<   2014年 02月 ( 28 )   > この月の画像一覧

『国家安全保障としての保健医療』

国家安全保障としての保健医療:日本版CDCの設立を

僕の最も尊敬する臨床医の一人に青木眞氏(感染症コンサルタント・JIGHアドバイザー)がいる。若手の研修医にも絶大な人気を誇る感染症の専門医だ。
先日、彼との会話の中で、なぜ日本で風疹などの感染症対策がうまく行かないのか、という話になった。
公衆衛生には、国家安全保障的役割もある。それが日本では正しく理解されていないのではないか、という話題になった。
公衆衛生と言えば、日本では、役所や保健所、大学、研究所があるではないかと言う方もいるだろう。もちろん、そうした機関も大事なのだが、国家安全保障的役割が重要であることを忘れてはならない。
その一番分かりやすい例が、感染症対策だ。

例えば、将来起こりうる鳥インフルエンザの大流行などでは、基礎研究、臨床、公衆衛生の知見を総動員しなくてはならない。そして、国家安全保障的観点からの対応が必要なのだ。
ここ数年の中国の感染症への対応は驚くべき迅速だ。遺伝型の同定、症例の把握、疫学研究などが世界の一流雑誌に即座に発表される。
その中心が中国・疾病管理予防センター (Center for Disease Control and Prevention: CDC)である。
米国CDCをモデルに設立されたこの組織は、単なる公衆衛生の役所でも、一研究機関でもない。それは、まさに「国を健康の脅威から守る」というミッションを持っている。
私がWHOで働いていた時に仲の良い米国CDCに勤務する疫学者の友人の一人が幹部に昇進したお祝いに自宅に呼んでくれ、そのまま泊めてくれたことがあった。翌朝CDCに出勤する時の彼の姿に驚いた。
彼は軍隊の制服を着ていたのだ。公式の会議ではCDCの幹部はいつもそうだと言う。
CDCは基本的には軍隊と同じ発想なのだ。ただし、戦う相手が感染症や地球規模の健康課題なのである。もちろん平和のための組織である。
米国CDCのエリートは、Epidemic Intelligence Service (EIS)というコースの卒業生だ。EISは公衆衛生のウエスト・ポイントであり、ここの卒業生がWHOをはじめ世界の感染症対策を仕切っている。Intelligenceという言葉にCDCの感染症対策に対する思想が込められているといって良い。
安倍政権の下、各省庁バラバラであった医学研究費を統合し、日本版NIHが設立され、戦略的な投資が期待される。私は、次に、国家安全保障的観点からCDC機能の設立が緊急課題であると思っている。

ワクチンを含めた感染症対策は、役所や研究所の場当たり的な判断に任せることはできない。国民の命を守るという発想で対応することが必要だ。
感染症、あるいは、PM2.5による大気汚染は他の国との国境はない。お互い最新情報をわかちあい助け合わなければ健康被害を食い止めることはできない。保健医療に敵はいない。
日本外交が大きなトラブルに見舞われている今、CDC機能の確立のための議論が盛り上がることは日本のみならず、健康の脅威に苦しむ世界の国へも大きな平和のメッセージとなるだろう。
是非、日本版CDC設立の議論を早急に開始してもらいたい。将来日本で感染症が蔓延してしまったら、と考えると恐ろしい。あの時に準備しておけば、こんなことにはならなかった、では遅すぎる。

【渋谷健司・ハフィントンポスト】



保健医療が国家安全保障として位置づけとの考え方です。
となると、そう簡単に中国がPM2.5に対しての協力を、現在いがみ合っている日本に協力を求めないのも理解できます。
by kura0412 | 2014-02-28 14:22 | 医療政策全般 | Comments(0)

医療ITの活用(日歯)

医療ITの活用,レセプト電子化移行への周知を急ぐ(日歯)

日本歯科医師会(大久保満男会長)は2月20日,東京・市ヶ谷の歯科医師会館において定例の記者会見を行った.
冒頭の挨拶の中で大久保会長は,診療報酬に関連して基金の問題,とりわけ都道府県・郡市区歯科医師会と行政との連携の重要性を改めて確認し,「日歯の役割はその基盤を強化すること」と引き続き橋渡し役として対応に当たっていく旨を述べた.他に紹介された内容は以下のとおり.

第175回臨時代議員会の開催告知
3月13・14日の2日間,歯科医師会館地下1階の大会議室において第175回臨時代議員会が開催される.予算編成の審議が中心となる今回,日歯は引き続き事業の効率化・スリム化を図る一方で,会員にとって魅力ある組織団体となるよう,各大学同窓会へのアプローチをはじめとする非会員対策,また新卒の比率でも大きな割合を占めるようになった女性歯科医師への働きかけ等を積極的に行い,代表質問でも例年必ず挙げられる“組織率の向上”に努めたいとしている.

医療IT化およびレセプト電子化に関する見解
医療IT化政策が推し進められる中,現在最長で平成27年3月末まで猶予期間が設けられているレセプト電子化について日歯の見解が示された.
平成25年12月末日での電子レセプトの普及率は,医科病院が99.9%,医科診療所が95.3%,調剤が99.9%であるのに対し,歯科では68.2%にとどまっている.レセプトコンピュータを所有し,使用しているにもかかわらず「手書きレセプト」へと変更する場合は請求省令違反となるが,未だこの猶予措置を誤って認識している会員も多いと捉える日歯は,今後さらなる周知を図り,医療情報連携ネットワークに関する実証事業に歯科も参画することがIT時代における医療・多職種連携のさらなる推進につながる,と考えている.

産業競争力会議において特定された課題には,
①国民の「健康寿命」の延伸, ②安全・便利で経済的な次世代インフラの構築, ③クリーンかつ経済的なエネルギー需要の実現, ④世界を惹きつける地域資源で稼ぐ,の4つが挙げられる.これらの課題を横断的に解決するにはITの利活用が鍵であるとし,歯科界としても「口腔機能の維持と健康寿命延伸との関係」など,歯科関連研究の一層の進展を期待したいところである,としている.

