コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
プロフィールを見る
画像一覧
ミラー片手に歯科医師の本音
『口腔健康管理とかかりつけ歯科医』

今回の改定を医療全体的にみると三つの注目すべき特徴がありました。一つは伸び続けていた調剤には厳しい結果となったこと。7対1の入院基本料の要件の厳格化。そして改定の中で「かかりつけ」という概念が明確に組みこまれまれました。
「かかりつけ」に関しては医師、薬剤師に加え歯科でも導入されていますが、「かかりつけ歯科医」はあくまでも「保険用語に一つ」というイメージがあります。しかしながら医科、薬科ではこの「かかりつけ」を軸に医療体制の新しいイメージを描きつつ、今後の政策を積み重ねる意気込みを感じます。そこにあるのは、地域包括ケアの推進がベースにあっての考えです。例えば、今回の改定では紹介状のない大病院の初診・再診料自己負担は大幅なアップとなりました。また、調剤の方ではかかりつけ薬剤師指導料算定をきっかけに、患者とのコミニュケーションを密に図ろうとする試みを目指します。
一方、医療政策として改定と対をなす基金は、歯科医療の環境整備にも益々重要な意味を持ちます。ただ、今回改定の中でも可能性の秘めた項目としていくつか点数化は見られましたが、基金が改定とリンクすることなく、独立しての事業になっている印象は拭えません。限られた予算の中でのやり繰りです。W改定に向けての改定と基金との相乗効果を目指す為の戦略と、それに沿った事業の立案が必要となってきます。
包括ケアを視野に入れての「かかりつけ歯科医」でポイントとなるのが口腔ケアです。その有用性は医科からも視線が注がれています。然るに、口腔ケアという言葉が、ブラッシングのみの狭義に捉えられている現状があり、本来の口腔ケアの意味する嚥下機能も含めた口腔全体を管理する視点の広がりが不足しています。その観点からみると、今回日本歯科医学会が「口腔健康管理」と称した新たな口腔ケアの概念の提唱は機知を得た提案です。摂食機能療法などを加えた従来の歯科治療を「口腔機能管理」、歯石除去、PTCなど歯科衛生士の実施するエリアを「口腔衛生管理」、そして一般の方が実施する口腔清拭、食事介助などを「口腔ケア(狭義)」として、この三点を総じて「口腔健康管理」としました。
広義の口腔ケアとして定義する考えは、真の意味での「かかりつけ歯科医」が目指す所です。既にW改定に向けての作業が進む中で、この概念を一日も早く歯科界内部で意見の確認をしながら、国民への認知を広めなければなりません。
日医はかかりつけ医機能研修制度を創設し、独自の「かかりつけ医」というものを推し進めようしています。そしてその講習の中に「かかりつけ医の摂食嚥下障害」のメニューも組み込まれています。また、地域包括ケアに向けた「かかりつけ連携手帳」の作成に着手し、そのスピードは目を見張るものがあります。『かかりつけ歯科医』、『口腔健康管理』、『摂食嚥下障害』のキーワードは、地域包括ケアの中で育ちそうな芽であることは間違いありません。残す課題は、地域包括ケアを主導する日医、地区医師会との更なる連携の強化と事業実現に向けてのスピードを加速させることです。




『食べる=生きる』

地方消滅で日本の少子化高齢化に対して大きな警笛を鳴らした日本創成会議が「高齢者の終末医療を考える」と称したシンポジュウムを先日開催しました。その議論を聞くに、地方消滅と終末医療?そんな一見結びつかない二つが、これからの日本の大きな課題となっています。それと共に、改めて人の死という死生観を医療分野の一角に位置する歯科医師として、見つめ直す時期が今あるものと感じます。
高齢化になって、いわゆる寝たきり老人に対していろいろな考え方が示され、特に胃瘻の是非については大きな意見が分かれるところです。欧米においては日本で常習化している高齢者、寝たきり老人への適応が少ないとのこと。この点に関しては中医協でも前回の改定では、嚥下検査の有無によって評価を変えるという対応がなされ、また今回の改定での議論では、その経過の調査結果も示されています。しかしその一方、この問題が話題になって、胃瘻によって日常生活が暮らせるレベルになる患者さんまで拒否するような実例があり、医療現場その対応に苦慮する場面が多々見られる話も聞きます。
この問題は、医療、介護費増大から語られることが多かったのですが、タブー視されていた死に対する考え方が社会問題の遡上に挙がっていることは、大きな時代の変化として捉えられます。そして、食べることは従来から歯科界も提唱するように、単に延命だけが目的ではありません。生きていることの喜びを感じる、人間としての尊厳に係わる重要な日常生活の一つなのです。
医療関係者以外でも「食べる=生きる」を唱える人がいます。「食べることは、呼吸と等しく、いのちの仕組みに組み込まれているもの。」とは、料理研究家・辰巳芳子氏が唱えている私の好きな一文です。そして欧米での判断基準となる「食べる」ことの有無が延命治療の是非判断の基準となる考え方は、経済問題を抜きにしてもその専門家集団である歯科界の属するものが改めて真摯に議論し、一つの考え方を社会に示す責務があると考えます。
然るに、だかからといって歯科界が社会の先頭に立って、自らが死生観の変更を訴える必要はありません。これは社会全体で既にうごめく潮流であり、歯科界はあくまでもこの分野に特化した専門家として食べることの重要性、必要性を改めて世に唱え、それを臨床の場で実践を積み重ねれば良いのです。果たしてこれをも医科が歯科から奪い取り、領域拡大を目指すのでしょうか。
この死生観の議論の推移を見守ると共に、食べることへの支援を更に強める為に、摂食嚥下への歯科領域からの積極的なアプローチが必要となってきています。何故ならば、咀嚼と嚥下は対となって多くの結果を導き出すことが立証され、食べることを特化した専門家としての医療人としては、現状のままでは取り組みが不十分だからです。歯科医療は新たなる視点をもって社会に貢献する時代の到来です。あとはそれを導き、フォローする具体的な政策を積みかさねることです。歯科医療は真の意味での生きる喜びを支援する世界を導きます。



