肺炎を繰り返して衰弱した高齢者や肺炎を併発した終末期のがん患者などについて、日本呼吸器学会は、今月改訂する成人肺炎診療ガイドライン(指針)で、抗菌薬の使用などの積極的な治療を控え、苦しみを和らげるケアへ移行することも選択肢とする。肺炎は日本人の死因の3位で影響は大きそうだ。

国の統計では、2015年に肺炎で亡くなった人は12万人。その97%が65歳以上の高齢者だ。
同学会の新たな指針では、患者が治療でわずかに延命できるとしても、苦痛などで充実した時間を過ごせないと複数の医師が判断した場合、人工呼吸器や抗菌薬などによる治療以外に、緩和ケアも選択肢として患者に示す。意思が確認できない場合は、家族が推定する意思を尊重し、医療チームで方針を決める。
診療指針作成委員会委員長の長崎大学副学長、河野茂さんによると、のみ込む力が弱り、気道に細菌が入って起こる高齢者の 誤嚥ごえん 性肺炎は、抗菌薬の投与で一時的に良くなっても再発しやすい。高熱と息苦しさを繰り返し、寝たきりになることも多いという。そこで「本人が何を望んでいるかを尊重し、治療を控えて苦しみを取り除くケアを優先することも選択肢として加えた」と説明する。

国立長寿医療研究センター病院(愛知県大府市)の終末期ケアチームの部屋に昨冬、医師や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、栄養士らが集まった。高齢者総合診療科医師の川嶋修司さんが、誤嚥性肺炎で入院中の80歳代の男性について「抗菌薬治療の差し控えを検討するとともに、人工栄養の補給などは行わず、苦しみをとる緩和ケアに移行します」と報告した。男性は過去に脳 梗塞こうそく を発症し、認知症もあり、寝たきりで介助が欠かせない。
川嶋さんは、治療効果が期待できず、過度な治療が男性の苦痛を長引かせてしまうことを家族に説明し、治療の差し控えの同意を得ていた。終末期ケアチーム医師の西川満則さんも「判断に至った過程は妥当」と了承した。同病院では、緩和ケアへ移行する際、医師の独断に陥らないように、終末期ケアに通じるスタッフが手続きを確認する。
指針改訂を西川さんは「医者には『治さなければ』というDNAが刻まれている。治療が患者本人のためにならず、やめ時でも 躊躇ちゅうちょ する場合、後押しになる」と評価する。一方、川嶋さんは「治療を差し控える場合は、本人や家族の同意を得たうえ、複数の専門家で検討する必要がある」と手続きの大切さを強調する。

「中止」手続き 患者の決定尊重
肺炎患者への積極的な治療の差し控えという選択肢は、治療中止などを決める手順を示した厚生労働省の指針を踏まえたものだ。
厚労省の指針は、富山県の病院で医師が入院患者の人工呼吸器を外して死なせたとして書類送検された問題を受けて、2007年にまとめられた。治療の中止などを決める際の手続きとして、〈1〉医療従事者が患者に情報提供と話し合いを行い、本人の決定を尊重する〈2〉本人の意思が不明ならば家族が推定し、できなければ患者に何が最善かを医療従事者と家族が話し合う〈3〉複数の医療従事者で判断する――などを示した。

口から食べられなくなった高齢者への人工的な水分や栄養の補給法について、日本老年医学会が12年に発表した指針でも同様の手続きが盛り込まれている。
老年医学会の指針作成に携わった東京大学特任教授の会田薫子さん(死生学)は「成人肺炎の指針は、安らかな最期を迎えるための医療のあり方を医療関係者や市民が考え直すきっかけになる」としつつ、「積極的な治療が適さない肺炎があるという丁寧な説明も求められる」と指摘する。 

(読売新聞)
by kura0412 | 2017-04-26 09:48 | 嚥下摂食 | Comments(0)

「食べられない」高齢者が急増!? 健康長寿のカギは口腔機能にあり!

