顎骨壊死の防止に向け、医科歯科連携強化を
骨粗鬆症学会アンケート結果より
学会レポート | 2016.11.04 07:05

これまで治療実態に応じた骨折予防効果を大規模に検証してきた骨粗鬆症至適療法研究会(A-TOP研究会)では昨年、顎骨壊死に関する緊急アンケート(A-TOP調査)の結果が報告されたが、対象者数が少なかったため、その信頼性には若干の疑問が残された。そこで、松本歯科大学歯科放射線学講座教授の田口明氏は、日本骨粗鬆症学会所属の全医師を対象にアンケートを実施し、より妥当性の高い結果を示すとともに、種々の回答項目から、顎骨壊死を防止するためには、医科歯科連携をよりいっそう強化する必要性があると第18回日本骨粗鬆症学会(10月6~8日)で訴えた。

休薬しなかった群でも抜歯後の顎骨壊死はなし
A-TOP調査では、ビスホスホネート(BP)製剤やデノスマブなどの骨吸収抑制薬を抜歯前に休薬すると、顎骨壊死を予防することなく、骨折リスクを上昇させ、骨粗鬆症治療を妨げる恐れがあると示唆されたが、調査対象が206人と少数であったため、その調査の妥当性には議論の余地が残されていた。今回実施したアンケートでは、A-TOP調査時の3倍を超える629人から有効回答が得られた。回答者の診療科は約74%が整形外科、約13%が内科であり、この割合はA-TOP調査とほぼ同様であった。
アンケート結果によると、骨吸収抑制薬による治療中、抜歯前に歯科医師から休薬依頼があった場合は83.1%が休薬すると答えていた。休薬期間が3カ月未満、3カ月以上と答えた群の骨折および顎骨壊死の発生率は、前者でそれぞれ約3.6%、0.7%、後者で約5.3%、約1.6%となり、後者の方が骨折、顎骨壊死のリスクが高かったという。
また、休薬しなかった場合の抜歯の有無を尋ねる問いでは、52.8%が抜歯をしていたが、抜歯後の顎骨壊死は発生しなかった。一方、休薬後における骨粗鬆症治療の状況について問うと、16.8%で治療中止を経験していたという。

歯科医師への口腔ケア依頼、医科歯科連携はいずれも低い割合
顎骨壊死の発生には口腔内に常在する放線菌が関与すると考えられていることなどから、口腔内衛生環境の管理も重要であるが、骨吸収抑制薬による骨粗鬆症治療前に歯科医師に口腔ケアを依頼しないと回答した医師が約60%に達していた。加えて、骨吸収抑制薬を投与している骨粗鬆症患者について、医科歯科連携がなされているかという設問に対しては、71.5%がしていないと回答した。
以上の結果はおおむねA-TOP調査の結果と同様であったことから、田口氏は「以前行われたA-TOP調査の妥当性が担保された」と述べた。加えて、同氏は「骨吸収抑制薬の休薬や治療中止により骨粗鬆症患者の抜歯が遅滞すると、口腔内の感染が拡大し顎骨壊死が増加する懸念がある。つまり今回のアンケートの結果は、医科歯科連携が不十分であると、感染症の感染源が放置され、顎骨壊死を引き起こしてしまう恐れがあることを示している」と警鐘を鳴らし、より緊密な医科歯科連携の重要性を説いた。

顎骨壊死問題解決の一助に
成人病診療研究所 所長・白木正孝氏
顎骨壊死に関する実態調査から驚くべき結果が示された。歯科でルーチン化した休薬がこの問題の解決にならないこと。骨吸収抑制薬使用前における歯科検診が医師の間で常態化していないこと。この知見は顎骨壊死をめぐる問題の解決に向けた一助となることが期待された。

【Medical Tribune】




実は私が昨日参加した日本有病者歯科医療学会・学術教育セミナーでもこの問題が指摘されました。そして、この顎骨壊死に関しては、以前の考えから少し変化しているようです。
# by kura0412 | 2016-11-07 11:58 | 歯科 | Comments(0)

“過激”な委員が集結した「規制改革推進会議」

構造改革を進めるうえでカギを握る会議
国の規制の具体的な見直しを議論する政府の「規制改革推進会議」が本格的に動き始めた。安倍官邸に設置された会議体は「経済財政諮問会議」「働き方改革実現会議」「未来投資会議」など乱立しているが、その中で最も“改革色”が強いのがこの会議。具体的な成果が見えないと批判されるアベノミクスの構造改革で、どれだけ実効性を上げられるかはこの会議にかかっていると言えそうだ。
いくつもの会議体がある中で、その時々で重要な役割を担う会議がある。小泉純一郎内閣から第1次安倍晋三内閣にかけては、「改革の司令塔」としての役割を担ったのは経済財政諮問会議だった。首相が議長を務め、民間人議員も加わった会議体をフル活用することで、首相のリーダーシップを発揮する場となった。毎年6月に「骨太の方針」を示すことで、改革を進めた。

経済財政諮問会議からは、大胆な改革案が出にくくなった
経済財政諮問会議が主導する改革は霞が関の各省庁の権限を抑え込むことになることから、官僚組織からは敵視されてきた。徐々に包囲網が作られ、大胆な改革プランがなかなか出しにくくなった。
第2次安倍内閣以降は、民間人議員の発言力が大きい「産業競争力会議」(議長・安倍首相)が設置され、改革の司令塔の役割を担ってきた。毎年6月に出される「成長戦略」を策定するのが主要な役割だが、そこに改革プランを盛り込むことで各省庁を動かした。
6月には「成長戦略」と、経済財政諮問会議が出す「骨太の方針」、規制改革推進会議の前身である規制改革会議がまとめた「規制改革実施計画」の3つが同時に閣議決定されるパターンが定着していた。
今年の夏はこうした官邸の会議が大きく模様替えされた。産業競争力会議は休止されて未来投資会議に衣替えされたほか、規制改革会議は規制改革推進会議として新装開店した。

医療、農業、雇用分野を「岩盤規制」だと名指し
安倍首相は「アベノミクスの一丁目一番地は規制改革だ」と繰り返し述べている。さらに医療、農業、雇用分野を「岩盤規制」だと名指しして、その改革を強調してきた。岩盤規制については「国家戦略特区」を使って穴を空ける試みが繰り返されてきたが、全国一律の規制改革はなかなか進んでいない。背景には従来の規制改革会議が非力だったからだ、という指摘もある。主要会議体の中で規制改革会議だけが首相が議長を務めていないことから、政治のリーダーシップを発揮しにくいという事情もあった。
そんな中、9月12日に初会合を開いた新生「規制改革推進会議」は改革派が名を連ねた。大田弘子・政策研究大学院大学教授を議長に、総勢14人の民間人で構成した。大田氏は第1次安倍内閣時代に民間人閣僚として入閣、経済財政担当相を務めた。当然、安倍首相の信任も厚い。従来、この手の会議は財界人がトップを務めてきたが、学者の大田氏を据えたのは安倍首相とのつながりを重視した結果とも言える。
ナンバー2の議長代理には金丸恭文・フューチャー会長兼社長を据えた。菅義偉官房長官とのパイプが太く、安倍首相にも信頼されている。金丸氏は前身の規制改革会議のメンバーで農業ワーキング・グループの座長を務めた。JA全中(全国農業協同組合中央会)の改革案を取りまとめるなど、強い農業の再生に向けた農協改革で手腕を発揮。足下では生乳の生産・流通に関する規制の改革に力を注いでいる。
金丸氏は自民党農林部会長の小泉進次郎・衆議院議員とも緊密に連携している。金丸氏のこうした人脈ネットワークの広さによって、難題だった農業改革に切り込むことを可能にした。

【磯山友幸・日経ビジネス】
# by kura0412 | 2016-11-04 11:54 | 経済 | Comments(0)

デフレに逆戻り。経済に魔法なんかありません。

黒田日銀による金融超緩和政策によってデフレから脱却すると言ってももう誰も信用しなくなりました。総務省が28日発表した9月の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合が99.6で7ヶ月連続の下落となりました。
デフレを脱却すれば、経済の成長を取り戻せるという魔法の言葉をマスコミは信じたのか、まるでテレビジャックしたようにリフレ派の経済学者の人たちが登場した時期もありましたが、実体経済が変わらないのに、金融政策だけでデフレ脱却、めでたく経済成長というのは眉唾ものだ感じていた方が多かったのではないでしょうか。経済界も信用しておらず、積極的な投資や賃上げを見送り、結局は円安で得た利益は、安倍内閣が強く要請したにもかかわらず、内部留保に回りました。
振り返ってみると、リフレ派の学者よりも普通の人たちの考えかたや感触のほうがあっていたということです。それにしても金融緩和に疑問を唱えると、まるで魔女刈りのように非難していた学者さんがいたことも気になったところです。
結局は、経済に魔法はなく、産業構造を変えつつ、サービス産業の生産性を高めていく王道でしか日本の経済再生の道はないということでしょう。そのためにはなにに重点を置き、どんな姿を実現するのかの新鮮なビジョンを打ち出すことでしょうが、自民党も種切れ、野党第一党の民進党からも共感できるビジョンがでてきません。
きっと目指しているのが、新しい価値観やビジョンで競うことではなく、個々の政策の対案づくりで競うというレベルに置いていることが致命的なのでしょう。
新しい発想がでないというのなら、腰をすえて、教育投資世界一なり、人材づくりと海外からの人材誘致を目指せばいいのですが、政治と官僚とスポーツ界がつるんで、人よりは箱モノという古い体質を東京オリンピックでも見せてしまいました。

地方主権の促進や、とくに首都圏一極体制から脱却し、産業の地域多極化をはかることが、働き方革命を促進し、また豊かな多様性を生み出すことにつながり、生産性のアップの有効な切り札になってくるはずです。それを促進するには、まずは国民のコンセンサスづくりから始まりますが、それは政治の役割なので、政治家のみなさまには頑張ってもらいたいものです。
そういえば地方といえば、業種がITだからでしょうか、沖縄宜野座村から企業誘致の案内をいただきましたが、大阪でも充分にローカルのメリットがあります。
周りを見渡せば、民間は頑張っていると感じます。というか、成長意欲の高い企業の方から問い合わせがくる仕事なので、バイアスがあるかもしれませんが、創意工夫で再び来たデフレ時代を切り抜けていこうという意欲がもしかすると日本を衰退から救うのではないでしょうか。

【大西 宏・マーケティング・エッセンス】
# by kura0412 | 2016-11-04 11:49 | 経済 | Comments(0)

口腔がん対策、データ収集などで実態把握を- 推進協議会で日歯副会長が提言

日本歯科医師会(日歯)の佐藤保副会長は、26日に開かれた厚生労働省の「がん対策推進協議会」に参考人として出席し、口の中やその周辺にできる口腔がんの実態を把握すべきだと提言した。口腔がん対策については委員から、歯科衛生士も交えた医科・歯科連携を進めるべきとの声が上がった。

同協議会では、来年6月に施行予定の第3期のがん対策推進基本計画の策定に向けて議論している。佐藤氏は、国内で口腔がん治療などのデータを収集するシステムが整備されておらず、実態を把握することが困難だと指摘。また、専門的な歯科医が不足していることに加え、患者を歯科医療機関から専門的な医療機関に紹介する歯科医の育成が不十分なため、口腔がんの早期の発見・治療につながりにくい現状を問題視した。
その上で、データ収集やスクリーニングの方法の確立による口腔がんの継続的な実態の把握に、国を挙げて取り組む必要性を強調。さらに、予防や早期の発見・治療といった対策も推進すべきだとした。
意見交換で、若尾直子委員(NPO法人がんフォーラム山梨理事長)は、がん診療連携拠点病院などで「歯科衛生士がラウンド(巡回)するのが当たり前のようになってほしい」とし、歯科衛生士を含めた医科・歯科連携を推進する必要があるとした。
これに対し、佐藤氏は「(口腔がん対策として)歯科衛生士のあり方をしっかりと示していきたい」と述べた。

【キャリアブレイン】
# by kura0412 | 2016-11-02 09:21 | 医療政策全般 | Comments(0)

安倍首相に「早期解散見送り」を決断させた、驚きの選挙予測
86選挙区で敗北の可能性アリ?

首相・安倍晋三は衆院解散・総選挙の時期について「来年1月解散・2月総選挙」をとりあえず選択肢から外した。よほどのことがない限り、この時期には行わず、2018年暮れの衆院議員任期満了をにらんで「来年秋以降~再来年年頭」を軸に解散時期を模索する構えだ。
来年年頭に解散しないのは、自民党総裁の任期が「2期6年」から「3期9年」にスムーズに延長されること、来年5、6月ごろに実現する見通しの衆院定数削減・是正前に解散すると「定数削減逃れ」という批判を招くこと――などが理由だ。
だが、真相は自民党が勝てない、公明党を含め政権維持に必要な過半数の議席を確保しても、議席を大幅に減らす可能性があるからではないか。

若手議員の後援会作りは3割以下
自民党は10月中旬から、衆院当選1、2回の若手議員約120人を3グループに分け、選挙対策の勉強会を始めた。席上、幹事長・二階俊博は「次に選挙があるのは衆院であることは間違いない。そろそろ準備をしておく。(衆院解散は)いずれ来る」「選挙は一人ひとり、個人個人の問題だ」とあいさつし、発破をかけた。
24日の会合では官房副長官・萩生田光一が「皆さんの活動状況次第では候補者を差し替えるというのが安倍総裁の意向だ」と述べ、候補差し替えに言及した。
前回の衆院選から約2年、自民党が政権を奪還した12年12月の衆院選からは約4年が経過している。にもかかわらず、今になって選挙対策の勉強会を開いたり、候補者差し替えを検討したりしていることに、自民党の危機感が表れている。
かつての自民党議員なら、選挙対策を指導する必要はなかった。選挙運動と後援会づくりは一体であり、立候補を決断した段階から後援会作りに励んだ。それが、多少逆風が吹いても当選する源泉だった。元首相・田中角栄の「越山会」が有名で、元首相・竹下登は「角サンの票は一票、一票を鋲(びょう)で止めてあるようだ」と語っていた。
ところが、今の当選1、2回議員の選挙運動の実態について、自民党実力者はこう語る。
「しっかりした後援会を作っているのは3割に満たないのではないか」

中堅議員も、彼らの怠慢ぶりに驚きを隠さない。
「彼らが初めて当選した12年暮れの衆院選直後、13年元日に皇居で行われた新年祝賀の儀に、初当選したばかりの議員がいっぱい来ていた。私は、大差を付けて当選できるようになってから出席した。それまではずっと欠席していた。元日は、地元の神社を回るもんですよ。そこで、お参りに来た有権者に当選の御礼をする。年頭から選挙運動を始める気持ち、意識を、そもそも持っていないんですね……」
新年祝賀の儀に限らず、国会議員に案内状が出される会に当選1、2回若手議員が出席している姿を見かけることが多い。「当選1回議員の最大の仕事は2回目に当選すること」と言われ、若手議員が選挙区を丹念に回るのは今や昔、となってしまったようだ。 

野党一本化なら自民は86議席減?
前回の衆院選は、12年衆院選から約2年で行われた。その結果、12年初当選組119人のうち104人が当選を果たした。
「小泉チルドレン」と言われた自民党の05年初当選組83人が09年衆院選で10人(旧みんなの党を含む)に、「小沢チルドレン」と言われた旧民主党の09年初当選組143人が12年衆院選で11人(同)に、それぞれ激減した。これに比べ、12年当選組の大半が生き残った。
議席が大きく変動した衆院選は前回との間が4年、3年4カ月と空いていた。しかし、12年当選組は約2年で次の選挙を迎えた。14年衆院選は旧民主党批判が強く、安倍政権が順調な時期だった。かつ、民主、共産、社民、生活の各党がバラバラに戦っていた。
ところが、次期衆院選は14年とは様相が異なることになりそうだ。野党4党が調整を水面下で進め、候補者を一本化する公算が大きい。
「野党(候補)が一本化された場合、前回の衆院小選挙区獲得議席のうち、単純な足し算で86選挙区は勝てない可能性もある」
幹事長代行・下村博文は自民党の選挙対策勉強会でこう語り、危機感をあらわにした。自民党の衆院議席は現在、自民系を含め294。下村が指摘する86選挙区すべてで議席を失ったら208。公明党の35議席を加えても、定数削減後の過半数233議席をやっと上回る程度に落ち込むことになる。
もちろん、自公両党はそれでも過半数を確保できるのだから、政権を維持する。しかし、自民党が大きく議席を減らすなら、18年9月の自民党総裁選で安倍の3選に黄信号が点滅することになるだろう。
その時に敗北の責任を問われないためには、14年11月の解散時のように安倍の主導権で解散するのではなく、多くの自民党議員が「この時期ならやむを得ないな」と思われるような解散時期を選ぶ必要がある。
その時期は任期満了の1年前あたり、つまり来年秋からだろう。それまでは当選1、2回議員に地盤を固める、最後の猶予期間となるに違いない。

【ニュースの深層・田崎史郎】
# by kura0412 | 2016-11-01 15:17 | 政治 | Comments(0)

「食」が「学問」になる日
立命館大学が食科学部設置構想を推進

2018年4月、立命館大学は食科学部の新設を構想中だ。食を総合的に研究し、教育する学部が日本にできるのはこれが初めて。世界的に見てもほとんど例のない画期的な学部になる見込みだ。少子化の時代に新学部を開設するのは立命館大学にとっても大きなチャレンジ。食の安全や飢餓が人類史的な問題となっている中で、食について高度で専門的な知見やマネジメントスキルを持つ人材を育てることは、グローバルに見ても大きな意義がある。このチャレンジングな取り組みには、国内はもとより海外からも大きな注目と期待が寄せられている。
食を総合的に研究・教育する