『飲み込みは大丈夫ですか』

基金における事業が一つのきっかけとなって、在宅診療、医療連携が新たな展開に進み始めています。それぞれの医療環境の実情を踏まえて、地域独自の取り組むこの基金を利しての新たな事業は、診療報酬と対になるこれからの歯科医療全体へ大きく波及する政策です。そしてこの基金は、来年度において今年度予算規模に介護関係が上乗せされる計画となっており、医療介護の垣根を越えた地域包括ケアシステム構築としての発想が必要となっています。
歯科における在宅診療の中心は、従来の診療所における診療の延長としての義歯調整から始まり、口腔ケアの対応へと進んでいます。口腔ケアの効果は、既に誤嚥性肺炎予防という観点から医科の関係者は元より介護関係者にも認知されています。それに加えてここきてスポットライトが浴びているのが、今回の基金でもいくつかの地域で事業が計画される摂食嚥下の分野です。
しかしながら、介護保険の認定審査項目にも「えん下」という項目がありながら、実際に摂食嚥下の対応は、一部の大学病院、リハビリテーション、耳鼻科があって積極に取り組んでいる病院以外、殆ど対応出来ていないのが介護、医療の世界の現状です。その理由は簡単です。採算が合わないからです。特に歯科においては無報酬に等しい状態です。
 嚥下の対応は、適応が少ない耳鼻科領域の手術以外その改善方法の中心は訓練、姿勢の改善、食形態変更のアドバイスなどで薬の処方もありません。検査も歯科では保険算定が認められていない内視鏡・造影検査と問診を中心としたスクーリングテストです。近年、摂食機能療法が歯科でも算定可能となりましたが、それは鼻腔栄養、胃瘻増設患者に限定されており、重度になる前の本来対応が必要な患者さんには算定出来ません。
そしてもう一つこの分野を歯科が推し進めるハードルとなるのが、隣接する医科の反応です。現在、摂食嚥下リハビリテーションは歯科医師を中心としたアプローチと耳鼻科、あるいはリハビリテーション科の医師を中心としたアプローチの二つがあります。本来ならば他の疾患でもあるように医科が歯科は口腔内のみと突っぱねるところですが、儲からない中で耳鼻科医の成り手が減少し忙しく手が回りません。それと共に、「摂食・嚥下リハビリテーション学会」の「・」がなくなり「摂食嚥下リハビリテーション学会」に名称を変えたように、嚥下と摂食、咀嚼は一連の動作であり、咀嚼のプロである歯科医師を係わりから排除することは出来ません。咀嚼して嚥下することによって食べることが出来るのです。
もし、嚥下を歯科の領域と社会から認知されれば、歯科診療所が「食べる」ことの社会ステーションと成り得ます。口から食べることへの支援が生きる為、生活を支える源であることが歯科診療所から発信が可能と成ります。したがって報酬的評価は低くても、嚥下に問題ある人が歯科診療所に相談することへの広がり目指し、その実現に向かっての政策を積み重ねる必要があります。先ずは先生方が診療所で「飲み込みは大丈夫ですか」の一言を問える環境作りがその第一歩です。




『この道しかなかった中で』

この原稿を書いている今、衆議院選挙の結果は分かっていません。しかし事前の各マスコミみれば自民党圧勝予測です。選挙は投票箱が閉められるまで何が起こるか分かりませんが、少なくても安倍退陣はなく、任期2年を残しての安倍首相の解散の決断は見事成功となりそうです。
メディアは大義ない解散と騒ぎましたが、今回の安倍首相の解散目的は明確です。日本の経済再生を目指し、自らが提唱したアベノミクスの敢行の為の長期政権への道を切り開くことです。無論、長期政権となってもアベノミクス成功の確定はありません。しかし野党からは、アベノミクスに代わって日本経済再生を可能とする具体的な対案は示されませんでした。マニフェストに踊らされて政権交代を選択したことを悔やむ多くの有権者は、その提示なしで現在の野党にもう投票することは出来ません。また第三極への期待感も、離れたりよりを戻したりの腰の落ち着きのなさを感じ、一時のブームに終わりそうです。となると自民党のキャッチフレーズ「この道しかない」、安倍政権に託すしか今回の選挙では有権者に選択肢がなかったことになります。では長期政権となるこれからの政治情勢を踏まえて、歯科界はどう安倍政権と向き合わなければいけないのでしょうか。
今回の総選挙でのマスコミの世論調査では、有権者は社会保障に対しては経済再生と並び非常に関心をもっていましたが、その政策論戦は殆ど成されませんでした。特に自民党が示した政策は、医療に関してはないも等しいような扱いです。唯一あったのが、既にスタートしている社会保障改革のプログラム法案のスケジュールに則って進めるということです。但しこのプログラム法案の対となす消費税増税が延期となったわけですので、そのスケジュールの変更は必要になってきました。恐らく16年度改定に対しては、これを理由に財務省から厳しい対応を迫られるのは必至です。
この現実の意味するものは、現行の医療制度、水準を是とする考え方がベースにあります。消費税増税、経済再生となって税収が増えたとしても、けっして医療の大幅な拡充が成されるわけではありません。それどころか、もし経済再生と成らなければ医療費はそぎ落とされる可能性もあります。これからは少子高齢化、財政再建を踏まえて、いかにレベルを落とすことなく現行の医療を保つことへの模索が始まります。しかしながら理不尽な政策に対して、責任ある医療人として対応することは当然であり、大きな改善が必要な歯科と、既に一定の医療経営環境を維持している医科とでは立ち位置が異なります。先ずはこの点への内外の理解を求めることがスタートとなります。
選挙終わるのを待って各種医療政策への対応が加速的に進みます。幸いにして政治の世界では現在の歯科医療の現状は理解されつつあり、一つ一つの政策毎の対応スタンスが求められています。果たしてこの道しかなかった中で、歯科界はどう歩みを進めるべきなのでしょうか。歯科界の政策対応能力と政治力の真価が問われています。




以前の記事
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
2005年 04月
2005年 03月
2005年 02月
2005年 01月
2004年 12月
2004年 11月
2004年 10月
2004年 09月
2004年 08月
2004年 07月
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
健康・医療
政治・経済
画像一覧

<   2016年 09月 ( 18 )   > この月の画像一覧

『高額療養費制度見直し、高齢者負担増に容認論』

高額療養費制度見直し、高齢者負担増に容認論 厚労省審議会

厚生労働省は29日、社会保障審議会医療保険部会を開き、毎月の医療費負担の上限を定めた「高額療養費制度」の見直しを議論した。70歳以上の高齢者の負担上限額引き上げを巡り、出席した委員からは「所得水準に応じた負担にすべきだ」など負担増を容認する意見が多数を占めた。