【ヒョーロンニュース】



レセプト電子化については舵を切った印象がありますが、時の趨勢ということでしょうか。
by kura0412 | 2014-02-27 15:26 | Comments(0)

『今回の診療報酬改定は「病院のふるい落とし」』

今回の診療報酬改定は「病院のふるい落とし」

2月18日に開催された「院長予備校」の講師を務めた、MMオフィス代表の工藤高氏。2014年度診療報酬改定のポイントについて顧問先の医療機関のシミュレーションデータを示しながら解説した。
「2014年度診療報酬改定を一言で言えば、『ふるい落とし』。今まで何度も改定を分析してきましたが、今回は現場にとって最低の改定です」
これは2月18日に行われた、医療機関の経営者向けセミナー「院長予備校」の冒頭における、講師の医療コンサルタント工藤高氏(MMオフィス代表)の発言だ。
2月12日に厚生労働省の中央社会保険医療協議会が改定案を取りまとめ、田村憲久厚生労働大臣に答申。その内容は現場、特に急性期の病院にとって大変厳しいものになった。

例えば、入院医療では病院・病床の機能分化を目指し、高度急性期を担う病床を絞り込むための改定項目が目立つ(速報! 2014診療報酬改定)。中でも影響が大きいのが「重症度・看護必要度」の見直しだ。
現行でも、重症度が高い患者を一定程度受け入れていないと、看護師配置が最高ランクの7対1一般病棟入院基本料を届け出られないようになっている。今改定ではその評価基準を見直し、厳格化。7対1看護を届け出られるのは、循環器科や脳神経外科などの重症度の高い患者をそれなりに受け入れている病院に絞られていくだろう。
この改定の影響をもろに受けるのが、肺炎や脱水など比較的軽症の救急をメーンに受け入れている地域密着型の7対1病院。
改定項目には経過措置が設けられているものの、10対1看護へのランクダウンを余儀なくされるところが今後、徐々に出てきそうだ。
現場から見れば、人員配置が減ったからといって診る患者層が変わるわけではないため、負担が増すことになる。7対1入院基本料から10対1入院基本料を算定するようになれば病院の収入は減少し、人件費をうまくコントロールしないと給与減のリスクも出てくる。冒頭の「史上最低」という表現もうなずけるだろう。
もちろん限りある財源の中で医療費の適正配分するという意味で、こうした方向性はやむを得ないとも言えるが・・・。看護補助者や医師事務作業補助者の活用も含めて、業務フローの見直しによる医療従事者の負担軽減がより一層大切になる。

10対1病院になると看護師確保に苦戦する?
講師の工藤氏は、「これからの7対1病院は、状況に応じて10対1看護に落としたり、一部の病棟を『地域包括ケア病棟』にするのも選択肢になる」と話す。
地域包括ケア病棟とは、看護配置13対1以上で、急性期後(ポストアキュート)と軽度急性期(サブアキュート)の患者を主に入院させる目的の、今改定で新設された病棟カテゴリーだ。

看護配置のランクダウンについて工藤氏が解説した中で、筆者が「なるほど!」と大変納得した部分があったので紹介したい。
7対1看護から10対1看護に移行する際、病院にとって一番悩ましいのが「看護師のリクルートの難易度が上がること」だという。特に新卒の看護師に「まずは7対1看護の病院で高度急性期の経験を積みたい」という考えの人が多いのがその理由だ。
だが国の施策で、高度急性期病床は今後もさらに絞り込みが続いていく。その一方、地域包括ケア病棟など急性期後の受け皿を担う機能や、訪問看護などの在宅医療や介護との架け橋となる機能は拡充する方針だ。
「これから必要になる人材は、7対1病院でICUや高度急性期の経験ばかりを積んだ看護師より、むしろ地域密着型の病院で経験を積んだ看護師。看護師を募集する際に、急性期一辺倒ではなく、川上から川下まで様々な経験を積めることを前面に出すことで確保に成功した病院もある」。工藤氏のこのアドバイス、参考になる病院は多いのではないだろうか。

なお、この「院長予備校」は、日経ヘルスケアが主催する医療機関経営者向けのセミナーだ。特徴は、少数精鋭で行うことと、講師への質問時間がたっぷりあること。
今回の質疑応答でも「地域包括ケア病棟を作ろうと思っているが、またハシゴを外されるというようなことはないだろうか?」など、切実な経営相談が出されていた。また、昼食休憩中に参加者同士が名刺交換をするなど、ネットワーク作りの場にもなっていた。
ちなみに過去に開催した院長予備校は以下の通り。そうそうたる講師陣に自由に質問できる場は貴重だろう。次回は6月の実施を予定しているので、興味のある方はぜひチェックしてみてほしい。

【日経メディカル】



歯科はふるい落としなって現在があるのでしょうか。
しかし改定時に、このような民間のコンサルタントの保険指導会開催があること事態が医科歯科の環境の差です。
by kura0412 | 2014-02-27 11:56 | 医療政策全般 | Comments(0)

経済からみる医療への視点

株式投資、「賃上げ」支える意外な銘柄

電機、自動車など主要企業の春季労使交渉の集中回答日を3月12日に控え、国内外の投資家が沢井製薬など後発医薬品(後発薬)株に注目している。アベノミクス(安倍晋三政権が掲げる経済政策)が目指す賃上げの成果を左右しかねない仕事をしており、今後も政府の医療費抑制策を支えに収益の伸びが期待できそうな銘柄があるからだ。

ここでサラリーマンの皆様に質問です。
4月からの8%に続き、2015年10月には消費税率が10%に上がる予定です。ところが、向こう10数年間の家計負担を考えた場合、消費増税分よりもっと重いものがあります。何でしょうか?
答えは社会保険料。
特に医療費は毎年1兆円のペースで増え、その膨張スピードの速さ故に政府と企業が悩んでいる。社会保険料は月給だけでなくボーナスにもかかわる。所得が増えれば、個人が払う社会保険料も増える。法人税の場合、赤字だと払わなくていい。だが、社会保険料は赤字になっても企業は払う必要があり、その分、業績を押し下げる要因になる。しかも消費税と違い、医療費の財源となる健康保険料の料率の変更に国会決議は不要。個人は注意して情報を集めないと、社会保険料がいつの間にか値上がりしていることもある。気が付くのは給与明細を見た時だ。賃上げより社会保険料率上昇の影響が大きければ、勤労者の手取りは目減りしてしまう。

