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『「食」が「学問」になる日]』

「食」が「学問」になる日
立命館大学が食科学部設置構想を推進

2018年4月、立命館大学は食科学部の新設を構想中だ。食を総合的に研究し、教育する学部が日本にできるのはこれが初めて。世界的に見てもほとんど例のない画期的な学部になる見込みだ。少子化の時代に新学部を開設するのは立命館大学にとっても大きなチャレンジ。食の安全や飢餓が人類史的な問題となっている中で、食について高度で専門的な知見やマネジメントスキルを持つ人材を育てることは、グローバルに見ても大きな意義がある。このチャレンジングな取り組みには、国内はもとより海外からも大きな注目と期待が寄せられている。
食を総合的に研究・教育する

「今、世界は食をめぐる大きな問題に直面しています」
食科学部開設の目的を問うと、立命館大学経済学部の井澤裕司教授はそう話し始めた。行動経済学の研究者として知られる井澤教授は、食科学部設置委員会の事務局長も兼務している。
「かつては食の問題といえば、量だけの単純な問題でした。けれども今は飢餓と肥満の問題が併存し、食の安全、流通、あるいは食文化などが複雑に絡み合っています。もはや一つの学問分野だけでは解決不能ですし、従来からの価値観やツールだけでも解くことはできません。食科学部の開設には、そういう社会問題を解決したいという強い思いが前提としてあります」
食べることは、人間生存の本質にかかわること。人類はどこで何をどう食べてきたのか、食べることの倫理、哲学はどう変容してきたのか、そうした深い教養がなければ食の問題は解決できないし、一方では科学や技術に関する深く専門的な知識も必要になる。
「だから食科学部では、フードマネジメント、フードカルチャー、フードテクノロジーを総合的に研究し、教育します。海外には食科学系の大学や学部がすでにありますが、ここまでトータルに食をとらえた高等教育機関はほかにありません」
特に重視しているのが、複雑な問題を解決する能力としてのマネジメントスキルだ。
「日本のサービス産業は生産性が低いという弱点があります。サービス産業のかなりの部分が食関連産業であり、その生産性を上げるために何よりも必要なのが教育です。マネジメントできる人材を育てることは、食科学部の大きな目標の一つです」

グローバル志向も特徴の一つ
こうした動きを産業界はどう評価しているのか。外食大手のロイヤルホールディングスの代表取締役会長兼CEOで、日本フードサービス協会の会長も務める菊地唯夫氏が外食産業界を代表してこう語る。
「食科学部設置の計画を知ったときには、日本でもようやくこういう動きが出てきたかという思いがしました。海外には食やホスピタリティの学校がたくさんあるのに、日本ではなぜ食というと農学や栄養学などに限定されているのだろうかと長年思っていたからです。外食産業界は、業界全体を俯瞰してみることのできる人材を必要としており、フードマネジメントを総合的に教育する学部ができることは、業界としても大歓迎です」
もう一つ、食科学部が重視するのはグローバル志向だ。食といっても和食だけに価値を見出すのではなくグローバルに食をとらえ、グローバルな観点で問題解決に寄与できる人材を育てる。そのために食科学部では「語学教育にも特徴を持たせる予定だ」と井澤教授は言う。
「英語教育のレベルは立命館大学でもトップクラスにします。学生には、ビジネスに使える、発信力のある英語を身に付けさせます。授業時間は本学の文学部や国際関係学部と同等。近年は英語専修の流れが強い中、あえてイタリア語等の第二外国語も必修です」

ル・コルドン・ブルーと提携
ここで注目すべきなのが、ル・コルドン・ブルーとの提携だ。
立命館大学は、文化と料理の関係を考察するガストロノミーやホスピタリティ、マネジメントの世界的な教育機関であるル・コルドン・ブルー・インターナショナルとの大型提携を進めていこうとしているのだ。ル・コルドン・ブルーは世界でこれまでに約30余の大学や専門教育機関とパートナーシップを結んでいるが、日本の大学では立命館大学が初めての本格的な提携大学となる。この提携について、ル・コルドン・ブルー・インターナショナルのアジア代表兼ビジネスディベロップメント・ディレクター、シャルル・コアントロ氏は次のように述べている。
「数年前からパートナーとなる日本の大学を模索していました。立命館大学とは何度も話し合った結果、未来志向のビジョンで多くの意見が一致しました。食科学部のキャンパスにル・コルドン・ブルーの教育施設を設けることも検討しています。日本では2020年に向けて海外からの観光客が急増しています。しかしそれに対応するホテルや飲食店のスタッフのレベルが追いついていません。エデュケーションプロバイダーとして私たちの役割、責任を果たしていくうえでも、立命館大学とパートナーシップを結ぶことは大きな意義があると考えています。食文化やホスピタリティの高等教育機関として食科学部は間違いなくワールドクラスのキャンパスになるでしょう」
一方、立命館大学は、日本の文化人類学研究の中心的存在である国立民族学博物館とも協力関係を結んでいる。文化人類学は食文化や食の研究をしてきた長い歴史があり、食科学の研究は文化人類学の領域とも密接なつながりを持つ。そのため立命館大学は国立民族学博物館と食文化の共同研究を推進するための学術交流協定を締結しているのだ。2014年には国立民族学博物館と共催で国際シンポジウム「世界の食文化研究と博物館」も行っている。

LE CORDON BLEU
世界20カ国で35校を展開する
エデュケーションプロバイダー
ル・コルドン・ブルーは、1895年、フランス料理の学校としてスタートした教育機関。現在は食文化やホスピタリティなどについて教育する学校を20カ国で35校以上展開している。生徒の国籍は約130カ国に及び、東京と神戸にも学校がある。日本の学校ではアジアをはじめとする日本以外の国々からの入学生が増えているため、授業は日本語、英語、中国語の3カ国語で行っている。各国に複数のキャンパスがあるため、たとえば東京校で料理の基礎コースを学んだら、その次はカナダのオタワ校で別のコースを学ぶということも可能だ。

食が学問になることを立証する
その国立民族学博物館の名誉教授で、現在は立命館大学経済学部教授・国際食文化研究センター長の朝倉敏夫氏は「食というのは人間にとって大きなテーマ」と指摘する。
「食は文化人類学の基本テーマであり、食文化を学ぶことは人間を学ぶことにほかなりません。しかも食というのは、農学や栄養学、さらには経済学、地理学、民俗学などすべての学問につながります。ただ日本では、食というのは極めて身近な個人的な行為とみなされがちなため、食が学問として扱われることがあまりありませんでした。しかし今は食の安全や流通などが人類史的な問題となっており、食を学問として確立しなければいけない時代になっています。食が学問になることを立証するのも、食科学部の大きな使命だと考えています」
計画では、食科学部は立命館大学の「びわこ・くさつキャンパス(BKC)」に設置されることになっている。BKCには、理工学部、情報理工学部、生命科学部、薬学部などの理系学部が集まっており、総合科学である食科学の研究・教育拠点を置くには学術環境として最適といえる。食科学部が開設されれば文化人類学など人文系の研究者も数多く参集することが予想される。
「本当の意味での総合大学の教育を高いレベルで提供できるベースがBKCにはあります。立命館大学の食科学部は、世界一の学部になりえる可能性を十分持っています」(井澤教授)
2年後、食科学部が産声を上げる。食が学問として確立される取り組みがそこから始まる。そしてそれはまた立命館大学が世界一に挑む壮大な挑戦の始まりにもなる。