「今、世界は食をめぐる大きな問題に直面しています」
食科学部開設の目的を問うと、立命館大学経済学部の井澤裕司教授はそう話し始めた。行動経済学の研究者として知られる井澤教授は、食科学部設置委員会の事務局長も兼務している。
「かつては食の問題といえば、量だけの単純な問題でした。けれども今は飢餓と肥満の問題が併存し、食の安全、流通、あるいは食文化などが複雑に絡み合っています。もはや一つの学問分野だけでは解決不能ですし、従来からの価値観やツールだけでも解くことはできません。食科学部の開設には、そういう社会問題を解決したいという強い思いが前提としてあります」
食べることは、人間生存の本質にかかわること。人類はどこで何をどう食べてきたのか、食べることの倫理、哲学はどう変容してきたのか、そうした深い教養がなければ食の問題は解決できないし、一方では科学や技術に関する深く専門的な知識も必要になる。
「だから食科学部では、フードマネジメント、フードカルチャー、フードテクノロジーを総合的に研究し、教育します。海外には食科学系の大学や学部がすでにありますが、ここまでトータルに食をとらえた高等教育機関はほかにありません」
特に重視しているのが、複雑な問題を解決する能力としてのマネジメントスキルだ。
「日本のサービス産業は生産性が低いという弱点があります。サービス産業のかなりの部分が食関連産業であり、その生産性を上げるために何よりも必要なのが教育です。マネジメントできる人材を育てることは、食科学部の大きな目標の一つです」

グローバル志向も特徴の一つ
こうした動きを産業界はどう評価しているのか。外食大手のロイヤルホールディングスの代表取締役会長兼CEOで、日本フードサービス協会の会長も務める菊地唯夫氏が外食産業界を代表してこう語る。
「食科学部設置の計画を知ったときには、日本でもようやくこういう動きが出てきたかという思いがしました。海外には食やホスピタリティの学校がたくさんあるのに、日本ではなぜ食というと農学や栄養学などに限定されているのだろうかと長年思っていたからです。外食産業界は、業界全体を俯瞰してみることのできる人材を必要としており、フードマネジメントを総合的に教育する学部ができることは、業界としても大歓迎です」
もう一つ、食科学部が重視するのはグローバル志向だ。食といっても和食だけに価値を見出すのではなくグローバルに食をとらえ、グローバルな観点で問題解決に寄与できる人材を育てる。そのために食科学部では「語学教育にも特徴を持たせる予定だ」と井澤教授は言う。
「英語教育のレベルは立命館大学でもトップクラスにします。学生には、ビジネスに使える、発信力のある英語を身に付けさせます。授業時間は本学の文学部や国際関係学部と同等。近年は英語専修の流れが強い中、あえてイタリア語等の第二外国語も必修です」

ル・コルドン・ブルーと提携
ここで注目すべきなのが、ル・コルドン・ブルーとの提携だ。
立命館大学は、文化と料理の関係を考察するガストロノミーやホスピタリティ、マネジメントの世界的な教育機関であるル・コルドン・ブルー・インターナショナルとの大型提携を進めていこうとしているのだ。ル・コルドン・ブルーは世界でこれまでに約30余の大学や専門教育機関とパートナーシップを結んでいるが、日本の大学では立命館大学が初めての本格的な提携大学となる。この提携について、ル・コルドン・ブルー・インターナショナルのアジア代表兼ビジネスディベロップメント・ディレクター、シャルル・コアントロ氏は次のように述べている。
「数年前からパートナーとなる日本の大学を模索していました。立命館大学とは何度も話し合った結果、未来志向のビジョンで多くの意見が一致しました。食科学部のキャンパスにル・コルドン・ブルーの教育施設を設けることも検討しています。日本では2020年に向けて海外からの観光客が急増しています。しかしそれに対応するホテルや飲食店のスタッフのレベルが追いついていません。エデュケーションプロバイダーとして私たちの役割、責任を果たしていくうえでも、立命館大学とパートナーシップを結ぶことは大きな意義があると考えています。食文化やホスピタリティの高等教育機関として食科学部は間違いなくワールドクラスのキャンパスになるでしょう」
一方、立命館大学は、日本の文化人類学研究の中心的存在である国立民族学博物館とも協力関係を結んでいる。文化人類学は食文化や食の研究をしてきた長い歴史があり、食科学の研究は文化人類学の領域とも密接なつながりを持つ。そのため立命館大学は国立民族学博物館と食文化の共同研究を推進するための学術交流協定を締結しているのだ。2014年には国立民族学博物館と共催で国際シンポジウム「世界の食文化研究と博物館」も行っている。

LE CORDON BLEU
世界20カ国で35校を展開する
エデュケーションプロバイダー
ル・コルドン・ブルーは、1895年、フランス料理の学校としてスタートした教育機関。現在は食文化やホスピタリティなどについて教育する学校を20カ国で35校以上展開している。生徒の国籍は約130カ国に及び、東京と神戸にも学校がある。日本の学校ではアジアをはじめとする日本以外の国々からの入学生が増えているため、授業は日本語、英語、中国語の3カ国語で行っている。各国に複数のキャンパスがあるため、たとえば東京校で料理の基礎コースを学んだら、その次はカナダのオタワ校で別のコースを学ぶということも可能だ。

食が学問になることを立証する
その国立民族学博物館の名誉教授で、現在は立命館大学経済学部教授・国際食文化研究センター長の朝倉敏夫氏は「食というのは人間にとって大きなテーマ」と指摘する。
「食は文化人類学の基本テーマであり、食文化を学ぶことは人間を学ぶことにほかなりません。しかも食というのは、農学や栄養学、さらには経済学、地理学、民俗学などすべての学問につながります。ただ日本では、食というのは極めて身近な個人的な行為とみなされがちなため、食が学問として扱われることがあまりありませんでした。しかし今は食の安全や流通などが人類史的な問題となっており、食を学問として確立しなければいけない時代になっています。食が学問になることを立証するのも、食科学部の大きな使命だと考えています」
計画では、食科学部は立命館大学の「びわこ・くさつキャンパス(BKC)」に設置されることになっている。BKCには、理工学部、情報理工学部、生命科学部、薬学部などの理系学部が集まっており、総合科学である食科学の研究・教育拠点を置くには学術環境として最適といえる。食科学部が開設されれば文化人類学など人文系の研究者も数多く参集することが予想される。
「本当の意味での総合大学の教育を高いレベルで提供できるベースがBKCにはあります。立命館大学の食科学部は、世界一の学部になりえる可能性を十分持っています」(井澤教授)
2年後、食科学部が産声を上げる。食が学問として確立される取り組みがそこから始まる。そしてそれはまた立命館大学が世界一に挑む壮大な挑戦の始まりにもなる。

国も高く評価し支援する
サービス産業は国内総生産(GDP)及び雇用の約7割を占めています。政府はGDPを600兆円にする目標を打ち出していますが、それを達成するためには、GDPや雇用の太宗を占めるサービス産業の生産性向上が不可欠、特に経営の質の向上が必要です。そのため経済産業省は今後のサービス産業の生産性向上を担う経営人材を育成する施策として、平成27年度から「産学連携サービス経営人材育成事業」を行っています。産学共同による経営人材育成に資するカリキュラム開発を支援する事業で、立命館大学の食科学部設立に向けた取り組みは2年連続で補助事業に採択されました。非常に専門的、実践的で、かつ大きな取り組みというところが評価され、平成27年度末の事業報告会では特別賞も受賞しました。
食科学部設立に向けた取り組みは他大学の刺激にもなりますし、他地域の大学と連携すれば全国的な広がりが出てくることも考えられます。海外の大学や教育機関と連携すれば、「立命館」の名がさらに世界的に知られるようにもなるでしょう。
井澤裕司先生には何度かお会いしましたが、大変な熱意を感じました。井澤先生のような存在も、原動力になっているのではないでしょうか。食科学部ができて5年後、10年後、優秀なマネジメント人材が輩出されサービス産業の生産性が向上し、さらに魅力ある産業に発展していくことを期待しています。世界のトップを走る学部にぜひなってほしいと思います。
 
事業モデルの転換を図る外食産業
日本の外食産業は、狭義で24兆円、広義だと30兆円の市場規模を持つ巨大産業です。しかしその外食産業が今、大きな転換期を迎えています。多店舗化による成長モデルの見直しが必要になってきたからです。
人口減少時代を迎え、外食産業界では労働力不足が深刻になりつつあります。昨年は人手が確保できずに閉店したお店もありました。今は募集しても応募者が集まらない状況が続いています。私はこれを、供給制約の時代と規定しています。労働力の供給制約が産業のあり方まで変えるほどシビアになってきているのです。
労働人口が減少しても、すべての産業が同じように厳しくなるわけではありません。魅力のある産業には、人が集まります。つまり外食産業は事業モデルのあり方を変えるとともに、魅力ある産業に転換しなければならないのです。そのためには付加価値を上げて生産性を高めていくことが不可欠です。そしてそれを実現するために必要なのが、優秀なマネジメント人材なのです。
実はロイヤルホールディングスも既存店の売り上げは前年割れが続いていました。しかし直近では4期連続の増収増益を実現しています。そこにはいろいろな要因がありますが、社員教育の効果も大きかったと考えています。「経営塾」という教育研修の制度を設け、財務諸表の見方や経済・経営の専門知識を教え、自社の経営を客観的に見られる力を養うようにしてきた効果が表れ始めたのです。
そういう意味で立命館大学の食科学部設置構想は、まさに我が意を得たりという思いがします。持続的な成長モデルを自分たちで考えないといけないときに、学問的なサポートが得られれば非常に心強いですし、食をトータルに学び、マネジメント力を身に付けた優秀な人材が輩出されれば、頼もしい限りです。日本の食のすばらしさを海外にもっと発信していくためにも、外食産業界は立命館大学食科学部に協力を惜しみません。
 
# by kura0412 | 2016-10-31 12:43 | 経済 | Comments(0)

インフレ知らず悲観的…物価2%、ゆとり世代が壁
消費より貯蓄優先

1990年代後半以降のデフレ下で育ってきた若者の消費がさえない。収入があっても貯蓄にお金を回しがちで、中高年が夢中になった自動車やステレオなど見向きもしない。日銀の物価2%目標のメドがいっこうに立たないのは、そんな「ゆとり世代」の冷めた物価観や消費行動が一因かもしれない。

記者は1993年生まれの23歳。バブル経済もインフレも経験したことがない。物心ついたころには街中に100円ショップが立ち並び、軒先に「飲み放題」を掲げた居酒屋にサラリーマンが吸い込まれていく姿はありふれた光景だった。
確かに物欲は乏しい。夕食もコンビニ弁当が多い。ただ日本の消費に占める30歳未満の比率は1割強程度とされる。若者だけがお金を使わないと決めつけるのは、少し無理がある。
総務省によると1999年から2014年にかけて30歳未満の消費支出は14.6%減少した。ほかの年代も似たり寄ったりで支出の減少幅は平均で約12%。30~39歳に限れば25.8%も減った。
若者が消費低迷のやり玉にあがるのは、稼いだ額に見合うお金を使っていない面があるからだ。
可処分所得は多くの年代で減少したが、30歳未満では99年から14年の間に逆に2%増えた。一方で消費が減った結果、貯蓄率は15.7%から30.9%へとほぼ2倍に高まった。全年齢平均の貯蓄率の上昇幅は5.8ポイントなので、若者がお金をため込んでいるように映る。

デフレ時代に育った私たちは「日本は少子高齢化で大変なことになる」と聞かされ続けた。「社会保障への不安から、将来に備えお金をためようという発想が強い」(日本総合研究所の下田裕介氏)のは否定できない。
インフレを知らないからお金を寝かしておくリスクにも実感がわかない。
野村証券の試算によると29歳以下の若者の1年後の物価上昇予想(期待インフレ率)は1.9%だ。全世代平均は2.1%で、インフレを知らない若年層の物価上昇「期待」は一貫して低めだ。
日銀の黒田東彦総裁は21日、「デフレが長く続いたため、人々の予想物価上昇率が過去の物価上昇率に強く引きずられる傾向がある」と発言。日銀は物価目標に関し、実績ベースで「2%超を見るまで緩和を続ける」と約束して「期待」を刺激しようとしているが、“低体温”の若年層がカベになる可能性がある。

若者がお金をためるのは魅力的な「モノ」がない裏返しではないか。
若者の音楽離れが指摘されるが、音楽ライブの年間売上高はこの5年で2倍以上に増加した。モノから、イベントや旅行といった「コト」への消費シフトが進み、ハロウィーン市場は今やバレンタイン関連を抜いた。
テレビなど民生用機器の出荷額は15年までの5年間で7割近く減ったが、スマートフォン(スマホ)の普及率は約7割に高まった。SNS(交流サイト)の広がりもあり、人とほどよいつながりを求めるのが若者流だ。
人手不足もあって、モノの値段が下がり続ける中でもサービス価格は上昇中だ。若者消費が熱を帯びれば経済の体温も少しずつ上がるだろう。「デフレから脱却できるかは若者の動向が大きなカギを握る」(野村証券の木下智夫氏)。インフレを知らない世代が、インフレをもたらす日はそう遠くないかもしれない。

【日経新聞】
# by kura0412 | 2016-10-31 10:15 | 経済 | Comments(0)

節約志向で…百貨店、苦境突出 10月日経DI
2四半期連続悪化

百貨店など物販の景況感が大幅に悪化している。四半期ごとの消費関連企業の景況感を示す「日経消費DI」の10月調査は業況判断が7月調査から2ポイント低下のマイナス20となり、2四半期連続で下落した。特に百貨店は同30ポイント下落のマイナス80と、2010年1月以来の低水準。消費者の節約志向が強まっているほか、インバウンド(訪日外国人)消費にも陰りが見られる。

調査期間中の9月は台風や残暑で外出する消費者も減り、衣料品などの季節商品が振るわなかった。天候不順に加え、円高による企業収益の悪化などで先行き不透明感が強まり、消費者の節約志向が高まっている。今回は外食やサービスを含む全15業種のうち、7業種の業況判断が悪化した。
最も悪化した百貨店からは「訪日客の宝飾品消費もさえない」(三越伊勢丹)との声が漏れる。スーパーは同23ポイント下落のマイナス17、コンビニ・ミニスーパーも同29ポイント下落のマイナス29だった。物販全体では同10ポイント下落のマイナス26となった。
消費者の節約志向は消費関連企業の戦略にも影響を与え始めた。「無印良品」を展開する良品計画は8月から靴下の価格を3足1200円から同990円に値下げした。松崎暁社長は「価格戦略を見直す」と強調する。
ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長は節約志向の強まりなどを受けて「2020年の東京五輪前にかつてない不景気が来る可能性がある」と厳しい見通しを示す。9月には一部店舗で色調に一体感を持たせた低価格帯のインテリア雑貨を投入した。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長も「消費者の生活防衛意識は強まっている」と指摘する。

日経消費DIの業況判断は今年に入ってマイナス圏に沈み続けている。第2次安倍晋三政権が進めた「アベノミクス」や3年連続の賃上げなどで消費環境は一時、改善に向かい、この3年間でプラス圏に浮上する時期もあった。ただ現在はマイナス20まで低下、第2次安倍政権の発足前後の水準まで戻った。
3カ月後の業況見通しはマイナス12と7月調査と同じだった。年末の宴会シーズンを迎える外食が5ポイント上昇のマイナス22だった一方で、百貨店が10ポイント低下のマイナス40と景況感が悪化するなど業種ごとのばらつきが見られる。

▼日経消費DI 
日本経済新聞社がまとめる景気指標。業況判断は「良い」と答えた割合から「悪い」を引いた値。スーパーや百貨店、旅行・運輸、外食など15業種を対象に1995年に始めた。「消費者の支出意欲」「今後3カ月の売上高見通し」なども調査する。今回は278社にアンケート用紙を郵送。2016年9月上旬から10月上旬に187社から回答を得た。回収率は67%。調査票の発送、回収、集計は日経リサーチが担当した。

【日経新聞】



景気動向に大きく影響する歯科としては悩ましい状況になっているようです。
# by kura0412 | 2016-10-29 10:05 | 経済 | Comments(0)

かかりつけ医以外の外来定額負担 反対多く 厚労省審議会

厚生労働省は26日、外来で病院を受診した際にかかりつけ医以外なら定額の負担を患者に求めることができるかを社会保障審議会で議論した。過剰な受診を減らし、医療費の伸びを抑えるのが狙いだ。出席した委員からは「公的保険の7割給付を守るべきだ」など反対が大勢を占めた。低所得者を含め幅広い層に負担を求めるため、厚労省自体も慎重姿勢だ。医療費抑制の道は険しい。
かかりつけ医以外を受診した場合に定額の負担を求める案は政府が2015年末にまとめた経済・財政再生計画で検討を明記。財務省も厚労省に導入を求めている。