なぜ後発薬なのか。最大の理由は、価格の安さだ。
後発薬は新薬の特許が切れた後に発売される医薬品で、価格は薬によって異なるが、新薬の半値前後と低い。有効性や安全性がすでに確認されている新薬の成分を使うため、製薬会社は新薬に比べて開発期間と費用を大幅に圧縮できる。
医師の団体である全国保険医団体連合会が2000~12年度の医療費の内訳を分析したところ、医療費増加分の4割を薬代が占めた。画期的な新薬の登場で救われる患者がいる一方、割安な後発薬をもっと使えば、全体では費用を下げられる可能性がある。厚生労働省は後発薬の数量ベースでの利用目標を18年3月末までに60%まで引き上げる計画を掲げた。現在は4割程度で、欧米に比べると低い。これにより、医療費を1兆円近く節約する計画だ。
後発薬の普及を後押しする目的で、4月からは医療サービスの価格に相当する診療報酬 を見直した。
薬局や病院は後発薬の使用比率を高めないと、収入が目減りしかねない。これまでは薬局が後発薬の利用促進で先行する一方、規模の大きな病院では新薬を使い続ける医師が多かった。だが、他の制度改正の影響もあって、今春以降、大学病院などでは後発薬を患者に投与しないと、収支が悪化する可能性がある。
実際、後発薬メーカーのなかには、4月からの診療報酬改定が決まると病院からの受注が急増し、新規の注文を断らざるをえなくなっているところもある。

制度改正の影響や競争力を、株価はどう織り込んでいるのだろうか。
12年末の株価を100として各社の値動きを比べたところ、日本化薬 や沢井製薬の株価上昇率は日経平均株価 や、製薬最大手の武田薬品工業 を上回った。直近1カ月あまりの相場調整局面でも相対的に値もちが良かった。
日本化薬は抗がん剤に強い。14年3月期の純利益予想を2回にわたって上方修正した。株価は13年12月下旬にバブル崩壊直前の高値に迫る水準(1513円)まで上昇し、その後も1400円近辺で推移している。沢井製薬はこのところ営業利益 段階で2ケタ増が続いており、成長の持続力や利益率の高さに注目して、英国の資産運用会社が長期保有し【ている。
後発薬専業ではないが、明治ホールディングス の全額出資子会社Meiji Seikaファルマに注目する投資家もいる。新薬と後発薬の両方を手がける。後発薬は市場占有率の高い製品が中心で、相対的に高価格で売れていることがアナリストに評価されている。
医療費は税金と、企業や個人が負担する社会保険料で賄われている。トヨタ自動車 やパナソニック 、NECは従業員に対し、後発医薬品の基礎知識や処方を受けられる薬局一覧を提供し、医療費の節約を試みている。品ぞろえや開発中の案件にもよるが、東京株式市場で比較的地味な存在だった後発薬メーカーがおりにふれて注目を集める場面は続きそうだ。

【日経新聞】
by kura0412 | 2014-02-26 11:53 | 経済 | Comments(0)

「日本版NIH]という名称を封印との話もありますが

独法統合の法案を閣議決定 政府

政府は25日の閣議で、独立行政法人の医薬基盤研究所と国立健康・栄養研究所を統合し、新たな独法をつくる法案を決定した。「日本版NIH」構想に伴うもので、旧独法を引き継ぎながら、研究費の配分など一部業務は日本版NIHの中核として新設する組織へ移す。
統合後の新たな独法は名称を「医薬基盤・健康・栄養研究所」とし、2015年4月1日に設立を予定。大阪府に本部を置く。旧独法で手掛けていた医薬品と食品の研究を融合し、生活習慣病対策などへの応用を進める。

【日経新聞】




これとは別に、この日本版NIHの予算規模が米国の4%程度ということで「日本版NIH]という名称を封印するとの報道もありました。
いずれにせよ、歯科領域がここに食い込む動きが見られない現状では様子見です。
by kura0412 | 2014-02-26 09:41 | 医療政策全般 | Comments(0)

野球以外にも通じるものがあります

トロフィーも盾も全部手放して考えたこと

日経運動面で1998年から続けてきた「チェンジアップ」の連載を昨年末で終えた。読者のみなさまから終了を惜しむ声をいただいたのは望外の喜びで、この場を借りて“カーテンコール”にこたえたい。
足かけ16年、コラムに書き連ねてきたことに球界からの反応はあまりなかったが、それは私にとってはどうでもよく、読者の方々に喜んでいただけたのが何よりだった。

■「野球通して人間をみる」テーマに
「いいね」と言ってくれる人のいる一方で、同じくらいの人が「また、西鉄ライオンズの昔話か」とあきれていたかもしれない。
しかし“支持率”が半分もあれば、私としては上出来だ。球界から「毒舌」といわれて遠ざけられてきたことを思えばありがたいものだ。
読者の方々からいただいたお便りのなかで、会社の研修に使ってもいいでしょうか、というものがあった。思ったことを気ままに書いているコラムのどこが役に立つのかわからない。ただ、私はこのコラムを引き受けるにあたって、単に野球を語るのでなく、野球を通して人間をみる、社会をみるというテーマを自分に課したので、人によってはそこをくみ取ってくれたのかもしれない。

