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歯科の技術料は90%

門前薬局の報酬下げ、かかりつけ機能を重視 調剤報酬を抜本改革へ 

厚生労働省と財務省は2018年度予算編成で、薬剤師の調剤行為に支払う調剤報酬を見直す。近接する特定の病院への依存度が高い「門前薬局」の報酬を下げ、地域のかかりつけの薬局への報酬を手厚くする。利益重視になりがちな門前薬局に薬の重複投与の防止などへの取り組みを促し、医療費の抑制につなげる狙いだ。

16年度末時点で全国5万8678の薬局のうち過半が、特定の病院からの処方箋に頼る門前薬局。病院内の薬局に比べ手厚い報酬を得られ、全国で急増している。ただ地域に根ざし、様々な病院に通院する患者の飲み合わせを管理する「かかりつけ」の機能を果たしていないとの批判がある。
両省は16年度、特定病院に処方箋が集まる大規模な門前薬局の報酬を下げたが、減額になった薬局は全体の10%。今回は小規模な門前薬局や、病院の敷地内の「門内薬局」の報酬も下げる。かかりつけ機能を果たす薬局の報酬は厚くし、メリハリをつける方針だ。
また後発薬の普及へ報酬上の加算も見直す。後発薬の調剤割合が「65~75%以上」の場合に報酬を上乗せするが、両省は対象を「75~85%以上」に引き上げる方向だ。
処方薬の金額が同じでも、門前薬局など病院外で処方される際の技術料は、病院内の処方に比べ3倍ほど高い。患者負担は大きくなる。
高齢者の薬の飲み残しは年間500億円分とされ、無駄は多い。薬剤費や薬剤師の技術料にあたる調剤医療費はこの10年で6割増えた。調剤報酬を見直せば、数百億円規模の医療費抑制につながる可能性がある。

(日経新聞)


http://www5.cao.go.jp/keizaishimon/kaigi/special/reform/wg1/291108/shiryou1-5.pdf#search=%27%E8%AA%BF%E5%89%A4%E5%A0%B1%E9%85%AC%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E6%94%B9%E5%AE%9A%E7%8E%87%E3%81%AE%E8%A8%AD%E5%AE%9A%27
(「調剤報酬に対する改定率の設定」で検索してください。)


今回の改定で調剤にはメスが入りそうですが、ネットでいろいろ検索していると上記の資料が面白いことが分かりました。
財務省からの提出資料の中に「調剤報酬に対する改定率の設定」という項目に、診療報酬の構造として、医科・歯科・調剤の技術料の割合が示されており、それが80、90、20%と示されていました。
歯科の技術料90%です。これでは歯科だけが一向に改善されないわけです。
by kura0412 | 2017-11-17 15:02 | 歯科医療政策 | Comments(0)

フレネミー

フレネミーを知ってますか(一目均衡)

ソニーの吉田憲一郎副社長によると、米ビジネス界の今の流行語は「フレネミー」だという。似たような趣旨で「コペティション」という言葉もよく使われるそうだ。この2つの単語がどんな意味か、察しがつくだろうか。
フレネミー(frenemy)とは友達(friend)と敵(enemy)を合成した言葉で、ビジネスの文脈では、競争相手でありながら同時にパートナーでもある関係性を指す。コペティション(coopetition)も同様に競争(competition)と協力(cooperation)を結びつけた言葉で、やはり競争しつつも協力もするという多面的な関係を意味する。

ソニーにとってのフレネミーは誰か。吉田副社長によると、例えばネット動画配信の米ネットフリックスがそれに当たる。ソニー傘下にドラマ製作のソニー・ピクチャーズ・テレビジョンという会社があり、そこの最大顧客の一つが自社ブランドコンテンツの作製に膨大な予算を注ぎ込むネットフリックスだ。同社の配信で世界的にヒットした連続ドラマの『ハウスオブカード』や『ザ・クラウン』を実際につくったのは、実はソニーだ。
一方で両社は競合関係にもある。ソニーはゲーム機の「プレイステーション4」経由で、お茶の間のテレビに映画やアニメを届ける有料サービスを展開しているが、これはネットフリックスの牙城の動画配信市場への挑戦に他ならない。
目を凝らせば、フレネミー関係はビジネス界のいたるところで観察できる。世界最大級のフレネミーは米アップルと韓国サムスン電子だろう。両社はスマートフォン市場で激しくぶつかる一方で、薄型パネルやメモリーなどの部品では相互依存の関係にある。自動運転技術をめぐっては、自動車とIT(情報技術)の世界を代表するトヨタ自動車やグーグルの間にもフレネミー的関係が形成されるかもしれない。

