通り(関連記事)診察室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合,家庭血圧による診断を優先するという。
血圧値の分類として,現行のガイドライン(GL)では「至適血圧」「正常血圧」「正常高値血圧」が記載されているが,今回これらをさらに「正常域血圧」として分類する。
リスクの層別化では,従来のカラム表示を踏襲するが,「正常高値血圧」(130~139/85~89mmHg)は削除し,初診時の高血圧管理計画を「高血圧」(診察室血圧140/90mmHg~,家庭血圧135/85mmHg~)に特化させた。

高齢者の降圧目標は「前期」「後期」別に設定
また,降圧対象の分類や降圧目標値が一部変更され,下記のようになる予定だ。
若年・中年患者,前期高齢患者:診察室血圧140/90mmHg未満,家庭血圧135/85mmHg未満
後期高齢患者:同150/90mmHg未満(忍容性があれば140/90mmHg未満),145/85mmHg未満(忍容性があれば135/85mmHg未満)
糖尿病患者:同130/80mmHg未満,125/75mmHg未満
蛋白尿陽性の慢性腎臓病(CKD)患者:同130/80mmHg未満,125/75mmHg未満(目安)
脳血管障害患者,冠動脈疾患患者:同140/90mmHg未満,135/85mmHg未満(目安)

若年・中年患者は,130/85mmHg未満から診察室血圧140/90mmHg未満,家庭血圧135/85mmHg未満に緩和された。

これまで高齢者はひとくくりにされていたが,今回は老年医学上の分類から高齢者を前期(65~74歳)と後期(75歳以上)に分け,それぞれに応じた降圧目標値を挙げている。
後期高齢患者では,忍容性があれば(1)の前期高齢患者と同様の降圧を目指すが,なければ合併症があっても(2)の降圧目標値となる。

糖尿病合併例の降圧目標は130/80mmHg未満に維持
厳格に降圧しても心疾患や総死亡などの有意な抑制が得られなかったACCORD-BP試験(N Engl J Med 2010; 362: 1575-1585)の高血圧患者のサブグループ解析や,糖尿病および耐糖能異常(IGT)を対象とした13試験のメタ解析(Circulation 2011; 123: 2799-2810)の成績を受け,世界のGLでは糖尿病合併患者の降圧目標値が緩和されつつある。

一方,わが国では糖尿病合併患者の降圧目標値は診察室血圧130/80mmHg未満に維持された(家庭血圧は125/75mmHg未満)。
前述の成績では,脳卒中リスクの有意な低下および低下傾向が認められており,脳卒中の発症が欧米の1.5~2倍というわが国の特徴が考慮された。
島本氏およびGLの当該部分の執筆を担当する伊藤裕氏(慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科教授)は,「欧米人と疾病構造が違うわが国が欧米のGLを踏襲する必要はない」「脳卒中の発症率が高い国として,独自のGLをつくるべきではないかというのが今回の立場だ」と述べ,糖尿病合併患者の降圧目標を厳格にした理由を明かした。

脳血管障害・心疾患合併例ではより厳格な値も提示
CKD合併患者の降圧目標については,蛋白尿陽性例(尿アルブミン/クレアチニン比0.15mg/gCr)のみ記載された。
尿蛋白は心血管疾患(CVD)と末期腎不全(ESRD)と関連することから,蛋白尿陽性例では診察室血圧130/80mmHg未満,家庭血圧125/75mmHg未満(目安)に据え置かれた。

脳血管障害合併例の降圧目標値は,診察室血圧140/90mmHg未満,家庭血圧135/85mmHg未満(目安)だが,SPS3試験,わが国のBAT研究の成績から,ラクナ梗塞,抗血栓薬服用者では可能であればさらに低い130/80mmHg未満を目指す。
しかし,いずれの成績も有意差は得られなかったため,今回は「降圧目標値」ではなく,あくまで「目指す」値にとどまった。
また心疾患合併例についても,降圧目標値は診察室血圧140/90mmHg未満,家庭血圧135/85mmHg未満(目安)となるが,降圧のエビデンスは不十分ながらも心筋梗塞既往例,糖尿病やCKDなど,心血管イベントのリスクが重積した患者では130/80mmHg未満を目指すとした。

一般的な高血圧に対する第一選択薬からβ遮断薬を除外
心疾患合併例におけるβ遮断薬投与の重要性は,豊富なエビデンスからも明らかであり,同薬はそのような合併症(積極的適応)がある場合に用いられる主要降圧薬である。
しかし,第一選択薬が「積極的適応がない場合の高血圧に使用すべきもの」と定義された今回,β遮断薬は一般的な高血圧に投与する第一選択薬から除外された。
その理由について当該部分の執筆を担当する島田和幸氏(新小山市民病院院長)は,ASCOT-BPLA試験,LIFE試験を含むメタ解析やわが国のCOPE試験などの大規模臨床試験におけるβ遮断薬の糖代謝障害,臓器障害・中心血圧低下の効果減弱などの成績を総合的に判断。その上で,同薬の除外を決めたと説明した。
β遮断薬は,あくまで主要降圧薬として心疾患合併例に対し積極的に投与する。

保険診療に合わせ配合剤は第一選択薬を見送り
近年,降圧薬同士の配合剤の承認が増えており,当初第一選択薬への位置付けが検討されていた。しかし,同薬は保険診療上,第一選択薬として認められていない他,降圧の用量調整ができず安全性への懸念が残ることから,保険診療に沿う形で今回は見送った。

「授乳が可能と考えられる降圧薬」を提示
わが国では,この10年間で35~40歳の高齢妊娠は4人に1人となった。妊娠高血圧症候群のリスク増加が危惧される中,「女性の章」では妊娠20週未満の第一選択薬として中枢作動薬メチルドパ,血管拡張薬ヒドララジン,αβ遮断薬ラベタロールの3剤が,20週以降ではこれにCa拮抗薬ニフェジピンを加えた4剤が示された。
妊娠中のACE阻害薬の催奇性は否定的な報告もあるが,安全性の上で「原則禁忌」とし,β遮断薬やCa拮抗薬を投与する場合は患者へのインフォームドコンセントを行い,医師の責任の下で使用する。

従来,降圧薬服用例では授乳の中止が望ましいとされていたが,今回「授乳が可能と考えられる降圧薬」として,以下の10成分が提示される予定だ。
Ca拮抗薬:ニフェジピン(アダラート),ニカルジピン(ペルジピン),アムロジピン(ノルバスク,アムロジン),ジルチアゼム(ヘルベッサー)
αβ遮断薬:ラベタロール(トランデート)
β遮断薬:プロプラノロール(インデラル)
中枢作動薬:メチルドパ(アルドメット)
血管拡張薬:ヒドララジン(アプレゾリン)
ACE阻害薬:カプトプリル(カプトリル),エナラプリル(レニベース)
※ カッコ内は商品名

「年内いっぱい議論を」
最終案に対する議論は,公開の場としては同学会総会が最後となった。しかし島本氏は,年内いっぱい議論を行い,GLの評価ツールであるAGREE Ⅱ(Appraisal of Guidelines for Research&Evaluation Ⅱ)の評価項目の1つで,現在の評価が83%とされている「提示の明確さ」を90%台に持っていきたいとの意向を示した。
実地医家のための透明性の高いGLづくりを目指したJSH2014は,2014年4月1日の公開を予定しており,英語版も同時に公開される。

【MT pro】



恐らくこの学会の指針が保険でもスタンダードになるものと思います。
疾患の定義が専門学会でのリードで定められています。変化しているう蝕の定義の変更も可能なはずです。
by kura0412 | 2013-10-29 15:16 | 歯科 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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