高額療養費制度では70歳以上の高齢者の自己負担の上限額は現役世代よりも大幅に低い。入院で月100万円の治療費がかかる場合、70歳以上の高齢者は現役並みの所得があっても約8万7000円で頭打ちだ。最も負担の重い現役世代に比べ3分の1程度にとどまっている。
外来では70歳以上の高齢者は月の負担上限が4万4400円だ。厚労省はこの日の部会で、医療費が財政を圧迫している実情を踏まえ、高齢者でも支払い能力に応じて負担をすべきだという立場から制度見直しを提起した。
出席した健康保険組合連合会の白川修二副会長は「所得水準に応じた負担上限に見直すべきで、外来特例は廃止が筋ではないか」と主張。日本医師会の松原謙二副会長は「高齢というだけでも弱い立場だ。負担をかけるのは反対だ」と反論した。
29日の医療保険部会では、75歳以上の後期高齢者制度で低所得者らの保険料を最大9割軽減している特例を廃止することについても議論した。
厚労省は年末まで議論し、早ければ2017年度の実施を目指す。ただ、政府・与党内で高齢者の負担増に反対意見があり、どこまで実現できるかは不透明だ。

【日経新聞】
by kura0412 | 2016-09-30 14:21 | 医療政策全般 | Comments(0)

『介護予防、地域の力で ・「要支援」に新制度』

介護予防、地域の力で
「要支援」に新制度 NPOなど担い手

公的介護保険で「要支援」の人が対象の、介護予防のためのサービスが大きく変わろうとしている。これまで全国一律に提供されてきたが、2017年4月までに市区町村が取り組む「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」に移る。保険財政が厳しくなるなか、地域のNPOや企業、ボランティアなどの力を活用する狙い。だが、地域によっては地縁が薄く難しいことも。高齢化が深刻になる東京都市部の現状を探った。

東京・世田谷の東京聖十字教会ホールには毎週金曜日になると、近隣の高齢者が10人ほど集まり、4時間、食事や体操、おしゃべりを楽しむ。20分歩いてやってくるという女性(88)は「毎週楽しみ。ルンルン気分です」と話す。「ここに来ると癒やされる」と打ち明ける男性(86)も。
世田谷区が4月に始めた住民主体型の「地域デイサービス」の一つだ。要介護者が主な利用者の通常の「通所介護(デイ)サービス」と異なり、今はまだ介護は必要のない人が自発的に参加している。
同区でケアマネジャーをしていた加納美津子さん(66)が、ボランティアによる高齢者の居場所づくりにも補助金が出ると知り区に申し出て5月に開始。1回9000円の補助金を運営経費にあてる。「数人のボランティアが協力してくれているが、無償では活動できなかった」という。
世田谷区は地域活動が盛んで、区民が自主的に集まる場所が約600ある。地域での支え合い意識が比較的高く「元気な高齢者が、心身が衰え始めた高齢者を支える形ができつつある」(同区の河島貴子介護予防・地域支援課係長)という。そんな世田谷でも区内27地域のうち、地域デイサービスがあるのは11地域にとどまる。「各地域に3つ程度はほしいが、担い手が集まらない」とこぼす。

同区は訪問介護の分野で、シルバー人材センターや社会福祉協議会に登録した住民が、高齢者の買い物や掃除、洗濯、調理などを手伝う「支えあいサービス事業」も4月に開始。利用者の自己負担は1回200円(原則30分以内)だ。
総合事業では、国の介護保険で提供していた要支援者向けの訪問介護とデイサービスが自治体の事業に切り替わる。東京全区が16年4月までに切り替えた。全国一律サービスから、自治体がニーズに合わせて行う。多くの区でデイサービスは時間短縮や送迎を無くすなどで経費を節減。訪問介護は従来の要支援者ではほとんど利用が無かったものを対象外とした。

こうしたサービス基準の見直しだけでなく、住民ボランティアや地域のNPOを事業の担い手にして「互助」の仕組みを作り上げようというのが国の狙いだ。
もともと祭礼などで地域の結束が強いか、自治体が普段から積極的に地域コミュニティーを活用している地域は互助の仕組みがうまく回り始めている。しかし、東京の都心部の区では「ボランティアやNPOが集まらない。住民主体は理想的な形だが安定感に欠ける」(千代田区)と訴える。
現状について、淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授は「うまく住民支援の仕組みをつくる自治体もあるとは思うが、半数以上の自治体は何も下地がなく戸惑っている。容易ではないだろう」と指摘。「福祉は平等に提供するもので、地方分権では内容に差が生じやすい」という。
多くの区が、自治体の事業に切り替えた後に、担い手不足に直面するなか、練馬区は人材を育成する事業「高齢者支え合いサポーター」に力を入れる。研修を受けてもらった人を、高齢者の居場所づくりや生活支援サービスを担うNPOなどに紹介する。NPOやボランティアが活躍する場として「街かどケアカフェ」と呼ぶ拠点も区の出張所内に開いた。
住民にとって質・量ともに納得のいく介護予防サービスの提供と費用削減が両立できるのか。成否は自治体の知恵と経営能力にかかっている。

■まず互助意識高めて
高齢者が自立して暮らすには、生活実態に応じた新サービスの掘り起こしと提供体制が不可欠。厚生労働省は、市区町村が地域の高齢者の困り事や要望を調べて対応策を考える「協議体」を市区町村や中学校区に設けるよう求めている。
だが他区に先駆けた東京都の品川区でさえ「組織はできたが本格稼働はまだ。住民参加型は時間がかかる」(高齢者地域支援課)。名ばかりにしないために「まずは地域でフォーラムを開き、高齢者や住民に助け合う必要性を分かってもらう地道な活動が必要」とさわやか福祉財団(東京・港)の堀田力会長は話す。
江戸川区は区内3カ所に「なごみの家」と呼ぶ拠点をつくり、生活支援コーディネーターと呼ぶ人材を置いた。高齢者の家を訪ね困り事や要望を聞く。「スーパーが閉店し不便になったなどの声が多い」とその一人、小嶋亮平さん。生の声を基に小回りの利く支援サービスを提供するなど、迅速な対応が求められる。

【日経新聞】




オーラルフレイルとを絡ませればいくらでもこの分野に歯科が入る込むチャンスはると思うのですが。
by kura0412 | 2016-09-29 17:20 | 介護 | Comments(0)