お年寄りが病院から退院すると、入院前よりも“元気がなくなっている”と思ったことはないだろうか。退院はしてきたものの、体力・免疫力は返って弱っていると。実は、ここに現在医療の大きな問題が隠されている。
多くの医療現場では、『治療中なんだから食べることくらいは我慢しろ』という風潮が蔓延している。高齢者の場合、特にそれは顕著だ。合わない義歯は管理が難しいと強制的に外され、食べることが少しでも危険だと判断されると、食事はほとんどが流動食、点滴、ひどい場合は、経鼻経管栄養や胃ろうにされてしまう。なぜ、こんなことが起こるのだろうか?

急性期病院とは、専門医の集まりである。治療すべき臓器を専門医が受け持つ。
専門医とは、良い意味でも、悪い意味でも、自分の専門を第一に考え、それに危険なファクターはできるだけ排除しようとする。病院内で『食が軽視される』大きな原因は、「医科」と「歯科」が分かれてしまっていることにある。他の専門家にとって、食べるということは自分の治療にとって、危険以外の何物でもないと思うからだ。
実は病院内だけではなく、そもそも食支援に重要な役割を果たす『口腔機能』の専門家がいないという大きな問題がある。人間の体は全て、担当の専門医が決められ、診てもらうことができるが、唯一専門家のいない器官がある。それが『口腔』である。口腔とは口の中から喉までの器官。人間の体の中で、口と歯だけが医科ではなく、歯科が担当する。だから、口腔内のがんやできものは、医科ではなく、歯科の口腔外科が担う。しかし、口腔の外科医はいても、機能の低下や障がいを治療・改善する内科の専門家が全くの不在なのだ。教育すら受けていない。
医療から見放されている『口腔機能』だが、人間が生活していく上で、このうえなく重要な器官であることがわかってきた。「食べる」「喋る」「笑う」という、人間の健康にとって、最も重要な行為を支えているのだ。

今後、健康に老後を過ごすために必要なこととは……
『食支援の専門家(食医)を見つけて、しっかりと噛んで食べながら病気を治すこと』
『加齢によって低下してゆく口腔機能を自分の力で維持させてゆく』
『本人と家族が「医師任せ」にせず、適切なセカンドオピニオンを持つこと』
など、対処法までしっかり紹介。
担当編集者より ずっと元気で自分らしくいたい……多くの高齢者が望む終末期に、明るい光がさしました。それはとても簡単。「自分の歯で美味しく食べる」ことなのです。医者は歯科の知識が少なく、誤嚥を恐れて安易に「禁食」を勧め、口腔ケアを後回しにしがちですが、これが筋肉など口腔機能を弱めてしまいます。「食べる・しゃべる・笑う」ができなくなれば、脳への刺激が減り、認知症リスクも増加。家族が幸せに暮らすヒントも満載です。目次 第1章 医療現場に急増する『食支援難民』
(自分の両親が入院し、その後介護することを想定して考えていきます)
第2章 食べられない原因は『口腔機能障害』
第3章 現代医療から取り残された『口腔機能の重要性』
第4章 噛んで食べることの意義
第5章 口腔ケアと口腔リハビリの違い
第6章 急速な高齢化に付いていけない現代医療
第7章 『食支援』の専門家を作る
第8章 オーラルフレール 40代からの口腔機能障害予防
第9章 老後を健康に生きるために

【両親に対する備え】
◎食支援難民にならないためには、口腔機能に精通した食支援の専門家を見つけ、しっかりと噛んで食べながら、病院を治す。
これは本人と家族が選択すること
【自分のための備え】
◎『オーラルフレイル』に対する自己評価と予防のための体操やマッサージを行う。

【文藝春秋HP】



著者は医療人ではなくジャーナリストです。非常に面白い、まとまっている内容です。
by kura0412 | 2017-02-02 15:32 | 嚥下摂食 | Comments(0)

飲み込みやすさ、ひと目で分かるように 消費者庁、介護食品のパッケージ表示を改善へ

消費者庁は9日、飲み込む力が衰えた高齢者などを想定したゼリー状の「えん下困難者用食品」について、メーカーに義務付けているパッケージの表示を改める方針を固めた。より具体的な記載が加わるため、商品を選ぶ際の分かりやすさが向上しそうだ。