国も高く評価し支援する
サービス産業は国内総生産(GDP)及び雇用の約7割を占めています。政府はGDPを600兆円にする目標を打ち出していますが、それを達成するためには、GDPや雇用の太宗を占めるサービス産業の生産性向上が不可欠、特に経営の質の向上が必要です。そのため経済産業省は今後のサービス産業の生産性向上を担う経営人材を育成する施策として、平成27年度から「産学連携サービス経営人材育成事業」を行っています。産学共同による経営人材育成に資するカリキュラム開発を支援する事業で、立命館大学の食科学部設立に向けた取り組みは2年連続で補助事業に採択されました。非常に専門的、実践的で、かつ大きな取り組みというところが評価され、平成27年度末の事業報告会では特別賞も受賞しました。
食科学部設立に向けた取り組みは他大学の刺激にもなりますし、他地域の大学と連携すれば全国的な広がりが出てくることも考えられます。海外の大学や教育機関と連携すれば、「立命館」の名がさらに世界的に知られるようにもなるでしょう。
井澤裕司先生には何度かお会いしましたが、大変な熱意を感じました。井澤先生のような存在も、原動力になっているのではないでしょうか。食科学部ができて5年後、10年後、優秀なマネジメント人材が輩出されサービス産業の生産性が向上し、さらに魅力ある産業に発展していくことを期待しています。世界のトップを走る学部にぜひなってほしいと思います。
 
事業モデルの転換を図る外食産業
日本の外食産業は、狭義で24兆円、広義だと30兆円の市場規模を持つ巨大産業です。しかしその外食産業が今、大きな転換期を迎えています。多店舗化による成長モデルの見直しが必要になってきたからです。
人口減少時代を迎え、外食産業界では労働力不足が深刻になりつつあります。昨年は人手が確保できずに閉店したお店もありました。今は募集しても応募者が集まらない状況が続いています。私はこれを、供給制約の時代と規定しています。労働力の供給制約が産業のあり方まで変えるほどシビアになってきているのです。
労働人口が減少しても、すべての産業が同じように厳しくなるわけではありません。魅力のある産業には、人が集まります。つまり外食産業は事業モデルのあり方を変えるとともに、魅力ある産業に転換しなければならないのです。そのためには付加価値を上げて生産性を高めていくことが不可欠です。そしてそれを実現するために必要なのが、優秀なマネジメント人材なのです。
実はロイヤルホールディングスも既存店の売り上げは前年割れが続いていました。しかし直近では4期連続の増収増益を実現しています。そこにはいろいろな要因がありますが、社員教育の効果も大きかったと考えています。「経営塾」という教育研修の制度を設け、財務諸表の見方や経済・経営の専門知識を教え、自社の経営を客観的に見られる力を養うようにしてきた効果が表れ始めたのです。
そういう意味で立命館大学の食科学部設置構想は、まさに我が意を得たりという思いがします。持続的な成長モデルを自分たちで考えないといけないときに、学問的なサポートが得られれば非常に心強いですし、食をトータルに学び、マネジメント力を身に付けた優秀な人材が輩出されれば、頼もしい限りです。日本の食のすばらしさを海外にもっと発信していくためにも、外食産業界は立命館大学食科学部に協力を惜しみません。
 
by kura0412 | 2016-10-31 12:43 | 経済 | Comments(0)

『ゆとり世代が壁 消費より貯蓄優先』

インフレ知らず悲観的…物価2%、ゆとり世代が壁
消費より貯蓄優先

1990年代後半以降のデフレ下で育ってきた若者の消費がさえない。収入があっても貯蓄にお金を回しがちで、中高年が夢中になった自動車やステレオなど見向きもしない。日銀の物価2%目標のメドがいっこうに立たないのは、そんな「ゆとり世代」の冷めた物価観や消費行動が一因かもしれない。

記者は1993年生まれの23歳。バブル経済もインフレも経験したことがない。物心ついたころには街中に100円ショップが立ち並び、軒先に「飲み放題」を掲げた居酒屋にサラリーマンが吸い込まれていく姿はありふれた光景だった。
確かに物欲は乏しい。夕食もコンビニ弁当が多い。ただ日本の消費に占める30歳未満の比率は1割強程度とされる。若者だけがお金を使わないと決めつけるのは、少し無理がある。
総務省によると1999年から2014年にかけて30歳未満の消費支出は14.6%減少した。ほかの年代も似たり寄ったりで支出の減少幅は平均で約12%。30~39歳に限れば25.8%も減った。
若者が消費低迷のやり玉にあがるのは、稼いだ額に見合うお金を使っていない面があるからだ。
可処分所得は多くの年代で減少したが、30歳未満では99年から14年の間に逆に2%増えた。一方で消費が減った結果、貯蓄率は15.7%から30.9%へとほぼ2倍に高まった。全年齢平均の貯蓄率の上昇幅は5.8ポイントなので、若者がお金をため込んでいるように映る。

デフレ時代に育った私たちは「日本は少子高齢化で大変なことになる」と聞かされ続けた。「社会保障への不安から、将来に備えお金をためようという発想が強い」(日本総合研究所の下田裕介氏)のは否定できない。
インフレを知らないからお金を寝かしておくリスクにも実感がわかない。
野村証券の試算によると29歳以下の若者の1年後の物価上昇予想(期待インフレ率)は1.9%だ。全世代平均は2.1%で、インフレを知らない若年層の物価上昇「期待」は一貫して低めだ。
日銀の黒田東彦総裁は21日、「デフレが長く続いたため、人々の予想物価上昇率が過去の物価上昇率に強く引きずられる傾向がある」と発言。日銀は物価目標に関し、実績ベースで「2%超を見るまで緩和を続ける」と約束して「期待」を刺激しようとしているが、“低体温”の若年層がカベになる可能性がある。

若者がお金をためるのは魅力的な「モノ」がない裏返しではないか。
若者の音楽離れが指摘されるが、音楽ライブの年間売上高はこの5年で2倍以上に増加した。モノから、イベントや旅行といった「コト」への消費シフトが進み、ハロウィーン市場は今やバレンタイン関連を抜いた。
テレビなど民生用機器の出荷額は15年までの5年間で7割近く減ったが、スマートフォン(スマホ)の普及率は約7割に高まった。SNS(交流サイト)の広がりもあり、人とほどよいつながりを求めるのが若者流だ。
人手不足もあって、モノの値段が下がり続ける中でもサービス価格は上昇中だ。若者消費が熱を帯びれば経済の体温も少しずつ上がるだろう。「デフレから脱却できるかは若者の動向が大きなカギを握る」(野村証券の木下智夫氏)。インフレを知らない世代が、インフレをもたらす日はそう遠くないかもしれない。

【日経新聞】
by kura0412 | 2016-10-31 10:15 | 経済 | Comments(0)

『節約志向で…百貨店、苦境突出』

節約志向で…百貨店、苦境突出 10月日経DI
2四半期連続悪化

百貨店など物販の景況感が大幅に悪化している。四半期ごとの消費関連企業の景況感を示す「日経消費DI」の10月調査は業況判断が7月調査から2ポイント低下のマイナス20となり、2四半期連続で下落した。特に百貨店は同30ポイント下落のマイナス80と、2010年1月以来の低水準。消費者の節約志向が強まっているほか、インバウンド(訪日外国人)消費にも陰りが見られる。

