日本人として誇らしい偉業達成

不惑迎えるイチロー、新たな世界切り開く

イチローが21日、日米通算4000安打を達成した。
大リーグ通算では2722本目で記録としての意義付けは難しいところだが、ヤンキースのジラルディ監督は言う。「彼がどれだけよく練習し、どれだけ長い間試合に出場し、健康であり続け、そして試合へのアプローチが素晴らしいかの証書」。イチローを簡潔かつ端的に評価する言葉だ。

■スタメンに名を見つけスイッチオン
ジラルディ監督は「まだイチローはやりきってない」とも話した。イチローは自虐的に「だから、時々ラインアップに名前がないんだ」。最近、球場でスタメン表を確認し、そこに自分の名前を見つけてから「気持ちのスイッチを入れる」ようになった。特に8月に入り、それほど先発を外れる日が増えている。
試合に出るか分からないのに、しっかり準備をする日が続くのはつらい。しかし、それでも今までと変わらぬルーティンを続ける。「毎日同じことを続けることで、自分を安定した状態に持っていくテクニックはある。それでも安定するとは限らない。時々しんどいと思うけれど、そこが頑張りをみせるところですかね」
チームメートが驚嘆するほどストイックな姿勢がイチローを形づくったといえるが、もう一つ欠かせない要素があると思う。無邪気というか、いい意味での子供らしさだ。

■「小さいことに満足し、達成感も」
記録達成後の記者会見で、最も印象に残ったやり取りがある。
「長い間プレーすると自分に満足する部分が見えるけれど、イチローさんは満足することがないから……」。こう話す記者を遮るように、ちゃめっ気のある口調でまくしたてた。
「いえいえ、僕はいっぱい満足します。満足したら終わりというけれど、それは弱い人の発想。僕は小さいことでも満足するし、達成感も感じる。それで次が生まれる。意図的に『こんなことで満足しちゃいけない、まだまだ』と言い聞かせる人はしんどいですよ。何を目標にしたらいいか分からないじゃないですか。うれしかったら喜べばいいんですよ」
スポーツ、特に個人競技を取材して感じるのは、トップまでいく選手たちの才能はそう変わらないということ。「スーパー」とそうでない選手を分けるのは、最後に自分を信じてあげられるかどうか。そして、そういう自信は小さな成功体験、達成感の積み重ねでしか身につかない。

■ジーターとともに得点、無邪気に喜ぶ
例えば、シーズン中にケガをしたとき。ただ残念と悔やむのか、苦手な部分を練習する時間がとれたから、これはこれでよかったと思うのか。ケガが治って初めての勝利を、ベストにはほど遠いけれど勝利は勝利と喜ぶのか、大した大会じゃないからなと捉えるのか。その先の結果はかなり違うだろう。
ピンストライプのユニホームに袖を通し、ジーターと絡んで得点したときのイチローの喜びようなど、時に見ているこちらの方が恥ずかしくなるほど無邪気だ。このところ万年Bクラスのマリナーズで、日々安打にこだわり続けたのも、小さな達成感の積み重ねだったのかもしれない。
素直に喜べ、小さな達成感がエネルギーになるから、40歳間近になっても続けられるのだろう。強い感受性を持ち、ちょっとしたことにも敏感に反応できるからこそ、ケガが少ないともいえる。身体のささいな変化を見逃さず、大ケガになる前に予防できている。故障者リスト入りは1度だけ。ケガが驚異的に少ない。

■「ネガティブなことが見つからない」
そんなイチローが、年齢による体の変化に気づいていないわけがないと思った。あるいは、ジーターが38歳の誕生日に語ったように、体が無意識にやっていた部分を経験が補っているのか。
「ま、昔できたことは今できない……」と神妙に話すと、やや間ができた。やっぱり衰えは感じているのかと思っていたら、突然、「残念でした」と言わんばかりに口調を変えた。「ということは見あたらないんですよね。昔、考えなかったことを考えるようになったということはあるけれど」。過去と現在の自分を客観的に比較しても「ネガティブなことが見つからないんですよね」。
疲れやすくなった、疲れがとれにくくなった、足が遅くなった、肩が弱くなった? 「今のところはないようです、と言っておけばいいですよね。ないと言えばまた……(批判もある)。鬱陶しいですね」
打撃については言及しなかった。打撃だけは落ちているのが打率や安打数などの数字で分かってしまう。それを「老い」という言葉で説明する人たちに、「お気の毒。年齢に対する偏った見方をしてしまう頭を持っている人に対して、お気の毒、と思うことはありますね」。
イチローにとってプロ野球選手とは「打つ、守る、走る、考える、これがすべてできる人」という。これまで突出した「打つ」力を発揮し、「守る」「走る」も超一流の域にあったが、今は「考える」部分も大きくなり、4つのバランスが明らかに変わってきている。その過程でイチローの頭の中には、今までなかった「アラフォー選手像」が見えているのかもしれない。

■年齢への偏った見方に先陣切り挑戦
常識をことごとく打ち破り、新しい世界をファンに見せてくれたイチローが、いま開拓しつつある未踏の領域。それは「年齢への偏った見方」に対する挑戦だ。年齢について聞かれると露骨にいらだちを見せるジーターも、似たようなことを考えている気がする。イチローはそれを「僕たち(世代)の使命」と言う。
「具体的な例が出てくることが大切。何十年もかかるでしょうね。論理的に説明しても、実例がないと説得力ないから。(既成概念を覆す)選手がたくさん生まれることですよ」
その先陣を切るのは自分のつもりだろう。これまでやってきたように。既成概念に縛られた「気の毒」な人たちはうるさくなるばかりだろうが、「僕、いろいろなことがあきらめられないんですよね」。性懲りもない自分を愛し、楽しんでいる。そんなイチローだから、ファンは見ていて楽しいのだ。

【日経新聞】



数年前に日本に来たアメリカ人と話した時「イチローのシアトルに住んでいる」ということで、彼の存在がアメリカではイコールJAPANとなっていることを思い出しました。
日本人として誇らしい今回の偉業達成です。
by kura0412 | 2013-08-24 15:42 | スポーツ | Comments(0)

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