「えん下困難者用食品」は、消費者庁が定めている柔らかさ、詰まりにくさ、まとまりやすさなどの基準をクリアしたもの。すでに12の商品が認められている。パッケージにはマークと、性質や形状の違いに応じてI、II、III(3種類)と類型が書かれている。こうした表示に対し、「もっと分かりやすくすべき」との声が出ていた。
消費者庁は今回、有識者会議で進めてきた議論の成果をまとめた報告書を作成。今後の改善策として、類型Iに「そのまま飲み込める」、IIに「口の中で少しつぶして飲み込める」、IIIに「少しそしゃくして飲み込める」と加筆させるとした。来年にもルールを変える予定。実施時期はメーカーなどと協議したうえで定める。
有識者会議ではこのほか、誤嚥を防止するために液体にとろみをつける「とろみ調整用食品」を、「えん下困難者用食品」に追加することも決まった。

http://www.joint-kaigo.com/article-2/pg82.html

【介護のニュースサイトJOINT】
by kura0412 | 2016-11-11 16:38 | 嚥下摂食 | Comments(0)

「おいしい=快感」となる脳の仕組みは?
私たちの命を守る「おいしさ」のセンサー

梅雨も明けて、いよいよ夏本番。うだるような暑さの中では、冷たい食べ物やスパイスのきいた料理をおいしく感じる。
ところで、この「おいしい」という感覚は、体にとってどんな意味があるのだろうか。
「食べてよい」すなわち「おいしい」
おいしいと感じるともっと食べたくなる。たとえば、ダイエット中なのについ一口食べたらおいしくて止まらなくなり、後悔したという人もいることだろう。
おいしさは舌や口の中ではなく、脳で感じられる。私たちは、嗅覚、視覚、味覚、触覚、聴覚の五感を使って、食べ物のあらゆる情報を受け取っている。脳は食べ物の情報を受け取ると、それを食べてよいか悪いか判断し、食べてよいとなれば、おいしいと感じ、食欲をわかせて必要な栄養素を摂取しようとしているのだ。一口食べるともっと食べたくなるのはそのためだ。
おいしさを感じさせる要因には、味やにおいばかりでなく、食べ物の色や形、食べたときの食感や音など、さまざまなものが含まれる。さらに、このようなや食べ物の直接的な要因だけでなく、食べる人の体調や食べるときの環境、食文化などの間接的な要因にもおいしさは左右されている。そのために、「おいしい」とはよく使う言葉だが、実際はこの感覚はかなり複雑だ。
おいしさは、本能的に感じるものと経験的に感じるものに大別することができる。
疲れたときに甘いものがおいしく感じ、汗をかいたときに塩分を含むものが欲しくなるのが、本能的なおいしさだ。
一方、子供のときには苦手だった食べ物が、大人になったらおいしく感じる、また、好物はおいしく感じるなど、食経験を重ねることでもたらされるのが経験的なおいしさだ。
 経験的なおいしさは、人それぞれで基準が異なるが、本能的なおいしさは生まれながらに感じられる共通なものである。ただし、おいしさのメカニズムは複雑で不明な点が多い。おいしさを客観的に評価することも難しいのが現状だ。