■敵味方、選手のなれ合い見苦しく
私はプロ野球の苦情受付係ではないのだが、雑誌に書いているコラムの「うるさ型のおやじ」のイメージからか、どうしても球界に意見してやってくれ、という便りが多かった。なかでも「選手のなれ合いを注意してほしい」という要望が目立った。
試合前の練習の最中に敵味方が親しげに挨拶しているとか、一塁に出た走者が相手の一塁手と話している姿が見苦しいというのだ。
現役の選手はこの問題の重要性をどこまでわかっているだろうか。
プロ野球は娯楽であり、ゲームの世界には違いない。それなのに大の大人が血相を変えて戦っていることの面白さ、非日常性に引かれて、ファンは見にきているのだ。
世の中は政治の世界からテレビのバラエティーまで、どこまで本気だかわからないような「やらせ」的な演出がまん延している。そうした中でスポーツだけは真剣勝負をしているところにファンの期待がある。そこを現役の選手はわからないといけない。
西武のかつてのエース、東尾修は世界の盗塁王・福本豊(阪急)が塁に出ると、その足を狙ってけん制球を投げたという。ホームへ投げても球威のない東尾の球に当たるような福本ではなかったろうが、とにかくこれくらいのけんか腰はあって当然の世界なのだ。

■東尾が勝負にこだわった背景には
なぜ東尾がそこまで勝負にこだわったか。私は東尾が「黒い霧事件」を生でみた世代だったことと関係していると推測する。
西鉄の投手らが八百長にかかわったとして永久追放(その後復権など)になった黒い霧事件。エース級が球界を追われ、がたがたになったところを若い東尾は見ていた。当時の監督だった稲尾和久が彼らを必死で鍛えて、なんとかライオンズの火をともし続けたのだった。
あの苦しい時代を知っているからこそ、東尾はなれ合いに敏感になったのだろう。こういう記憶こそ、球界が伝えていかなくてはならないものだ。
選手の服装に関しての意見も多かった。足元をだぶつかせるメジャーのユニホームの着こなしが日本でも定着した。あれはどうみても戦闘服として適当ではない。首元にネックレスのようなものをちゃらちゃらさせているのも見苦しい。外国人らに多い、入れ墨は論外だ。遊びたい盛りのプロ野球選手に少年たちの手本になれ、というのは八百屋で魚を求めるようなものだが、悪い見本にだけはならないでほしい。

■球界の歴史、心にしっかり刻んで
私は歴史を大事にしようと訴えてきた。
「年寄りの世まい言」と言われそうだが、プロ野球は野球道具はおろか、食べる物も着る物も、何もない時代をしのいで、現在に至っている。そのことを現役の選手は覚えておいてほしい。
昨年亡くなった川上哲治さんのお別れ会で、あらためてあの時代のことを伝えていかなくてはと思った。どんな困難にも「しっかり食べる」ことによって立ち向かっていったという川上さん。それは小さいころにお母さんに言われた「哲、飯ば食わるるうちは死なんバイ」という言葉から来ているそうだ。
飯を当たり前に食えるということが、どれだけありがたいことか。ましてやプロ野球という「あれば楽しいが、なくなっても誰も死なない」という浮草稼業でありながら何億円ももらえることの意味、どのようにしてその舞台が築かれてきたのかということを現役組も知らないといけない。
川上さんのことを書いたときに、読者からいただいたはがきがある。「九州に住む90歳の母親の『点滴では元気ならん。食べないと』という口癖が思い出され、切り抜いて送った」と書かれてあった。私の文章も少しは人の役に立っているのかと思って、うれしくなった。

■福岡市博物館に西鉄の常設コーナー
歴史を伝えるという意味でうれしいことが、最近あった。西鉄ライオンズの本拠があった福岡市の福岡市博物館(同市早良区)が、昨年11月に西鉄の常設展示コーナーを設けてくれたのだ。
地元で絶大の人気を誇ったとはいえ、西鉄ライオンズもいってみれば、一つの民間企業にすぎない。それを公の施設で取り上げるのは極めて異例のことであるには違いないから、ここで少し書いておこう。
西鉄の資料が展示されているのは博物館の歴史コーナーの「昭和~現在」の中だ。
これを担当した学芸員の鳥巣京一さんの話がいい。
郷土史のコーナーの「昭和から現代」は全国どこの博物館でも似たようなものになりがちだが、鳥巣さんは戦後の復興を経て、高度成長へというありきたりの展示ではつまらないと考えた。「あの時代の福岡を特徴づけるものはなにかと考えたときに西鉄ライオンズだ、となったわけです」(鳥巣さん)

■ライオンズ史、そのまま福岡の歴史
九州は炭鉱景気にわいていたが、現場の仕事は過酷なものだった。つらい日々の憂さを晴らすために、人々は球場につめかけた。地方の弱小球団だった西鉄が、九州の熱気を受けてめきめきと力をつけ、やがて巨人という“中央”の権威を破る。そこに人々は自分の人生を重ねてみていた……。ライオンズ史はそのまま福岡の歴史だというわけだ。
博物館側の熱意に打たれ、私は自分の持っているトロフィーやペナントなど、自宅に飾っていたお宝のほとんどを寄贈した。
私は物にこだわらないタチで、記念のグラブでもバットでもどんどん人にやったり、来客が勝手にもっていくのを止めるでもなく眺めたりしていた。
そうした中であえて残しておいたものは「これだけは墓まで持っていく」と決めていたものだ。だが、それも手放すことにした。
そのお礼というわけでもあるまいが、鳥巣さんは当時のユニホームを忠実に再現してくれた。

■半世紀前のユニホーム、忠実に再現
大阪の老舗メーカーである久保田運動具店に頼んで、当時と同じ麻素材を使った「本物」を複製してくれた。さらに「Lions」と背番号「7」の形も、忠実に再現してくれたのだ。
「7」の数字はこれも久保田運動具店で半世紀前に各球団の背番号などを担当していたデザイナーを探しあてて、作ってもらったという。これには涙が出た。
思い出の品々を整理しているうちに、私は不思議な気持ちになった。お宝として今まで飾ってきたけれど、「物」はいずれどこかに行ったり、壊れたりするし、西鉄ライオンズというチームが存在したということも、長い歴史からみたら、ほんのひとこまにすぎないのだなあ、という気持ちがわいてきたのだ。
西鉄の3年連続日本一も、巨人のV9も球史の中のひとこまだ。逆に、今はなくなった近鉄バファローズなども、かけがえのない歴史の担い手だったのだ……。
正直にいえば現役時代、どうしようもなく弱くて、パ・リーグのお荷物と呼ばれていたバファローズはなくなっても仕方がないなあと思っていたが、それはとんでもない間違いだった。
大映など、今はないチームもすべてプロ野球という大きな川の源流となった。歴史があって今がある。当たり前のことだが、私は改めて歴史の前に謙虚であらねばという気持ちを強くしている。