これだけで1400億円の圧縮となるか

高齢者医療、負担増を議論へ 厚労省審議会
29日に論点提示

厚生労働省は70歳以上の高齢者を対象とした医療費の負担増を議論する。29日に開く社会保障審議会医療保険部会に、患者が自己負担しなければならない医療費の月額上限や75歳以上の低所得者向けの保険料軽減の見直しに向けた論点を示す。40兆円超の医療費は9割近くを税金や現役世代の保険料で賄う。高齢者にも負担を求め、世代間格差を是正する。
高齢者の医療負担増は不人気政策なので政府・与党内にも慎重論がある。2017年度予算案をまとめる年末まで議論して、合意が得られれば17年度から実施するが、調整は難航しそうだ。

見直しを議論するのは月額負担の上限を定めた「高額療養費制度」。
高齢の高所得の外来の負担増が焦点になる。医療費の窓口負担は年齢に応じて1~3割としているが、負担が重くなりすぎないよう収入に合わせ上限を設定する。現役世代は入院・外来とも上限は同額だが、70歳以上の高齢者には外来に別枠を設け、負担を軽くしてきた。
例えば、年収370万円以上で現役並み所得のある高齢者が外来で月100万円の治療を受けても、4万4400円で済む。現役並みに引き上げた場合、月4万円以上の負担増となる。
入院時の上限引き上げも論点になる。いまは最大で月8万7000円が上限で、現役で最も負担の重い高所得者と3倍の差がある。上限の引き上げができれば、100億円以上の歳出抑制につながるとみられる。
負担増の対象は現役並み所得者と年収370万円未満の一般所得者を想定する見通しだ。約2400万人いる70歳以上の高齢者の6割前後だ。一方、住民税が非課税の低所得高齢者の負担増には政府・与党内で慎重論が強く、据え置きになる公算が大きい。
厚労省は75歳以上の後期高齢者医療制度で、低所得者らの保険料を最大9割で軽減してきた特例の見直しも検討する。対象者は915万人にのぼり、16年度は945億円の国費を投じている。

9割軽減されている人の保険料は全国平均で月380円。これが低所得者向けの本来の軽減幅である7割になった場合、保険料は月1130円になる。厚労省では急激な負担増を避けるため、数年かけて特例をなくす案が浮上している。
特例の廃止は消費増税に伴う社会保障の充実策である介護保険料の軽減拡充などと合わせて実施するとしてきた。特に低所得者の負担増は与党内から強い反発も予想され、9割軽減が継続する可能性もある。
このほか、医療保険部会では今後、かかりつけ医以外の病院を受診した場合の定額負担なども議論する。
厚労省は17年度予算で高齢化に伴う社会保障の伸びを5000億円程度に抑えるよう求められている。厚労省の夏の概算要求では6400億円だった。医療や介護制度を見直して、1400億円を圧縮する。

【日経新聞】




果たしてこれだけで1400億円の圧縮となるのでしょうか。
by kura0412 | 2016-09-29 17:13 | 医療政策全般 | Comments(0)

『ソバルディとハーボニー、2015年度の医療費増の主要因』

ソバルディとハーボニー、2015年度の医療費増の主要因
両剤含む抗ウイルス薬で「0.7~0.8%」の医療費増

厚生労働省は9月28日の中央社会保険医療協議会総会(会長:田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)に、2015年度の「医療費の動向」を公表、同年の医療費は41.5兆円で初めて40兆円を突破、2014年度と比べ、3.8%増となったと説明した(資料は、厚労省のホームページ)。
過去数年に比べて高い医療費の伸びになったのは、調剤医療費の増加が要因だ。中でもC型肝炎治療薬である、ソバルディ(一般名ソホスブビル)とハーボニー配合錠(レジパスビル/ソホスブビルの配合錠)の薬剤料の伸びの影響が大きい。

同省によると「約40兆円の概算医療費に対して、おおむね0.7~0.8%が、昨年秋以降に使用が増えた、C型肝炎治療薬を含む抗ウイルス薬の薬剤料の増加が要因」(保険局調査課長の山内孝一郎氏)。ただし、「0.7~0.8%」は院外処方分であり、「院内処方される場合も含めると、もう少し大きいのではないか」と山内課長は説明した。2016年度薬価改定で、両剤とも「特例拡大再算定」の対象になり、31.7%の大幅な薬価引き下げとなったため、「2016年度以降、どのように推移していくかを見て行くことが必要」(山内課長)。
これらの医療費の分析に対し、さまざまな視点から問題提起したのが、日本医師会副会長の中川俊男氏。まず3.8%の医療費増について、診療報酬改定がなかった2011年度(対前年度比3.1%増)や2013年度(同2.2%増)と比較しても高いと指摘。その上で、山内課長が言及したように、薬剤料の分析は院外処方に限った場合であり、日医が分析中のデータでは、院内処方を含めると、抗ウイルス薬の増加は1%程度になると述べ、薬剤料の伸びを問題視した。
その上で中川氏は、ソバルディとハーボニー配合錠の売上を質問。
厚労省は、IMSのデータを説明。薬価ベースで四半期ごとに、ソバルディ(2015年5月薬価収載)は、433億円(2015年7-9月)、643億円(同10-12月)、391億円(2016年1-3月)、246億円(同4-6月)、ハーボニー配合錠(2015年9月薬価収載)は、1101億円(2015年10-12月)、1517億円(2016年1-3月)、698億円(同4-6月)とそれぞれ推移している。
「(売上の)ピークは過ぎたと考えていいのか」との中川氏の質問に対し、厚労省保険局医療課薬剤管理官の中山 智紀氏は、ソバルディとハーボニー配合錠の薬剤料は、2016年度薬価改定の31.7%の引き下げを上回るペースで減少、つまり薬価だけでなく数量も減少しているとし、引き続き2016年7月以降のデータを見て行くとした。
中川氏は、「高額薬剤が、公的医療保険制度を翻弄していると以前言っていたが、こうしたデータをリアルタイムに把握、公表して、拙速な議論に走らないようにやっていくことが必要ではないか」と厚労省に求めた。さらに現在、中医協で議論が進む抗PD-1抗体製剤のオプジーボ(一般名ニボルブマブ)についても、年間医療費が「1兆7500億円」に達するとの推計もある中、「この金額がいまだに独り歩きをしている。この数字は過大であるという明確なメッセージを発するべきではないか。これにより議論がおかしな方向に行っている」と中川氏はコメントした(『オプジーボ、「緊急的な対応」で薬価引き下げか』を参照)。
中山薬剤管理官は、「重大な問題だと思っている」とし、オプジーボの販売元である小野薬品工業の公表データなども踏まえ、分析していくと答えた。
さらに中川氏は、「医療費の伸びの大半は、薬剤費であることが明らかになったのではないか。今の中医協の最大の懸案は、薬価の在り方であり、原価計算方式と類似薬効比較方式などの見直しを早急にやる根拠が明らかになった」とも指摘し、政府の方針として社会保障費の自然増が年5000億円に抑制される中、薬剤料の問題が中医協の重点課題であると提起した。