直接の接点がないフレネミーもある。国内のタクシー業界は、米ウーバーテクノロジーズなどが展開するライドシェアサービスの「日本上陸絶対阻止」を掲げ、街頭デモに繰り出さんばかりの勢いだ。
その一方でライドシェアが打ち出した新機軸を取り入れ、同じ方向にいく見知らぬ客同士が1台のタクシーを利用する「相乗りサービス」の実用化に動き始めた。タクシー業界の敵視するライドシェアサービスは、実はタクシーの進化の方向を示してくれる「友人」ないし「教師」のような存在かもしれない。
フレネミー時代に必要なのは、他社との関係を適切にマネジメントする能力だ。どの領域で相手の力を借り、どの領域で競争するかを分かりやすく定義し、自社の強みを最大限発揮できるような「関係性の網の目」をつくる。それが経営者の役割である。

(日経新聞)



歯科でのフレネミーとなると医科、調剤となるのでしょうか。
by kura0412 | 2017-11-07 09:36 | 経済 | Comments(0)

次期改定のターゲットは

薬局が病院の周りにやたらと溢れかえる事情結局、
患者の薬代負担を増やした政策の是非

「何でこの薬局を選んだのかだって?そりゃ、いちばん近かったからパッと入っただけだよ。それ以外の理由は特にないねえ」。そう話す70代の男性が通う東京都立墨東病院は、墨田、江東、江戸川3区で唯一の救命救急センターを備える、東京都東部地区の中核病院だ。外来患者は1日平均約1400人。病院の外来入り口から緩いスロープを30メートルほど歩くと、細い道を挟んだ向かいに6店の薬局が目に入る。

目につく違いは看板の色ぐらい
「処方せん受付」「保険薬局」・・・・・・、掲げている内容はどこも同じで、目につく違いは看板の色ぐらいだ。男性は横断歩道をわたってすぐの、病院正門から最も近い薬局に入ったが、ひとえに「近さ」がここを選んだ理由だという。正門真正面の2店の薬局は、5~15人ぐらいの患者で待合室は満席が続いていた。他方で、少し奥まった立地だと、まばらな客入りの薬局もあった。同じ薬局から出てきた70代の女性は病院への不満を募らせていた。「もう何年も通っているが、いつも処方箋をもらって薬局に行って、また会計で病院に戻るなど、行ったり来たりの繰り返しで疲れる。なぜ病院で全部済ませてくれないのかと、ずっと思っている」。病院内にはこう掲示されている。「当院では厚生労働省が推進する医薬分業に沿い、原則、すべての外来患者さんに院外処方箋を発行し、お薬を院外の保険薬局でお受け取り頂いております」。
現在、日本全国の薬局数は約5万8000店。病院などとは異なり薬局の開設許可には需給面からの規制がなく、右肩上がりで増加している。同じく伸長しているコンビニの店舗数(約5万4000店)より多く、ガソリンスタンド(約3万2000店)や郵便局(約2万4000店)といった社会インフラをはるかに凌駕している。
薬局急増の背景には、薬の処方は医師が、調剤は薬剤師が分担して行う「医薬分業」が、国策として強く推し進められてきたことがある。病院が院外処方箋を発行するようになると、それを目当てに病院の近隣に多くの「門前薬局」が林立するようになった。同様の風景は大病院の近くでは随所に見られる。東京・品川区の旗の台駅から商店街を抜けると、一際高いビルがそびえ立つ。1日平均の外来患者数が同じく約1400人の昭和大学病院だ。周囲には飲食店に交じって、背の低い14の薬局が密集して軒を連ねている。以前は静かな住宅街だったところで再開発が進み、薬局の出店が断続的に続いた。「もうそろそろ飽和しただろうと思っていたら、また1店建ったという感じで、気がついたらずらりと並んでいた」。地元の商店主は当時を振り返る。それから十数年、店舗の入れ替わりはあっても、薬局の数は減っていない。商店主は、「これだけあるのにどうやって経営を成り立たせているのか、つくづく不思議に思う」と話す。