26日の社会保障審議会医療保険部会で複数の委員が反対の根拠にしたのが02年の改正健康保険法だ。現役世代の自己負担を2割から3割に引き上げた一方、同法の付則で「医療にかかわる給付割合は将来にわたり7割を維持する」とした。定額負担を導入すれば、3割を超えた負担をする人が出る。このため、日本医師会の松原謙二副会長が「(定額負担は)不適切だ」と厳しく批判した。
医療保険財政の維持へ一定の負担増を容認する健康保険組合連合会(健保連)の白川修二副会長も「国民の納得を得られると思えない」と表明。反対の理由は、政府側がかかりつけ医を普及させるために定額負担を導入するとした点にある。
かかりつけ医の普及は26日の部会でも賛成多数だったが、厚労省はどのような医師がかかりつけ医なのか定義を示していない。高齢者が内科や外科など複数のかかりつけ医がいるとした場合、定額負担をどう課すかも不透明。この状態で導入すれば混乱しかねない。
定額負担を巡っては、11年に全ての病院を受診した際に100円程度の負担を求める案を検討したものの、反対が根強く断念した。今回、かかりつけ医の普及という名目での再挑戦は戦略ミスとなった可能性がある。
白川氏は「定額負担や7割給付を幅広く議論したらどうか」と提案した。経済協力開発機構(OECD)によると、日本の1人あたりの年間外来受診回数は12.8回。英国(5.0回)やドイツ(9.9回)より多い。15年度の概算医療費は41.5兆円まで膨らみ、大半を税と社会保険料で賄う。患者負担の引き上げは避けられない情勢だ。
医療保険部会では年末までに制度改正案をまとめる方針だが、個人に負担を求める不人気政策には及び腰だ。70歳以上を対象に自己負担の月額上限を定めた「高額療養費」は引き上げ対象が高所得者中心になる見通し。金融資産に応じた個人負担の導入は見送りの公算が大きい。現役世代の社会保険料は増え続け、取りやすいところから取る状況が続く。

【日経新聞】
# by kura0412 | 2016-10-28 16:47 | 医療政策全般 | Comments(0)

もう東電を切り捨てるしかない!新潟県知事選「想定外の大差」の意味
再稼働なんて夢物語

ぬぐえない原発への不信感
柏崎刈羽原発の再稼働の是非を巡る「ワンイシュー(単一争点)選挙」となった先週日曜日(10月16日)の新潟県知事選挙で、「現状では議論も始められない」と対立候補よりも慎重な立場をとった米山隆一氏(共産、自由、社民各党が推薦)が、自民、公明両党推薦で「徹底的な検証」を主張した森民夫前長岡市長らを予想外の大差で破った。
この選挙が浮かび上がらせたのは、有権者の間に、福島第1原発の事故で経営破綻に瀕した東京電力を庇い続けてきた菅、野田、安倍の歴代3政権の原発政策に対する根強い不信感が、今なお存在するという事実だろう。
選挙戦の最中(10月12日)に、当の東電グループが35年間も使い続けたケーブルで火災を起こし、都心で大停電を招いたことも、有権者に原発事故当時から拭えない懸念を思い起させた。どんなに原子力建屋などの耐震基準を厳格化しても、肝心の東電の体質が変わらないのでは、原発を委ねられないという懸念である。
その一方で、大型原子炉が7基もある柏崎刈羽は、世界最大の発電容量を持つ原発だ。きちんと動かせれば、化石燃料市況にコストを左右されない首都圏への安定電力供給源になる。その意味では、現政権の経済面での1枚看板である成長戦略の一翼を担うことも可能だろう。
1日も早く再稼働させたいと政府が本気で願うのならば、遅ればせながら東電保護政策と決別する時だ。東電を同原発の運営と切り離し、信頼される他の主体に委ねることにして、新潟県民の原発への信頼を取り戻す必要がある。

「反省が足りていない」
米山氏は52万8455票を獲得、次点の森氏(得票数46万5044票)に6万3411票の差をつけて当選した。マスコミによると、この差は「予想外の大差」だ。
投票直前まで「どちらが勝つにしても数千票以内の差だ」(産経ニュース)とみていたからである。確かに、地元では8月末、泉田前知事がかねて表明していた4選出馬を撤回した段階で、すでに出馬を表明していた森候補が圧倒的に優勢とみられていた。
森氏は建設官僚時代から政治家への転身を周到に準備してきた人物で、9月初めの退任まで現役の全国市長会長だった。
今回は、自民、公明両党の推薦だけでなく、早々に民進党の最大支持母体である連合のローカルセンター「連合新潟」の支持も取り付け、知名度と組織力の両面で大きくリード。泉田時代に細った中央とのパイプを復活して減った公共事業を回復するとの主張も説得力があった。
一方の米山氏は医師で、どちらかと言えば知名度に難があるうえ、もともと「民進党の次期衆院選候補」とされていた。
ところが、前述のように連合新潟が森氏支持を決めたため、民進党は自主投票を決め込み、米山氏は同党の推薦を受けられなかった。同氏が立候補表明に漕ぎ着けたのは告示のわずか6日前である。当初は、米山氏を泡まつ候補扱いにしたメディアまであったという。
しかし、米山氏は「泉田知事の後継者」「現状では再稼働の議論は始められない」と主張して、ある種の旋風を巻き起こした。
加えて、大きく影響したのが「東京電力パワーグリッド」が選挙期間中(10月12日)、35年も使われてきた、首都圏の3つの変電所を結ぶ地下ケーブルで火災を起こし、それが大停電の原因になったことだ。55分程度で復旧したものの、範囲が東京都内の千代田、中央、港、新宿、豊島など主要10区の58万軒に及ぶ大規模停電だった。
これだけの停電を起こしながら、マスコミ向けの説明と謝罪に出てきたのは、中間管理職だった。この対応を見た有権者の多くが「福島第1原発事故と同じ対応だ。またしても反省が十分でない」、「柏崎刈羽原発でも似たような事故を繰り返すのではないか」と不安にかられ、米山旋風を加速させたとみられる。原発ワンイシュー選挙を恐れる東電
福島第1原発事故以来、東電は、資本主義のルールを無視した国有化、賠償・除染・廃炉に対する巨額の財政支援、そしてBWR型原発の新規制基準適合審査でトップバッターとする優遇措置など、あの手この手の国策支援を受けて、経営破綻を免れてきた。
しかし、事故以前に「(津波堆積物の)痕跡がない」と言い張って津波対策を怠ったのは周知の事実である。それどころか、事故後も今年7月にメルトダウン隠しの事実を認めて謝罪するまで5年以上の歳月を費やすなど、安全軽視の隠蔽体質が一向に改まった兆しが見えて来ない。
そんな電力会社に2度と原発を運転してほしくないと考えるのは、市民として当たり前の感覚だろう。
今回、複数の原発を持つ電力会社がショックを隠せないのは、米山氏の都市部での強さが際立ったことだ。同氏は森氏との得票差の7割弱に相当する4万2580票を新潟市内で獲得した。一方の森氏は、原発立地の柏崎市と刈羽村で米山氏を上回る支持を得たものの、都市部での大差を埋められなかった。
原発慎重派知事の誕生例として見た場合、米山氏は、今年7月に就任した鹿児島県の三反園訓知事に次ぐケースだ。

件(=くだん)の電力会社は今後、青森、宮城、福井、島根、愛媛、佐賀といった主要な原発立地県で、米山型ワンイシュー選挙を仕掛けて当選する反原発候補が相次ぐことを憂えている。政府の「安全が確認された原発は再稼働する」という原発政策が、知事権限で反故にされかねないからだ。
別の電力会社は、筆者の取材に「もちろん原発再稼働という総論は賛成だ。が、今回は柏崎刈羽の再稼働が遠ざかってホッとした」と、耳を疑いたくなるような話をした。
というのは、今年4月にスタートした電力自由化で電力会社間の競争が始まり、本来ならば原子力損害賠償支援機構から受けた資金支援の返済に充てるべき収益を、東電が顧客囲い込みキャンペーンに注ぎ込む場面を目の当たりにして「公正な競争に反する」と不信感を抱いていたからだという。
東電幹部がここへきて「柏崎刈羽が再稼働したら、料金面で大攻勢をかける」と檄を飛ばしていたことも、この電力会社が胸中で森候補敗北期待を膨らませる原因になっていたらしい。

東電擁護策との決別を!
だが、この知事選の結果をどう分析したのか。政府・与党は引き続き、東電擁護政策を堅持どころか、強化していく構えだ。
経済産業省は先月から今月にかけて、審議会の下部組織として「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」(貫徹委員会)を設置したほか、研究会として「東京電力改革・1F問題委員会」(東電委員会)を新設した。
年度内に東電の収益力の一段の強化策や、福島第1原発の廃炉費用を賄うための公的支援の拡充策、そうした費用の一般への幅広い転嫁策などを網羅的にまとめる方針と聞く。
自民党も、経済産業省の政策決定に関与するため、「原子力政策・需給問題等調査会」(会長・額賀福志郎元財務大臣)が、年内に廃炉費用や核燃料サイクル問題に関する提言を作るという。
だが、今回の新潟県知事選挙は、様々な争点のある国政選挙や、地元利害の意見集約の場にしやすい市町村レベルの選挙と異なり、県知事選挙では依然として原発問題が大きな争点になり得、東電への異例の支援が前提の原発政策が批判の的になり易いことを浮き彫りにした。
同じように運営主体問題を抱える高速増殖炉「もんじゅ」では、原子力規制委員会が「相応しい運営主体が見つからなければ、廃炉」と背水の陣を敷いて抜本的な政策転換を迫った。
柏崎刈羽原発も、運営主体の東電に対して多くの市民の危惧が集中しているのだから、もんじゅ同様に運営主体を見直すのは当然のことのはずである。つまり、東電擁護策との決別が信頼回復への第1歩ではないのだろうか。

【町田 徹・ニュースの深層】
# by kura0412 | 2016-10-25 08:45 | 政治 | Comments(0)

「解散フラグ」は立ったのか?

「解散フラグ」は立ったのか――。最近の永田町と霞が関の関心事はこれだ。与野党を問わず、みんながフラグ(旗)を探している。
「フラグ」とは何か。新語を積極的に扱う三省堂国語辞典は2014年からこの言葉を載せている。意味は「先の読める伏線」。小説などで登場人物が死亡する伏線が出ると「死亡フラグが立った」と表現するのが典型的な使い方だ。

■「3次補正なら解散」
永田町では来年1月の衆院解散が取り沙汰されている。12月15日の日ロ首脳会談で北方領土問題が進展するかが解散を左右するとみられるが、自身のクビがかかる衆院議員はもっと早く見極めたい。ライバルを出し抜くには、予兆である解散フラグをいち早く見つけ、選挙準備を始めたい。
「3次補正があれば衆院解散だろうが、今のところ党政調会では全く動きはない」。自民党石破派の10日の会合。党政調会長代理の田村憲久はこう話し、出席議員の笑いを誘った。
政府は毎年11月下旬に、その年度の税収見積もりを修正する。税収の一定割合は地方自治体への地方交付税交付金に回すため、見積もりが変われば補正予算を組む。今年はすでに2回補正を組んだため、次は第3次補正だ。
もし首相、安倍晋三が近く衆院解散に踏み切るなら、景気浮揚のための大規模な経済対策を3次補正に盛り込む動きがそろそろ出てくるはず――。田村は3次補正への動きが解散フラグとみる。

■TPP対決からも?
「TPP解散じゃないか」。副大臣の一人はTPP(環太平洋経済連携協定)承認案を巡る解散を疑う。今国会成立を唱える首相に対し、民進党は真っ向から反対。与党などの賛成多数で承認されても、民進党は内閣不信任決議案の提出を検討するとみられる。
政府関係者は「承認されない場合はもちろん、承認でも不信任案が出れば解散だ」と話す。だが、これは民進党へのけん制にも映る。フラグよりブラフ(はったり)の色合いが濃い。
そもそも1月解散説さえ、自民党幹部には「選挙準備ができていない若手の危機感をあおるためだ」とうそぶく向きもある。
ただ、作家が一人で綿密に構築する小説と違い、政治は多くの勢力のせめぎ合いでシナリオが決まる。フラグやブラフだけでなく、状況変化で回収できなくなる伏線もある。安倍自身、国会答弁ではたびたびビスマルクの言葉を引用し「政治は可能性の芸術だ」と語っている。
民進党は例年1月の党大会を来年は3月開催とした。自民党が先に党大会を通例の1月から3月にしたことが「1月解散のフラグ」とみられているためだ。代表の蓮舫は党内で「解散風がふき始めている」と説く。風ではためくフラグを前に、与野党議員は疑心暗鬼に陥っている。=敬称略

【日経新聞】
# by kura0412 | 2016-10-21 10:30 | 政治 | Comments(0)

降圧薬服用高齢者のフレイル、血圧低値ほど高率

80歳以降の高齢者に対する過降圧はフレイルをもたらす可能性のあることが分かった。
高齢者長期縦断疫学研究SONICの一環として、70歳、80歳、90歳の高齢者計2245人を対象に行われた横断的検討で得られた結果だ。大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻総合ヘルスプロモーション科学の樺山舞氏らが、第39回日本高血圧学会総会(9月30日~10月2日、仙台開催)で報告した。

今回の検討は、高齢者高血圧の治療における降圧下限値の明確化を目的に、血圧値と身体的フレイル、高次生活機能との関連性を調べた。
対象は、SONICに参加した地域住民の70歳1000人、80歳973人、90歳272人の計2245人。血圧測定、身体的フレイルの指標である握力と歩行速度の測定、および高次生活機能の指標である手段的日常生活動作能力(IADL)の評価を行った。CHS(Cardiovascular Health Study)基準に基づき、握力、歩行速度のどちらかまたは両方が該当した場合を身体的フレイルと判定した。血圧値は収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)それぞれ4つのレベルに分けた。
SBPは男女とも、70歳より80歳で有意に高く、80歳より90歳で有意に低かった。DBPは男性のみ70歳より80歳が有意に低く、男女とも80歳より90歳が有意に低かった。高血圧は70歳で約7割に、80歳、90歳でそれぞれ約8割に認められた。降圧薬服用者の割合は年齢が高いほど有意に上昇した。また、年齢が高いほど、握力が弱く、歩行速度が遅く、IADLは低かった。身体的フレイルは70歳で37.1%、80歳で64.3%、90歳で91.7%に認められた。
降圧薬服用の有無別に血圧値と握力、歩行速度、IADLの関係を検討したところ、70歳では男女とも、服用群、非服用群のいずれにおいても有意な関連はみられなかった。しかし、80歳の服用群では、男性の握力が、DBPでは80~89mmHg群、90mmHg以上群に比べ、70mmHg未満群で有意に弱かった。SBPと握力の間でも同様の傾向が認められた。こうした関係は非服用群ではみられなかった。90歳では、非服用群の女性のIADLが、SBP160mmHg以上群に比べ同120mmHg未満群で有意に低かった。
身体的フレイルの割合は、服用群において、SBP、DBPが低いほど有意に高率(SBP:P=0.029、DBP:P<0.001)で、SBP120mmHg未満では75.0%、DBP70mmHg未満では72.7%に認められた。こうした関係は非服用群では見られなかった。
ロジスティック回帰分析により、フレイルに関連する要因(年齢、罹患疾患で調整後)を検討すると、非服用群ではアルブミン低値が、服用群ではDBP低値が独立した有意な関連因子となった。

以上より樺山氏は、「降圧薬服用群でのみ血圧がフレイルと関連しており、80歳以降の高齢者の過降圧はフレイルをもたらす可能性が示唆された」と結論した。今後の研究課題については「縦断的解析により、フレイル状態の高齢者の血圧が低いのか、過降圧によってフレイル状態になっているのかを明らかにする必要がある」と述べた。

【日経メディカル】



フレイルが内科でも注目されていることを示しています。
# by kura0412 | 2016-10-21 10:27 | 医療全般 | Comments(0)

超高額薬、値下げ柔軟に 海外と比べ随時改定
18年度から

厚生労働省は超高額の薬の公定価格(薬価)を随時引き下げられるよう制度を大幅に見直す。価格の見直しは原則、2年に1度だが、売上高が1千億円を超えるような超高額薬では必要に応じて、価格を下げられる仕組みを導入する。技術革新に伴い、超高額薬は相次ぎ登場している。現在の硬直的な薬価決定方法を見直し、医療費の膨張を抑える。
厚労省が中央社会保険医療協議会(中医協)で具体的な見直し策を議論する。2018年度の薬価改定時に導入する方針だ。
薬価制度を見直すのは、1年間使うと1人あたり年3500万円かかるとされるがん治療薬オプジーボに対応するためだ。安倍晋三首相は14日の経済財政諮問会議で薬価引き下げを指示した。厚労省は17年度に臨時で最大25%値下げする方針で、薬価制度見直しで一段の引き下げを検討する。

具体的な見直し策の一つは、保険適用する病気を増やした際の引き下げだ。
値下げしても薬を使う患者が増えるので、製薬会社の業績への影響は小さくできる。
オプジーボの場合、最初に保険適用したのは希少がんだったこともあり、高い薬価を付けた。ただ2年に1度の薬価改定が間に合わないまま、患者数の多い肺がんにも保険適用したことが問題視された。保険適用拡大時に価格を見直す仕組みの導入で同じ問題が起きないようにする。
もう一つは薬価を見直す際に海外と比較して高すぎる場合は値下げする案だ。
今でも海外で既に保険を適用して薬価が存在する場合は海外の価格に近づける仕組みがあるが、最初に保険を適用するときのみで、薬価改定時は実施していない。

日本で最初に保険適用したオプジーボは当時、参考にする国がなく、現在は米国の2倍以上の薬価がついている。厚労省は薬価改定時にも海外の価格と比較して値下げできないか検討する。
現在は高額療養費制度があるため、患者個人の負担は低く抑えられている。だが、税と社会保険料で賄っているため、財政の負担は重い。医療保険制度の持続性を高めるため、財務省は新薬の価格を決める際、「費用対効果」を判断材料にする仕組みを幅広い薬に適用するよう求める方針だ。厚労省はこうした案も検討し、医療費の抑制につなげる。
15年度の概算医療費は41.5兆円で前年度より3.8%増えた。ソバルディなど1千億円級の売上高のC型肝炎向けの高額新薬が医療費を押し上げた。年内にもオプジーボと同じ作用を示す新薬「キイトルーダ」が登場する。薬価はオプジーボが基準になり、高額薬となるのは確実。財政負担の抑制と、製薬業界の開発意欲をそがない配慮のバランスが必要だ。

