『「高福祉・高負担」国家を目標に』

【正論】青山学院大学教授・榊原英資 「高福祉・高負担」国家を目標に

いよいよ11日に参議院選挙が行われる。民主党政権が成立してから1年弱。この間のパフォーマンスを評価する機会になるわけだ。昨年9月の政権交代は、実は、戦後初めての本格的な権力の移動だった。1993年にも政権交代はあったが、連立政権で、自民党が社会党、さらには公明党などと連立することによって本格的な権力の移動には至らなかった。
今回の民主党政権は少なくとも次の衆議院選挙までは続く。解散がなければ、次期衆院選は2013年、少なくとも4年、次期衆院選で勝てば、4年以上続く長期政権になる。

≪何が変わるかが見えない≫
戦後初めての本格的政権交代ということで国民の政権に対する期待は大きかった。鳩山政権の当初の支持率は70%を超えていたのだ。しかし、今までのところその期待を裏切られたと感じている人々はかなり多い。もちろん、期待が高すぎたということもあったし、1年弱でできることは限られている。鳩山政権の支持率が加速度的に低下したのは、期待と現実の落差によるところが少なくなかった。
菅総理の登場によって支持率は持ち直しているが、今後とも高い支持率を維持できるかどうかは定かでない。総理は変わったが、閣僚の多くは留任。政策的に何かが大きく変わるのかどうかははっきりしない。
たしかに民主党政権になってマニフェストに掲げられる政策はかなり実行されてきている。子ども手当の支給、高校授業料の無償化、高速道路無料化の実験などである。ただ、どうももう一つ姿勢がはっきり見えない。子ども手当も当面半額、あとは財源問題も勘案しながら、保育園などの現物支給に変えることも考慮されている。高速道路の無料化も今後どうなるかははっきりしない。
参院選の争点として消費税の10%への増税が浮上してきている。自民党がイニシエートし(先んじ)、民主党がそれに乗った形だ。世論を見ながら菅総理の発言は揺れているが、ギリシャ危機に端を発した財政再建は世界各国の主要な政策課題となり、日本もそこに加わった感じである。

≪世界同時不況の兆しも≫
たしかに、国債などの発行残高が国内総生産(GDP)の200%に近づいている日本にとって財政再建は重要な政策課題だ。ただ、日本の場合、ギリシャなどと違って家計の貯蓄残高がグロス(総計)ではGDPの300%弱、ネット(純計)でも220%と、当面、危機的状況になっているわけではない。日本の国債の95%は日本人によって所有されており、国際的には日本は世界最大の債権国でもある。ただ、家計の貯蓄率はこのところ大きく減少し、財政赤字をかなり下回っている。このままの状況が続けば、5年から10年先くらいに財政が危機的状況に陥る可能性はある。
しかし、数年の余裕はある。景気が大きく後退するようなことがあれば、躊躇(ちゅうちょ)なく財政出動をすべきだろう。今のところ日本の景気回復は順調だが、夏以降は不透明。世界同時不況の兆しが次第に強くなる中で、日本だけが堅調というわけにもいかないだろう。

≪「少子化」の解消も視野に≫
今すぐということではないが、将来の消費税増税は必要だろう。しかし、その時は政権政党たる民主党は歳出面を含む全体としての政府のあり方を国民に示す必要がある。ただ歳入が足りないから増税だといっても、多くの国民は納得しないだろう。
さまざまなビジョンを描くことが可能だろうが、筆者はヨーロッパ型、特にフランス型の福祉国家の建設を目標にすべきだと考えている。高福祉高負担である。現状日本の国民負担率(税プラス社会保障料)は39%、負担率35%のアメリカとともに経済協力開発機構(OECD)諸国の中では小さな政府グループに入る。
他方、フランスは61%、ドイツ、イギリスはそれぞれ52%と48%。ヨーロッパ諸国は大きな政府を維持している。なかでもフランスはスウェーデンの65%には及ばないが、西ヨーロッパの中では最も大きな政府を持っている。
日本の社会福祉は基本的には年金と医療。対象者の多くは高齢者だが、フランス等ヨーロッパ諸国の福祉は出産、育児、教育などに手厚く、若年層にむけたものが多い。ちなみに、出産、育児、教育給付に一般的家族手当を加えた家族関係の支援はフランスでGDPの3・00%、日本は0・81%である。また、フランスでは保育園(3歳からほぼ全員入る)から大学まで公立学校は無料。グラン・ゼコールというエリート教育のための大学では公務員なみの給与を支払っている。
こうした政策の結果、フランスの出生率はついに2・0を超えた。先進国では、2・0を上回るのはアメリカとフランスのみ。人口の増加は最大の成長要因でもある。少子化に悩む日本はフランスに学ぶべき点が多々あるのではないだろうか。

【産経ニュース】



こうゆう考え方もあります。
ところろで大蔵省ODの榊原氏はまた大学変わったのですね。
by kura0412 | 2010-07-06 17:54 | 経済 | Comments(0)

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