門前薬局ほど楽な商売はない
「門前薬局をビジネスとして考えると、これほど楽な商売はない」。あるチェーン薬局の幹部は実情を語る。病院の前に店さえ出せば、自動的に患者が入ってきてくれるため、「顧客開拓なんて必要ない。その病院に合わせた薬に限ってそろえればいいので、在庫リスクも小さい。保険収入なので、取りはぐれがないのも大きい」。そうしたビジネスモデルのため、「買収案件は枚挙にいとまがなく、これまでは個人経営の小規模店であっても、だいたい年商ぐらいの値段がついた」と、ある薬局コンサルタントは話す。この人物が知る中でも数年前、2店で年商5億~6億円ほどの薬局に、やはり同額ぐらいで買い手がついたという。チェーン薬局幹部によれば、「門前薬局の決め手は何と言っても立地。病院の出入り口に近ければ近いほどいい。それで評価額も大きく変わってくる」のだという。
こうした状況を国も問題視している。
2015年、政府の経済財政諮問会議で当時の塩崎恭久厚生労働相は、「病院前の景色を変える」と発言し、乱立する門前薬局のあり方の是正に意欲を見せた。後任の加藤勝信厚労相も同様の認識を示し、2018年度の調剤報酬改定では、門前薬局に厳しい内容が見込まれる。実際、10月25日に開催された財務省の財政制度等審議会の分科会では、薬局の調剤報酬の大幅な引き下げを据える方針を示した。

財務省がそうした方針を示した背景には、薬局の収入である調剤医療費は、2001年度の3.3兆円から2016年度には7.4兆円へと2.2倍に膨らんでいることがある。この急増の理由の一つとして考えられているのが、先に触れた医薬分業の推進だ。
医薬分業を進めるため、病院や診療所が薬を出す院内処方より、外の薬局で受け取る院外処方の技術料が高く評価されてきた。薬剤師の人件費など薬局の運営費用を考慮したためだが、その結果、同じ薬を処方する場合であっても、院外処方の場合は院内処方と比べて3倍超の技術料が算定されている。
国が医薬分業を推進したのは、処方される薬を医師と薬剤師双方がチェックすることで安全性を担保するとともに、医師が薬から利益を得るために患者に不用な薬を大量に出す「薬漬け医療」を減らせば、医療費も大幅に抑制できると判断したためだ。だが実際は薬剤費に薬局の技術料分が上乗せされるため、医薬分業が進めば進むほど、調剤医療費は増加することになる。国の狙いは外れ、大手チェーン薬局が高収益を享受する一方で、調剤医療費は逆に膨らむ羽目になった。
実際、財務省が示した高血圧や糖尿病などで28日分の内服薬が処方されたケースでは、薬剤費を除く投薬費用に関しては、3割の自己負担分だけでも、院内処方だと420円で済むところ、院外処方だと1820円と4倍以上になる。問題は患者がこの差を納得できるだけの機能を、薬局が果たしているのかどうかだ。薬局の報酬となる技術料(調剤医療費7.4兆円のうちの1.8兆円)は、処方箋受け付け1回ごとに算定される「調剤基本料」、処方する医薬品の錠数などによる「調剤料」、服薬指導の「薬学管理料」から成る。

調剤も服薬指導も誰がやっても同じ作業
その実態は、「基本料は単なる入場料で、調剤も医師の処方箋の記載どおりの作業。服薬指導もマニュアルどおりに話せばよいだけ。つまり誰がやっても同じ作業で、薬学部で学んだ専門性を生かす機会がまったくない」と、複数の薬剤師は口をそろえる。
こうした指摘に対して、厚労省は2015年10月、「患者のための薬局ビジョン」を発表した。核となったのが、「かかりつけ薬剤師・薬局」だ。2025年までにすべての薬局は24時間対応や在宅対応を果たすことが必要だとする、薬局再編像を示した。この方針を受けて前回の2016年の報酬改定で新設されたのが「かかりつけ薬剤師指導料」だ。一定の要件を満たした薬剤師が患者の同意を得れば、従来よりも高額の報酬を算定できることになる。
厚労省幹部は「医薬分業にはコストに見合うメリットがあるというのが厚労省の考えで、かかりつけ薬剤師の果たす役割はそれを示すものだ」と、その狙いを語る。ただこれは、院内処方に比べ3倍超かかる費用に見合う価値を薬局・薬剤師が提供しているのかという、本来の問いに対して直接答えたものではない。「批判をかわしたどころか、逆に新たな加算をつけるなど肥大化している」(政府関係者)といった声もある。
調剤報酬の改定をめぐる議論が11月から本格化する。
今回の財務省の問題提起は、特定の形式ありきではなく、患者にとって本当にメリットのある薬局・薬剤師のあり方とは何なのか、ゼロベースで議論する格好の機会になるといえそうだ。
(東洋経済ONLINE)