■今年も元気に、「飯ば食わるるうちは…」
さて、読者の方々から多く寄せられる問い合わせに、このコラムは本になっていないか、というものがある。
宣伝が足りないのかどうか、みなさんご存じないのだが、何冊か出ている。
つい先ごろも「豊田泰光 108の遺言」を出した。「チェンジアップ」と週刊ベースボールのコラム「オレが許さん!」のエッセンスを集めたもので、雑誌モードの文体に改めたので多少違和感があるかもしれないが、チェンジアップの締めくくりのつもりでまとめた。
ほかにも古い順に「チェンジアップ」(三笠書房、2000年)、「血涙! 日本プロ野球解体論」(新潮社、04年)、「豊田泰光のチェンジアップ人生論」(日本経済新聞社、06年)、「すべては野球が教えてくれた」(中経文庫、07年)など、この連載をベースとした本が出ているが、いずれも中古品をお求めいただくしかないようだ。
それではみなさん、今年も元気で参りましょう。「飯ば食わるるうちは死なんバイ」ですからね。

【日経新聞】



日頃楽しみしていた野球評論家の豊田泰光氏のコラムです。著書などを読んでも野球だけでなくいろいろ通じるものがあります。
by kura0412 | 2014-02-25 13:48 | スポーツ | Comments(0)

医科歯科連携の中軸に据えて

高齢者医療 「生活の質」維持が重要だ

食べたり飲んだりすることができなくなった高齢の患者をどうケアするか。胃から人工的に栄養摂取する治療について慎重に行うよう、新年度から医療機関が受け取る診療報酬が見直される。
患者や家族が治療法などを十分理解した上で行うよう促すものだ。高齢社会での医療やケアのあり方を考える契機にしたい。

見直し対象は口からの栄養摂取が難しい場合、胃に穴を開け管を通す「胃瘻(いろう)」と呼ばれる方法だ。看護や介護がしやすいことなどから行う例が増えてきた。
しかし、予防目的の口腔(こうくう)ケアを十分に行わないまま胃瘻を施したり、ものを飲み込む「嚥下(えんげ)」力を回復させるためのリハビリがなされないまま放置される例が多く問題となっている。
厚生労働相の諮問機関「中央社会保険医療協議会」は、胃瘻を施す際の診療報酬を平成26年度から減額する。一方で胃瘻の必要があるか、嚥下機能を検査する報酬を新設する。患者や家族に説明し、回復可能性やリハビリ方法などを相談することも求めた。
患者や家族と相談し、リハビリを行う過程を診療報酬上も明確化し、慎重な実施を求める方向にかじを切った意味は大きい。

終末期医療などで、食べ物を口から摂取をさせるなど生活の質(QOL=クオリティー・オブ・ライフ)に重きを置く欧州に比べ、日本では胃瘻を行う例が高齢者を中心に多いといわれる。その背景には、口からの栄養摂取では誤嚥による肺炎の危険があるため、それを避けたい医療や介護現場の事情もあると指摘される。
一方で、医療機関や介護施設の中には、食べる楽しみを患者から奪わないよう、口腔ケアの徹底など予防や機能回復訓練を重視して効果をあげている所もある。
高齢社会で医療技術が進歩する中で、どこまでどんな治療を尽くすか、医療機関側も患者側も判断に迷う場面は多い。重症患者の場合、本人の意思確認ができないケースも少なくない。誰もが考えておかねばならない問題だ。
日本老年医学会は、高齢者ケアで、患者と家族が、医療や介護チームと十分コミュニケーションをとり、患者の人生にとって「最善」を見いだすよう求めるガイドラインをつくっている。患者の意思と利益を最大限尊重した医療や介護が求められる。

【産経新聞・主張】



医科歯科連携の中心の一つになる所です。しかしながらその一方、医科から歯科への排除も懸念される部分でもあります。
by kura0412 | 2014-02-25 09:45 | 歯科 | Comments(0)

「自公・プラス・ワン」

野党バラバラで対抗できす!「自公・プラス・ワン」でさらなる安定図る安倍政権

2014年度予算案は今月末にも衆院を通過する。成立時期に当たる3月下旬の24、25両日に、首相・安倍晋三がオランダのハーグで開催される核安全保障サミットに出席するため、予算案は3月20日にもスピード成立する見通しだ。
予算成立時期は政権の安定度を計るバロメーターでもある。
自民党が自由党と連立した直後の99年度予算は最短の3月17日に、この連立に公明党も加わった2000年度予算も同日に成立している。内政、外交にさまざまな問題をかかえ、安倍に近い人たちの失言が相次いでいるのに、なぜこうもスイスイと審議が進むのだろうか?

民・維・み・結の合計支持率ヒトケタ
「ウチは3月4日に衆院通過でいいんじゃないかと言っているんだけど、自民党は今月28日の衆院通過にこだわっていて、そうなりそうなんだよ。野党が抵抗しないんです」公明党国対幹部はこう語る。
与党が意外に感じるほどに、野党が審議に協力的だ。かつて、集中審議開催など徹底審議を求め、与党の国対幹部が顔を曇らせていたころとは雲泥の差だ。
この最大の要因は昨年夏の参院選で自民党が圧勝し、自民、公明両党で過半数を回復、「衆参ねじれ」が解消されたことだ。それまで野党は参院での非協力をにおわせ、衆院での折衝で優位に立ってきた。今国会はねじれ解消後、初の通常国会。ねじれ解消の効果がはっきりと現れたと言える。
しかし、それだけではない。野党があまりにもふがいないことも大きな原因だ。
民主党、日本維新の会、みんなの党、結いの党、共産党、生活の党などが結束して与党に対抗することはなく、バラバラに行動している。
議席数で見ると、民主55、維新53、みんなの党以下はヒトケタだ。民主党と維新の会が協力することはあまりなく、野党第1党、民主党の各委員会における理事の数は1人しかいない。こんな状況下で野党が共闘できないのだから、巨大与党に対抗できるはずがない。
衆院予算委員会の質問ぶりを見ていても、舌鋒鋭く切り込んでいるのは民主党の大串博志、玉木雄一郎、維新の中田宏、山田宏ぐらいなもの。民主党元代表の岡田克也が5回も質問に立っているが、切れ味は悪い。
野党にとって国会は存在感を示せる晴れ舞台だが、今国会では与党に一泡吹かせたという場面すらない。したがって、野党に国民の関心は集まらず、政党支持率は自民党がおおむね30%を超しているのに、民主、維新、みんな、結いの支持率の合計は10%以下、ヒトケタ台だ。

