日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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「医療の輸出」

[解説]富裕外国人を検診 医療ツーリズム

現在は検診中心、将来は「輸出」も検討
【要約】
・地域振興の糸口として医療ツーリズムが注目される
・国内患者が後回しにならぬよう、歯止め措置も必要
・国際的に評価されるよう医療のあり方を見直すべきだ

中国やロシアなどの外国の富裕層に日本の高水準の医療を提供する医療ツーリズムが、新たな成長分野の一つとして注目を集めている。政府の新成長戦略には「国際医療交流(外国人患者の受け入れ)」として盛り込まれた。
具体的には、外国人の滞在期間などを弾力化する「医療滞在ビザ」の創設や、受け入れ医療機関の認証制度、医療通訳育成事業などの施策を推進する。日本政策投資銀行の試算では2020年時点で日本への医療ツーリズム客は43万人の潜在需要があり、市場規模は5500億円にのぼる。
政府が旗を振り始めた背景には、近年、先端医療や医療費節約を目的にした海外渡航者が世界的に増えていることがある。アジアでは、タイやシンガポール、韓国などが国を挙げて受け入れに取り組んでいる。特にタイへの医療ツーリズム客は、今年200万人に達する勢いという。遅ればせながら、日本も市場に乗り出した、というわけだ。

国内の医療機関が糸口としているのが検診だ。日本は、MRI(磁気共鳴画像)、PET(陽電子放射断層撮影)など高価な検査機器の人口当たりの保有台数は世界トップクラスだが、地方を中心にその稼働率が低い病院が少なくない。病院経営にも響いている。検診で稼働率をアップさせ、合わせて観光を組み合わせたツアーで、地域振興を図ろうという取り組みが全国で動き始めている。
長崎県や福島県では、上海との直行便を利用し、中国人向けにPET検診を含めた観光ツアーを開始。栃木県日光市の独協医大日光医療センターは4月に観光医療科を設け、世界遺産の社寺に来る外国人観光客の取り込みに力を入れる。
糖尿病検診と観光を組み合わせたツアーを企画する徳島県は「検診は、東京や大阪に負けないための観光ツアーのオプション」(観光企画課)と言う。
ただ、こうした検診を軸に置く進め方について、真野俊樹多摩大教授(医療経営学)は「検診を医療ツーリズムの売り物にしている国はない。治療目的の患者は数が少ないので、当面は検診中心でいいだろうが、10年後も同じ状況かどうかは分からない」と指摘する。検査機器頼みでは、ターゲットとしている中国やロシア国内に先端の検査機器が普及すれば日本に来る意味はなくなる。

日本の医療の今後を考えれば、政府が力を入れるべきは、わが国が得意とする消化器系の疾患治療や、将来的には他国に先がけた再生医療など先端医療を創出し、医療ツーリズムの核にすることだ。
そして、世界最高水準の医療を提供するなら当然、海外で普及している医療機器や医薬品の国内承認遅れという現在の状況は改善する必要がある。

医師不足などによる「医療崩壊」が指摘される中、医療機関が自由診療の外国人を優先して国民を後回しにしないよう、何らかの歯止め措置も必要になる。
さらに、「医療の国際化」という視点で取り組むなら、外国人の受け入れだけでなく「医療の輸出」も検討すべき課題だ。
世界の医療事情に詳しいキヤノングローバル戦略研究所の松山幸弘主席研究員は「世界は、むしろ医療ツーリズムから病院・医学部の直接輸出の時代」と指摘する。米国の名門大学医学部やクリニックは続々と中東やカナダに海外進出しており、「海外に出るだけの力がなければ、医療ツーリズムでも勝てない」と話す。
医療ツーリズムを入り口に、日本の医療が国際的に評価されるよう、その在り方を見直すべきだ。

【読売新聞】



「医療の輸出」 これは広義に捉えて歯科界でも検討する価値はありそうです。
by kura0412 | 2010-07-27 14:14 | 医療政策全般 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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