2015年度の「医療費の動向」では、後発医薬品割合なども明らかになっている。2015年4月の58.8%から、2016年3月には63.1%に増加した(数量ベース)。2015年の「骨太の方針」で掲げられた後発医薬品の使用割合は、「2017年央までに70%以上」であり、今後も使用促進が必要な状況にある。
後発医薬品使用促進の医療費への効果は、2014年度の場合でマイナス0.5%。
中川氏は、2015年度の後発医薬品の薬剤料が8500億円であるのに対し、それを促進するための調剤報酬の伸びも大きい現状について問題提起。日本薬剤師会常務理事の安部好弘氏はどの部分の技術料が増えているかなど、丁寧な分析と議論を求めた。
9月28日の中医協総会では、2016年度実施の診療報酬改定の結果検証に係る特別調査の調査票なども了承(『後発薬の促進策検証、インターネット患者調査を導入』を参照)。

抗ウイルス剤、1185億円から4139億円に大幅増
2015年度の医療費は、2014年度と比較で3.8%増。医療費は診療報酬改定の影響を受けるため、改定がなかった年度と比較すると、2011年度3.1%増、2013年度2.2%増などと比較しても高い伸びとなった。

診療種別にみると、入院1.9%増、入院外3.3%増、歯科1.4%増、調剤9.4%増であり、「過去の傾向に比べても調剤の伸びが高く、入院外もやや高く、結果としてやや高い医療費の増加となった」(山内課長)。
調剤の伸び(院外処方分)を分析すると、処方せん1枚当たりの調剤医療費は7.3%増。内訳は技術料1.4%増で過去数年とそれほど変わらないが、薬剤料9.2%と高い伸びとなっている。
薬剤料の8割以上を占める内服薬について薬効分類別にみると、ソバルディなどを含む抗ウイルス剤が対前年度比で248.1%増と非常に高い伸びで、薬剤費は2014年度の1185億円から、2015年度は約3000億円増加し、4139億円になった。約40兆円の医療費に対して、この約3000億円は、0.7~0.8%に該当する計算になる。
厚労省が9月15日の経済財政諮問会議の経済・財政一体改革推進委員会 「社会保障ワーキング・グループ」に提出した資料「医療費の伸びの要因分析」では、2015年度の医療費の伸び3.8%について、「人口増の影響」がマイナス0.1%、「高齢化の影響」が1.2%増、「その他」が2.7%と説明。2.7%のうち、薬剤料が1.4%、「抗ウイルス薬を含む化学療法剤」が0.77%となっている。

【m3.com】
by kura0412 | 2016-09-29 10:32 | 医療政策全般 | Comments(0)

『高齢者の10人に1人が低栄養を自覚』

高齢者の10人に1人が低栄養を自覚―民間調査

高齢者の10人に1人が低栄養を自覚していることが、生活者の意識・実態に関する調査をおこなうトレンド総研の調査レポートでわかった。

エネルギー量やたんぱく質などの栄養素が不足する「低栄養」は、高齢者の介護リスクを高める要因のひとつになると考えられている。調査は、70歳以上の男女300名と、高齢者と同居し、食事を提供している40~60代女性300名を対象に行った。
70歳以上の高齢者に「低栄養」を知っているかを訊ねたところ、21%が「知っている」と回答した。次いで、「70歳を過ぎてから、食事の量や内容に変化はあったか」との質問には、60%が「あった」と回答し、具体的には、「食事の量が減った」(76%)、「野菜を中心に食べるようになった」(49%)、「肉をあまり食べなくなった」(25%)と続き、年齢とともに食欲や食事内容が変化する高齢者が少なくないことがわかった。
高齢者の「粗食」は、エネルギー量やたんぱく質の不足につながる場合もあるが、44%が「食事において粗食を心がけている」と回答。低栄養の説明をした上で、自分が当てはまると思うかを訊ねたところ、11%が「そう思う」と答えた。
高齢者に食事を提供している40~60代女性を対象とした調査では、71%が「同居する高齢者の食事メニューに気をつかっている」と回答し、「高齢者の食事は、介護や寝たきりなどのリスクにかかわると思うか」という質問でも、79%が「そう思う」と答えた。
一方で、低栄養という症状を知っている人は37%にとどまり、6割以上の家族は低栄養について理解が及んでいないことがわかった。

レポートには、調査結果を踏まえ、医師と管理栄養士によるアドバイスを掲載。医師からは、高齢者はひとりで買い物や食事の用意ができないなど生活能力の低下や病気、薬の副作用によっても低栄養に陥るので、改善のためには、「なぜ食事がすすまないのか」「なぜ栄養状態が悪いのか」といった要因を具体的に抽出する必要性が指摘された。
また、管理栄養士からのアドバイスでは、低栄養の予防や改善には、さまざまな食品を食べるように心がけ、食事量が少なくなっている場合は、食べたい時に少しずつ分けて食べる、補食で食べるなど、食事の時間にとらわれないことが大切と述べられている。

◎トレンド総研 レポート
http://www.trendsoken.com/report/health/2412/

【ケアマネジメントオンライン】




歯科医師がこの輪の中に入って先導しなければいけないのですが。
by kura0412 | 2016-09-27 09:43 | 介護 | Comments(0)

『「シン・ゴジラ」から考える首相官邸の中空構造』

「シン・ゴジラ」から考える首相官邸の中空構造
 
永田町と霞が関で「もう見た?」が挨拶代わりとなった映画「シン・ゴジラ」。謎の巨大生物が首都東京を壊滅させかねない危機に、政治家や官僚が国家の意思をどう決定し、立ち向かうか。そのプロセスのきめ細かな描写が政策当局者に異例の評判を呼ぶ。立案・調整・決断の舞台となる首相官邸の「中空構造」やスタッフのあり方も改めて考えさせられる。
この映画から、多くの政治家や官僚が連想するのは東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故だろう。危機管理に当たる首相と閣僚が縦割り行政にもたつき、米国の圧力の下で小田原評定の末、自衛隊の超法規的な防衛出動を決断する。でも、ゴジラは倒せない。若手政治家の官房副長官が指揮する異能の官僚や学者の緊急対応チームが秘策に知恵を絞る――。