選挙を基盤に14年余続く自公協力
対する自公両党の結束は極めて強固である。
集団的自衛権の見直しという難題を抱えてはいる。しかし、教育委員会制度の見直し、消費税の軽減税率、あるいは民主党政権下で自公が分断されそうになった消費増税、衆院の選挙制度改革などを乗り切ってきた。
単に政権のうまみを分け合うだけでなく、権力がない時代、つまり野党の悲哀を味わざるを得なかった時も協力関係が崩れなかったことが大きい。毎週1回、「2幹2国」と呼ばれる両党の幹事長・国対委員長の会議を続け、国会対策や各種選挙で連携してきた。それだけでなく、政策の調整や国会の各委員会で連携してきた。この結果、自公両党の間で無数の人間関係が培われている。
たとえば、公明党国対委員長の漆原良夫は2009年衆院選で初当選してきた若手議員が自民党議員らと会食する機会を設け、人脈を引き継いでいる。これは地方議員にも及び、公明党幹部は「連立解消なんて言ったら、地方で反乱が起きるんじゃないか」と話すまでに至っている。自由党を挟んだ1999年10月の「自自公連立」から14年余、この歴史は重い。
この基盤となっているのが衆院選だ。自民党衆院議員のほとんどが地元で公明党・創価学会員の協力を仰いでいるだけでなく、公明党議員はとくに衆院小選挙区で当選するためには地元の自民党支持者の支持が不可欠となっている。
この自公関係を基軸に、バラバラとなっている野党のうちから1党でも協力を取り付ければ「暴走」という非難を浴びることもない。言わば「自公・プラス・ワン」戦略だ。安倍政権に対して逆風が吹き始めているが、それでも政権の安定が失われない秘密はここにある。

【田崎史郎・ニュースの深層】



国民の多くは安定した政権によって広義の国力を増加することあります。
結局のところ、第一次安倍政権から紆余曲折あって個々の落ち着いたのかもしれません。
by kura0412 | 2014-02-24 10:17 | 政治 | Comments(0)

本当に歯科界は静観しているだけなのでしょうか

混合診療拡大へ新ルール検討 規制改革会議

政府の規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)は21日、保険診療と保険外診療を併用する混合診療の対象を広げるため、新たなルールを検討することを確認した。一定の基準の下で患者と医師が合意して選んだ治療について、個別に保険診療との併用を認める制度を設計する。3月にも意見をまとめて厚生労働省と協議に入り、6月にまとめる答申に盛り込む。
現行制度では原則として、保険外診療を受けると保険診療を含めた全額が患者負担になる。例外は国が認めた一部の先進医療に限られる。規制改革会議は適用対象の拡大に加え、患者の選択や医師の裁量を広げるよう、厚労省に求めていた。

【日経新聞】



これだけ動いているのに、歯科界は本当に静観しているだけなのでしょうか。
by kura0412 | 2014-02-22 10:02 | 歯科医療政策 | Comments(0)

有名な評論家であっても医療は分かっていません

▼主治医制度ではなく、パーソナルケアに目を向けるべき

中央社会保険医療協議会は12日、診療報酬の2014年度改定を決定し、田村厚労相に答申しました。
消費増税に併せて4月から初診料を120円、再診料を30円引き上げるのが柱で、全体で0.1%の増額改定となります。国民医療負担費が40兆円規模になり、確かに大きな負担になっています。この20年で約2倍の規模になってしまいました。
入院、外来、薬の処方などを抑える方向に動いていくというのは、必要があると思います。ただ、「主治医」制度を新設するなど在宅医療を促すという方針には、少し不安を感じます。

英国などでも主治医制度は導入されていますが、必ずしも上手く機能していません。主治医が気に入らないなど、トラブルも多く発生しているからです。主治医という発想だけでなく、ドイツを参考にして「パーソナルケア」などにも目を向けるべきだと思います。
ドイツのパーソナルケアという制度では、例えばリスクが高くない医療行為であれば、個人が自分自身で実施することができます。そのためのホームケア、パーソナルケアの道具がたくさん揃っています。例えば、採血までは自分がやって、それを病院に送ると、病院から必要に応じて連絡が入るという流れになります。
日本では医師以外に認められた医療行為は非常に限定的なので、当然、このような検査も限られたことでしか実施できません。
医療行為の中でも、慣れた患者や定期的で簡単なものであれば、個人が実施することは可能だと思います。
私も数回痛風になったことがあるため、20年間にわたって痛風の薬を処方してもらっていますが、毎月同じ処方してもらうだけで非常に手間がかかっています。
本当に重要な事は、個人にイニシアティブを取らせることです。ないしは、誰か患者をケアする人がいるのなら、その人が医師に代わって簡単な医療行為を行ってあげられる仕組みを作ることでしょう。
単に価格を改定し、主治医の制度を、というだけでなく、このような点まで踏み込んで考えてもらいたいと思います。