調査期間中の9月は台風や残暑で外出する消費者も減り、衣料品などの季節商品が振るわなかった。天候不順に加え、円高による企業収益の悪化などで先行き不透明感が強まり、消費者の節約志向が高まっている。今回は外食やサービスを含む全15業種のうち、7業種の業況判断が悪化した。
最も悪化した百貨店からは「訪日客の宝飾品消費もさえない」(三越伊勢丹)との声が漏れる。スーパーは同23ポイント下落のマイナス17、コンビニ・ミニスーパーも同29ポイント下落のマイナス29だった。物販全体では同10ポイント下落のマイナス26となった。
消費者の節約志向は消費関連企業の戦略にも影響を与え始めた。「無印良品」を展開する良品計画は8月から靴下の価格を3足1200円から同990円に値下げした。松崎暁社長は「価格戦略を見直す」と強調する。
ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長は節約志向の強まりなどを受けて「2020年の東京五輪前にかつてない不景気が来る可能性がある」と厳しい見通しを示す。9月には一部店舗で色調に一体感を持たせた低価格帯のインテリア雑貨を投入した。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長も「消費者の生活防衛意識は強まっている」と指摘する。

日経消費DIの業況判断は今年に入ってマイナス圏に沈み続けている。第2次安倍晋三政権が進めた「アベノミクス」や3年連続の賃上げなどで消費環境は一時、改善に向かい、この3年間でプラス圏に浮上する時期もあった。ただ現在はマイナス20まで低下、第2次安倍政権の発足前後の水準まで戻った。
3カ月後の業況見通しはマイナス12と7月調査と同じだった。年末の宴会シーズンを迎える外食が5ポイント上昇のマイナス22だった一方で、百貨店が10ポイント低下のマイナス40と景況感が悪化するなど業種ごとのばらつきが見られる。

▼日経消費DI 
日本経済新聞社がまとめる景気指標。業況判断は「良い」と答えた割合から「悪い」を引いた値。スーパーや百貨店、旅行・運輸、外食など15業種を対象に1995年に始めた。「消費者の支出意欲」「今後3カ月の売上高見通し」なども調査する。今回は278社にアンケート用紙を郵送。2016年9月上旬から10月上旬に187社から回答を得た。回収率は67%。調査票の発送、回収、集計は日経リサーチが担当した。

【日経新聞】



景気動向に大きく影響する歯科としては悩ましい状況になっているようです。
by kura0412 | 2016-10-29 10:05 | 経済 | Comments(0)

『かかりつけ医以外の外来定額負担 反対多く 厚労省審議会 』

かかりつけ医以外の外来定額負担 反対多く 厚労省審議会

厚生労働省は26日、外来で病院を受診した際にかかりつけ医以外なら定額の負担を患者に求めることができるかを社会保障審議会で議論した。過剰な受診を減らし、医療費の伸びを抑えるのが狙いだ。出席した委員からは「公的保険の7割給付を守るべきだ」など反対が大勢を占めた。低所得者を含め幅広い層に負担を求めるため、厚労省自体も慎重姿勢だ。医療費抑制の道は険しい。
かかりつけ医以外を受診した場合に定額の負担を求める案は政府が2015年末にまとめた経済・財政再生計画で検討を明記。財務省も厚労省に導入を求めている。

26日の社会保障審議会医療保険部会で複数の委員が反対の根拠にしたのが02年の改正健康保険法だ。現役世代の自己負担を2割から3割に引き上げた一方、同法の付則で「医療にかかわる給付割合は将来にわたり7割を維持する」とした。定額負担を導入すれば、3割を超えた負担をする人が出る。このため、日本医師会の松原謙二副会長が「(定額負担は)不適切だ」と厳しく批判した。
医療保険財政の維持へ一定の負担増を容認する健康保険組合連合会(健保連)の白川修二副会長も「国民の納得を得られると思えない」と表明。反対の理由は、政府側がかかりつけ医を普及させるために定額負担を導入するとした点にある。
かかりつけ医の普及は26日の部会でも賛成多数だったが、厚労省はどのような医師がかかりつけ医なのか定義を示していない。高齢者が内科や外科など複数のかかりつけ医がいるとした場合、定額負担をどう課すかも不透明。この状態で導入すれば混乱しかねない。
定額負担を巡っては、11年に全ての病院を受診した際に100円程度の負担を求める案を検討したものの、反対が根強く断念した。今回、かかりつけ医の普及という名目での再挑戦は戦略ミスとなった可能性がある。
白川氏は「定額負担や7割給付を幅広く議論したらどうか」と提案した。経済協力開発機構(OECD)によると、日本の1人あたりの年間外来受診回数は12.8回。英国(5.0回)やドイツ(9.9回)より多い。15年度の概算医療費は41.5兆円まで膨らみ、大半を税と社会保険料で賄う。患者負担の引き上げは避けられない情勢だ。
医療保険部会では年末までに制度改正案をまとめる方針だが、個人に負担を求める不人気政策には及び腰だ。70歳以上を対象に自己負担の月額上限を定めた「高額療養費」は引き上げ対象が高所得者中心になる見通し。金融資産に応じた個人負担の導入は見送りの公算が大きい。現役世代の社会保険料は増え続け、取りやすいところから取る状況が続く。

【日経新聞】
by kura0412 | 2016-10-28 16:47 | 医療政策全般 | Comments(0)

『新潟県知事選「想定外の大差」の意味』

もう東電を切り捨てるしかない!新潟県知事選「想定外の大差」の意味
再稼働なんて夢物語

ぬぐえない原発への不信感
柏崎刈羽原発の再稼働の是非を巡る「ワンイシュー(単一争点)選挙」となった先週日曜日(10月16日)の新潟県知事選挙で、「現状では議論も始められない」と対立候補よりも慎重な立場をとった米山隆一氏(共産、自由、社民各党が推薦)が、自民、公明両党推薦で「徹底的な検証」を主張した森民夫前長岡市長らを予想外の大差で破った。
この選挙が浮かび上がらせたのは、有権者の間に、福島第1原発の事故で経営破綻に瀕した東京電力を庇い続けてきた菅、野田、安倍の歴代3政権の原発政策に対する根強い不信感が、今なお存在するという事実だろう。
選挙戦の最中(10月12日)に、当の東電グループが35年間も使い続けたケーブルで火災を起こし、都心で大停電を招いたことも、有権者に原発事故当時から拭えない懸念を思い起させた。どんなに原子力建屋などの耐震基準を厳格化しても、肝心の東電の体質が変わらないのでは、原発を委ねられないという懸念である。
その一方で、大型原子炉が7基もある柏崎刈羽は、世界最大の発電容量を持つ原発だ。きちんと動かせれば、化石燃料市況にコストを左右されない首都圏への安定電力供給源になる。その意味では、現政権の経済面での1枚看板である成長戦略の一翼を担うことも可能だろう。
1日も早く再稼働させたいと政府が本気で願うのならば、遅ればせながら東電保護政策と決別する時だ。東電を同原発の運営と切り離し、信頼される他の主体に委ねることにして、新潟県民の原発への信頼を取り戻す必要がある。

