日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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「社会保障制度改革ビジョン提示・全世代型の社会保障へ転換」

宮本太郎さん(社会保障改革に関する有識者検討会座長)
 
日本の社会保障は、持続可能な制度へと再構築が迫られている。政府は6月の改革案取りまとめに向け、「社会保障改革に関する集中検討会議」を本格始動。消費税の増税論議とも相まって、改革への関心は高まっている。その議論の重要な下敷きとなるのが、「社会保障改革に関する有識者検討会」が昨年12月にまとめた報告書「安心と活力への社会保障ビジョン」だ。この検討会の座長であり、また麻生政権時代の「安心社会実現会議」、今回の集中検討会議でも委員を務める宮本太郎・北大大学院教授に、社会保障の課題と目指すべき姿を聞いた。

■現役世代のリスクに対応できない現行制度

―急速な少子・高齢化や経済情勢の変化に伴い、現行の社会保障制度は、さまざまな不具合が指摘されています。
検討会が報告書で提言したポイントの一つは、「全世代対応型」の社会保障に転換すべきだということです。現行の社会保障制度は、妻や子を養う男性稼ぎ主の安定雇用を軸とした仕組みになっており、狭い意味での社会保障サービスは、人生後半に集中しています。ところが、雇用や家族の形が変化した今、新たな生活リスクに社会保障は対応できず、高齢世代を支えるべき現役世代が弱ってしまっています。
就業率の低迷や非正規雇用の増加は、所得の低下だけでなく、働いて能力を発揮する機会が減少することも意味します。2005年に3対1だった生産年齢人口と高齢人口の比率は、55年には1対1に近づくと推計されていますが、働く人口が少なければ、この「肩車」すらも成り立たない。高齢世代に偏りがちだった社会保障を見直して、若い世代をきちんと支えなくてはならないのです。世代間の不公平とか利益対立といった構図が描き出されがちですが、むしろ世代間の連携・連帯こそが問われていると言えます。

―現役世代も重視した「全世代型の社会保障」とは、どういったものでしょうか。
これまでの社会保障の延長で、現金給付による所得保障をすればよいのかと言うと、そうではありません。全世代型にするということは、社会保障の対象を広げていくと同時に、社会保障の機能そのものを転換するということなのです。
現役世代を支える目的は、高齢世代を支える力を付けてもらうことにあります。それには、雇用を中心として、どんどん社会に参加し、力を発揮してもらわなくてはならない。社会保障は、その条件を整える「参加保障」「参加支援」であるべきです。
実は、これは介護保険制度の理念でもあります。日本の社会保障をめぐる議論に「自立支援」の考え方が初めて登場したのが、介護保険の論議だったのは象徴的です。介護保険制度は、「高齢者が生き生きと社会に参加し続けられる条件づくりが、支援の根幹である」と位置付け、それまでの「福祉」という言葉の響きを根本的に変えました。制度については、いろいろなゆがみや問題も浮上していますが、日本にとって、非常に大きな経験でした。まさに、この「参加支援」の考え方を現役世代にも対象を広げ、今こそ本格的によみがえらせなくてはならないと思います。

■「土建国家」から「保健国家」へ

―参加保障は雇用を軸に、ということですが、安定的な雇用の場は少なくなっています。報告書では、新たな雇用の場として、医療・介護分野に注目されていました。
日本の雇用は、「土建国家」に代わって「保健国家」が台頭してきていると思います。
実は、02年度までの国の労働力調査には、産業分野として「医療・福祉」の項目すらありませんでした。それが今、ものすごい勢いで就業者数が増えているわけです。02年度から09年度までの間で、「土建国家」関係の雇用が約100万人減り、517万人になっているのに対し、「保健国家」関係の雇用は約150万人増の621万人になっています。しかも、そのうち470万人は女性です。
つまり、男性中心の土建国家から、女性中心の保健国家へと、すさまじい転換が起きているのです。これが、わくわくする形で伝わらないのは、医療・介護分野の雇用条件の悪さや離職率の高さという実態があるから。だからこそ、この分野の可能性を十分に引き出す手だてが、もっと打たれなくてはならないと思います。
 いずれにせよ、医療や介護、子育て支援、公的職業訓練といった公共サービスが社会保障の柱になっていくということは、社会保障と経済の垣根が、次第に取り払われ、両者が相乗的な関係に入っていくということでもあります。