次期改定でターゲットになっている調剤です。どこまで医薬分業の対価としてのメリットをアピールできるか。それが成せなければ調剤への風当たりは暫く続きそうです。
by kura0412 | 2017-11-06 11:18 | 医療政策全般 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


by kura0412

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ミラー片手に歯科医師の本音

『口腔健康管理とかかりつけ歯科医』

今回の改定を医療全体的にみると三つの注目すべき特徴がありました。一つは伸び続けていた調剤には厳しい結果となったこと。7対1の入院基本料の要件の厳格化。そして改定の中で「かかりつけ」という概念が明確に組みこまれまれました。
「かかりつけ」に関しては医師、薬剤師に加え歯科でも導入されていますが、「かかりつけ歯科医」はあくまでも「保険用語に一つ」というイメージがあります。しかしながら医科、薬科ではこの「かかりつけ」を軸に医療体制の新しいイメージを描きつつ、今後の政策を積み重ねる意気込みを感じます。そこにあるのは、地域包括ケアの推進がベースにあっての考えです。例えば、今回の改定では紹介状のない大病院の初診・再診料自己負担は大幅なアップとなりました。また、調剤の方ではかかりつけ薬剤師指導料算定をきっかけに、患者とのコミニュケーションを密に図ろうとする試みを目指します。
一方、医療政策として改定と対をなす基金は、歯科医療の環境整備にも益々重要な意味を持ちます。ただ、今回改定の中でも可能性の秘めた項目としていくつか点数化は見られましたが、基金が改定とリンクすることなく、独立しての事業になっている印象は拭えません。限られた予算の中でのやり繰りです。W改定に向けての改定と基金との相乗効果を目指す為の戦略と、それに沿った事業の立案が必要となってきます。
包括ケアを視野に入れての「かかりつけ歯科医」でポイントとなるのが口腔ケアです。その有用性は医科からも視線が注がれています。然るに、口腔ケアという言葉が、ブラッシングのみの狭義に捉えられている現状があり、本来の口腔ケアの意味する嚥下機能も含めた口腔全体を管理する視点の広がりが不足しています。その観点からみると、今回日本歯科医学会が「口腔健康管理」と称した新たな口腔ケアの概念の提唱は機知を得た提案です。摂食機能療法などを加えた従来の歯科治療を「口腔機能管理」、歯石除去、PTCなど歯科衛生士の実施するエリアを「口腔衛生管理」、そして一般の方が実施する口腔清拭、食事介助などを「口腔ケア(狭義)」として、この三点を総じて「口腔健康管理」としました。
広義の口腔ケアとして定義する考えは、真の意味での「かかりつけ歯科医」が目指す所です。既にW改定に向けての作業が進む中で、この概念を一日も早く歯科界内部で意見の確認をしながら、国民への認知を広めなければなりません。
日医はかかりつけ医機能研修制度を創設し、独自の「かかりつけ医」というものを推し進めようしています。そしてその講習の中に「かかりつけ医の摂食嚥下障害」のメニューも組み込まれています。また、地域包括ケアに向けた「かかりつけ連携手帳」の作成に着手し、そのスピードは目を見張るものがあります。『かかりつけ歯科医』、『口腔健康管理』、『摂食嚥下障害』のキーワードは、地域包括ケアの中で育ちそうな芽であることは間違いありません。残す課題は、地域包括ケアを主導する日医、地区医師会との更なる連携の強化と事業実現に向けてのスピードを加速させることです。