「反省が足りていない」
米山氏は52万8455票を獲得、次点の森氏(得票数46万5044票)に6万3411票の差をつけて当選した。マスコミによると、この差は「予想外の大差」だ。
投票直前まで「どちらが勝つにしても数千票以内の差だ」(産経ニュース)とみていたからである。確かに、地元では8月末、泉田前知事がかねて表明していた4選出馬を撤回した段階で、すでに出馬を表明していた森候補が圧倒的に優勢とみられていた。
森氏は建設官僚時代から政治家への転身を周到に準備してきた人物で、9月初めの退任まで現役の全国市長会長だった。
今回は、自民、公明両党の推薦だけでなく、早々に民進党の最大支持母体である連合のローカルセンター「連合新潟」の支持も取り付け、知名度と組織力の両面で大きくリード。泉田時代に細った中央とのパイプを復活して減った公共事業を回復するとの主張も説得力があった。
一方の米山氏は医師で、どちらかと言えば知名度に難があるうえ、もともと「民進党の次期衆院選候補」とされていた。
ところが、前述のように連合新潟が森氏支持を決めたため、民進党は自主投票を決め込み、米山氏は同党の推薦を受けられなかった。同氏が立候補表明に漕ぎ着けたのは告示のわずか6日前である。当初は、米山氏を泡まつ候補扱いにしたメディアまであったという。
しかし、米山氏は「泉田知事の後継者」「現状では再稼働の議論は始められない」と主張して、ある種の旋風を巻き起こした。
加えて、大きく影響したのが「東京電力パワーグリッド」が選挙期間中(10月12日)、35年も使われてきた、首都圏の3つの変電所を結ぶ地下ケーブルで火災を起こし、それが大停電の原因になったことだ。55分程度で復旧したものの、範囲が東京都内の千代田、中央、港、新宿、豊島など主要10区の58万軒に及ぶ大規模停電だった。
これだけの停電を起こしながら、マスコミ向けの説明と謝罪に出てきたのは、中間管理職だった。この対応を見た有権者の多くが「福島第1原発事故と同じ対応だ。またしても反省が十分でない」、「柏崎刈羽原発でも似たような事故を繰り返すのではないか」と不安にかられ、米山旋風を加速させたとみられる。原発ワンイシュー選挙を恐れる東電
福島第1原発事故以来、東電は、資本主義のルールを無視した国有化、賠償・除染・廃炉に対する巨額の財政支援、そしてBWR型原発の新規制基準適合審査でトップバッターとする優遇措置など、あの手この手の国策支援を受けて、経営破綻を免れてきた。
しかし、事故以前に「(津波堆積物の)痕跡がない」と言い張って津波対策を怠ったのは周知の事実である。それどころか、事故後も今年7月にメルトダウン隠しの事実を認めて謝罪するまで5年以上の歳月を費やすなど、安全軽視の隠蔽体質が一向に改まった兆しが見えて来ない。
そんな電力会社に2度と原発を運転してほしくないと考えるのは、市民として当たり前の感覚だろう。
今回、複数の原発を持つ電力会社がショックを隠せないのは、米山氏の都市部での強さが際立ったことだ。同氏は森氏との得票差の7割弱に相当する4万2580票を新潟市内で獲得した。一方の森氏は、原発立地の柏崎市と刈羽村で米山氏を上回る支持を得たものの、都市部での大差を埋められなかった。
原発慎重派知事の誕生例として見た場合、米山氏は、今年7月に就任した鹿児島県の三反園訓知事に次ぐケースだ。

件(=くだん)の電力会社は今後、青森、宮城、福井、島根、愛媛、佐賀といった主要な原発立地県で、米山型ワンイシュー選挙を仕掛けて当選する反原発候補が相次ぐことを憂えている。政府の「安全が確認された原発は再稼働する」という原発政策が、知事権限で反故にされかねないからだ。
別の電力会社は、筆者の取材に「もちろん原発再稼働という総論は賛成だ。が、今回は柏崎刈羽の再稼働が遠ざかってホッとした」と、耳を疑いたくなるような話をした。
というのは、今年4月にスタートした電力自由化で電力会社間の競争が始まり、本来ならば原子力損害賠償支援機構から受けた資金支援の返済に充てるべき収益を、東電が顧客囲い込みキャンペーンに注ぎ込む場面を目の当たりにして「公正な競争に反する」と不信感を抱いていたからだという。
東電幹部がここへきて「柏崎刈羽が再稼働したら、料金面で大攻勢をかける」と檄を飛ばしていたことも、この電力会社が胸中で森候補敗北期待を膨らませる原因になっていたらしい。

東電擁護策との決別を!
だが、この知事選の結果をどう分析したのか。政府・与党は引き続き、東電擁護政策を堅持どころか、強化していく構えだ。
経済産業省は先月から今月にかけて、審議会の下部組織として「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」(貫徹委員会)を設置したほか、研究会として「東京電力改革・1F問題委員会」(東電委員会)を新設した。
年度内に東電の収益力の一段の強化策や、福島第1原発の廃炉費用を賄うための公的支援の拡充策、そうした費用の一般への幅広い転嫁策などを網羅的にまとめる方針と聞く。
自民党も、経済産業省の政策決定に関与するため、「原子力政策・需給問題等調査会」(会長・額賀福志郎元財務大臣)が、年内に廃炉費用や核燃料サイクル問題に関する提言を作るという。
だが、今回の新潟県知事選挙は、様々な争点のある国政選挙や、地元利害の意見集約の場にしやすい市町村レベルの選挙と異なり、県知事選挙では依然として原発問題が大きな争点になり得、東電への異例の支援が前提の原発政策が批判の的になり易いことを浮き彫りにした。
同じように運営主体問題を抱える高速増殖炉「もんじゅ」では、原子力規制委員会が「相応しい運営主体が見つからなければ、廃炉」と背水の陣を敷いて抜本的な政策転換を迫った。
柏崎刈羽原発も、運営主体の東電に対して多くの市民の危惧が集中しているのだから、もんじゅ同様に運営主体を見直すのは当然のことのはずである。つまり、東電擁護策との決別が信頼回復への第1歩ではないのだろうか。

【町田 徹・ニュースの深層】
by kura0412 | 2016-10-25 08:45 | 政治 | Comments(0)

『「解散フラグ」は立ったのか? 』

「解散フラグ」は立ったのか?

「解散フラグ」は立ったのか――。最近の永田町と霞が関の関心事はこれだ。与野党を問わず、みんながフラグ(旗)を探している。
「フラグ」とは何か。新語を積極的に扱う三省堂国語辞典は2014年からこの言葉を載せている。意味は「先の読める伏線」。小説などで登場人物が死亡する伏線が出ると「死亡フラグが立った」と表現するのが典型的な使い方だ。

■「3次補正なら解散」
永田町では来年1月の衆院解散が取り沙汰されている。12月15日の日ロ首脳会談で北方領土問題が進展するかが解散を左右するとみられるが、自身のクビがかかる衆院議員はもっと早く見極めたい。ライバルを出し抜くには、予兆である解散フラグをいち早く見つけ、選挙準備を始めたい。
「3次補正があれば衆院解散だろうが、今のところ党政調会では全く動きはない」。自民党石破派の10日の会合。党政調会長代理の田村憲久はこう話し、出席議員の笑いを誘った。
政府は毎年11月下旬に、その年度の税収見積もりを修正する。税収の一定割合は地方自治体への地方交付税交付金に回すため、見積もりが変われば補正予算を組む。今年はすでに2回補正を組んだため、次は第3次補正だ。
もし首相、安倍晋三が近く衆院解散に踏み切るなら、景気浮揚のための大規模な経済対策を3次補正に盛り込む動きがそろそろ出てくるはず――。田村は3次補正への動きが解散フラグとみる。

■TPP対決からも?
「TPP解散じゃないか」。副大臣の一人はTPP(環太平洋経済連携協定)承認案を巡る解散を疑う。今国会成立を唱える首相に対し、民進党は真っ向から反対。与党などの賛成多数で承認されても、民進党は内閣不信任決議案の提出を検討するとみられる。
政府関係者は「承認されない場合はもちろん、承認でも不信任案が出れば解散だ」と話す。だが、これは民進党へのけん制にも映る。フラグよりブラフ(はったり)の色合いが濃い。
そもそも1月解散説さえ、自民党幹部には「選挙準備ができていない若手の危機感をあおるためだ」とうそぶく向きもある。
ただ、作家が一人で綿密に構築する小説と違い、政治は多くの勢力のせめぎ合いでシナリオが決まる。フラグやブラフだけでなく、状況変化で回収できなくなる伏線もある。安倍自身、国会答弁ではたびたびビスマルクの言葉を引用し「政治は可能性の芸術だ」と語っている。
民進党は例年1月の党大会を来年は3月開催とした。自民党が先に党大会を通例の1月から3月にしたことが「1月解散のフラグ」とみられているためだ。代表の蓮舫は党内で「解散風がふき始めている」と説く。風ではためくフラグを前に、与野党議員は疑心暗鬼に陥っている。=敬称略