【大前研一ニュースの視点】



世界最速の高齢化の日本に、海外の事例を持ち出して論評することは、医療経済の精通していない学者、評論家の典型です。
あれだけの人でも医療の現状を分かっていません。裏返せばそれだけ難しい分野ということでもあります。
by kura0412 | 2014-02-21 09:16 | 医療政策全般 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


by kura0412

プロフィールを見る
画像一覧

ミラー片手に歯科医師の本音

『口腔健康管理とかかりつけ歯科医』

今回の改定を医療全体的にみると三つの注目すべき特徴がありました。一つは伸び続けていた調剤には厳しい結果となったこと。7対1の入院基本料の要件の厳格化。そして改定の中で「かかりつけ」という概念が明確に組みこまれまれました。
「かかりつけ」に関しては医師、薬剤師に加え歯科でも導入されていますが、「かかりつけ歯科医」はあくまでも「保険用語に一つ」というイメージがあります。しかしながら医科、薬科ではこの「かかりつけ」を軸に医療体制の新しいイメージを描きつつ、今後の政策を積み重ねる意気込みを感じます。そこにあるのは、地域包括ケアの推進がベースにあっての考えです。例えば、今回の改定では紹介状のない大病院の初診・再診料自己負担は大幅なアップとなりました。また、調剤の方ではかかりつけ薬剤師指導料算定をきっかけに、患者とのコミニュケーションを密に図ろうとする試みを目指します。
一方、医療政策として改定と対をなす基金は、歯科医療の環境整備にも益々重要な意味を持ちます。ただ、今回改定の中でも可能性の秘めた項目としていくつか点数化は見られましたが、基金が改定とリンクすることなく、独立しての事業になっている印象は拭えません。限られた予算の中でのやり繰りです。W改定に向けての改定と基金との相乗効果を目指す為の戦略と、それに沿った事業の立案が必要となってきます。
包括ケアを視野に入れての「かかりつけ歯科医」でポイントとなるのが口腔ケアです。その有用性は医科からも視線が注がれています。然るに、口腔ケアという言葉が、ブラッシングのみの狭義に捉えられている現状があり、本来の口腔ケアの意味する嚥下機能も含めた口腔全体を管理する視点の広がりが不足しています。その観点からみると、今回日本歯科医学会が「口腔健康管理」と称した新たな口腔ケアの概念の提唱は機知を得た提案です。摂食機能療法などを加えた従来の歯科治療を「口腔機能管理」、歯石除去、PTCなど歯科衛生士の実施するエリアを「口腔衛生管理」、そして一般の方が実施する口腔清拭、食事介助などを「口腔ケア(狭義)」として、この三点を総じて「口腔健康管理」としました。
広義の口腔ケアとして定義する考えは、真の意味での「かかりつけ歯科医」が目指す所です。既にW改定に向けての作業が進む中で、この概念を一日も早く歯科界内部で意見の確認をしながら、国民への認知を広めなければなりません。
日医はかかりつけ医機能研修制度を創設し、独自の「かかりつけ医」というものを推し進めようしています。そしてその講習の中に「かかりつけ医の摂食嚥下障害」のメニューも組み込まれています。また、地域包括ケアに向けた「かかりつけ連携手帳」の作成に着手し、そのスピードは目を見張るものがあります。『かかりつけ歯科医』、『口腔健康管理』、『摂食嚥下障害』のキーワードは、地域包括ケアの中で育ちそうな芽であることは間違いありません。残す課題は、地域包括ケアを主導する日医、地区医師会との更なる連携の強化と事業実現に向けてのスピードを加速させることです。




『食べる=生きる』

地方消滅で日本の少子化高齢化に対して大きな警笛を鳴らした日本創成会議が「高齢者の終末医療を考える」と称したシンポジュウムを先日開催しました。その議論を聞くに、地方消滅と終末医療?そんな一見結びつかない二つが、これからの日本の大きな課題となっています。それと共に、改めて人の死という死生観を医療分野の一角に位置する歯科医師として、見つめ直す時期が今あるものと感じます。
高齢化になって、いわゆる寝たきり老人に対していろいろな考え方が示され、特に胃瘻の是非については大きな意見が分かれるところです。欧米においては日本で常習化している高齢者、寝たきり老人への適応が少ないとのこと。この点に関しては中医協でも前回の改定では、嚥下検査の有無によって評価を変えるという対応がなされ、また今回の改定での議論では、その経過の調査結果も示されています。しかしその一方、この問題が話題になって、胃瘻によって日常生活が暮らせるレベルになる患者さんまで拒否するような実例があり、医療現場その対応に苦慮する場面が多々見られる話も聞きます。
この問題は、医療、介護費増大から語られることが多かったのですが、タブー視されていた死に対する考え方が社会問題の遡上に挙がっていることは、大きな時代の変化として捉えられます。そして、食べることは従来から歯科界も提唱するように、単に延命だけが目的ではありません。生きていることの喜びを感じる、人間としての尊厳に係わる重要な日常生活の一つなのです。
医療関係者以外でも「食べる=生きる」を唱える人がいます。「食べることは、呼吸と等しく、いのちの仕組みに組み込まれているもの。」とは、料理研究家・辰巳芳子氏が唱えている私の好きな一文です。そして欧米での判断基準となる「食べる」ことの有無が延命治療の是非判断の基準となる考え方は、経済問題を抜きにしてもその専門家集団である歯科界の属するものが改めて真摯に議論し、一つの考え方を社会に示す責務があると考えます。
然るに、だかからといって歯科界が社会の先頭に立って、自らが死生観の変更を訴える必要はありません。これは社会全体で既にうごめく潮流であり、歯科界はあくまでもこの分野に特化した専門家として食べることの重要性、必要性を改めて世に唱え、それを臨床の場で実践を積み重ねれば良いのです。果たしてこれをも医科が歯科から奪い取り、領域拡大を目指すのでしょうか。
この死生観の議論の推移を見守ると共に、食べることへの支援を更に強める為に、摂食嚥下への歯科領域からの積極的なアプローチが必要となってきています。何故ならば、咀嚼と嚥下は対となって多くの結果を導き出すことが立証され、食べることを特化した専門家としての医療人としては、現状のままでは取り組みが不十分だからです。歯科医療は新たなる視点をもって社会に貢献する時代の到来です。あとはそれを導き、フォローする具体的な政策を積みかさねることです。歯科医療は真の意味での生きる喜びを支援する世界を導きます。