【日経新聞】



果たしてこれがどのように改定全体に波及していくのでしょうか。
# by kura0412 | 2016-10-20 15:58 | 医療政策全般 | Comments(0)

介護を成長産業にする「混合介護」5つの疑問を解く

昨年末に本欄に「介護離職を減らすには介護サービス料金の自由化を」を寄稿したが、それ以降、これに関する公正取引委員会の報告書も出たこともあり「混合介護」という新しい用語が新聞等を賑わせている。これは旧くから規制改革の大きなテーマであった医療の「混合診療」の介護サービス版であり、政府の介護保険給付と自己負担による保険外サービスとを自由に組み合わせることである。

混合診療とは、例えば虫歯の治療の際に、歯科医から「保険だけにするか私費も使うか」と聞かれる場合がある。これは虫歯を抜いた後に、医療保険で提供される金属の被せ物の代わりに自然の歯と見分けのつかない良い材質を使えば、患者がその差額の費用を支払うことで選択肢が広がる仕組みである。
ただし、これは医療保険では例外的な扱いで、すべての費用を公的保険で賄うか、あるいはすべて自費かのいずれかしか認められない。これが混合診療禁止の原則である。

2000年に設立された介護保険では、もう少し柔軟な仕組みとなっており、例えば週3回認められたホームヘルパーを自費で週5回に増やしたり、自費で追加的なサービスを購入することができる。これをもって厚労省は「混合介護はすでに導入されている」としている。
しかし、同じ週3回のホームヘルパーの価格を、その質に応じて介護保険から支給される給付単価よりも高く設定することは容認されていない。介護保険の下では、利用者に対して「サービス量」の選択肢は認めるが、「サービスの質と価格」の選択肢については認めない統制価格の論理が残されているのである。
もっとも介護保険対象のサービスには、ホームヘルパー以外にも、個人の技量の差の大きなものがあり、例えばリハビリの指導はその典型例である。サービスの質に差が歴然とある以上、質の高いサービスを提供できる労働者にはそれに見合った報酬が必要であり、それが平均的な質を高めるインセンティブを促すことになる。そもそも、医療保険と異なり、介護保険は当初から企業の全面的な参入を認めてきたが、これは事業者間の多様な競争を通じて、介護サービスの量的拡大と同時に、質的向上を目的としたためである。
急速に進展する高齢化社会で、介護サービスが必要な後期高齢者は増える一方である。他方で、低成長の下で介護保険財政は厳しく、十分な数の介護労働者を確保するための介護報酬の大幅な引き上げは困難である。しかし、これを民間の視点で見れば、高齢者の増加で有望なシルバー市場が開けている。政府が基礎的な介護サービスを確実に保障するとともに、民間の創意工夫で多様な上乗せサービスが提供されれば、介護は成長産業となる可能性を秘めている。 

「混合介護」への疑問点
すでに「介護事業を飛躍的に伸ばす、公取委の画期的提言」で福祉ジャーナリストの浅川澄一氏が解説されたように、公正取引委員会が介護分野での競争を抑制する規制等についての研究会を行い、それに基づいた報告書を公表した。この研究会には筆者も参加したが、そこで鈴木亘・学習院大学教授と共同で、混合介護が実現した場合の問題点についても検討している。

第1に、介護サービス価格が自由化されれば、それが高止まりして低所得層は十分なサービスを購入できないのではないかという懸念である。また、多くの事業者が上乗せ料金を得られる高付加価値サービスに特化することで、利用者にとって本来の介護報酬で受けられるサービス供給が制限されるのではないかという疑問もある。
こうした疑問は、暗黙の内に「供給量が一定」という世界を前提としている。しかし、サービス価格を低い水準に統制することが、民間事業者の供給増を抑制し、利用者の長い待ち行列を引き起こす基本的な要因となる。市場経済の最大のメリットは、価格が上がることで供給が増えるメカニズムにある。介護サービス事業には参入規制はなく、小規模の事業者でも開業は容易である。多様な事業者間のすみ分けで、介護保険給付を前提とした通常の介護サービスを提供する事業者が不足するような状況は考え難い。
もっとも、過疎地や離島等で、十分な数の事業者がいない場合には、例外的に何らかの公的な介入が必要な場合もある。例えば、地域の介護サービス事業者に、売上高の一定比率を介護報酬だけで利用できるサービスの供給を義務付けることも考えられる。

第2に、介護保険の利用者の間でサービスの質に差が生じることは格差の拡大ではないかという批判がある。これは伝統的な低所得層を対象とした福祉の専門家の間で根強い考え方である。
しかし、高齢者層の所得格差は年齢層のうちでもっとも大きく、豊かな高齢者は、すでに市場価格で質の高い保険外サービスを利用可能である。混合介護のメリットを受けるのは中所得層であり、介護報酬との差額分だけを負担することで良質の介護サービスを購入できるようになる。また、混合介護の導入で介護サービス事業者の採算が改善すれば、より多くの事業者が参入し、競争が促進されることから、結果的に介護報酬のみでのサービスの利用者にとってもメリットとなる。

介護サービスの質を誰が判断するか
第3に、介護サービスの質を公的に定める基準を作ることは容易ではないという行政側の反対がある。また、現行制度でも、良質のサービスの事業所には行政が定めた改善加算制度があり、それで十分ではないかという。確かに、医療のように患者が医薬品等の効能を判断できない場合には一定の配慮が必要となる。
しかし、日常生活の延長である介護サービスについては、個々の利用者の主観的な判断に委ねればよいのではないか。行政が定めた事業者への報酬加算制度だけでなく、消費者が選択する多様なサービスの提供を促す仕組みが必要とされる。例えば、質の高いサービスを提供するホームヘルパーを利用者が指名して追加料金を支払えば、ヘルパーの受け取る所得が増えることで人材の確保が容易となる。また優れたヘルパーを多く抱える事業者が事業を拡大することで、業界の水準を引き上げることにも貢献する。こうした考え方は、現に介護保険設立時の厚生省の研究会でも議論されたにもかかわらず、中途で立ち消えになったのは残念である。

第4に、混合介護で保険外サービスが増えるのはともかく、それで介護保険への需要が誘発され、保険財政が悪化しないかという心配である。
これは混合診療への反対論と共通したものだが、費用が青天井の医療保険と比べて、介護保険では要介護認定にもとづき利用者が使える介護報酬に上限が定められていることが大きな違いである。介護保険財政が厳しくなるなかで、公的保険はより重度の要介護者に重点を置き、軽度の要介護者は市場サービスを活用する、公私の役割分担が求められよう。

最後に、認知症等で判断力に乏しい高齢者への対応である。
これについては、利用者保護のため、事業者からの上乗せ料金の額や利用の頻度についての情報開示の義務付けを事業者に求める必要がある。また、介護保険と組み合わされる保険外サービスについては、ケアマネージャーへの報告義務を課すことで、過大なサービス購入等のチェックは可能である。一部に判断能力の乏しい高齢者がいることを理由に、高齢者全体の消費行動を規制することは、行政の越権行為といえる。

介護保険本来の精神は市場の活用
2000年に設立された介護保険制度は利用者が介護サービスを購入できる独自の財源を確保し、それを供給面から支える福祉の基礎構造改革と合わせた大改革であった。それ以前の高齢者福祉は、現在の児童福祉と同様に行政が利用者の必要度を認定し、それに見合った供給を措置する行政処分の制度であった。これは高齢者介護が基本的に家族の責任であり、それから漏れた一部の高齢者に対して行政が責任をもつ福祉という考え方である。
しかし、急速に進む人口の高齢化に、介護を必要とする高齢者を家族や社会福祉法人だけで対応することはできない。このため民間企業を主体とした幅広い事業者が、市場競争のなかで多様なサービスを提供することで、活力ある高齢化社会を築くことが、本来の介護保険の精神であった。それが次第に形骸化し、細部における規制の強化が進んでいる。
例えば、すでに認められている介護保険と組み合わせる保険外サービスの際に、利用者に誤解を生じさせないようにホームヘルパーに違うエプロンをつけさせるというような瑣末な自治体のローカルルールは、介護事業者に余計な負担を課し、事業の抑制要因となる。

介護保険は、あくまでも利用者が基礎的な介護サービスを購入できる財源を保障するものである。そこで定められた介護報酬単価を、行政が介護サービス市場を統制する公定価格としている現状は、旧来の画一的な福祉の発想から抜け出せない政治や行政の体質にもとづいている。
高齢化先進国の日本が、それに対応した効率的な介護サービスのビジネスモデルを構築すれば、急速な高齢化が進む中国や他の東アジア諸国にも輸出可能である。混合介護の導入はそのための第一歩であり、市場の活力を活かした成長戦略であるアベノミクスの大きな柱となる規制改革のひとつといえる。

【DAIAMOND ONLINE:八代尚宏】
# by kura0412 | 2016-10-20 08:49 | 介護 | Comments(0)

新潟で反原発知事が当選、どうしても原発を再稼働させたい東電の事情とは

東京電力柏崎刈羽原発の再稼働が争点となった新潟県知事選が16日に行われ、再稼働に慎重な姿勢を示していた無所属の米山隆一氏(共産、社民、自由推薦)が、与党が推薦する候補を破って初当選を果たしました。同原発の再稼働はどうなるのでしょうか。

知事の理解を得なければ再稼働に進むことは困難
同原発は、泉田裕彦前知事が再稼働に対して慎重な姿勢を示してきたことから、再稼働の見通しが立っていませんでした。現在、同原発の6号機と7号機は、原子力規制委員会が安全審査を進めており、場合によっては、年度内に審査に合格する可能性もあります。
泉田氏は今回の選挙に4選を目指して出馬するはずでしたが、8月に突如出馬を撤回。「現状では再稼働は認めない」と主張した米山氏と、元建設官僚で前長岡市長の森民夫氏との事実上の一騎打ちとなりましたが、米山氏が52万票以上を獲得して初当選を果たしました。与党は幹部が応援に入るなど万全の体制で選挙に臨んだものの、支持を広げることはできませんでした。
県知事には再稼働を止める法的な権限はありませんが、原子力政策は自治体の了承を得て進めていくことが大前提となっており、事実上、知事の理解を得なければ再稼働に進むことは困難です。

福島第一原発の廃炉費用は8兆円とも
東京電力と政府は何としても再稼働にこぎ着けたいと考えているのですが、その理由は、東電の経営状況にあります。同社は福島第一原発の事故によって巨額の損失を出し、一時は自己資本比率が5%近くに落ち込むなど財務的に厳しい状況に追い込まれました。その後、電力料金の値上げによってとりあえず同社の経営は一息つきましたが、ここに来て急浮上してきているのが福島第一原発の廃炉費用です。現在、廃炉費用がいくらになるのか分からない状態であることから、負債としては計上されていませんが、一部の報道では廃炉費用が8兆円に達するとの見方も出てきています。

原発が稼働しなくても年間6000億円の費用が発生
現在、東京電力は原発をまったく稼働させていないものの、年間6000億円ほどの費用が原発にかかっています。柏崎刈羽の6号機、7号機を稼働させることで、とりあえず2500億円程度の収益が上乗せされますが、全体からすればまだまだです。ここに8兆円もの負担が加わってくる場合、同社は再び経営危機に陥ってしまいます。
同社や政府が何としても再稼働を実現させたいと考えているのは、こうした切実な事情があるからです。ただ、どのような形になるにせよ、原発事故のツケは、すべて国民が負担するという事実に変わりはありません。

【THE PAGE】
# by kura0412 | 2016-10-18 16:13 | 政治 | Comments(0)

高額薬オプジーボ異例の薬価引き下げが起こす波紋

さまざまながんで効果が期待される治療薬「オプジーボ」の薬価引き下げ議論で、厚生労働省は10月5日、最大25%減とする案を中央社会保険医療協議会で示し了承された。
薬価は原則2年に1回改定されており、次回は2018年度に実施予定だった。期中での引き下げは異例で、15年度医療費(速報)が41.5兆円と13年連続過去最高を更新する中、国民皆保険制度の維持のため狙い撃ちにした形だ。

「肺がん患者約5万人が1年使ったら総額1兆7500億円」と國頭英夫・日本赤十字社医療センター化学療法科部長が指摘し、高額薬剤費問題に火が付いた。ただしこの数字は「非現実的な設定」との批判があり、販売する小野薬品工業も今年度予想売り上げを1260億円とする。いずれにせよ高額であることは確か。業界は「イノベーションに反する」と猛反対したが、厚労省は「効能追加などで大幅に市場拡大し、緊急対応が必要」とし、まとまった。
小野薬品へのねたみも抱えつつ、「企業経営の安定性、予見性から見てひとごとではない」というのが業界共通の思いなのだろう。ただある業界関係者は「非常に良い薬であり、ルール通りにして今の薬価が付いたのに、悪く言われてかわいそう。『引き下げは痛いが、早く悪い話題から消えたい』のが小野薬品の本音では」と言う。
同社幹部が一息ついたかは知る由もないが、オプジーボと同じ免疫チェックポイント阻害薬であるMSDの「キイトルーダ」は近く薬価収載される見通しで、競合薬の市場参入がひたひたと迫る。

次世代のため本質的議論を
「オプジーボだけが騒がれて終わってしまうのが一番怖い」と懸念するのは前述の國頭医師だ。新タイプの高額薬は次々と現れ、薬剤費は膨張するとし、「誰のせいでもなく医学の進歩、人口高齢化が原因。本質的議論を」と主張する。
開発コストが上がる中、薬価を下げ過ぎてメーカーが市場から撤退すれば元も子もない。ある程度までしか下げられないならば、限られた医療財政の中、入りを増やすか出を削るしかない。何もしなければ「高齢世代は満足でも、負担は若い世代にいく。少子高齢化の中、現役世代の負担をまだ増やせるのか」と疑問を呈する。
國頭医師が思い浮かべるのは、スペインの画家・ゴヤが晩年に描いた「我が子を食らうサトゥルヌス」だ。「自分たちの姿じゃないかと真面目に思いますよ。財政がずっと健全なら全部撤回して謝ります。でも僕が聞いたら、誰もが下を向いてしまう」。
「唯一考えついたのが年齢で投与制限をかけること。財政破綻したら『夢の薬』以前に、貧乏人は痛い苦しいもほったらかされて野垂れ死にする。そっちがグローバルスタンダード。それでいいのですか」と國頭医師は問うのだ。

【週刊ダイヤモンド】
# by kura0412 | 2016-10-18 10:41 | 医療政策全般 | Comments(0)

曲がる歯ブラシの教訓 事故防ぐ「スマートパワー」

子どもや高齢者による製品事故が増えている。事故を防ぎケガのリスクを下げるためには、事故データの収集とその分析結果に基づいた科学的なアプローチによる事故防止・傷害予防策が必要だ。その際に今後求められるのが、安全基準や法律による強制力のある予防策と、安全性という製品の魅力との両面から攻める「スマートパワー」戦略である。子どもの事故防止などに詳しい産業技術総合研究所の西田佳史氏と北村光司氏に、事故データの分析と傷害予防、スマートパワー戦略の考え方を解説してもらう。

人は、心身機能や認知機能などの生活機能が大きく変化する時期に、さまざまな事故を起こしやすくなる。特に成長過程にある子どもはそうだ。驚くべきことに子どもの死亡原因の第1位は、事故によるものである。高齢者の事故も近年増加している。こうした状況に対する危機感から、政府や自治体が動き始めている。
例えば、子どもが歯磨き中に転倒して歯ブラシがのどに刺さる事故が相次いでいるとして、東京都が専門家らによる協議会を発足。消費者庁も警察庁や厚生労働省など8省庁と連携して、子どもの事故情報を共有化する仕組みづくりに乗り出すという。子どもや高齢者のように生活機能が変化しやすい者に対して、安全に成長したり活躍したりできる社会を世界に先駆けて構築していくことは、少子高齢化の先頭を走る日本の重要な責務と言える。
そのためには、個人の生活機能の変化に対してうまく適応していく社会、生活の質や安全な状態を回復してくれる社会(生活機能レジリエント社会)を構築していく必要がある。ここでは、筆者らの研究成果に基づいて、特に子どもを例とした生活機能レジリエント社会のあり方を考える。
筆者らは企業と連携しながら、数多くの子どもの傷害の実態を調査し、事故分析データに基づいた科学的なアプローチによって実効的効果のある傷害予防策を探る研究を行っている。その中から、最近開発された製品や最近効果が検証された安全基準改訂の事例を紹介するとともに、我々の社会を生活機能変化者の傷害を予防できる社会へと変えていくための方策を示す。