【日経新聞】
by kura0412 | 2016-10-21 10:30 | 政治 | Comments(0)

『降圧薬服用高齢者のフレイル、血圧低値ほど高率』

降圧薬服用高齢者のフレイル、血圧低値ほど高率

80歳以降の高齢者に対する過降圧はフレイルをもたらす可能性のあることが分かった。
高齢者長期縦断疫学研究SONICの一環として、70歳、80歳、90歳の高齢者計2245人を対象に行われた横断的検討で得られた結果だ。大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻総合ヘルスプロモーション科学の樺山舞氏らが、第39回日本高血圧学会総会(9月30日~10月2日、仙台開催)で報告した。

今回の検討は、高齢者高血圧の治療における降圧下限値の明確化を目的に、血圧値と身体的フレイル、高次生活機能との関連性を調べた。
対象は、SONICに参加した地域住民の70歳1000人、80歳973人、90歳272人の計2245人。血圧測定、身体的フレイルの指標である握力と歩行速度の測定、および高次生活機能の指標である手段的日常生活動作能力(IADL)の評価を行った。CHS(Cardiovascular Health Study)基準に基づき、握力、歩行速度のどちらかまたは両方が該当した場合を身体的フレイルと判定した。血圧値は収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)それぞれ4つのレベルに分けた。
SBPは男女とも、70歳より80歳で有意に高く、80歳より90歳で有意に低かった。DBPは男性のみ70歳より80歳が有意に低く、男女とも80歳より90歳が有意に低かった。高血圧は70歳で約7割に、80歳、90歳でそれぞれ約8割に認められた。降圧薬服用者の割合は年齢が高いほど有意に上昇した。また、年齢が高いほど、握力が弱く、歩行速度が遅く、IADLは低かった。身体的フレイルは70歳で37.1%、80歳で64.3%、90歳で91.7%に認められた。
降圧薬服用の有無別に血圧値と握力、歩行速度、IADLの関係を検討したところ、70歳では男女とも、服用群、非服用群のいずれにおいても有意な関連はみられなかった。しかし、80歳の服用群では、男性の握力が、DBPでは80~89mmHg群、90mmHg以上群に比べ、70mmHg未満群で有意に弱かった。SBPと握力の間でも同様の傾向が認められた。こうした関係は非服用群ではみられなかった。90歳では、非服用群の女性のIADLが、SBP160mmHg以上群に比べ同120mmHg未満群で有意に低かった。
身体的フレイルの割合は、服用群において、SBP、DBPが低いほど有意に高率(SBP:P=0.029、DBP:P<0.001)で、SBP120mmHg未満では75.0%、DBP70mmHg未満では72.7%に認められた。こうした関係は非服用群では見られなかった。
ロジスティック回帰分析により、フレイルに関連する要因(年齢、罹患疾患で調整後)を検討すると、非服用群ではアルブミン低値が、服用群ではDBP低値が独立した有意な関連因子となった。

以上より樺山氏は、「降圧薬服用群でのみ血圧がフレイルと関連しており、80歳以降の高齢者の過降圧はフレイルをもたらす可能性が示唆された」と結論した。今後の研究課題については「縦断的解析により、フレイル状態の高齢者の血圧が低いのか、過降圧によってフレイル状態になっているのかを明らかにする必要がある」と述べた。

【日経メディカル】



フレイルが内科でも注目されていることを示しています。
by kura0412 | 2016-10-21 10:27 | 医療全般 | Comments(0)

18年度から超高額薬、値下げ柔軟に

超高額薬、値下げ柔軟に 海外と比べ随時改定
18年度から

厚生労働省は超高額の薬の公定価格(薬価)を随時引き下げられるよう制度を大幅に見直す。価格の見直しは原則、2年に1度だが、売上高が1千億円を超えるような超高額薬では必要に応じて、価格を下げられる仕組みを導入する。技術革新に伴い、超高額薬は相次ぎ登場している。現在の硬直的な薬価決定方法を見直し、医療費の膨張を抑える。
厚労省が中央社会保険医療協議会(中医協)で具体的な見直し策を議論する。2018年度の薬価改定時に導入する方針だ。
薬価制度を見直すのは、1年間使うと1人あたり年3500万円かかるとされるがん治療薬オプジーボに対応するためだ。安倍晋三首相は14日の経済財政諮問会議で薬価引き下げを指示した。厚労省は17年度に臨時で最大25%値下げする方針で、薬価制度見直しで一段の引き下げを検討する。

具体的な見直し策の一つは、保険適用する病気を増やした際の引き下げだ。
値下げしても薬を使う患者が増えるので、製薬会社の業績への影響は小さくできる。
オプジーボの場合、最初に保険適用したのは希少がんだったこともあり、高い薬価を付けた。ただ2年に1度の薬価改定が間に合わないまま、患者数の多い肺がんにも保険適用したことが問題視された。保険適用拡大時に価格を見直す仕組みの導入で同じ問題が起きないようにする。
もう一つは薬価を見直す際に海外と比較して高すぎる場合は値下げする案だ。
今でも海外で既に保険を適用して薬価が存在する場合は海外の価格に近づける仕組みがあるが、最初に保険を適用するときのみで、薬価改定時は実施していない。

日本で最初に保険適用したオプジーボは当時、参考にする国がなく、現在は米国の2倍以上の薬価がついている。厚労省は薬価改定時にも海外の価格と比較して値下げできないか検討する。
現在は高額療養費制度があるため、患者個人の負担は低く抑えられている。だが、税と社会保険料で賄っているため、財政の負担は重い。医療保険制度の持続性を高めるため、財務省は新薬の価格を決める際、「費用対効果」を判断材料にする仕組みを幅広い薬に適用するよう求める方針だ。厚労省はこうした案も検討し、医療費の抑制につなげる。
15年度の概算医療費は41.5兆円で前年度より3.8%増えた。ソバルディなど1千億円級の売上高のC型肝炎向けの高額新薬が医療費を押し上げた。年内にもオプジーボと同じ作用を示す新薬「キイトルーダ」が登場する。薬価はオプジーボが基準になり、高額薬となるのは確実。財政負担の抑制と、製薬業界の開発意欲をそがない配慮のバランスが必要だ。

【日経新聞】



果たしてこれがどのように改定全体に波及していくのでしょうか。
by kura0412 | 2016-10-20 15:58 | 医療政策全般 | Comments(0)

『介護を成長産業にする「混合介護」5つの疑問を解く』

介護を成長産業にする「混合介護」5つの疑問を解く

昨年末に本欄に「介護離職を減らすには介護サービス料金の自由化を」を寄稿したが、それ以降、これに関する公正取引委員会の報告書も出たこともあり「混合介護」という新しい用語が新聞等を賑わせている。これは旧くから規制改革の大きなテーマであった医療の「混合診療」の介護サービス版であり、政府の介護保険給付と自己負担による保険外サービスとを自由に組み合わせることである。