味は必要・危険のシグナル
私たちは普通、甘いものをおいしく感じ、苦いものはおいしく感じない。甘い、苦いといった味覚は、食べ物に含まれている化学物質の刺激が脳に伝えられて、識別されるものである。
味覚は「甘味」「塩味」「旨味」「酸味」「苦味」で構成されている。このうち、甘味、塩味、旨味は、食経験のない赤ちゃんでもおいしく感じる。甘味はエネルギー源の糖、塩味は生体調節などに必要なミネラル、旨味はタンパク質のもとになるアミノ酸や核酸、それぞれに由来する。つまり、甘味、塩味、旨味は、人体に必要な栄養素の存在を知らせるシグナルとなっている。
一方、苦味や酸味ばかりを好む人はいないし、赤ちゃんも苦味や酸味は嫌がる。腐ったものは酸っぱくなり、毒のあるものは苦いものが多いため、酸味は腐敗を、苦味は毒素の存在を知らせる味だ。これらの味は危険のシグナルになり、おいしく感じない。ただし、食経験を積んで、安全な食べ物だと認識されれば、コーヒーやビール、梅干しなどのように苦味や酸味のある食べ物もおいしく感じる。これが経験的なおいしさだ。
つまり、味は食べてもよいのか、悪いのかを判断するためのシグナルになっている。同じように、においや色なども食べ物を判断するための重要な情報だ。人は本能的に人体に必要なものをおいしいと感じ、人体に害のあるものはおいしく感じないようになっている。おいしく感じれば、もっと食べようとするし、そうでなければ、食べるのをやめる。
人類の歴史をさかのぼれば、食べることは命がけの行為だった。せっかくの獲物でも、毒が含まれているものを食べたら、命を落とすかもしれない。食べ物を見分けるために人類はこの能力を身につけたのだろう。

おいしさは食欲を刺激する
私たちがどのようにおいしさを感じ、食欲をわかせているのかを、もう少し詳しくみてみよう。
五感によって受け取った、味や香り、色、形などの外観、温度、歯ごたえなどの食べ物の情報は、大脳皮質のそれぞれの感覚野(かんかくや:「感覚領」とも言う)に伝えられる。大脳皮質とは大脳の表面に広がる薄い神経細胞の層で、知覚や思考などの中枢になっている。感覚野は大脳皮質のうち、感覚に関与している部分だ。情報は感覚野に伝えられた後、大脳皮質連合野という部分に集まり、食べ物が安全かどうか、求める栄養素を含むかなどを判断する。
味覚などの五感から得た食べ物の情報と血糖値など生理的な状態の情報は、さらに扁桃体(へんとうたい)へと伝わる。偏桃体とは、大脳の内側にある大脳辺縁系の一部で、いい気持ちになったり、不愉快になったりする、「快・不快」の本能的な感情を生み出しているところだ。ここでは、記憶や体験など過去の情報と照合し、食べ慣れていて安心して食べられるなどの手がかりをもとに、好ましいかどうかを判断する。
扁桃体の情報は、さらに視床下部(ししょうかぶ)へと伝わる。視床下部は、偏桃体の近くにある食欲をコントロールする部分で、食べるように促す摂食中枢と、食べるのをストップさせる満腹中枢に分かれている。好ましい食べ物の場合は摂食中枢を刺激する。すると食欲が増し、おいしく味わって食べることができる。好ましくない場合は、食べることをやめる。
このように脳に集まったさまざまな情報が次々に伝達されることで、おいしさを感じ、私たちの食行動を決めているのだ。

おいしさは生命維持のために備わった快感
一言でいえば、おいしさは食べ物を食べたときの「快感」だ。快感は大脳皮質で理知的に判断されるのではなく、偏桃体で本能的に感じるものなのだ。先に述べたように、偏桃体で感じる「快・不快」の感情(情動という)は、動物の行動を理解するために使われる。動物は「快」をもたらす刺激には接近し、「不快」をもたらす刺激は遠ざける。
そこで、食べることに「快」をもたらすことで、食欲という生命維持に欠かせない欲望を生み出しているのだ。「食べたい」と思うのはどの動物でも共通なので、人類以外の動物にもおいしいという感覚はあるのだろう。
私たちは食べ続けなければ生きてゆけない。それなのに食べることが苦痛だったら、あっという間に、人類は滅びていたことだろう。そこで、生体は食べることに心地よさや喜び
を感じさせるようになっているのだ。おいしいという快感が、「もっと食べたい」という感覚を生じさせることで、私たちは生命を維持できるのである。
毎日おいしく食べられるのは、生きていることの証である。おいしく食べる工夫をして、暑い夏を乗り切りたい。