■歯ブラシによる刺傷事故
子どもの事故として多いものに、歯ブラシや箸、ストローなど、棒状のものをくわえた状態で転倒することによる口腔・咽頭部の刺傷事故がある。東京消防庁の救急搬送データによると、歯ブラシに関係した傷害は2009~2013年で215件あった。年齢は1歳が46%を占め、1~2歳では74.9%に至る。事故原因は「転倒」が69.3%と圧倒的に多かった。
しかし、その防止策は注意喚起にとどまっており、傷害発生メカニズムの理解やそれに基づく安全基準の整備は行われていなかった。そこで、筆者らは歯ブラシによる刺傷のメカニズムを詳しく調べるため、産業技術総合研究所で開発した落下試験機を用いて、1歳児が口にくわえたまま転倒した際に受ける力の推定を行った。
落下試験機は、加速度センサー、力センサー、重りなどから構成されており、これに歯ブラシ、子どもの口腔内の皮膚を模擬した鶏肉を取り付けて実験した(図1)。重りの質量は、最も転倒の事故が多い1歳児の頭部質量に相当する2.4kgとした。また、転倒の際、地面や家具に衝突したときの頭部の速度は、乳幼児転倒に関するデータベースを用いて導出した。
このデータベースは、被験者数が19人で、年齢の中央値が23.8カ月、同標準偏差が10.5カ月、転倒回数105回のデータを基に作成したものである。同データベースを分析したところ、静止立位状態からの転倒における頭部の最大速度のうち、最も頻度が高い値は1.5~1.6m/s程度であることが分かった。そこで、これらの値を用いて実態に即した実験を行った。

近年は、「有限要素法」を用いた刺傷の物理シミュレーションも可能となっている。シミュレーションを利用するとさまざまな形状や材料特性を持つ歯ブラシに対して、転倒時に口腔内に掛かる力を予測できるようになる。そこで、前述の実験で用いた歯ブラシと同じ形状、材質の条件でシミュレーションしたところ、口腔内にかかる圧力は実験と同等の12.7MPaであると算出された。
人間の口腔内の皮膚の材料特性は不明だが、材料特性が判明している首、胸部、腹部、大腿部などの部位の皮膚では、応力が3~15MPa程度で破壊されることが分かっている。これを参考に考えると15.6MPaや12.7MPaは十分大きな値であり、今回の実験とシミュレーションの結果は、静止立位状態から転倒して1歳の頭部質量が作用しただけでも、口腔内の粘膜を貫通する可能性があることを示唆している。

■科学分析が生んだ新しい予防法
上述のように力学的な刺傷の分析が可能になると、口腔内にかかる圧力をどの程度まで低減すべきかなど、予防策を科学的に検討することが可能となる。その結果、考え出されたのが歯ブラシの柄を、柔軟なシリコーンにするという新しい発想の予防法である。シリコーン素材を活用することで、歯ブラシをくわえたまま転倒した場合でも柄が湾曲することで口腔内の粘膜に大きな力がかからないようにできる。
実際、前述の実験条件下でも口腔内に1.3MPa以下の圧力しか発生しない歯ブラシが既に販売されている。科学的なアプローチによって刺傷のリスクを大きく低減できるのである。
このように、乳幼児の行動を詳しく分析する技術や傷害シミュレーションを駆使して身体の内部の挙動を詳しく調べる技術の活用が始まっている。傷害の発生メカニズムの解明や、そのメカニズムの理解に基づいた予防法の開発が可能になってきているのである。
一般に傷害予防の分野では、 「3つのE」によるアプローチが重要とされている。1つは製品・環境のデザイン(Engineering)、 2つ目は教育(Education)、 3つ目は法規制(Enforcement)である。歯ブラシの事例は、教育や注意喚起だけに頼るのではなく、製品・環境の新たなデザインによって傷害予防を実現する1つ目のEによるアプローチの好例といえる。

■自転車のスポーク外傷
子どもの事故としては、自転車の車輪部に足を巻き込まれるスポーク外傷と呼ばれる傷害も多い。安全基準改訂の事例として、事故予防のために製品安全協会のSG基準を改定した例をみてみよう。この事例は3つのEによるアプローチのうち、3つ目の「法規制」によるものといえる。
筆者らの研究グループでは、医療機関で傷害データを収集する「傷害サーベイランスシステム」を開発し、医療機関と連携することで傷害データを継続的に収集してきた。このシステムでは、子どもの年齢や発達段階、事故に関わった製品、事故の種類、傷害の種類、受傷部位の情報などのデータを記録している。特に、受傷部位の情報の記録に関しては、「身体地図情報システム」という新しいシステムを開発した。

身体地図情報システムは、Googleマップなどに代表される地理情報システム(GIS)の身体版といえる。体の位置情報をベースとして、受傷した部位の名前や裂傷などの傷害の種類などさまざまな情報を身体の座標系上に記録できるようにしたシステムである。
ユーザーは、ディスプレー上に表示された3Dの人体モデル上に、マウス操作で傷害の位置や形状を直感的に入力できる。入力された受傷部位データは事故事例をまたがって扱えるため、複数の事例データを重ね合わせて統計的に分析することが可能である。
身体地図情報システムを含む傷害サーベイランスシステムは、2006年11月に国立成育医療研究センターに導入され、2016年4月まで9年間余りの間で約3万4000件の傷害データを収集した。

■受傷頻度が最も高いのは踵
額や膝などの傷害も多いが、最も受傷頻度が高いのは踵(かかと)である。さらに、同システムを使って踵を受傷した事故の状況を詳細に分析したところ、その多くがスポーク外傷であることが分かった。
このようなデータに基づいた分析がきっかけとなり、安全基準の改定の機運が高まった。具体的には、自転車メーカーが率先して問題解決を図るプロジェクトが発足したのである。
同プロジェクトでは、1~9歳までの約200人の子どもに協力してもらい、自転車の後部座席に座った際に、足がどこまで届くのかを計測。そのデータに基づいて、スポーク外傷に至る事故を予防するために必要な後輪のカバー範囲を明らかにした。これら一連の分析や検討が、製品安全協会による2011年の「自転車用幼児座席のSG基準」改定につながった。
SG基準改定後(2011年12月以降)の子どもの自転車事故による受傷部位の頻度マップを示した。改定後の基準を満たした自転車用幼児座席がいつから普及し、普及率がどのように変化したかが不明なため評価に限界はあるものの、踵の受傷頻度が頭部など他の部位に比べて大幅に減少していることが分かる。
SG基準の改定前と比べると、改定後は踵部の受傷確率(体全体の受傷を100%とした場合の踵の割合)が半減しており、大きな予防効果を達成したといえる。このように傷害データを継続的に収集すれば、基準の改定による効果を定量的に評価することが可能となる。

■ソフトな力とハードな力の両面から
歯ブラシの刺傷事故と自転車のスポーク外傷の2つの事故予防事例を、 「スマートパワー」という観点から考察してみたい。
スマートパワーという考え方は、国際政治学者のJoseph Nye氏が提唱したもので、世界を変える力としては、外部から変化を強いる「ハードパワー」と、内部からの変化を引き出す「ソフトパワー」の2つの力をうまく組み合わせる戦略が重要という指摘である。
例えば、国際政治でいえば、軍事力や経済制裁によるハードパワーと、こちらが好きなものを相手の国民にも好きになってもらうような説得や魅力といったソフトパワーをスマートに(賢く)組み合わせることである。このハードパワーとソフトパワーという観点から、前述の2つの傷害予防事例を捉え直してみる。

スポーク外傷予防の事例は、安全基準を改訂してそれを守ることを強要するハードパワー的なアプローチである。一方、歯ブラシの刺傷事故の予防は、曲がる機能を全メーカーが採用する必要はないが、それを開発した企業は先進的と評価される。その意味で企業は自主的に新たな魅力を提供しており、ソフトパワー的アプローチといえる。
特に、子どもの傷害予防の分野では、子どもの安全性・産みやすさ/育てやすさ・創造性などに貢献する製品やサービスを表彰する「キッズデザイン賞」という民間表彰制度が2007年から始まっている。こうした魅力づくりを後押しする仕組みは、ソフトパワーを強化するものといえる。このように子どもの傷害予防の分野では、ハードパワー(強制力)とソフトパワー(吸引力・魅力)をうまく使って、社会を変える活動が進んでいる。

■スマートパワー戦略で安全な社会へ
では、どうしてハードパワーだけではだめなのだろうか。製品の危険性が明らかになったら、その提供を禁止する、もしくは改善を義務付けるというアプローチは最も分かりやすい製品安全対策のように思える。実際、多くの製品は、法律や業界基準などによって安全基準が定められている。
しかし、実はハードパワーだけでは、事故防止に向けて社会を変える力としては不十分である。ハードパワーだけに頼ると、事故が発生した際に「JIS規格などは守っているから事故はユーザーの誤使用の問題である」「製品側には責任がない」という議論に陥りがちである。
そうではなく、消費者に魅力ある選択肢を提供し、それが選択されることで、だんだんと社会に広がっていくという方法で社会を変えていくアプローチも必要である。さもなければ、明確に製品に起因する事故以外を予防することが難しくなり、課題解決に踏み出さない社会として停留してしまう。

今回紹介した事例以外にも、100円ライターのチャイルド・レジスタンス義務付け(ハードパワー事例)、高温の水蒸気が出ない炊飯器(ソフトパワー事例)、遊具の設置面に関する国の指針(ハードパワー事例)10)、転倒してもお湯が漏れない電気ケトル(ソフトパワー事例)という具合に、ソフトパワーとハードパワーが組み合わさって、社会が変化している。
同様のことは高齢者の事故防止についても言える。子どもの事故の多くは、子どもの生活機能の変化によって生じるが、高齢者の事故も生活機能の変化が関わっている。今後、日本がこうした生活機能の変化に適応した進んだ社会を作っていくに当たり、全てをハードパワーという強制力で変えていくことは困難と考えられる。
そのとき有効な手段となり得るのは、ここで紹介したようなハードパワーとソフトパワーを組み合わせて取り入れていくスマートパワー戦略だろう。特に、生活機能が変化しやすい子どもや高齢者は、想定した使い方から外れた誤使用のリスクが高いことから、スマートパワー戦略が有効となる。

【日経新聞】



曲がる歯ブラシの深い裏側です。
# by kura0412 | 2016-10-18 10:37 | 歯科 | Comments(0)

医療費の在り方について~2015年度概算医療費から~

横倉義武会長は、9月13日に厚生労働省のホームページに公表された2015年度の概算医療費について、現在、日医総研において分析を進めていることを前置きした上で、現時点での分析結果を踏まえ、昨年度の医療費の動向と、医療費のあるべき姿の方向性について、日医の考えを説明した。

同会長は、「概算医療費」は、確定ベースではない審査支払機関における算定ベースの診療報酬の集計であり、2015年度の確定した国民医療費に関しては来年公表される見込みであるとした上で、分析結果の概要及び所感を以下のように説明した。
2015年度の医療費は41・5兆円で、対前年度比は3・8%増。この医療費の伸び3・8%のうち、薬剤料(院外処方のみ)の寄与は1・5%と計算され、また、C型肝炎治療薬等抗ウイルス剤の影響は1%程度と推計された。
これについては、「2016年度の薬価改定で、ソバルディ、ハーボニーは市場拡大再算定の特例を受けて薬価が大幅に引き下げられているため、医療費の2016年度の伸びへの影響は薄まっていくものと思われる」と述べた。
診療種類別の伸びでは、薬剤料(院外処方のみ)の伸びが11・3%と高く、2015年度には高額なC型肝炎治療薬が薬価収載された影響を受けていると考えられるが、他にも、薬価改定のない年の薬剤料は相当の伸びを示している。
医療機関の費用構造については、厚労省が過去に推計(推計手法は非公開)した医療機関の費用構造を参考として今回推計分と比較したところ、10年前と比べて人件費が49・1%から47・0%に縮小し、医薬品費が20・9%から21・8%に上昇した他、材料費及びその他の支出(設備関係費、経費)も増加している。

同会長は、「医療用消耗品等は技術料から包括して償還されていることから、これらの上昇が医療従事者の人件費を圧迫する要因になっている」と指摘した。
病院・診療所には全国で300万人以上が従事しており、2014年は2002年に比べて1・2倍以上に伸びている。
これについては、「医療分野は他の産業よりも雇用誘発効果が大きく、特に医療従事者の比率が高い地方においては経済の活性化に多大な貢献をする、すなわち地方創生につながる」と強調した。

外来医療費の構成比を計算したところ、2001年度に50・6%であった医科技術料は、2015年度には44・2%に縮小。一方、外来医療費に占める薬剤料の割合は36・2%に拡大した。
調剤技術料については、後発医薬品調剤体制加算の要件が厳しくなっているものの、調剤基本料は上昇傾向が続いている。
これらの分析結果を踏まえ、横倉会長は、「医療費に占める薬剤料の比率が上昇しつつある一方で、限りある財源の中で人件費の割合が縮小していることが読み取れる」と指摘。経済発展が社会保障の財政基盤を支え、他方で社会保障の発展が生産誘発効果や雇用誘発効果などを通じて日本経済を底支えしてきており、社会保障と経済は相互作用の関係にあると強調した。
その上で、最後に同会長は、これから年末にかけて厚労省の平成29年度予算の概算要求における事項要求の折衝が始まることから、適切な財源の確保とその配分ができるよう、同省の審議会などを通じて働き掛けていくとともに、「医療等従事者の確保のためにも、"モノからヒトへ"という医療費の配分の在り方を、もう一度考え直すべき」という日医の考え方を主張していくとした

【日医ONLINE】
# by kura0412 | 2016-10-17 16:45 | 医療政策全般 | Comments(0)

新潟「野党勝利」で高まる解散総選挙の現実味
与野党とも次々に「禁じ手」を繰り出している

10月16日に投開票が行われた新潟県知事選は、日本共産党、社民党、そして生活の党と山本太郎となかまたち(以下、生活の党)が推薦する米山隆一氏が、前長岡市長で自民党と公明党が推薦する森民夫氏を下して初当選した。
UX新潟放送21などが当確を打ったのが午後9時すぎで、大接戦と言われていた割には決まるのが早かった。米山氏はさっそく9時19分に支持者が待つ選対事務所に姿を現し、万歳した後にこう述べた。「勝利は第一歩。これからがスタートだ」。

米山氏の出馬は5度目
その第一歩までが長かった。米山氏が初出馬したのが2005年の郵政選挙で、自民党公認候補として田中真紀子氏と新潟県第5区の議席を闘った。この時、まだ大きな影響力を持っていた田中氏に約2万2000票差まで迫ったが、落選。2009年の政権交代選挙でも、田中氏に約1万7000票差で敗退している。
さらに2012年の衆院選と2013年の参院選では、日本維新の会(当時)から出馬して落選。そして5回目となる新潟県知事選で、米山氏はようやく念願の当選を果たしたわけだ。
だが今回の新潟県知事選も、決して楽な選挙ではなかった。自民党と公明党が推薦する森氏は長岡市長の5期目で、全国市長会会長も務めた実力者。連合新潟など柏崎刈羽原発再稼働推進派の支援も得ていた。

9月29日に告示されたこの選挙戦。潮目が変わったのは、選挙戦の後半だった。
当初はリードしていた森氏を米山氏がどんどん追い上げていったのだ。その原因として、優勢だった森陣営が油断していたこと、森氏を支援していたはずの一部業界が動かなかったこと、そして米山氏が脱原発の1本に絞ったのに比べ、森氏の公約が67本にも及び多くの県民にとってわかりにくかったことなどが考えられる。
慌てた自民党は選挙戦終盤に、三原じゅん子参院議員や今井絵里子参院議員など著名人を相次いで新潟県に投入。二階俊博幹事長も12日に新潟に入るなど、党を挙げてテコ入れした。
一方で、勝ち馬に乗ろうとする民進党は「自主投票」という縛りがない状況の下で、各議員が次々に新潟入りした。
「原発ゼロの会」の共同代表を務める近藤昭一民進党副代表は早くも5日に新潟入りし、7日には松野頼久衆院議員が志位和夫共産党委員長、福島みずほ社民党副党首、小沢一郎生活の党とともに新潟駅前で街宣車に乗り込んだ。さらに10日には前原誠司元外相も新潟入りして、小池晃共産党書記局長や又市征治社民党幹事長とともに米山氏の支持を訴えている。そして11日にはとうとう黒岩宇洋民進党新潟県連会長が米山氏の応援に立ったのだ。

自主投票の民進党県連会長が米山氏を応援
そもそも党本部が「自主投票」と機関決定した以上、県連会長が特定の候補を応援することは異例である。しかし、黒岩氏にとって、米山氏を応援するのに何の遠慮をする必要もなかった。なぜならば、森陣営を支援する連合新潟は9月末、民進党衆院新潟5区総支部長だった米山氏が県知事選に出馬表明したことに抗議。黒岩氏の連合新潟の会合への出入り禁止と黒岩氏が主宰する会合や行事への参加を見送ることを決定していたからだ。
13日の会見までは新潟入りを明らかにしなかった蓮舫代表も、ついにその態度を変えた。「これから新潟入りをする。蓮舫氏は新潟市、私は長岡市に入る」。
10月14日午後の会見で、江田憲司代表代行は蓮舫代表の突然の新潟入りを発表した。「党の方針は自主投票と変わらないが、私と米山氏は旧維新の党以来の同志。大接戦と聞いて、いてもたってもいられないので応援に行く。かつ泉田(裕彦)知事も通産省時代の後輩で、産業政策局で同じ仕事をした仲。泉田知事は知事という立場があるので後継指名をしないという立場だが、私はそういう関係で実際には泉田知事の後押しを受けて出た米山氏の位置付けをよく知っている。長岡市の街宣ではしっかりとそう言いたい」。