『食べる=生きる』

地方消滅で日本の少子化高齢化に対して大きな警笛を鳴らした日本創成会議が「高齢者の終末医療を考える」と称したシンポジュウムを先日開催しました。その議論を聞くに、地方消滅と終末医療?そんな一見結びつかない二つが、これからの日本の大きな課題となっています。それと共に、改めて人の死という死生観を医療分野の一角に位置する歯科医師として、見つめ直す時期が今あるものと感じます。
高齢化になって、いわゆる寝たきり老人に対していろいろな考え方が示され、特に胃瘻の是非については大きな意見が分かれるところです。欧米においては日本で常習化している高齢者、寝たきり老人への適応が少ないとのこと。この点に関しては中医協でも前回の改定では、嚥下検査の有無によって評価を変えるという対応がなされ、また今回の改定での議論では、その経過の調査結果も示されています。しかしその一方、この問題が話題になって、胃瘻によって日常生活が暮らせるレベルになる患者さんまで拒否するような実例があり、医療現場その対応に苦慮する場面が多々見られる話も聞きます。
この問題は、医療、介護費増大から語られることが多かったのですが、タブー視されていた死に対する考え方が社会問題の遡上に挙がっていることは、大きな時代の変化として捉えられます。そして、食べることは従来から歯科界も提唱するように、単に延命だけが目的ではありません。生きていることの喜びを感じる、人間としての尊厳に係わる重要な日常生活の一つなのです。
医療関係者以外でも「食べる=生きる」を唱える人がいます。「食べることは、呼吸と等しく、いのちの仕組みに組み込まれているもの。」とは、料理研究家・辰巳芳子氏が唱えている私の好きな一文です。そして欧米での判断基準となる「食べる」ことの有無が延命治療の是非判断の基準となる考え方は、経済問題を抜きにしてもその専門家集団である歯科界の属するものが改めて真摯に議論し、一つの考え方を社会に示す責務があると考えます。
然るに、だかからといって歯科界が社会の先頭に立って、自らが死生観の変更を訴える必要はありません。これは社会全体で既にうごめく潮流であり、歯科界はあくまでもこの分野に特化した専門家として食べることの重要性、必要性を改めて世に唱え、それを臨床の場で実践を積み重ねれば良いのです。果たしてこれをも医科が歯科から奪い取り、領域拡大を目指すのでしょうか。
この死生観の議論の推移を見守ると共に、食べることへの支援を更に強める為に、摂食嚥下への歯科領域からの積極的なアプローチが必要となってきています。何故ならば、咀嚼と嚥下は対となって多くの結果を導き出すことが立証され、食べることを特化した専門家としての医療人としては、現状のままでは取り組みが不十分だからです。歯科医療は新たなる視点をもって社会に貢献する時代の到来です。あとはそれを導き、フォローする具体的な政策を積みかさねることです。歯科医療は真の意味での生きる喜びを支援する世界を導きます。



『飲み込みは大丈夫ですか』

基金における事業が一つのきっかけとなって、在宅診療、医療連携が新たな展開に進み始めています。それぞれの医療環境の実情を踏まえて、地域独自の取り組むこの基金を利しての新たな事業は、診療報酬と対になるこれからの歯科医療全体へ大きく波及する政策です。そしてこの基金は、来年度において今年度予算規模に介護関係が上乗せされる計画となっており、医療介護の垣根を越えた地域包括ケアシステム構築としての発想が必要となっています。
歯科における在宅診療の中心は、従来の診療所における診療の延長としての義歯調整から始まり、口腔ケアの対応へと進んでいます。口腔ケアの効果は、既に誤嚥性肺炎予防という観点から医科の関係者は元より介護関係者にも認知されています。それに加えてここきてスポットライトが浴びているのが、今回の基金でもいくつかの地域で事業が計画される摂食嚥下の分野です。
しかしながら、介護保険の認定審査項目にも「えん下」という項目がありながら、実際に摂食嚥下の対応は、一部の大学病院、リハビリテーション、耳鼻科があって積極に取り組んでいる病院以外、殆ど対応出来ていないのが介護、医療の世界の現状です。その理由は簡単です。採算が合わないからです。特に歯科においては無報酬に等しい状態です。
 嚥下の対応は、適応が少ない耳鼻科領域の手術以外その改善方法の中心は訓練、姿勢の改善、食形態変更のアドバイスなどで薬の処方もありません。検査も歯科では保険算定が認められていない内視鏡・造影検査と問診を中心としたスクーリングテストです。近年、摂食機能療法が歯科でも算定可能となりましたが、それは鼻腔栄養、胃瘻増設患者に限定されており、重度になる前の本来対応が必要な患者さんには算定出来ません。
そしてもう一つこの分野を歯科が推し進めるハードルとなるのが、隣接する医科の反応です。現在、摂食嚥下リハビリテーションは歯科医師を中心としたアプローチと耳鼻科、あるいはリハビリテーション科の医師を中心としたアプローチの二つがあります。本来ならば他の疾患でもあるように医科が歯科は口腔内のみと突っぱねるところですが、儲からない中で耳鼻科医の成り手が減少し忙しく手が回りません。それと共に、「摂食・嚥下リハビリテーション学会」の「・」がなくなり「摂食嚥下リハビリテーション学会」に名称を変えたように、嚥下と摂食、咀嚼は一連の動作であり、咀嚼のプロである歯科医師を係わりから排除することは出来ません。咀嚼して嚥下することによって食べることが出来るのです。
もし、嚥下を歯科の領域と社会から認知されれば、歯科診療所が「食べる」ことの社会ステーションと成り得ます。口から食べることへの支援が生きる為、生活を支える源であることが歯科診療所から発信が可能と成ります。したがって報酬的評価は低くても、嚥下に問題ある人が歯科診療所に相談することへの広がり目指し、その実現に向かっての政策を積み重ねる必要があります。先ずは先生方が診療所で「飲み込みは大丈夫ですか」の一言を問える環境作りがその第一歩です。