混合診療とは、例えば虫歯の治療の際に、歯科医から「保険だけにするか私費も使うか」と聞かれる場合がある。これは虫歯を抜いた後に、医療保険で提供される金属の被せ物の代わりに自然の歯と見分けのつかない良い材質を使えば、患者がその差額の費用を支払うことで選択肢が広がる仕組みである。
ただし、これは医療保険では例外的な扱いで、すべての費用を公的保険で賄うか、あるいはすべて自費かのいずれかしか認められない。これが混合診療禁止の原則である。

2000年に設立された介護保険では、もう少し柔軟な仕組みとなっており、例えば週3回認められたホームヘルパーを自費で週5回に増やしたり、自費で追加的なサービスを購入することができる。これをもって厚労省は「混合介護はすでに導入されている」としている。
しかし、同じ週3回のホームヘルパーの価格を、その質に応じて介護保険から支給される給付単価よりも高く設定することは容認されていない。介護保険の下では、利用者に対して「サービス量」の選択肢は認めるが、「サービスの質と価格」の選択肢については認めない統制価格の論理が残されているのである。
もっとも介護保険対象のサービスには、ホームヘルパー以外にも、個人の技量の差の大きなものがあり、例えばリハビリの指導はその典型例である。サービスの質に差が歴然とある以上、質の高いサービスを提供できる労働者にはそれに見合った報酬が必要であり、それが平均的な質を高めるインセンティブを促すことになる。そもそも、医療保険と異なり、介護保険は当初から企業の全面的な参入を認めてきたが、これは事業者間の多様な競争を通じて、介護サービスの量的拡大と同時に、質的向上を目的としたためである。
急速に進展する高齢化社会で、介護サービスが必要な後期高齢者は増える一方である。他方で、低成長の下で介護保険財政は厳しく、十分な数の介護労働者を確保するための介護報酬の大幅な引き上げは困難である。しかし、これを民間の視点で見れば、高齢者の増加で有望なシルバー市場が開けている。政府が基礎的な介護サービスを確実に保障するとともに、民間の創意工夫で多様な上乗せサービスが提供されれば、介護は成長産業となる可能性を秘めている。 

「混合介護」への疑問点
すでに「介護事業を飛躍的に伸ばす、公取委の画期的提言」で福祉ジャーナリストの浅川澄一氏が解説されたように、公正取引委員会が介護分野での競争を抑制する規制等についての研究会を行い、それに基づいた報告書を公表した。この研究会には筆者も参加したが、そこで鈴木亘・学習院大学教授と共同で、混合介護が実現した場合の問題点についても検討している。

第1に、介護サービス価格が自由化されれば、それが高止まりして低所得層は十分なサービスを購入できないのではないかという懸念である。また、多くの事業者が上乗せ料金を得られる高付加価値サービスに特化することで、利用者にとって本来の介護報酬で受けられるサービス供給が制限されるのではないかという疑問もある。
こうした疑問は、暗黙の内に「供給量が一定」という世界を前提としている。しかし、サービス価格を低い水準に統制することが、民間事業者の供給増を抑制し、利用者の長い待ち行列を引き起こす基本的な要因となる。市場経済の最大のメリットは、価格が上がることで供給が増えるメカニズムにある。介護サービス事業には参入規制はなく、小規模の事業者でも開業は容易である。多様な事業者間のすみ分けで、介護保険給付を前提とした通常の介護サービスを提供する事業者が不足するような状況は考え難い。
もっとも、過疎地や離島等で、十分な数の事業者がいない場合には、例外的に何らかの公的な介入が必要な場合もある。例えば、地域の介護サービス事業者に、売上高の一定比率を介護報酬だけで利用できるサービスの供給を義務付けることも考えられる。

第2に、介護保険の利用者の間でサービスの質に差が生じることは格差の拡大ではないかという批判がある。これは伝統的な低所得層を対象とした福祉の専門家の間で根強い考え方である。
しかし、高齢者層の所得格差は年齢層のうちでもっとも大きく、豊かな高齢者は、すでに市場価格で質の高い保険外サービスを利用可能である。混合介護のメリットを受けるのは中所得層であり、介護報酬との差額分だけを負担することで良質の介護サービスを購入できるようになる。また、混合介護の導入で介護サービス事業者の採算が改善すれば、より多くの事業者が参入し、競争が促進されることから、結果的に介護報酬のみでのサービスの利用者にとってもメリットとなる。

介護サービスの質を誰が判断するか
第3に、介護サービスの質を公的に定める基準を作ることは容易ではないという行政側の反対がある。また、現行制度でも、良質のサービスの事業所には行政が定めた改善加算制度があり、それで十分ではないかという。確かに、医療のように患者が医薬品等の効能を判断できない場合には一定の配慮が必要となる。
しかし、日常生活の延長である介護サービスについては、個々の利用者の主観的な判断に委ねればよいのではないか。行政が定めた事業者への報酬加算制度だけでなく、消費者が選択する多様なサービスの提供を促す仕組みが必要とされる。例えば、質の高いサービスを提供するホームヘルパーを利用者が指名して追加料金を支払えば、ヘルパーの受け取る所得が増えることで人材の確保が容易となる。また優れたヘルパーを多く抱える事業者が事業を拡大することで、業界の水準を引き上げることにも貢献する。こうした考え方は、現に介護保険設立時の厚生省の研究会でも議論されたにもかかわらず、中途で立ち消えになったのは残念である。

第4に、混合介護で保険外サービスが増えるのはともかく、それで介護保険への需要が誘発され、保険財政が悪化しないかという心配である。
これは混合診療への反対論と共通したものだが、費用が青天井の医療保険と比べて、介護保険では要介護認定にもとづき利用者が使える介護報酬に上限が定められていることが大きな違いである。介護保険財政が厳しくなるなかで、公的保険はより重度の要介護者に重点を置き、軽度の要介護者は市場サービスを活用する、公私の役割分担が求められよう。

最後に、認知症等で判断力に乏しい高齢者への対応である。
これについては、利用者保護のため、事業者からの上乗せ料金の額や利用の頻度についての情報開示の義務付けを事業者に求める必要がある。また、介護保険と組み合わされる保険外サービスについては、ケアマネージャーへの報告義務を課すことで、過大なサービス購入等のチェックは可能である。一部に判断能力の乏しい高齢者がいることを理由に、高齢者全体の消費行動を規制することは、行政の越権行為といえる。

介護保険本来の精神は市場の活用
2000年に設立された介護保険制度は利用者が介護サービスを購入できる独自の財源を確保し、それを供給面から支える福祉の基礎構造改革と合わせた大改革であった。それ以前の高齢者福祉は、現在の児童福祉と同様に行政が利用者の必要度を認定し、それに見合った供給を措置する行政処分の制度であった。これは高齢者介護が基本的に家族の責任であり、それから漏れた一部の高齢者に対して行政が責任をもつ福祉という考え方である。
しかし、急速に進む人口の高齢化に、介護を必要とする高齢者を家族や社会福祉法人だけで対応することはできない。このため民間企業を主体とした幅広い事業者が、市場競争のなかで多様なサービスを提供することで、活力ある高齢化社会を築くことが、本来の介護保険の精神であった。それが次第に形骸化し、細部における規制の強化が進んでいる。
例えば、すでに認められている介護保険と組み合わせる保険外サービスの際に、利用者に誤解を生じさせないようにホームヘルパーに違うエプロンをつけさせるというような瑣末な自治体のローカルルールは、介護事業者に余計な負担を課し、事業の抑制要因となる。