―報告書では、目指すビジョンの一つに「アジアのなかの安心先進国」が掲げられています。その中では「介護や看護の人材育成、外国人患者の受け入れ」などを進めることが必要だとされていますが、この点は、医療関係者の間でも意見の分かれるところです。
有識者検討会では、この部分を特に掘り下げたわけではないので、個人の考えとして述べたいと思います。わたしは、自由診療には否定的だし、慎重な立場ですが、例えば医療ツーリズムなどは、公的な医療保険の維持、発展と両立し得ると考えています。
EPA(経済連携協定)で多くの外国人看護師候補者、介護福祉士候補者が来日していますが、日本語の習得などの面から、国家試験に合格するのはなかなか難しいのが実情です。そのために国家試験を見直して外国の労働力を入れるという方向よりは、彼らの堪能な英語力と医療ツーリズムをリンクさせ、働く場をつくっていけばよいのではないか、というイメージを持っています。
日本医師会などが反対しているのは承知しています。確かに慎重に進めるべきですし、あくまで公的な保険制度の枠を与件としますが、その上で、いろいろな実験を試みる価値はあるのではないでしょうか。

■フリーアクセスが日本の医療制度の財産

―社会保障改革の中で、医療制度については、どうあるべきだと考えますか。
「基本的には誰もがその日のうちに医者にかかれる」という点で、日本の医療制度ほど、効率的な医療制度はありません。GDPの8%ちょっとの医療費で、これほどまでのアクセシビリティーを実現できた国は皆無です。このたぐいまれなアクセシビリティーは、日本人の長い健康寿命にも直結している。これは、国民の大きな財産です。医療体制をめぐっては現在、地域ごとに役割分担をして、急性期病院への支援を充実させて、という議論がなされていますが、まず、このアクセシビリティーが財産だというところから出発する必要があると思います。
どの国の医療制度にも、強みと弱みがある。弱い点をほじくり出して、別の仕組みを接ぎ木するような方法では、改革は実現しません。強みを引き出し、発展させていくことこそが大切です。今の日本の医療制度の強みは、このアクセシビリティー、フリーアクセスにあると思います。欧米流の仕組みを導入するといったことよりは、「みんなが医療サービスを受けられる」という条件を出発点に、急性期病院の支援や勤務医の疲弊などへと視野を移していくというアプローチが必要ではないかと考えています。

―自公政権時代から社会保障改革の検討の場に参加してこられ、また、これから議論が本格化する「社会保障改革に関する集中検討会議」にも加わっておられます。
社会保障をめぐる議論は、これまでの蓄積があります。それは政権交代をまたいでも蓄積されてきたもので、ある意味では「超党派的」なものだと思っています。しかも、天から降ってわいたような理念ではありません。これまでの日本が築いてきた「雇用を軸にした安心社会」をいかにバージョンアップさせるかという、この国の発展の道筋に寄り添った議論でした。しかし、必ずしも国民との間で理解が共有されていたわけではなかったのは、残念ながら事実です。
とはいえ、日本の社会保障は、もはやそれでは済まされない段階になってきました。集中検討会議は、これまでの蓄積を国民とシェアすると同時に、まだ大きな理念にすぎないものを各論的に深める場になってほしいと思います。

【キャリアブレイン】




自民党政権下でまとめられた「社会保障会議」「安心社会実現会議」、そして、民主党での「社会保障改革に関する有識者検討会」など、一連の社会保障制度改革の骨格作りに関与してきた方だけに、不透明な政局であっても、この考えが一つのベースになるかもしれません。
by kura0412 | 2011-02-19 14:47 | 医療政策全般 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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