そして14日夜、江田氏は長岡市で街宣し、泉田知事の米山氏に対する激励文を森裕子参院議員に代読させ、次のように述べている。
「泉田知事は通産省時代の後輩で、二十数年前に一緒に仕事をしていた。だから泉田知事の言いにくいことを言う。泉田知事の後押しがなければ、米山氏は立候補を決断しなかった。昨日、泉田が退任の挨拶に官邸に行ってみたら、本来は約束していなかった安倍総理まで出てきて、1期目の初当選した時に応援してくれた面々がずらりとオールスターで顔を並べていたそうだ。まるでプレッシャーをかけられるような、相手候補を応援しろというまなざしを感じたそうだ」
実際に泉田知事は13日午後、知事退任の挨拶のために官邸を訪れた時、安倍首相から「当然、力を借りることもある。宜しくお願いしたい」と言われている。さらに自民党本部で二階幹事長からも、「泉田知事や後援会の力添えを得て自民党は必ず勝利し、知事と連携していろいろやっていきたい」と協力を求められたのだ。
要するに自民党とすれば、出馬すれば勝利は確実と言われた泉田知事の人気でもって挽回を図ろうとしたのだが、泉田知事に近い江田氏がこれを制したということになる。

安倍首相が池袋に行った意味
ただし、自民党は新潟県知事選に敗れたものの、すでに次の勝負に目を向けている。新潟県知事選の投開票が行われた16日の午後、東京・池袋駅前には数千人もの人が集められたのだ。
彼らの目当ては小池百合子東京都知事、そして安倍晋三首相の演説だ。10月23日に投開票の衆院東京都第10区補選では、自民党公認の若狭勝氏の優勢が伝えられている。普通ならそのような状況で、わざわざ首相を投入しない。
しかも街宣に参加したのは、下村博文自民党東京都連会長を始め、菅原一秀同会長代行、山口那津男公明党代表、高木陽介公明党東京都本部代表という主要なフルメンバー。さらに自民党や公明党の都議や区議なども総揃いしている。かつて記者会見で「若狭氏を応援しない」と言明した高野之夫区長でさえ駆け付けたのだ。
この筋書きを描いたのは自民党の二階幹事長だ。11日の若狭氏の第一声で、二階氏は「ここに来る途中に安倍首相に電話したら、『16日に池袋に行く』と言った」と述べたというのは前回記事で報じたとおりだ。
これは新潟県知事選での敗退をも視野にいれ、その後の影響を最小限に抑えるために打った次善策に違いない。首相が街宣するとなると、翌日の新聞の紙面も新潟県知事選の結果ばかり報じるわけにはいかなくなるからだ。
このように、与党も野党も次々と「禁じ手」を使い、状況はめまぐるしく変わっている。ここまで選挙に熱が入る状況を見る限り、やはり解散総選挙が迫っていると見たほうがいいのかもしれない。

【東洋経済ONLINE】




知事選挙に当選した米山氏は私と中学校が同窓で、最初の衆議院選挙出馬の時から知る間柄です。が・・・
ちなみに新潟県議会は、圧倒的に野党となった自民党が勢力をもっています。
# by kura0412 | 2016-10-17 09:55 | 政治 | Comments(0)

高齢者負担増の嵐

医療介護費 高齢者負担増に壁 厚労省審議会、見直しに慎重

医療・介護保険制度の見直し議論が難航している。厚生労働省は12日、社会保障審議会の会合を開き、要介護度の軽い人への調理や掃除など生活援助サービスで自己負担を増やす案を議論したが、有識者からは慎重な意見が多く出た。医療では金融資産の多い人に負担を求める仕組みの導入も「時期尚早」と退けられた。社会保障費の膨張抑制に有効な手立てを打ち出せていない。
厚労省と財務省は社会保障支出の伸び抑制をめざし、医療や介護の給付費をどこまで抑えるかを年末まで協議する。厚労省は社保審で具体策を詰め、財務省や与党との調整を経て来年の通常国会に関連法案を提出する方針だ。一部は政令改正などにより2017年度から実施する。

12日の社保審介護保険部会では、調理や掃除など自宅での生活援助サービスの扱いを議論した。介護保険での自己負担は1割(一部は2割)。家事代行サービスに近い面があり、財務省は負担引き上げが妥当とみる。
厚労省は要介護度の低い人向けの生活援助サービスは保険給付の対象とするものの、自己負担率を引き上げる考えを提示。だが、負担率が下がるのを狙い要介護度を上げるよう求める利用者が出かねない。「(財政など)別の副作用が生じる」(土居丈朗慶大教授)と問題視する意見も出た。
仮に実現しない場合、厚労省は代替策として介護事業者の報酬を下げ、給付費を抑える案を検討する。具体策として生活援助サービスの人員基準を緩和し、事業者が低コストでサービスを提供できるようにする一方で、18年度の介護報酬改定で生活援助サービスの報酬を下げる。だが、この案にも「サービスの質が低下する」と危惧する声があがった。
介護給付費は約10兆円。25年度には20兆円に増える見通しだ。健康保険組合連合会の佐野雅宏副会長は「給付抑制をやらずに現役世代の負担増、次世代への負担先送りは避けるべきだ」と訴えた。車いすなど福祉用具の貸与では料金が過度に高くならないよう抑える方針を決めたが、抜本見直しへのハードルは高い。

12日の社保審医療保険部会では、患者の預貯金や投資信託など金融資産に応じて医療費を負担する仕組みが見送りになる公算が大きくなった。「タンス預金などがあり捕捉は難しい」との意見があり、「時期尚早」との意見が大勢を占めた。入院時の光熱費負担を上げるかどうかは引き続き検討する。
個人の負担増を巡っては、厚労省は医療費の月額に上限を定める高額療養費制度で、70歳以上の上限を引き上げる方向で調整している。高所得者中心に負担が増える見通しだ。所得が低い高齢者の負担増は与党内に慎重意見があり、後期高齢者制度で低所得者らの保険料を最大9割軽減している特例の廃止を17年度に予定通り実施できるか不透明だ。超高額薬のオプジーボは臨時で17年度に薬価を引き下げる。

【日経新聞】




高い壁ではなく、負担増の嵐です。
# by kura0412 | 2016-10-14 12:19 | Comments(0)

病院内犯罪はなぜ起こる?元殺人担当刑事の“院内ポリス”に聞く

大口病院(横浜市神奈川区)の入院患者連続殺害事件は、世間や病院関係者に大きな衝撃を与えた。そもそも病院は、犯罪者の立場から見れば非常に「無防備な場所」であるといわれ、最近は元刑事などの警察OBをセキュリティ担当として配置する病院も増えてきた。その草分けとなった東京慈恵会大学では“院内交番”と呼ばれる24時間体制の渉外室を設置している。初代室長として勤務した元警視庁捜査一課管理官の横内昭光氏に話を聞いた。

全国の大学病院では初だった“院内交番”の横内氏
9月に明るみになった大口病院の入院患者殺害事件は、容疑者逮捕に至らぬまま2週間以上が過ぎようとしている。捜査関係者の弁によれば「被害者は二ケタ」にのぼる可能性もあるという。日頃から、同院を利用してきた近隣住民にとってはたまったもんじゃないし、同院とは縁がない一般市民でも、市中の病院でこんなにも凶悪な連続犯罪が割と簡単に実行されできてしまったことに衝撃を覚えた人は少なくないと思う。
病院とは、こんなにも無防備な場所なのか? どうしたら、安心・安全な場所にできるのか?――次々と湧き起こる疑問と不安を、病院における防犯のスペシャリスト横内昭光氏にぶつけてみた。
横内氏は、元警視庁捜査一課管理官(殺人捜査担当)。定年退職後、警察OBとして全国の大学病院では初めて、東京慈恵会医科大学に就任し、“院内交番”と呼ばれる、24時間体制の渉外室の初代室長として勤務した。現在、“院内交番”は、全国の国立病院、大学病院等に開設されている。

病院は泥棒にとって「修業の場」無防備で仕事しやすく病院専門の泥棒も

――病院は、本当は危険な場所なのでしょうか。
危険というか、無防備な場所ですね。入院患者、見舞客、付き添い家族など、不特定多数の人が昼夜を問わず常に出入りしている。夜間は正面出入口が閉まっているとしても、緊急の出入口は開けられており、自由な出入りが可能です。しかも白衣にマスクなど、医療従事者の格好をしていたら、職員との区別もつきません。
「病院は街の中と同じ。コンビニもあるし、消防署のような部署もある。犯罪も起こる可能性が常にあるのだから、“院内交番”も必要」と、最近、ある医療関係者が話していました。

――どのような犯罪が起きていますか。
窃盗犯(泥棒)にとって、病院は“修業の場”です。病院ほど盗みを働きやすい場所はない。病室は基本的に出入り自由ですし、どこに貴重品があるのかが一目瞭然。セーフティボックスなんて、ドライバー1本で簡単に開けられますからね。検査などでベッドから離れる時間を狙って犯行におよぶ、病院専門の窃盗犯もいます。
一般的に、薬や医療器具の窃盗は、医療従事者、すなわち内部の人間による犯行が大半です。自殺や殺人の目的で危険薬が持ちだされる事件も起きています。大口病院の事件でも、院内の点滴が犯行に使われた疑いがありますね。
患者や医師を狙った傷害・殺人事件も多いですよ。「医療ミスがあった」と思い込んだ精神疾患の患者に医師が射殺された事件や、入院中の男性が暴力団の組員に人違いで射殺された事件など、たくさんあります。余命を宣告されたがん患者が、自暴自棄になり、看護師らを道連れとして殺害したこともありました。
犯罪に至らないまでも、悪質クレーマーや院内暴力の事例は、日常茶飯事です。

犯罪にはすべて前兆があるが患者の目を見ない医師は気がつかない

――それらの犯罪に、共通点はありますか。
犯罪にはすべて兆し、前兆があります。精神的な病を持つ人は、なんら前兆のないところから突然、犯行におよぶこともありますが、一般的な人は、必ず兆しを残しているものです。
クレームや不満を言っているうちは、まだ凶器は持って来ません。しかし凶行におよぶ頃には、口では言わず、目で訴えるようになります。
「俺の病気治してくれよ」とか、「私の話を聞いてちょうだい、助けてよ」ってね。命や健康にかかわる場ですから、深刻度も高い。
そこで医師なり、病院なりが上手く対応していないと、次の外来の時には凶器を持ってくる。殺意が芽生え、準備をするのです。
そういう意味では、病院はやはり怖い。ところが、被害者になる可能性が一番高い医師が、結構、他人事なんですよ。危機感が薄い。

――危機感が薄いのはなぜだと思いますか。
一つには、患者さんの目を見ていないのだと思います。診察の際など、目を見ていれば、敵意を持っているか否かは、すぐにわかるでしょう。忙しすぎるからなのかもしれませんが、パソコンの画面ばかり見て、患者さんの顔を見ない医師は増えていると聞いています。
もう一つは「性善説」が基本姿勢であることです。診療行為は相手が反社会勢力だろうが誰だろうが関係なしに、目の前の患者を治すことに集中して行うので、殺人を犯すかもという視点では見ません。もちろん、看護師らのスタッフに対しても、チームで動いていますから、信頼関係を大切にします。
病院のサポート体制の問題も大きいでしょうね。どこの病院でも、院内のトラブルについて、医師や職員にアドバイスやサポートを行っているかといったら、そうではない。病院によって温度差があります。

――大口病院事件でも、前兆がありましたね。
白衣の切り裂きや、看護師の飲料に漂白剤のようなものが混入されるなど、事件につながる予兆はありましたよね。それを警察に通報せず、行政に連絡したのは問題です。病院というところは昔から、警察に届けたがらない体質がある。抵抗があるんですね。

殺人は恨み、妬み、つらみの「三み」が動機
事件の発覚」が犯人の狙いだったのか?

――犯人の心情をどう推察しますか。
事件が発覚し、警察の捜査が入ったことで、犯罪の目的は達成できたと満足しているかもしれませんね。当初は、警察に相談しなかったので、犯人としては苛立っていたと思います。
殺人というのは、恨み、妬み、つらみの「三み」が動機で起こるものです。
だから、今回の事件の犯人も誰かに、三みのうちのいずれかの感情があるのでしょう。院長か、4階にいる職員か、患者さんか、誰に対してかはわかりませんが。
さらに、トラブルを起こしても、警察に届けない、そういう体質・体制に不満を抱いている可能性も大きいですね。事件が発覚しないで、患者さんだけが死んでしまったのでは、犯人は消化不良。事件が発覚したことで、犯人は拍手しているのではないでしょうか。
それからね、昔から、放火犯と毒殺は、“女性犯罪”といわれています。
力の弱い女性でも人が殺せますしね。「できたら自分がいない時に死んでほしい」、という心理が働いているような気がします。

――こうした事件を防ぐには、どうしたらよいでしょう。
大口病院には、病棟に監視カメラがなかったことが問題になっていますが、患者さんのプライバシー保護を考えるとカメラの設置は慎重に行われるべきでしょうね。さらに、「監視されている」と意識させることが、スタッフ同士の信頼関係に影響を与え、病院全体の雰囲気がギスギスしたものになることも懸念されます。
防犯システムや警備の導入も当然考えられますが、それよりも大切なのはやはり、兆しを大切にすることだと思います。兆しを見逃さず、速やかに手を打ち、対応する。
兆しを見つけるために重要なのは、基本的なコミュニケーションです。相手の目を見て話す、院内で困っているような人や見慣れない人を見かけたら声をかける、ミスや不備を指摘されたら素直に謝る、相手の立場になって考え、一言でもいい、思いやりの言葉をかけてあげる……などです。
大口病院の場合も、誰かが、病院のなかで不満を抱いていた。恨み、妬み、つらみの「三み」を抱いていたわけです。その矛先が、患者さんという一番弱い人へと向けられた。これは、あってはいけないことです。

“院内交番”で私は、医師や職員の個人的な相談にも乗っていました。病院の職員に限らず、人は誰しも、いろいろな悩みを抱えながら仕事をしています。警察官も同様です。例えば、悩みを持ちながら、警官が拳銃を持って仕事をしていたら危険です。警察官が拳銃で自殺をする事件だって起きていますよね。同じように、異性関係やら借金やら、悩みを持つ医師や職員が悩みを抱えて仕事していれば、医療ミスや犯罪を起こす確率は高くなるのではないでしょうか。
普通の社会と同じように、病院内でも、いじめ、セクハラ、パワハラなど、さまざまなトラブルが起きています。病院が特別なわけではありません。
職員をサポートしてあげることは、患者さんを守る事にもなるのです。

医療従事者はあくまでも性善説であるべきトラブル発生時には素早い、適切な対応を

――性善説ではなく、性悪説で防犯対策を行う必要性はありませんか。
いやいや、医療従事者はあくまでも性善説でいるべきです。その上で、病院の安心・安全を守るために、我々のような警察OBを活用していただきたい。
“院内交番”のように、気軽に相談できる関係をつくっておけば、大口病院で起きたような、「警察に届けるべきかどうか迷うトラブル」が発生した場合にも、素早く、適切な対応が可能になるでしょう。
大口病院事件の場合も、早い段階で、警察に通報するなど、毅然とした対応がなされていれば、犯行のエスカレートに歯止めがかかり、事件は未然に防げたかもしれません。


医師の心構えに「病を見ずして人を見よ」という言葉がある。犯罪捜査や防犯の基本も「犯罪を見ずして人を見よ」なのかもしれない。

【DAIAMOND ONLINE】




大病院に行った時感じたのですが、病院内は患者、医療関係者以外のいろいろな人が出入りしています。性善説だなければ、普段の医療も非常にやりずらくなってきます。この事件は、今後の医療現場に大きく影響を与えます。それだけに早期に犯人を逮捕してもらいたいものです。
# by kura0412 | 2016-10-13 17:27 | 医療全般 | Comments(0)

「選択肢の多様化こそ医師偏在策」、医学部長病院長会議
自民党研究会、医師国試改革の必要性も強調

自民党の国会議員で組織する「医師偏在是正に関する研究会」(代表:河村建夫衆院議員)の10月7日の第2回会議で、全国医学部長病院長会議会長の新井一氏(順天堂大学学長)は、「医師養成のための卒前・卒後教育改革案」を提案した。医学教育に1年組み込むことで、臨床研修を1年短縮し、医師国試は臨床実習の成果を問う内容に変えるなどして、卒前と卒後の教育・研修をシームレスにし、かつ「個々の医師の選択肢を多様化、拡大」する改革案だ。

新井氏は、臨床研修、専門医研修、大学院での学位取得などの選択肢がある中、「医師の偏在解消策として重要なのは、地域の多様な医療ニーズと、個々の医師の特性に応じた多様なキャリアパスをマッチングできる、画一的ではない柔軟な対応を可能とする法・制度の設計」とコメント。2020年度までには、臨床実習終了時(医師国試前)に技能・態度を評価する「PostC.C.OSCE」を全大学で実施予定であるなど、大学レベルの「自主的な取り組み」が進んでおり、それらを制度化する国の支援などを求めた。
全国医学部長病院長会議の教育委員会委員長の山下英俊氏(山形大学医学部長)も、「短期間で医師を養成し、地域医療に派遣するという発想は重要」とし、今の医師国試は「受験勉強」が求められるため、臨床から一定期間離れることが問題であるとし、実技能力を問う方法に変更するなど国試改革の必要性を指摘。臨床研修の短縮化、専門医研修までのシームレスな教育・研修が可能になれば、短期間での専門医養成にもつながり、女性医師にとってのメリットも大きいと説明。さらに卒前教育の充実には、地域の医療機関を臨床実習の場とすることが重要であり、そのためにも「医学生ができる医行為」を法的に整理する必要性を強調した(『スチューデント・ドクターの先駆者◆山形大学』を参照)。「地域の医師は診療のプロだが、教育のプロではない。医学生に医行為をさせることで『法的責任が及ぶのではないか』との懸念がある」(山下氏)。

