「菅首相決断の危うさ」

菅首相決断の危うさ

国家指導者が重大な決定を下そうとするとき、もっとも注意しなければならないのが、ポピュリズム(大衆迎合主義)に陥らないようにすることである。大事なことは国家・国民の命運である。決して指導者の延命であったり人気浮揚が目的であったりしてはならない。私は必ずしも原子力発電推進論者ではないが、菅直人政権の中部電力浜岡原子力発電所の全面停止要請という結論の下し方には大変な危惧を覚える。まさしくポピュリズムそのものだからである。

活断層の上にのる形の浜岡原発について原発震災の危険性を指摘する専門家は少なからずいた。このたびも原発反対論の福島瑞穂社民党党首が、菅首相に浜岡停止を求めていたが、首相は取り合わなかった。その首相がなぜ変わったのか。4月末、経済閣僚が集まった席で仙谷由人官房副長官が問題提起をした。「いまのような反原発の空気が広まると、ドミノ現象ですべての原発が稼働できなくなる。それを食い止めるためにも一番危ないといわれる浜岡を止めて、ほかは大丈夫だと区別すべきではないか」。

この話に海江田万里経産相が乗り、海江田氏が浜岡を視察した。その上で停止要請の方針を決め、中部電力の水野明久社長、川勝平太静岡県知事らと会談して具体的な進め方を協議することになっていた。その報告を海江田氏から受けた菅首相は「自分が記者会見で発表する」と晴れの舞台を取り上げてしまったのである。しかも浜岡以外の原発は停止を求めないという大事な部分を無視してしまった。就任以来、菅首相はこのような電撃的な行動が多いが、それでも最初に言い出した仙谷氏自身「何があったのか」と周辺に首をかしげてみせるほどだ。

しかしこの停止要請は世間にはかなりの好感をもって受けとめられている。原発のある自治体、とくに知事は選挙で選ばれる身であることからいまや原発推進とはいいにくい状況である。現在わが国には原発は54基ある。そのうち運転中は24基で、残りは福島第一の6基や、検査中のものである。原発は13カ月に一度検査があるため、すべての原発が同時に稼働していることはない。問題は福島のあと、検査中の原発がすんなりと運転再開できるかどうかである。地元の反対も予想される。四国電力では伊方発電所3基のうち3号機が定期検査中である。浜岡も中電は安全対策をとったあとに再開すると強調しているが、これは強がりだろう。検査中の原発が運転再開できないとなると来年7月にはわが国で原発による電力はゼロになる。

ドミノ現象を食い止めようとして浜岡を停止させるという発想が、菅首相が割り込んだためにドミノの最初の一枚を倒してしまう結果となった。世間の評価は好意的で、おそらくこれによって内閣支持率はいくらか上昇するだろう。これに味をしめた首相が、今後、矢継ぎ早にポピュリズム的決断を下すおそれがある。民主党内部ではそのことを心配する向きが多く、菅首相を交代させるべきだと考えている政治家は自民党など野党よりも民主党内のほうに多い。

政権内部での意思疎通がうまくいかず、首相が地位に恋々としているようでは、この国を救うことはおぼつかない。原発を所有する世界各国はみな日本の対応を注視している。原子力発電所を他国に売り込むほど、その技術力を誇示しながら、危機管理ができていなかった日本のどこが問題だったのかを反面教師として見ているのである。月末のフランスでのG8サミットは議長がサルコジ仏大統領ということもあり、福島原発事故が最大のテーマとなることは確実である。

危機管理はきちんとしていたのか。大津波で建屋が壊されたあと、水素爆発を防ぐことはできなかったのか。あるいは初期段階で米国やイスラエルなどの技術提供を保安院の判断で断ったのは事実なのかどうか。さまざまなことが問われるだろう。
とくに米国は日本の対応に半ばあきれ顔だといわれる。原発内部のがれき処理などに当たっている作業員の身元をきちんと調査しているのかと問いただした米国は、首をかしげる日本側に、そのなかにテロリストがいるかもしれないとは思わないのか、と怒ったという話もある。「日本は安全だ」というキャンペーンが盛んだが、そんなことでは国際的風評被害の拡大は防げない。大事なことは国と国民の命運のためになることをしているかどうかである。国難にのぞんでそれができないようではこの国は奈落へ落ちてもしかたないが、日本人の底力で切り抜けられると思う。政治家はだめでも市井には立派な人たちがたくさんいるのだ。

【田勢康弘・愛しき日本】



飛躍的にアップすると思われていた支持率も微増に留まった結果をみると、既に国民は菅首相のその本当に目的を見透かしていたのかもしれません。
by kura0412 | 2011-05-24 18:09 | 政治 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


by kura0412

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ミラーを片手に歯科医師の本音

回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。

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