『この道しかなかった中で』

この原稿を書いている今、衆議院選挙の結果は分かっていません。しかし事前の各マスコミみれば自民党圧勝予測です。選挙は投票箱が閉められるまで何が起こるか分かりませんが、少なくても安倍退陣はなく、任期2年を残しての安倍首相の解散の決断は見事成功となりそうです。
メディアは大義ない解散と騒ぎましたが、今回の安倍首相の解散目的は明確です。日本の経済再生を目指し、自らが提唱したアベノミクスの敢行の為の長期政権への道を切り開くことです。無論、長期政権となってもアベノミクス成功の確定はありません。しかし野党からは、アベノミクスに代わって日本経済再生を可能とする具体的な対案は示されませんでした。マニフェストに踊らされて政権交代を選択したことを悔やむ多くの有権者は、その提示なしで現在の野党にもう投票することは出来ません。また第三極への期待感も、離れたりよりを戻したりの腰の落ち着きのなさを感じ、一時のブームに終わりそうです。となると自民党のキャッチフレーズ「この道しかない」、安倍政権に託すしか今回の選挙では有権者に選択肢がなかったことになります。では長期政権となるこれからの政治情勢を踏まえて、歯科界はどう安倍政権と向き合わなければいけないのでしょうか。
今回の総選挙でのマスコミの世論調査では、有権者は社会保障に対しては経済再生と並び非常に関心をもっていましたが、その政策論戦は殆ど成されませんでした。特に自民党が示した政策は、医療に関してはないも等しいような扱いです。唯一あったのが、既にスタートしている社会保障改革のプログラム法案のスケジュールに則って進めるということです。但しこのプログラム法案の対となす消費税増税が延期となったわけですので、そのスケジュールの変更は必要になってきました。恐らく16年度改定に対しては、これを理由に財務省から厳しい対応を迫られるのは必至です。
この現実の意味するものは、現行の医療制度、水準を是とする考え方がベースにあります。消費税増税、経済再生となって税収が増えたとしても、けっして医療の大幅な拡充が成されるわけではありません。それどころか、もし経済再生と成らなければ医療費はそぎ落とされる可能性もあります。これからは少子高齢化、財政再建を踏まえて、いかにレベルを落とすことなく現行の医療を保つことへの模索が始まります。しかしながら理不尽な政策に対して、責任ある医療人として対応することは当然であり、大きな改善が必要な歯科と、既に一定の医療経営環境を維持している医科とでは立ち位置が異なります。先ずはこの点への内外の理解を求めることがスタートとなります。
選挙終わるのを待って各種医療政策への対応が加速的に進みます。幸いにして政治の世界では現在の歯科医療の現状は理解されつつあり、一つ一つの政策毎の対応スタンスが求められています。果たしてこの道しかなかった中で、歯科界はどう歩みを進めるべきなのでしょうか。歯科界の政策対応能力と政治力の真価が問われています。




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