「医師偏在是正に関する研究会」は、議員連盟に発展させる予定。
「卒前・卒後の教育研修のシームレス化」「医師の選択肢の多様化」「教育研修期間の短縮」という提案に対しては、出席議員から支持する声が多かった。
その一人が、医師でもある自見はなこ参院議員。(1)子育て世代の30、40代の女性医師は、『職場に迷惑をかける』との理由で離職するケースが多く、この問題は医師に限らず、女性医療職全体について解決すべき課題、(2)医学教育と卒後の臨床研修、専門医研修まで横串を刺して体制を整えることが重要、(3)仮に保険医登録の要件に、地域医療への従事を義務化する場合、女性医師にとっては妊娠可能時期が遅れてしまう懸念があり、早く義務を果たすためにも、医学教育の地域実習をカウントする――の3点を要望した。保険医登録と絡めた医師偏在対策は、10月6日の厚生労働省の医療従事者の需給に関する検討会の「医師需給分科会」で提案されている。
その他の出席議員からもさまざまな意見が出て、約1時間にわたった議論は終了。
河村代表は、「本格的に議論を進めたい。議員連盟という形できちんと立ち上げたい」と締めくくった。「医師偏在是正に関する研究会」は9月に研究会としてスタートしたが、10月末か11月初めまでに議連として発展させる予定。

「地方勤務と保険医登録をリンク」に関心
7日の会議に出席したのは、新井氏、山下氏のほか、千葉大学医学部附属病院長の山本修一氏。3氏のプレゼンテーションの後、出席議員との質疑応答が展開された。
中村裕之衆院議員は、「国の制度として医師偏在対策に有効な手立てはないのか。職業選択と居住の自由があり、強制的なことはできないとしても、例えば保険医登録が簡単になるなど、医療過疎地域に勤務することで、インセンティブを付けることはできないのか」と質問。井野俊郎衆院議員も、「保険医登録に、地方勤務の経験を加味してはどうか、という提言があると聞く」と尋ねた。
新井氏は、保険医登録に絡めた対策について「一つの方策としてはあり得る」と答えた一方、「直接的に縛る」のではなく、医師の地域定着策で一定程度の成果を挙げたところにインセンティブを付けるなどの仕組みが必要だとした。
後藤田正純衆院議員は、地元徳島県の医師が、科研費を使い、研究場所である秋田県に派遣されている例があるとし、似たような枠組みの可能性を質問。新井氏は、地方自治体が、大学に共同研究講座を作って医師を採用、その医師が地域の医療機関に勤務している例があると紹介した。
そのほか、自治体立病院の集約化などの意見も出た。
津島淳衆院議員は、「地方自治体がそれぞれ病院を持ち、全国で医師を取り合っていることが問題。自治体が連携して、『中核病院とサテライト診療所』などの形態に再編する必要がある」と指摘した。さらに周産期医療など、訴訟リスクが高く、法的責任が追及される診療科の医師不足対策の検討も必要だとした。

山形、千葉、着実に医師数増加
議論に先立つプレゼンテーションで、山下氏は、「初期の臨床研修後、後期研修を始める時点でも、医師は相当勤務地域を変える」という研究調査の結果のほか、同一県内でも、都市部の医師は多く、地方は少ないなど地域差が大きい現状を説明。
こうした現状を踏まえた対策として、(1)卒前と卒後の一貫した教育研修コースを設定し、医師が進んで専門医取得の組織を選択できるようにする、(2)各都道府県で、医師育成、医療を総合的に調整する組織を機能させる、(3)地域医療に従事するインセンティブを考える――という発想から、山形県では、山形大学のほか、県、医師会、40の県内病院が参加、協力する組織として「山形大学蔵王協議会」を2002年からスタートさせたと説明。臨床実習の段階から、山形大学と地域の病院を活用した「循環型研修」などを展開している。
山形県内の常勤医師数は、2008年11月の時点では1243人だったが、2015年10月は1333人になり、全体では7%(90人)の増加だが、出身大学別に見ると、山形大学出身者は16%増加(725人から841人)。「県外から、山形大学に入学した人が、卒業後も山形大学に定着するようになってきた」という。山下氏は、チーム医療の重要性が指摘される中、各医師の得意分野や力量などを把握している大学が、地域の医療機関に医師を派遣する枠組みを充実させる必要性を強調した。
山本氏は、千葉県の現状を紹介。同県の人口当たりの医師数は全国45位。現状では2025年には1000人前後が不足するとの推計もある。その対策として、千葉大学や県などが協力して、(1)医師キャリアアップ・就職支援センター事業、(2)医師修学資金制度の拡充、(3)後期研修プログラムの充実、(4)研修病院のネットワーク化――など、初期や後期の研修医を千葉県に呼び込む活動を展開。初期研修医は増加傾向にあり、2013年4月は295人だったが、2014年4月329人、2015年360人、2016年4月398人と急伸した。

【m3.com】



この問題がここを起点として推移するならば、議員立法で歯科の逆バージョンも可能性アリなのかもしれません。
# by kura0412 | 2016-10-11 15:19 | 医療政策全般 | Comments(0)

セントケア、介護にAI 最適プランを自動作成

介護大手のセントケア・ホールディングは介護現場で人工知能(AI)を導入する。
技術を持つ米ベンチャー企業と組み、要介護者の体調や症状に合った介護サービス計画を自動で作成できるシステムを開発。質の高い計画をこれまでの半分の時間でできるようにする。生産性を高め深刻な人手不足を緩和するとともに、要介護者に最適なプランを提案する体制を整える。

介護保険制度では、要介護者の状況にあわせケアマネジャーが介護サービス計画(ケアプラン)を作成している。症状や同居家族の状況などを調べたうえで、決められた利用限度額に収まるように訪問介護やデイサービスなどを組み合わせる。
ケアマネジャーは1人で30~40人程度を担当するのが一般的。ケアプランをつくる時間だけで月40時間と、労働時間の約2割に相当することもあるという。加えて、ケアマネジャーによってプランの質にばらつきが出てしまう課題もあった。
セントケアは米シリコンバレーのアクティビティ・レコグニションが持つAIを利用。過去に介護サービスを受けた1000人以上の体調などを約400項目にまとめるとともに、実際に作成したプランをはじめとするデータをAIに学習させる。そのうえで要介護者の優先すべきサービスを決めながら、最適なプランをつくり上げる。
ケアマネジャーの個人差が少なくなるとともに、プラン策定の時間は半減できるとしている。空いた時間で高齢者との面談を増やしてもらうなど、サービスの質向上につなげる考えだ。来年1月から首都圏を含む複数の自治体で実証研究を始め、AIがつくったプランの質を検証。数年内の事業化を目指す。
労働集約型でかつ体力が求められることもあり、介護職場は慢性的な人材不足になっている。厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、介護サービス職(パート含む)の有効求人倍率は8月時点で3.14倍。全体平均(1.22倍)を大きく上回っている。
このため、事業者はIT(情報技術)を活用し、業務の効率化などを進めている。オリックス・リビング(東京・港)は有料老人ホームにセンサーを設置し、入居者が起き上がった場合に職員に配布したタブレットに警告を送るシステムを導入。メディカル・ケア・サービス(さいたま市)は12月にも、グループホームで入居者が眠っているかを確認できるセンサーを設置する。

【日経新聞】
# by kura0412 | 2016-10-08 10:08 | 介護 | Comments(0)

医科もフレイルに注目が

外来心不全患者のフレイル評価は6つの質問で

外来に訪れる高齢心不全患者のフレイル評価を行う際、質問6項目からなる問診票(フレイルスコア)を用いることは簡便かつ有用な手段であることが分かった。聖マリアンナ医科大学循環器内科の鈴木規雄氏らが、第64回日本心臓病学会学術集会(9月23~25日、東京開催)で発表した。

フレイルとは加齢に伴って生理的予備能が低下し、要介護状態、生活機能障害などに陥りやすい状態を指す。フレイルを伴う心不全患者は入院率と死亡率が高くなることが知られており、適切な介入でフレイルからの回復を促すことが重要となる。
フレイルの評価法としては、フリードの定義や、厚生労働省の作成した基本チェックリストが一般に用いられているが、これらの評価法は歩行速度や握力、体重の細かな変動など確認すべき項目が多く、時間の限られる外来診療ではより簡便な評価方法が求められていた。
そこで国立長寿医療研究センターの荒井秀典氏は従来の評価法を参考にして、質問6項目でフレイルを評価できる問診票(表1、フレイルスコア)を考案。今回の鈴木氏らの研究では、このフレイルスコアの有用性、妥当性を検討すべく、聖マリアンナ医科大学循環器内科を外来受診した65歳以上の慢性心不全患者135例を対象に、フレイルスコアでフレイルの評価を行った。

表1 フレイルスコア 

135例のうちフレイルスコアが2点以上になった患者をフレイルと判定し、心不全入院または死亡をイベントとして追跡調査を行った(平均189.2日)。フレイルと判定された患者は62例(45.9%)で、全体のイベントは18例(13.3%)だった。180日後のイベント回避率はフレイル群80.9%、非フレイル群97.2%(p=0.012)、Cox回帰分析によるフレイル群のハザード比は3.09(p=0.048)で、フレイルであること(フレイルスコアが2点以上であること)は独立した予後不良因子であることが分かった。
慢性心不全患者に対するフレイスコアの妥当性について、厚生労働省の基本チェックリストとの相関を調べたところ、フレイルスコアは正の相関を示し(p<0.001)、基本チェックリストと同様に有用であることが示された。実際に、外来通院中の慢性心不全患者の27~54%にフレイルがみられるという報告もあるが、今回フレイルと判定された患者45.9%とも一致した。
また鈴木氏らはMNA-SFと呼ばれる簡易栄養状態評価表とフレイルスコアの相関も解析した。その結果、MNA-SFとフレイルスコアは有意な負の相関を示し、栄養状態の悪化が慢性心不全患者のフレイル合併に関連することが分かった。
これらの結果から鈴木氏は、「外来診療での慢性心不全患者に対するフレイルスコアを用いたフレイル評価は、簡便かつ有用であることが分かった。外来診療にてフレイルを合併した心不全患者を早期発見し、低栄養の改善などの介入が必要と考えられる」とまとめた。

【日経メディカル】




歯科の簡易型問診票は?医科もフレイルには注目しています。
# by kura0412 | 2016-10-08 10:05 | 医療全般 | Comments(0)

高齢心不全患者の治療に関する指針を発表

日本心不全学会(理事長:磯部光章・東京医科歯科大学教授)は10月7日、今後の心不全治療の指針として『高齢心不全患者の治療に関するステートメント』を発表した。ステートメントでは、高齢心不全患者であっても積極的に治療すべき症例が存在することを再確認する一方、積極的治療によってQOLが悪化する症例も存在するとしてQOL重視の治療の意義を強調、さらには終末期を意識した多職種による緩和ケアなどの導入も提言した。理事長の磯部氏は「日本心不全学会として初めて発刊する、診療に関する本格的な提言である。第一線で診療に当たる医師、医療従事者をはじめ多くの人々によって、質の高い高齢者心不全診療の実践のために活用されることを切に願う」とコメントしている。

心不全患者の爆発的な増加(心不全パンデミック)が現実のものとなりつつある中、今後さらに高齢化する社会において、しかも限られた医療資源のなかで、医療人はこれら高齢者心不全をどのように理解し、いかに対処すべきなのか――。ステートメントは、こうした問い掛けに始まり、専門学会としての「答え」を提言という形で集約している。内容は「高齢者心不全の診断と臨床的・社会的評価」「高齢心不全患者に対する急性期・救急対応」「高齢心不全患者に対する終末期医療の指針」など7つのテーマごとにまとめられ、それぞれにおいて学会としての考え方が提示されている。
同学会は10月7日、ステートメントの全文を学会のウェブサイトで公表。さらに同日から札幌市内で始まった第20回日本心不全学会学術集会において、特別企画を開催し学会員間での議論を深めるなど、ステートメントの普及と浸透に乗り出している。

策定委員会の委員長を務める広島大学副学長の木原康樹氏は特別企画で登壇し、「策定委員会はステートメントで扱う高齢者を後期高齢者(75歳以上)と定義し、これに相応するエビデンスを検索・収集・解析した」と説明。
その結果、我が国の高齢者心不全の特徴は、
「(1)コモン・ディジーズであり、その絶対数がさらに増加してゆく、
(2)根治が望めない進行性かつ致死性の悪性疾患である、
(3)その大半が心疾患以外の併存症を有し、個人差が顕著である――の3点に要約された」と語った。
その上で、このような高齢心不全患者を診るためには、「基幹病院の専門医とかかりつけ医あるいは多職種によるチーム管理システムが必須である。延命以外の治療目標がしばしば重要となり、個人や家族の希望に沿うことができるよう早期から終末期への準備を始めておくことが求められる」と強調した。

ステートメント策定委員の1人である兵庫県立尼崎総合医療センター循環器内科部長の佐藤幸人氏は日経メディカルの取材に対して、「今回のステートメントの意義は大きく2つある。
1つは、高齢心不全患者でも積極的に治療するとよい場合もある、という方向性を再確認したこと。もう1つは、合併症が多く終末期が近い高齢心不全患者では、積極的治療がかえってQOLを落とすため、治療の差し控え、あるいは終末期では緩和ケアなどをチーム医療で考慮するという方向性が示された点だ。
個人的には、後者が盛り込まれたことの意義は大きいと思っている」と話している。

【日経メディカル】




学会からのステートメントという手がありました。
# by kura0412 | 2016-10-08 09:52 | 医療政策全般 | Comments(0)

歯科もM&A

ジーシーが『オーラ注』の昭和薬品化工の全株式を取得し子会社化

株式会社ジーシーは9月30日、東京・本郷のジーシー・コーポレイトセンターで記者会見を開き、昭和薬品化工株式会社の全株式を取得したことを発表した。中尾潔貴社長は、「本日付けでユニゾン・キャピタル株式会社がアドバイザーを務める投資ファンドから、昭和薬品化工の普通株式全株を譲り受けた」とし、「二社のシナジー効果により〝健康長寿社会に貢献する世界一の歯科企業への挑戦〟という企業目標に向けさらに邁進する」と述べた。
新社長に就任した吉田誠治氏(2010年12月よりジーシー常務取締役歴任、61歳)は、「ジーシーの海外ネットワークにより歯科薬品事業の海外展開を検討する。訪問歯科診療に利用可能な歯周病治療器械の開発も視野に入れる」とした。昭和薬品化工は1948年創業。年商約50億円。歯科用局所麻酔剤の『オーラ注』、歯周病治療剤の『ペリオフィール』が国内でトップシェアを誇ることで知られていた。

【ikeipress】



先般、レントゲン関連のメーカーが倒産という話も聞きました。歯科も技術の革新でメーカーもいろいろな動きがあるようです。狭義の歯科界も考えなければいけないようです。
# by kura0412 | 2016-10-06 08:48 | 歯科 | Comments(0)

財政審、薬価の期中改定や高齢者の負担増を求める
「スモールリスクは自助努力の余地を拡大」

財務省の財政制度等審議会財政制度分科会は10月4日、2017年度予算編成への建議に盛り込む社会保障分野の「改革の方向性」を大筋で合意した。医療分野では高額薬剤の速やかな薬価改定やかかりつけ医以外を受診した場合の定額負担、「高額療養費制度」の高齢者優遇措置の見直しなどを求めた(資料は、財務省のホームページ)。改革項目の多くは、中央社会保険医療協議会や社会保障審議会で既に議論が始まっている内容だ。
政府は社会保障費の自然増分を2016年度からの3年間で1兆5000億円(年5000億円)程度に抑える方針で、2017年度予算でも、厚生労働省の概算要求での6400億円から1400億円の削減を目指している。分科会後に会見した審議会長の吉川洋氏(立正大学経済学部教授)は「ビックリスクは共助で支える、スモールリスクはある程度以上の経済力を持つ人の自助努力の余地を広げるべきというのが財政審の基本的な考え方」と説明。スモールリスクの例示として風邪や軽度者向けの介護サービスを挙げた。

中医協で議論が進む高額薬剤の薬価の見直し については、改革案の中で「2016年4月の薬価改定に対応が間に合わなかった高額薬剤について速やかに適正水準まで薬価改定を行うとともに、適正な使用に係るガイドラインの遵守を保険償還の条件とすべき」と要望した(『『オプジーボ、「緊急的な対応」で薬価引き下げか』などを参照)。日本医師会は、期中改定では診療報酬本体(技術料)へ財源の付け替えができないとして反対の姿勢を示している(『「医科技術料の割合、減少傾向」日医が医療費分析』を参照)。財務省高官は「『改定』という表現を使うかどうかは別だが、遅くても2017年4月に引き下げをしない理由がない」と話している。

かかりつけ医の普及については、「かかりつけ医の普及や外来の機能分化は十分に進展していない。諸外国と比較して、我が国の外来受診頻度は高く、多くは少額受診。限られた医療資源の中で医療保険制度を維持していく観点からも、比較的軽微な受診について一定の追加負担は必要なのではないか」と提案した。

「かかりつけ医のイメージ」は下記のように記載。
◆他の医療機関を含めた受診状況等の把握、必要に応じた専門医療機関の紹介・連携、継続的かつ全人的な医療の提供(1)など、一定の要件を満たす診療所等(2)について、患者が「かかりつけ医」として指定(保険者に登録)。
(1)については、総合診療医の養成・定着が進むまでの経過措置として、耳鼻科や眼科など特定の診療科については、あらかじめ「かかりつけ医」と相談の上、指定する他の医療機関での診療を可能とする(定額負担も免除)。 (2)では、特定疾病の有無・年齢要件は問わず、24時間対応等も求めないなど、診療報酬で評価される地域包括診療料等とは異なり、「かかりつけ医の要件は緩やかに設定」と提案している。