■「巨災対」は司令塔の候補地
「『巨災対』は、かつて私が官邸の図面と対峙しながら、首相直属の国家戦略スタッフを集めるにはここしかないかもしれぬ、と目をつけていた官邸2階中庭そばのスペースに置かれていた」
フェイスブックにこう書き込んだのは、旧民主党政権で官房副長官を務めた慶大教授の松井孝治だ。「巨災対」とは、映画中の緊急チーム「巨大不明生物災害対策本部」の略称だ。急きょ設置され、大部屋に机やイス、複合機がババッと運び込まれる。そこが政権交代当時、予算編成の基本方針などを企画・調整する官邸の司令塔として構想した「国家戦略局」を置こうかと思案した場所だったという。
各省の省益を脇に置き、時の内閣の重要政策の企画立案や総合調整を担う直属スタッフを官邸にどう集め、組織を整えるか――。官邸機能の強化を目指した橋本行革による省庁再編が2001年に始動。その直後から「首相の権力」を強烈に意識する小泉純一郎が内閣を率い、02年には新たに建設した今の官邸に移る。直属スタッフ整備の命題は歴代の首相も引き継いできた。

小泉は2つの新機軸を試みた。
第1は経済学者の竹中平蔵(現東洋大教授)を新設した首相直轄の経済財政諮問会議の担当相に据えたことだ。竹中は後に金融相や郵政民営化相も兼務。旧知の学者や経済人ら民間の人材とも連携し、小泉構造改革の企画立案の中枢を一手に担った。
第2は首相秘書官を出していた財務、外務、経済産業、警察の4省庁に加え、防衛、厚生労働、総務、国土交通、農水、文部科学の各省からも課長級の特命参事官を官邸に常駐させたことだ。首席首相秘書官だった飯島勲がこの秘書官・参事官チームを統括し、各省の省益を脇に置かせて官邸主導に腐心した。
続く安倍晋三(第1次)ら三代の首相は小泉流の官邸主導を継承するのか、それ以前の自民党主導の政策決定に戻るのか、迷いながら倒れていく。政権交代を果たした旧民主党は竹中路線を否定し、諮問会議の廃止を宣言。半面、官邸主導は引き継いで「小泉個人商店」をもっと制度化しようと構想した。それが官房副長官をヘッドに、実力派の官僚や民間人を集める内閣官房の「国家戦略局」だった。
当時、松井は国家戦略局の中核を担う人材として、各省で同期のトップクラスと見られた3人に白羽の矢を立てた。財務省主税局審議官の佐藤慎一、総務省自治税務局審議官の佐藤文俊、経産省総括審議官の立岡恒良である。だが、副総理・国家戦略相の菅直人が戦略局を官僚主体にすることには慎重だったうえ、政権運営のドタバタから同局新設の立法も後回しになる。

■「補室」に次官候補者を配置
新組織は課長級の官僚らを集めた小ぶりな「国家戦略室」を脱しきれない。やむなく、松井が着目したのが、首相を補佐する内閣官房の既存の組織、通称「補室」だった。内閣官房には官房長官、官房副長官(3人)の下に次官級の官房副長官補が3人いる。官房副長官補は財務省、外務省、防衛省の出身者で内政、外交、危機管理を分担。その指揮下で政府部内の総合調整に当たるのが「補室」だ。
「補室」も橋本行革で内閣官房を再編・強化した果実。松井は招集した3人をここに投入する。皮肉なことに、一段と増強された補室は東日本大震災後の復興構想づくりを取り仕切るなど、旧民主党政権の目玉商品に育てるはずの国家戦略室をしのぐ調整力をしばしば発揮した。それを裏付けるように、財務省が官邸アクセスの橋頭堡(きょうとうほ)として従来になく補室を重視し始めた。

安倍自民党が政権に復帰すると、国家戦略室は廃止したが、補室の新体制は存続させている。最初の審議官級3人は、立岡が経産事務次官を務めて退官。両佐藤は現在、それぞれ財務事務次官、総務事務次官に上り詰めている。3人の後任も、たとえば財務省を見ると、必ず本流の主計局次長ポストに戻している。次官候補が居並ぶ補室だからこそ、各省ににらみが利く。
第2次安倍内閣から、既に在任が3年半に及ぶ内政担当の副長官補が財務省出身の古谷一之(元国税庁長官)だ。官房長官の菅義偉の信任は厚い。地方創生、一億総活躍社会、働き方改革と安倍が次々に打ち出す目玉政策を推進するため、各省横断でスタッフを集めてはチームを編成し、束ねる。ぎくしゃくしがちな安倍官邸と財務省のはざまにも立つ形で、重みを増す。

今や首相秘書官がいない各省は古谷・補室を通じて官邸アクセスの確保に躍起だ。
一方、安倍がトップダウンで打ち出し、補室に落とす成長戦略の「タマ」を企画立案するのは官邸周辺で動く経産官僚たちだ。司令塔は首席首相秘書官の今井尚哉。内閣官房の日本経済再生総合事務局を経産事務次官の菅原郁郎が実質的に仕切り、「経産省内閣」と皮肉交じりに呼ばれる。
「シン・ゴジラ」の危機管理には登場しないが、安倍官邸の新機軸はまだまだある。
外相、防衛相ら関係閣僚による国家安全保障会議(日本版NSC)を創設。事務方トップの国家安全保障局長に谷内正太郎(元外務事務次官)を据え、安保法制整備も切り盛りさせた。各省幹部人事を官邸主導で進めるため、内閣人事局も新たに設けた。最近は縦割り行政の弊害より、「何でも『官邸団』」と化すリスクも芽生えている。

■「がらんどう」にも妙味
映画の緊急対応チームはゴジラ封じ込め戦略を立案するだけではない。本省の有力幹部に後方支援を陳情し、民間企業や外国の研究機関などのコネも総動員して戦略を実行に移す。異端児集団という設定とは裏腹に、国全体を動かす人脈や調整力も併せ持つ。そうした機能に加えてこのチームが官邸という最高権力の館の中に物理的に収められている点も目を引く。
現実の官邸には、首相や官房正副長官の秘書官チーム、首相補佐官らは別として、政策実務を担当するスタッフの大組織は常駐していない。補室、国家安全保障局、内閣人事局、経済再生総合事務局は周辺の庁舎に分散する。官邸は2階から屋上まで吹き抜けの中庭があり、周りを執務室や会議室が囲む構造。見た目からしてがらんどうだ。
「官邸には、巨大な中空が存在する。反語的に言えば、その中空は、必要である。それは、いざというときに、司令本部として埋められるためのスペースである」
松井は中空構造にも妙味がある、とこう説く。ここぞという局面で首相が閣僚を集めて断を下し、直属スタッフが官邸の威光を背に政府全体を動かす。埋められる中空があるからこそ「決断の館」にダイナミズムが働く面もあるという。権力の中枢が人々を従わせる権威もまとうには、平時は少数精鋭がむしろ好都合かもしれない。
官邸の戦略スタッフをどう使いこなすかは、時の首相の政治スタイルにも左右される。機能と空間配置の両面から、「シン・ゴジラ」にも答えのない問いかけは続く。=敬称略