介護保険は、あくまでも利用者が基礎的な介護サービスを購入できる財源を保障するものである。そこで定められた介護報酬単価を、行政が介護サービス市場を統制する公定価格としている現状は、旧来の画一的な福祉の発想から抜け出せない政治や行政の体質にもとづいている。
高齢化先進国の日本が、それに対応した効率的な介護サービスのビジネスモデルを構築すれば、急速な高齢化が進む中国や他の東アジア諸国にも輸出可能である。混合介護の導入はそのための第一歩であり、市場の活力を活かした成長戦略であるアベノミクスの大きな柱となる規制改革のひとつといえる。

【DAIAMOND ONLINE:八代尚宏】
by kura0412 | 2016-10-20 08:49 | 介護 | Comments(0)

『新潟で反原発知事が当選、どうしても原発を再稼働させたい東電の事情とは』

新潟で反原発知事が当選、どうしても原発を再稼働させたい東電の事情とは

東京電力柏崎刈羽原発の再稼働が争点となった新潟県知事選が16日に行われ、再稼働に慎重な姿勢を示していた無所属の米山隆一氏(共産、社民、自由推薦)が、与党が推薦する候補を破って初当選を果たしました。同原発の再稼働はどうなるのでしょうか。

知事の理解を得なければ再稼働に進むことは困難
同原発は、泉田裕彦前知事が再稼働に対して慎重な姿勢を示してきたことから、再稼働の見通しが立っていませんでした。現在、同原発の6号機と7号機は、原子力規制委員会が安全審査を進めており、場合によっては、年度内に審査に合格する可能性もあります。
泉田氏は今回の選挙に4選を目指して出馬するはずでしたが、8月に突如出馬を撤回。「現状では再稼働は認めない」と主張した米山氏と、元建設官僚で前長岡市長の森民夫氏との事実上の一騎打ちとなりましたが、米山氏が52万票以上を獲得して初当選を果たしました。与党は幹部が応援に入るなど万全の体制で選挙に臨んだものの、支持を広げることはできませんでした。
県知事には再稼働を止める法的な権限はありませんが、原子力政策は自治体の了承を得て進めていくことが大前提となっており、事実上、知事の理解を得なければ再稼働に進むことは困難です。

福島第一原発の廃炉費用は8兆円とも
東京電力と政府は何としても再稼働にこぎ着けたいと考えているのですが、その理由は、東電の経営状況にあります。同社は福島第一原発の事故によって巨額の損失を出し、一時は自己資本比率が5%近くに落ち込むなど財務的に厳しい状況に追い込まれました。その後、電力料金の値上げによってとりあえず同社の経営は一息つきましたが、ここに来て急浮上してきているのが福島第一原発の廃炉費用です。現在、廃炉費用がいくらになるのか分からない状態であることから、負債としては計上されていませんが、一部の報道では廃炉費用が8兆円に達するとの見方も出てきています。

原発が稼働しなくても年間6000億円の費用が発生
現在、東京電力は原発をまったく稼働させていないものの、年間6000億円ほどの費用が原発にかかっています。柏崎刈羽の6号機、7号機を稼働させることで、とりあえず2500億円程度の収益が上乗せされますが、全体からすればまだまだです。ここに8兆円もの負担が加わってくる場合、同社は再び経営危機に陥ってしまいます。
同社や政府が何としても再稼働を実現させたいと考えているのは、こうした切実な事情があるからです。ただ、どのような形になるにせよ、原発事故のツケは、すべて国民が負担するという事実に変わりはありません。

【THE PAGE】
by kura0412 | 2016-10-18 16:13 | 政治 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


by kura0412

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ミラー片手に歯科医師の本音

『口腔健康管理とかかりつけ歯科医』

今回の改定を医療全体的にみると三つの注目すべき特徴がありました。一つは伸び続けていた調剤には厳しい結果となったこと。7対1の入院基本料の要件の厳格化。そして改定の中で「かかりつけ」という概念が明確に組みこまれまれました。
「かかりつけ」に関しては医師、薬剤師に加え歯科でも導入されていますが、「かかりつけ歯科医」はあくまでも「保険用語に一つ」というイメージがあります。しかしながら医科、薬科ではこの「かかりつけ」を軸に医療体制の新しいイメージを描きつつ、今後の政策を積み重ねる意気込みを感じます。そこにあるのは、地域包括ケアの推進がベースにあっての考えです。例えば、今回の改定では紹介状のない大病院の初診・再診料自己負担は大幅なアップとなりました。また、調剤の方ではかかりつけ薬剤師指導料算定をきっかけに、患者とのコミニュケーションを密に図ろうとする試みを目指します。
一方、医療政策として改定と対をなす基金は、歯科医療の環境整備にも益々重要な意味を持ちます。ただ、今回改定の中でも可能性の秘めた項目としていくつか点数化は見られましたが、基金が改定とリンクすることなく、独立しての事業になっている印象は拭えません。限られた予算の中でのやり繰りです。W改定に向けての改定と基金との相乗効果を目指す為の戦略と、それに沿った事業の立案が必要となってきます。
包括ケアを視野に入れての「かかりつけ歯科医」でポイントとなるのが口腔ケアです。その有用性は医科からも視線が注がれています。然るに、口腔ケアという言葉が、ブラッシングのみの狭義に捉えられている現状があり、本来の口腔ケアの意味する嚥下機能も含めた口腔全体を管理する視点の広がりが不足しています。その観点からみると、今回日本歯科医学会が「口腔健康管理」と称した新たな口腔ケアの概念の提唱は機知を得た提案です。摂食機能療法などを加えた従来の歯科治療を「口腔機能管理」、歯石除去、PTCなど歯科衛生士の実施するエリアを「口腔衛生管理」、そして一般の方が実施する口腔清拭、食事介助などを「口腔ケア(狭義)」として、この三点を総じて「口腔健康管理」としました。
広義の口腔ケアとして定義する考えは、真の意味での「かかりつけ歯科医」が目指す所です。既にW改定に向けての作業が進む中で、この概念を一日も早く歯科界内部で意見の確認をしながら、国民への認知を広めなければなりません。
日医はかかりつけ医機能研修制度を創設し、独自の「かかりつけ医」というものを推し進めようしています。そしてその講習の中に「かかりつけ医の摂食嚥下障害」のメニューも組み込まれています。また、地域包括ケアに向けた「かかりつけ連携手帳」の作成に着手し、そのスピードは目を見張るものがあります。『かかりつけ歯科医』、『口腔健康管理』、『摂食嚥下障害』のキーワードは、地域包括ケアの中で育ちそうな芽であることは間違いありません。残す課題は、地域包括ケアを主導する日医、地区医師会との更なる連携の強化と事業実現に向けてのスピードを加速させることです。