かかりつけ以外を受診した場合の定額負担に金額についても、他の診療所を受診した場合は低額、病院はより高額で、規模に応じて金額を増やすことを求めている。

「生活習慣病治療薬等の処方のあり方」では、「基本的には個々の患者ごとに医師が判断すべきものであるが、例えば、高血圧薬については、我が国では高価なARB系が多く処方されている」という一文を書き添えた上で、高血圧薬の価格表を提示。「生活習慣病治療薬等について処方ルールを設定すべき」と求めた。
吉川氏は委員からの意見として「かかりつけ医制度の定着には質の向上が望まれ、そのためには健全な競争が必要。自由に選択する権利を担保する必要がある」「かかりつけ医を持たない場合はフランスのように自己負担割合を3割から4割に増やすなどの方法も考えられる」「国民全体で健康を保つためには、スポーツ医学も有効である。オリンピック選手 は、ドーピングの関係もあり薬を使わず健康を維持している。スポーツ医学の医師は3万人ぐらいいるので、こうした方にも地域医療に貢献していただくのがいいのでは」などと紹介した。

2017年度予算編成への建議に盛り込む医療分野の主な改革の方向性(案)
■かかりつけ医以外を受診した場合の定額負担の導入
「かかりつけ医」を普及させつつ、外来の機能分化を進めていくため、一定の要件を満たす「かかりつけ医」以外を受診した場合の受診時定額負担(診療所は低額とし、病院は規模に応じてより高額を設定)を導入すべき。

■高額薬剤の薬価等のあり方(当面の対応)
4月の薬価改定に対応が間に合わなかった高額薬剤について速やかに適正水準まで薬価改定を行うとともに、適正な使用に係るガイドラインの遵守を保険償還の条件とすべき。

■高額薬剤の薬価等のあり方(費用対効果評価の導入等)
高額薬剤の創出や大幅な適応拡大など昨今の状況に対応するため、(1) 保険償還の対象とすることの可否の判断、保険償還額の決定及び薬価改定に際して、費用対効果評価を本格的に導入するとともに、(2)適応拡大等による大幅な医療費増加に適切に対応できるよう、薬価制度の見直しを速やかに検討すべき。

■生活習慣病治療薬等の処方のあり方
薬剤の適正使用の推進の観点から、生活習慣病治療薬等について処方ルールを設定すべき。

■スイッチOTC化された医療用医薬品に係る保険償還率のあり方
例えば第2類・第3類となっているものなど、長らく市販品として定着しているOTC医薬品に類似する医療用医薬品は、(1)保険給付の対象から外すこととするか、(2)保険給付として残すのであれば、OTC医薬品を購入した場合との負担のバランスの観点から、一定の追加的な自己負担を求めることとすべき。あわせて、医療用医薬品のうち安全性など一定の要件を満たすものは自動的に市販品として販売可能となるよう、スイッチOTC化のルールを明確化すべき。

■入院時の光熱水費相当額に係る負担の見直し
入院時生活療養費について、在宅療養等との公平性を確保する観点から、難病患者・小児慢性特定疾患患者等を除く全ての病床について、居住費(光熱水費相当)の負担を求めていくべき。

■高額療養費の見直し (負担限度額)
高齢者の高額療養費について、速やかに、外来特例を廃止するとともに、自己負担上限について、所得区分に応じて、現役と同水準とすべき。

■高額療養費の見直し (所得基準)
「現役並み所得」の判定方法について、現役世代との公平性の観点から、収入の多寡を適切に反映する仕組みとなるよう、速やかに見直すべき。

■後期高齢者の保険料軽減特例の見直し(低所得者)
制度本来の趣旨を踏まえ、均等割の軽減特例については、速やかに本則の水準に戻すべき。また、所得割の軽減特例については、速やかに廃止すべき。

■後期高齢者の保険料軽減特例の見直し(元被扶養者)
後期高齢者の保険料軽減特例(元被扶養者)については、負担の公平性を著しく損ねていることから、速やかに廃止すべき。

■金融資産等を考慮に入れた負担を求める仕組みの医療保険への適用拡大
まずは、現行制度の下での取組として、入院時生活療養費等の負担能力の判定に際しても、補足給付と同様の仕組みを適用すべき。さらに、医療保険・介護保険における負担の在り方全般について、マイナンバーを活用して、所得のみならず、金融資産の保有状況も勘案して負担能力を判定するための具体的な制度設計について検討を進めていくべき。

【m3.com】
# by kura0412 | 2016-10-05 16:30 | 医療政策全般 | Comments(0)

高齢者って何歳以上?4割の人が思うのは… 厚労省調査

高齢者は70歳以上――。
こんな意識を持つ人が4割に上ることが、4日に閣議決定された2016年版の厚生労働白書に盛り込まれた調査でわかった。世界保健機関(WHO)が高齢者と定義している「65歳以上」とした人は半分の2割。少子高齢化に伴い働くお年寄りが増えたことも影響しているようだ。

厚労省は2月にインターネットを通じて、40歳以上の男女計3千人を対象に調査を実施した。何歳から高齢者になると思うか聞いたところ、「70歳以上」が最も多い41・1%で、「65歳以上」が20・2%、「75歳以上」が16・0%、「60歳以上」が9・8%と続いた。とりわけ60代は半数近くが「70歳以上」と答えた。
65歳以上で働いている人は増え続けており、15年には744万人いた。労働者の総数に占める割合は11・3%で、1970年と比べて約2・5倍になった。厚労白書に記された内閣府の13年の調査では、働きたい年齢について最も多かったのは「働けるうちはいつまでも」の29・5%で、「70歳ぐらいまで」の23・6%が次に多かった。
今回の厚労省の調査では、高齢になっても働くために「企業の高齢者雇用に対するインセンティブ(動機付け)作り」や「希望者全員が65歳まで働ける仕組みの徹底」「ハローワークでの高齢者への職業紹介の取り組みの強化」を求める声が多かった。(水戸部六美)

【朝日新聞】



40歳以上ではなく、高校生以上の対象での調査だとまた違う結果になっていたかもしれません。私個人としては、75歳以上だと最近感じています。但し、これも段々伸びてくると予想しています。
# by kura0412 | 2016-10-05 09:49 | 思うこと | Comments(0)

年間3500万円かかる抗がん剤は国民皆保険を破壊するか?

「オプジーボ」という抗がん剤の値段が、年間約3500万円と非常に高額なために、この薬剤が使われる範囲が広がることで、「国民皆保険の崩壊につながる」という議論が盛んである。ただし、この議論には、2つの視点、つまり「医療政策担当者としての視点」と「患者としての視点」とが混在してしまっているので整理してみたい。(多摩大学大学院教授 真野俊樹)

「オプジーボ」の使用が増えても国民皆保険は崩壊しない
まず、医療政策上の視点である。
論争になっているのは、「オプジーボ」のような高額医薬品の登場により、国民皆保険が崩壊するのか否か、という議論である。
「オプジーボ」の使用については、結論ははっきりしている。この薬剤の適応が今後さらに拡大し、どんどん使われたとしても国民皆保険の崩壊はあり得ない。それは、薬の値段である薬価が「公的価格」であるからだ。
そもそも財政的な制約を前提にしており、適応拡大によって薬剤の売り上げが増加しても国民皆保険が維持できる範囲内で薬価が規定されるからである。
つまり、国家が薬剤の値段である薬価を決めているので、製薬会社が自由に医薬品の価格を決められる米国などとは大きく異なるのである。

高額薬剤を「狙い撃ち」した「特例拡大再算定制度」が導入
ただ、問題はさほど簡単ではない。
というのは、今後、第2、第3のオプジーボ、つまり、超高額な医薬品が今後生まれてくる可能性がきわめて高いからである。
実際、日本で2015年に発売されたC型肝炎に対する薬剤も、薬剤の種類によって値段は違うが、治療によって数百万単位の薬剤費がかかるといわれる。近年、がんやリウマチ、肝炎などの難病分野では、治療効果が高い半面、製造コストや開発費の問題から高額な医薬品が増えている。このような高額な薬剤が次々に生まれてきたときに、国民皆保険を維持するための財政は耐えられるのであろうか。
実は、2016年度からこのような高額薬剤を「狙い撃ち」したような薬価算定制度が導入された。具体的には「特例拡大再算定制度」と呼ばれるものである
特例拡大再算定とは、年間販売額が極めて大きい品目の取り扱いについて、(1)年間販売額が1000~1500億円で予想の1.5倍以上のものについては、薬価を最大25%引き下げ、(2)年間販売額1500億円超で予想の1.3倍以上では薬価を最大50%引き下げる、というものだ。
半ば懲罰的な仕組みであるが、今後も医薬品に対して、このような制度の導入は可能である。今後も「国民皆保険が危ない」ということになれば、もっと厳しい制度が導入される可能性もあろう。

一方、医薬品以外の他の医療技術でも高額な医療が普及しつつある。
例えば、がんに対する重粒子線治療では数百万円のコストがかかるし、加速型ホウ素中性子補足療法ではそこまでではないにせよ、100万単位の治療費が必要になるであろう。
もっとも病気自体を完治させれば、結果的に医療にかかわる財政的な負担も減るはずである。
例えば、先述したC型肝炎の薬剤の場合には、治療効果が極めて高く、「完治が可能」と医療現場での評価も高い。このため、その後の治療費を考えると、費用対効果ではプラスになるといわれる。

国民皆保険は維持できても医療サービスの水準が下がる可能性は残る?
ここが財政面から見た医療政策上のポイントである。
つまり、お金の面からだけ考えれば、費用対効果がプラスになる薬剤は高額でも保険に収載すればよく、そうでないものは保険に収載しなければいい(自費で支払う)、という帰結である。
実際、英国ではこのような費用対効果の考え方を医療に取り入れている。荒っぽく言えば1年間の延命治療費用が約500万円以内であれば、国の負担、それ以上であれば個人の負担という考え方になっているのだ
以上が、「国民皆保険を維持できるか」といった医療政策に関する議論の答えである。
つまり、国が強力に医療費をコントロールできる権限を持っている日本や英国のような国では、その気になれば財政制約を行うことができるので、国民皆保険の維持は可能である。

もっとも、消費税増税が延期になったように、当事者間のパワーバランスで、財政規律が保てない事態は容易に予想できる。
すなわち、「医療費は制限すべきでない」と考える医療サービス提供者や患者が、財政規律の維持に反対するということである。厚生労働大臣の諮問機関で薬価を決める審議会である、中医協(中央社会保険医療協議会)での議論の混迷を見ると、不安になるのは筆者だけではないであろう。
つまり、「国民皆保険の崩壊」とまでは行かなくても、将来的には、医療費の財源不足が深刻になれば、現在、享受している水準の医療サービスが受けられなくなる可能性は大いにあるのだ。

自由な受診と高額医療を比較した場合  患者視点では高度医療の方が重要?
これから保険制度や医療制度が徐々に変わっていく中で、患者が何を最も大事にするのか、患者自らが、医療の受け方について真剣に考えねばならなくなる。
日本の医療は、「国民皆保険」のほかにも、「受診する医療機関を自由に選べる(フリーアクセス)」、「安い医療費で高度な医療が受けられる」という大きな特徴がある。
これらの3大特徴について、お金(財源)が限られた場合、どれを優先すべきなのかと考えたことがあるだろうか。とりあえず、国民皆保険は大前提とした場合、残り2つの特徴について考えてみたい。
まず、1つ目は、フリーアクセスの問題である。現在の日本の医療制度では、風邪をひいたりしたときなどは、すぐに医者を受診できるといったメリットがある。
実際、筆者は数日前に、軽い顔面神経麻痺になったが、すぐに耳鼻科の医師にアクセスすることができたので、適切な治療を選択することができた。日本の医療制度の良さを感じることができた瞬間である。
外国では大病院でなくても、医療機関の受診には予約が必要なことが多い。実は、日本のように気軽にあちこちの医療機関を受診できる国の方が圧倒的に少ない。
2つ目は、がんなどの難病にかかった際、どこまで安く、高度な医療で治療できるかという問題である。日本では、医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額の超過分が、後で払い戻される「高額療養費制度」がある。その一方、重粒子線治療などの「先進医療」を受けた場合、先進医療の費用分は全額自己負担となる。
この上記2つの特徴うち、どちらを優先すべきか。例えば、1つのフリーアクセスを我慢する代わりに、先進医療のような高度医療にも「保険適用すべきだ」という人もいるだろう。
これはまさに、がんなどの難病治療が対象であり、「命の値段が金次第」になる分野だからである。実際、「この方が重要ではないか」と思う人も多いのではないだろうか。

しかしながら、難しいのは、先ほどのC型肝炎の薬剤などのように、これから開発される高額薬剤や医療技術は、病気を治すばかりではなく、延命あるいは病気の悪化を食い止めるものが大部分であることである。
すなわち、完全に治るためではなく、「延命のために、いくらまでお金をかけるか」、という議論になってしまう点である。

QOLの視点を導入すると延命だけの医療は望まなくなる
確実に病気が治るのであれば、例え、高額な薬剤や治療法であっても「保険に収載されている方がいい」と考える人が多いだろう。ところが、完全に治って元通り健康になる確率が必ずしも高くない場合、考え方が変わると、筆者は考える。
数ヵ月~1年間の延命のための高額な薬剤の保険収載、あるいは病気の悪化予防のための薬剤を望むのかどうなのか、難しい点があると思うからだ。
これは、患者の間にQOL、すなわち、個人の「生活の質」という考え方が普及してきたためである。病気で不自由なまま長生きするのを必ずしも良しとしないQOLの考え方は、個人によって何を重視するのかが異なる点に特徴がある。

自分が医療に対して何を望むのか国民が議論していくことが重要
この極端なケースが、オランダなどで法制化され、米国の一部の州などでも法制化されてきている安楽死の考え方である。つまり、苦痛のない死を選ぶ人は安楽死を行うことが認められている。また、世界的なホスピスの普及も安楽死ほど極端ではないにせよ、QOLの重視の考え方の普及である。
実は、政策決定のところの費用対効果の考え方にもQOLの視点は入っている。
しかし、そうはいってもQOLは個人の価値観の問題が大きいので、線引きが難しい。ある人は90歳でもギリギリまで生きたいと高度医療を望むかもしれないし、ある人は75歳でもQOLを重視して、単なる延命的な医療を望まないかもしれないし、ある人は安楽死を選びたいと思うかもしれない。
筆者としては、「国民皆保険が維持されるのか」といったエキセントリックな話題に飛びつきすぎずに、状況をまず正確に理解し、自分が医療に対して何を望むのかということを、国民が議論していくことが重要ではないだろうかと考えている。

【真野俊樹・DAOAMOND ONLINE】
# by kura0412 | 2016-10-04 15:19 | 医療政策全般 | Comments(0)

混合介護の解禁検討 規制改革会議、4部会体制に
転職しやすい環境整備も

政府の規制改革推進会議(議長・大田弘子政策研究大学院大教授)は「農業」「人材」「医療・介護・保育」「投資等」を重点分野とし、それぞれの作業部会を設ける方針だ。介護保険と保険外サービスを組み合わせる「混合介護」の解禁を検討するほか、転職しやすい環境づくりにも取り組む。地域限定で規制緩和する「国家戦略特区」の委員が投資部会に入り、特区との連携を深めて規制改革につなげる狙いだ。

政府は7月末に設置期限が切れた前身の規制改革会議を衣替えし、規制改革推進会議を新たに設置した。すでに初会合を開き、6日の第2回会合で3つの作業部会の設置と座長人事などを決める方針だ。
各部会は、働き方改革を担う「人材」の座長に安念潤司・中央大大学院教授、「医療・介護・保育」に弁護士の林いづみ氏、「投資等」に原英史・政策工房社長をあてる。来年夏に答申をまとめる方針だ。
混合介護については、健全な競争を促そうと公正取引委員会が規制緩和の必要性を主張している。いまの介護保険制度では、保険を使ったサービス時間中に保険外のサービスの提供はできない。実現すれば、介護職員が要介護の人と、その家族の食事を一緒に作れるようになるなど、介護市場で新しいニーズの掘り起こしにつながる可能性がある。

「人材」部会では雇用の流動化を促すため「転職しても不利にならない仕組みづくり」を目標に掲げた。具体的には、職業紹介などの人材サービス会社が事業展開しやすい規制のあり方などを検討する。
「農業」部会(座長・金丸恭文フューチャー会長兼社長)は9月13日に先行して始動。バターや牛乳の原料となる生乳の流通改革に関し、11月末までに具体的な制度案をまとめる。肥料やトラクターなど農業資材の価格引き下げに向けた具体策は「未来投資会議」と合同で検討しており、10月中にも提言をまとめる方針だ。
一方、「投資等」部会の座長に就く原氏は、国家戦略特区の作業部会委員も併任する。一般住宅に旅行者らを有料で泊める「民泊」やロボット関連など「特区で取り組んできた規制改革の全国展開が進む」(経済官庁幹部)との見方がある。同部会の委員には八代尚宏・昭和女子大特命教授が就任。八代氏は9月12日の規制改革推進会議の初会合で、住宅の容積率を引き上げたり、日照権を見直したりして住宅投資を喚起するよう主張した。
業界団体などの抵抗に遭いやすい農業や雇用分野などに比べ「投資部会は比較的手間がかからない案件が多い」(経済官庁幹部)。長く構造改革に携わってきた2人を配置し、全国レベルの規制改革の取り組みを加速する狙いだ。

【日経新聞】
# by kura0412 | 2016-10-03 16:44 | 介護 | Comments(0)

コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言