【日経新聞】




本来の主役であるゴジラよりも、政府の危機管理の実際、問題点が注目されている映画です。石破茂元防衛大臣もブログ等で真剣に話題にしています。私もある連盟役員の先生に一度観ることを薦めました。
そこで感じて、分かったこと。中央官僚の構造が変化しつつあります。
by kura0412 | 2016-09-27 09:29 | 政治 | Comments(0)

『生活保護の男性、3割超がメタボ 女性も非受給者の3倍』

生活保護の男性、3割超がメタボ 女性も非受給者の3倍

生活保護を受けている男性では、3人に1人がメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)で、喫煙者が4割以上いることが厚生労働省の調査で分かった。いずれも生活保護を受けていない男性より割合が高い。受給者は健康への関心が低いという結果もあり、厚労省の担当者は「食事が安くて高カロリーのジャンクフードなどに偏っているとみられる」としている。

2014年度にメタボ健診を受けた40歳以上の生活保護受給者約10万8千人の診断結果を分析した。メタボと診断されたのは男性が32・7%で女性が17・5%。受給していない男性(21・0%)より10ポイント以上高く、女性は3倍近かった。
60代後半の男性が34・6%(受給者以外は27・4%)、70代前半の男性が33・3%(同26・9%)と割合が高い。受給男性の喫煙率は43・0%(同33・7%)で、とくに50代が51・9%と多かった。
生活保護費のうち約半分は医療扶助が占めている。厚労省は医療費を減らすため、今年度中に受給者の生活習慣病対策をまとめる方針だ。(井上充昌)

【朝日新聞】




歯科も似たような傾向が出ているかもしれません。
by kura0412 | 2016-09-23 10:49 | 医療全般 | Comments(0)

『東大、論文不正疑いで本格調査 医学系など6研究室』

東大、論文不正疑いで本格調査 医学系など6研究室

東京大で医学部などの6つの研究グループの論文に不正の疑いが指摘されている問題で、東大は20日、本格的な調査を始めると発表した。匿名の告発を受けて予備調査を進めてきたが、告発内容に一定の具体性があるとして本調査に移行する必要性があると判断した。来春をめどに結論を出す見通しだ。
調査の対象となるのは、医学系の生活習慣病や神経疾患などの5研究室と、分子細胞生物学研究所の1研究室。

9月1日までに、有力科学誌の英ネイチャーなどに2003年から掲載された22本の論文のグラフや画像に不自然な点があり、不正が疑われるとの匿名の告発が、東大や文部科学省、日本医療研究開発機構(AMED)などに届いた。
告発は、2本のグラフの平均を取ってもう1本新たなグラフを作っている、動物実験で6割以上のマウスが10日ごとの「キリのいい」日に死亡しているなどの不自然な点を多数指摘している。
調査では医学部と分生研にそれぞれ外部識者を交えた調査委員会を設置する。告発された論文以外も調査対象になるとみられ、研究室メンバーの聴取のほか、実験時のノートやデータを遡って調べる。一部の科学誌も調査を始めた。
仮に不正と認定された場合、研究費の停止などの処分につながる可能性もある。
医療・バイオ分野では近年、研究不正が相次いでいる。東大は14年、分生研の元教授らが発表した論文33本の不正を認定した。同年には理化学研究所が発表したSTAP細胞が実際にはつくられていなかったことが判明した。

【日経新聞】




最近、欧米誌へ投稿論文の査読が非常に厳しくなったと大学関係者から聞きました。ネイチャーに掲載された論文でもこの疑いです。更に厳しくなるんでしょうね。
by kura0412 | 2016-09-21 09:02 | 医療全般 | Comments(0)

チャンスを逃すな

チャンスを逃すな

(ニッポン一億総活躍プランの中に)
「幸せになるためには食べてなんぼ」これは日本歯科医師会雑誌に掲載されていた、フレイルを推奨する辻哲夫東京大学特任教授(元厚労事務次官)の対談での一言です。行政の実務家の頂点の経験がある方のこの発言は、歯科界に属する一人として心強く感じると共に、これからの日本の社会全体の変革に新たな歯科医療の展開の必要性を示唆してくれました。そして世界会議2015でのプレゼンテーションを経て、日歯は「オーラルフレイルを予防して、健康寿命を目指しましょう!」との新たな国民運動展開を打ち出しました。
その後大きな動きもなく、私の頭の中から「フレイル」忘れかかろうとした時、政府の資料の中でこの「フレイル」が目に入りました。それは6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」です。GDP600億円、希望出生率1.8、介護離職ゼロという新たな三つの矢を目標としたこのプランは、単に現在の経済政策という位置づけだけでなく、加速化する少子高齢化の克服を目指す安倍政権の大きな中心的政策です。
その中には具体的な施策として、「高齢者のフレイル段階での進行防止(フレイル対策)のため、地域における介護予防の取り組みを推進するとともに、専門職による栄養、口腔、服薬などの支援を2016年度から実施する。」「後期高齢者医療における保健事業の在り方を検討し、事業の効果検証を行った上で、ガイドラインを作成し、2018年度からフレイル対策の全国展開を図る。」との記載があります。柏プロジェクトのように既に具体的な施策のモデル事業が始まっています。

(戦略的な施策)
フレイルを再び意識するようになった矢先、辻氏と一緒にこのフレイルの旗振り役であり、医師である飯島勝矢氏の講演を聞く機会がありました。
まず驚いたのが、このフレイルは非常に戦略的な施策であることでした。本来の「Frailty」の日本語訳「虚弱」では広まらないと考え、代わって日本老年医学会の認を得て「フレイル」というネーミングは生まれました。その厳密な定義は確立されてはいなくても、世界に先駆けて高齢化となる日本だからこそ可能とした、日本発の「フレイル」です。
また、フレイル予防の栄養(食・口腔機能)、身体活動(運動、社会活動など)、社会参加(就労、余暇活動、ボランティア)三つの柱に一つに歯科が係わることが明確に組み込まれていました。そして健常、プレフレイル、フレイル、要介護の四つのフェーズによるアプローチを栄養(食)から考えると、新たに取り組む歯科領域の各ターゲットが明らかになりました。これからの時代に即した歯科医療の再構築の展望です。こんな夢膨らむプランを歯科界外の方から示唆された経験はありません。