『食べる=生きる』

地方消滅で日本の少子化高齢化に対して大きな警笛を鳴らした日本創成会議が「高齢者の終末医療を考える」と称したシンポジュウムを先日開催しました。その議論を聞くに、地方消滅と終末医療?そんな一見結びつかない二つが、これからの日本の大きな課題となっています。それと共に、改めて人の死という死生観を医療分野の一角に位置する歯科医師として、見つめ直す時期が今あるものと感じます。
高齢化になって、いわゆる寝たきり老人に対していろいろな考え方が示され、特に胃瘻の是非については大きな意見が分かれるところです。欧米においては日本で常習化している高齢者、寝たきり老人への適応が少ないとのこと。この点に関しては中医協でも前回の改定では、嚥下検査の有無によって評価を変えるという対応がなされ、また今回の改定での議論では、その経過の調査結果も示されています。しかしその一方、この問題が話題になって、胃瘻によって日常生活が暮らせるレベルになる患者さんまで拒否するような実例があり、医療現場その対応に苦慮する場面が多々見られる話も聞きます。
この問題は、医療、介護費増大から語られることが多かったのですが、タブー視されていた死に対する考え方が社会問題の遡上に挙がっていることは、大きな時代の変化として捉えられます。そして、食べることは従来から歯科界も提唱するように、単に延命だけが目的ではありません。生きていることの喜びを感じる、人間としての尊厳に係わる重要な日常生活の一つなのです。
医療関係者以外でも「食べる=生きる」を唱える人がいます。「食べることは、呼吸と等しく、いのちの仕組みに組み込まれているもの。」とは、料理研究家・辰巳芳子氏が唱えている私の好きな一文です。そして欧米での判断基準となる「食べる」ことの有無が延命治療の是非判断の基準となる考え方は、経済問題を抜きにしてもその専門家集団である歯科界の属するものが改めて真摯に議論し、一つの考え方を社会に示す責務があると考えます。
然るに、だかからといって歯科界が社会の先頭に立って、自らが死生観の変更を訴える必要はありません。これは社会全体で既にうごめく潮流であり、歯科界はあくまでもこの分野に特化した専門家として食べることの重要性、必要性を改めて世に唱え、それを臨床の場で実践を積み重ねれば良いのです。果たしてこれをも医科が歯科から奪い取り、領域拡大を目指すのでしょうか。
この死生観の議論の推移を見守ると共に、食べることへの支援を更に強める為に、摂食嚥下への歯科領域からの積極的なアプローチが必要となってきています。何故ならば、咀嚼と嚥下は対となって多くの結果を導き出すことが立証され、食べることを特化した専門家としての医療人としては、現状のままでは取り組みが不十分だからです。歯科医療は新たなる視点をもって社会に貢献する時代の到来です。あとはそれを導き、フォローする具体的な政策を積みかさねることです。歯科医療は真の意味での生きる喜びを支援する世界を導きます。



『飲み込みは大丈夫ですか』

基金における事業が一つのきっかけとなって、在宅診療、医療連携が新たな展開に進み始めています。それぞれの医療環境の実情を踏まえて、地域独自の取り組むこの基金を利しての新たな事業は、診療報酬と対になるこれからの歯科医療全体へ大きく波及する政策です。そしてこの基金は、来年度において今年度予算規模に介護関係が上乗せされる計画となっており、医療介護の垣根を越えた地域包括ケアシステム構築としての発想が必要となっています。
歯科における在宅診療の中心は、従来の診療所における診療の延長としての義歯調整から始まり、口腔ケアの対応へと進んでいます。口腔ケアの効果は、既に誤嚥性肺炎予防という観点から医科の関係者は元より介護関係者にも認知されています。それに加えてここきてスポットライトが浴びているのが、今回の基金でもいくつかの地域で事業が計画される摂食嚥下の分野です。
しかしながら、介護保険の認定審査項目にも「えん下」という項目がありながら、実際に摂食嚥下の対応は、一部の大学病院、リハビリテーション、耳鼻科があって積極に取り組んでいる病院以外、殆ど対応出来ていないのが介護、医療の世界の現状です。その理由は簡単です。採算が合わないからです。特に歯科においては無報酬に等しい状態です。
 嚥下の対応は、適応が少ない耳鼻科領域の手術以外その改善方法の中心は訓練、姿勢の改善、食形態変更のアドバイスなどで薬の処方もありません。検査も歯科では保険算定が認められていない内視鏡・造影検査と問診を中心としたスクーリングテストです。近年、摂食機能療法が歯科でも算定可能となりましたが、それは鼻腔栄養、胃瘻増設患者に限定されており、重度になる前の本来対応が必要な患者さんには算定出来ません。
そしてもう一つこの分野を歯科が推し進めるハードルとなるのが、隣接する医科の反応です。現在、摂食嚥下リハビリテーションは歯科医師を中心としたアプローチと耳鼻科、あるいはリハビリテーション科の医師を中心としたアプローチの二つがあります。本来ならば他の疾患でもあるように医科が歯科は口腔内のみと突っぱねるところですが、儲からない中で耳鼻科医の成り手が減少し忙しく手が回りません。それと共に、「摂食・嚥下リハビリテーション学会」の「・」がなくなり「摂食嚥下リハビリテーション学会」に名称を変えたように、嚥下と摂食、咀嚼は一連の動作であり、咀嚼のプロである歯科医師を係わりから排除することは出来ません。咀嚼して嚥下することによって食べることが出来るのです。
もし、嚥下を歯科の領域と社会から認知されれば、歯科診療所が「食べる」ことの社会ステーションと成り得ます。口から食べることへの支援が生きる為、生活を支える源であることが歯科診療所から発信が可能と成ります。したがって報酬的評価は低くても、嚥下に問題ある人が歯科診療所に相談することへの広がり目指し、その実現に向かっての政策を積み重ねる必要があります。先ずは先生方が診療所で「飲み込みは大丈夫ですか」の一言を問える環境作りがその第一歩です。




『この道しかなかった中で』

この原稿を書いている今、衆議院選挙の結果は分かっていません。しかし事前の各マスコミみれば自民党圧勝予測です。選挙は投票箱が閉められるまで何が起こるか分かりませんが、少なくても安倍退陣はなく、任期2年を残しての安倍首相の解散の決断は見事成功となりそうです。
メディアは大義ない解散と騒ぎましたが、今回の安倍首相の解散目的は明確です。日本の経済再生を目指し、自らが提唱したアベノミクスの敢行の為の長期政権への道を切り開くことです。無論、長期政権となってもアベノミクス成功の確定はありません。しかし野党からは、アベノミクスに代わって日本経済再生を可能とする具体的な対案は示されませんでした。マニフェストに踊らされて政権交代を選択したことを悔やむ多くの有権者は、その提示なしで現在の野党にもう投票することは出来ません。また第三極への期待感も、離れたりよりを戻したりの腰の落ち着きのなさを感じ、一時のブームに終わりそうです。となると自民党のキャッチフレーズ「この道しかない」、安倍政権に託すしか今回の選挙では有権者に選択肢がなかったことになります。では長期政権となるこれからの政治情勢を踏まえて、歯科界はどう安倍政権と向き合わなければいけないのでしょうか。
今回の総選挙でのマスコミの世論調査では、有権者は社会保障に対しては経済再生と並び非常に関心をもっていましたが、その政策論戦は殆ど成されませんでした。特に自民党が示した政策は、医療に関してはないも等しいような扱いです。唯一あったのが、既にスタートしている社会保障改革のプログラム法案のスケジュールに則って進めるということです。但しこのプログラム法案の対となす消費税増税が延期となったわけですので、そのスケジュールの変更は必要になってきました。恐らく16年度改定に対しては、これを理由に財務省から厳しい対応を迫られるのは必至です。
この現実の意味するものは、現行の医療制度、水準を是とする考え方がベースにあります。消費税増税、経済再生となって税収が増えたとしても、けっして医療の大幅な拡充が成されるわけではありません。それどころか、もし経済再生と成らなければ医療費はそぎ落とされる可能性もあります。これからは少子高齢化、財政再建を踏まえて、いかにレベルを落とすことなく現行の医療を保つことへの模索が始まります。しかしながら理不尽な政策に対して、責任ある医療人として対応することは当然であり、大きな改善が必要な歯科と、既に一定の医療経営環境を維持している医科とでは立ち位置が異なります。先ずはこの点への内外の理解を求めることがスタートとなります。
選挙終わるのを待って各種医療政策への対応が加速的に進みます。幸いにして政治の世界では現在の歯科医療の現状は理解されつつあり、一つ一つの政策毎の対応スタンスが求められています。果たしてこの道しかなかった中で、歯科界はどう歩みを進めるべきなのでしょうか。歯科界の政策対応能力と政治力の真価が問われています。




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