『飲み込みは大丈夫ですか』

基金における事業が一つのきっかけとなって、在宅診療、医療連携が新たな展開に進み始めています。それぞれの医療環境の実情を踏まえて、地域独自の取り組むこの基金を利しての新たな事業は、診療報酬と対になるこれからの歯科医療全体へ大きく波及する政策です。そしてこの基金は、来年度において今年度予算規模に介護関係が上乗せされる計画となっており、医療介護の垣根を越えた地域包括ケアシステム構築としての発想が必要となっています。
歯科における在宅診療の中心は、従来の診療所における診療の延長としての義歯調整から始まり、口腔ケアの対応へと進んでいます。口腔ケアの効果は、既に誤嚥性肺炎予防という観点から医科の関係者は元より介護関係者にも認知されています。それに加えてここきてスポットライトが浴びているのが、今回の基金でもいくつかの地域で事業が計画される摂食嚥下の分野です。
しかしながら、介護保険の認定審査項目にも「えん下」という項目がありながら、実際に摂食嚥下の対応は、一部の大学病院、リハビリテーション、耳鼻科があって積極に取り組んでいる病院以外、殆ど対応出来ていないのが介護、医療の世界の現状です。その理由は簡単です。採算が合わないからです。特に歯科においては無報酬に等しい状態です。
 嚥下の対応は、適応が少ない耳鼻科領域の手術以外その改善方法の中心は訓練、姿勢の改善、食形態変更のアドバイスなどで薬の処方もありません。検査も歯科では保険算定が認められていない内視鏡・造影検査と問診を中心としたスクーリングテストです。近年、摂食機能療法が歯科でも算定可能となりましたが、それは鼻腔栄養、胃瘻増設患者に限定されており、重度になる前の本来対応が必要な患者さんには算定出来ません。
そしてもう一つこの分野を歯科が推し進めるハードルとなるのが、隣接する医科の反応です。現在、摂食嚥下リハビリテーションは歯科医師を中心としたアプローチと耳鼻科、あるいはリハビリテーション科の医師を中心としたアプローチの二つがあります。本来ならば他の疾患でもあるように医科が歯科は口腔内のみと突っぱねるところですが、儲からない中で耳鼻科医の成り手が減少し忙しく手が回りません。それと共に、「摂食・嚥下リハビリテーション学会」の「・」がなくなり「摂食嚥下リハビリテーション学会」に名称を変えたように、嚥下と摂食、咀嚼は一連の動作であり、咀嚼のプロである歯科医師を係わりから排除することは出来ません。咀嚼して嚥下することによって食べることが出来るのです。
もし、嚥下を歯科の領域と社会から認知されれば、歯科診療所が「食べる」ことの社会ステーションと成り得ます。口から食べることへの支援が生きる為、生活を支える源であることが歯科診療所から発信が可能と成ります。したがって報酬的評価は低くても、嚥下に問題ある人が歯科診療所に相談することへの広がり目指し、その実現に向かっての政策を積み重ねる必要があります。先ずは先生方が診療所で「飲み込みは大丈夫ですか」の一言を問える環境作りがその第一歩です。




『この道しかなかった中で』

この原稿を書いている今、衆議院選挙の結果は分かっていません。しかし事前の各マスコミみれば自民党圧勝予測です。選挙は投票箱が閉められるまで何が起こるか分かりませんが、少なくても安倍退陣はなく、任期2年を残しての安倍首相の解散の決断は見事成功となりそうです。
メディアは大義ない解散と騒ぎましたが、今回の安倍首相の解散目的は明確です。日本の経済再生を目指し、自らが提唱したアベノミクスの敢行の為の長期政権への道を切り開くことです。無論、長期政権となってもアベノミクス成功の確定はありません。しかし野党からは、アベノミクスに代わって日本経済再生を可能とする具体的な対案は示されませんでした。マニフェストに踊らされて政権交代を選択したことを悔やむ多くの有権者は、その提示なしで現在の野党にもう投票することは出来ません。また第三極への期待感も、離れたりよりを戻したりの腰の落ち着きのなさを感じ、一時のブームに終わりそうです。となると自民党のキャッチフレーズ「この道しかない」、安倍政権に託すしか今回の選挙では有権者に選択肢がなかったことになります。では長期政権となるこれからの政治情勢を踏まえて、歯科界はどう安倍政権と向き合わなければいけないのでしょうか。
今回の総選挙でのマスコミの世論調査では、有権者は社会保障に対しては経済再生と並び非常に関心をもっていましたが、その政策論戦は殆ど成されませんでした。特に自民党が示した政策は、医療に関してはないも等しいような扱いです。唯一あったのが、既にスタートしている社会保障改革のプログラム法案のスケジュールに則って進めるということです。但しこのプログラム法案の対となす消費税増税が延期となったわけですので、そのスケジュールの変更は必要になってきました。恐らく16年度改定に対しては、これを理由に財務省から厳しい対応を迫られるのは必至です。
この現実の意味するものは、現行の医療制度、水準を是とする考え方がベースにあります。消費税増税、経済再生となって税収が増えたとしても、けっして医療の大幅な拡充が成されるわけではありません。それどころか、もし経済再生と成らなければ医療費はそぎ落とされる可能性もあります。これからは少子高齢化、財政再建を踏まえて、いかにレベルを落とすことなく現行の医療を保つことへの模索が始まります。しかしながら理不尽な政策に対して、責任ある医療人として対応することは当然であり、大きな改善が必要な歯科と、既に一定の医療経営環境を維持している医科とでは立ち位置が異なります。先ずはこの点への内外の理解を求めることがスタートとなります。
選挙終わるのを待って各種医療政策への対応が加速的に進みます。幸いにして政治の世界では現在の歯科医療の現状は理解されつつあり、一つ一つの政策毎の対応スタンスが求められています。果たしてこの道しかなかった中で、歯科界はどう歩みを進めるべきなのでしょうか。歯科界の政策対応能力と政治力の真価が問われています。




以前の記事

2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
2005年 04月
2005年 03月
2005年 02月
2005年 01月
2004年 12月
2004年 11月
2004年 10月
2004年 09月
2004年 08月
2004年 07月

その他のジャンル

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

健康・医療
政治・経済

画像一覧