(各施策に横串を刺して一つとして)
その一方、現在の歯科診療には、従来のう蝕、歯周病の治療に加えて、口腔内全般の機能的回復を目指すことが加えられ、「口腔機能低下症」などの病名も考えらえるようになっています。また、医療介護の世界でも広まってきた口腔ケアは、歯科医療全体を口腔健康管理として位置づけ新たな定義と概念を定める動きも出てきました。そして摂食嚥下障害への対応は歯科領域を広げ、フレイルとの係りを更に強いものにする分野にしてくれます。
然るに、これを一つ一つの施策として考えるのではなく、横串を刺して総合的に進める。要は保健事業に留まらず、基金、診療報酬、介護保険なども含めた具体的な施策として、その世界の専門家集団である歯科界が提示できるかに、フレイル、オーラルフレイルの成功はかかっています。
冒頭の対談で辻氏は「歯の治療ということで止まらない幅の広い学問に歯科がまず動いてくださらないと我々は不幸だと思います。」と歯科界にアクションを求め背中を押しています。絶好のチャンスを逃してはなりません。



*デンタルタイムズ21・9月5日号に投稿したコラムです。
by kura0412 | 2016-09-17 12:19 | コラム | Comments(0)

『「老人に押し潰される」日本の医療に迫る危機』

「老人に押し潰される」日本の医療に迫る危機
4人に1人が75歳以上の時代はそう遠くない

世界一の高齢社会ニッポン
日中や深夜にテレビをつけると、高齢者向けの健康情報番組が氾濫し、「飲んではいけない薬」「やってはいけない手術」といった医療特集記事が週刊誌の誌面をにぎわせている。毎週のように特集が組まれているところをみると、そうした週刊誌の売れ行きは好調なのだろう。いかにも世界一の高齢社会ニッポンを象徴するような光景である。
しかし、医療技術がいくら進歩し、健康寿命がどれほど延びたとしても、人はいずれ老い、死に至る。革新的なバイオテクノロジー技術によって「不老不死」「不老長寿」がいずれは実現可能だと喧伝する向きもあるが、幻想だろう。高齢者の「長生き欲望」を過剰にあおっている意味では有害ですらある。
世界一の長寿を達成した日本にいま必要なのは、とどまるところを知らない高齢者の長寿・健康志向を適切にコントロールすること、そして、高齢者に軽く、若者世代に重くなっている世代間負担の公平化を図るギアチェンジだ。

週刊東洋経済は9月17日発売号で『納得のいく死に方 医者との付き合い方』を特集した。日本はこれから本格的な多死社会を迎える。厚生労働省の推計によると、2014年に1592万人、全人口に占める割合が13%だった75歳以上の高齢者は、2025年に2179万人、同18%、2060年には2336万人、同27%に急増する。
実に「4人に1人が75歳以上」という、人類未到の超々高齢社会がやってくる。多くの高齢者が死亡する時代はすぐそこまできている。
日本人の平均寿命は男女ともに80歳を超えたが、その多くは70歳を超えたあたりから、がんや心疾患などを原因として亡くなっていくという。政府は健康寿命の延伸に躍起になっているが、現状では「不健康寿命」(平均寿命と健康寿命の差)は10年程度あり、しかも平均寿命が延びるとともに不健康寿命も長くなっている。つまり、どんなに医療技術が進歩しても人は必ず死に、死ぬ前の10年程度は不健康な時期を経て、そのために莫大な医療費、医療資源を使っているのだ。
1人あたり医療費でみると、80歳以上のお年寄りは年間90万~120万円の医療費がかかっているのに対し、30~50代の働き盛りは10万~20万円程度。このように、高齢者の医療を支えるのに莫大なコストがかかっており、しかも、その負担は公平かつ十分ではない。残念なことに、そのことが世間一般であまりよく知られていない。冒頭のような高齢者の長寿志向や健康欲ばかりが野放図に広がり、日本の医療制度は高齢者のための医療でパンク寸前になっている。
高齢者の医療費が膨らむのは、ある意味当たり前の部分もある。人は年をとればとるほど1つ2つの病気を抱えるのは普通になり、若者と比べて心身が脆弱で、医療費がかかるのは当然だからだ。しかし、その費用の負担ははたして公正だろうか。また、医療が過剰になりすぎている部分はないのだろうか。

2008年には75歳以上の高齢者を対象とした「後期高齢者医療制度」が創設された。75歳以上の医療費は2016年度の予算ベースで16.3兆円。年間約40兆円の医療費の、実に4割を占める。
16兆円の約4割、6.3兆円は現役世代からの支援金であり、約5割、7.1兆円は公費でまかなわれている。支援金は健康保険組合や市町村国民健康保険を通じて現役世代が負担している。公費は、税金だけでなく赤字国債を含む。つまり、将来世代の負う借金でまかなっている。高齢者の負担は約1割に過ぎず、年金などの収入しかないお年寄りが多いとはいえ、世代間の負担が公平か、疑問が残る。

過剰医療の指摘も
過剰医療の指摘もある。複数の診療所から10種20種もの薬を受け取り、飲み残しや多剤処方が問題になっている。高齢者にがん検診を受けさせると、本当はがんではないのにがんと診断されたり、無駄な手術や抗がん剤の投与を受ける過剰診断をされたりする危険性をもたらしうる。救命救急センターは、高齢者の安易な利用で肝心の若者の利用に障害をもたらしかねない状況だ。高齢者医療を取り巻く課題は山積している。
一方で、明るいニュースもないわけではない。最近、医療制度の持続可能性を憂え、良識ある、鋭敏な一部の医師たちが「貴重な医療資源は高齢者ではなく若い人に振り向けよ」と、異口同音に声を上げ始めた。
これらは一部とはいえ、医師会を中心にかつては「医療費を削れば医療が崩壊する」一辺倒だったことからすると、実に大きな変化だ。内心はおかしいと思っている「声なき声」も含め、それだけ医療現場の危機感も強まっている。

【東洋経済ONLINE】



臨床現場を見ていない経済雑誌記者だから数字だけで論じられます。問題は実際の対応です。
by kura0412 | 2016-09-17 09:46 | 医療政策全般 | Comments(0)