【JBpress・佐藤成美】
by kura0412 | 2016-09-13 08:46 | 嚥下摂食 | Comments(0)

食と栄養のプロが指摘する、シニアに足りていない栄養素は?
栄養摂取には調理の工夫も必要

シニアの食と栄養に関するオピニオンリーダーを対象にしたアンケート調査の結果によると、シニアはもっと積極的にたんぱく質を摂取しなければならないという。食と栄養に関する様々な情報を発信する「アクティブシニア『食と栄養』研究会」が発表した。
同研究会は、管理栄養士、栄養士、医師、看護師、薬剤師、介護士、研究者等の職に就いている人、および高齢者の健康寿命の延伸とクオリティ・オブ・ライフ(QOL)向上のための社会活動を行っている人を「プロシューマ」と呼び、プロシューマの調査などを通じて健やかで豊かなアクティブシニアライフのサポートを目指した活動を行っている。

シニアに不足している栄養素は「たんぱく質」
今回、20~70代の男女プロシューマ会員118人を対象に、2016年2月1日~16日に実施したアンケート調査の結果を集計し、まとめた。
シニアの健康維持に必要であるにもかかわらず、不足していると思う栄養素や機能性成分を尋ねたところ、「たんぱく質」(102人)との回答が群を抜いて多かった。次いで、「ビタミン」と「ミネラル」(いずれも65人)、「食物繊維」(50人)が続いた(図1)。

必要な栄養素を摂るための工夫は?
シニアが必要な栄養素を摂取するために、どのような工夫ができると考えるかとの質問に対しては、1位が「摂取しやすくなるように調理を工夫する」(75人)、2位が「家族や仲間との共食の機会を多くつくる」(61人)、3位が「栄養素についての情報を発信する」(50人)だった(図2)。

また、プロシューマ自身がシニアの食と栄養についてのスキルアップのために、どのような情報が欲しいか聞いてみると、「栄養素や機能性成分の効果・効能」(57人)、「サルコペニア対策」(52人)、「ロコモティブシンドローム対策」(47人)が上位に挙げられた(図3)。

【Gooday】



シニアが必要な栄養素を摂取するために考える工夫のトップに「摂取しやすくなるように調理を工夫する」がありました。ということは、口腔環境を保つことが重要であることは当然です。
by kura0412 | 2016-09-07 15:55 | 嚥下摂食 | Comments(0)

「胃ろうでも味わう楽しみを…」口からの摂取復活を考えたきっかけとその後の話

私たちは、何気無く、当たり前のように1日3回食事をしています。ときには、おやつ、休憩と称して間にお茶やお菓子などをつまむこともあります。「美味しい」とか「まずい」とか言いながら、口から摂取し、食事を楽しんでいます。
義母は10年近く前から、1日3回の食事を胃ろうからの栄養食(液体)で摂取しています。そんな中、5か月前から口から咀嚼しながら摂取することに挑戦しており、そこで起きた義母の変化(?)とともに、認知症高齢者の胃ろうについてお話したいと思います。

義母が胃ろうになったきっかけ
義母がなぜ胃ろうになったのか…記憶が定かではないのですが…歩くことや食べることなど、日常生活に意欲がなく、声かけや介助が必要になってきた頃に、膀胱炎の発熱で入院しました。
入院で点滴したり、食事摂取に向き合う介助の手が足りなかったことも重なって、食事をしない日が続きました。やせ細っていく義母に対し、主治医から胃ろうを勧められました。息子である主人と、娘である姉たちの『母を餓死させたくない』という思いから、胃ろうを造設しました。

生命維持のための栄養注入
あれから約10年、ベッドの上で行える食事介助は介護者側にとってとても楽です。ただ注入するだけですから…付き添う必要もありません。
ん?食事介助…食事?食事とは言えない、生命維持のための注入になっています…悲しいことに…。もちろん胃ろうになっても、胃ろうを外し、口から摂取できるようになった人はいます。しかし、あのころの私には、胃ろうを造設されたことで口からの摂取はありえないことだと思っていました。
造設直後は可哀想だと思いながらも、栄養が身体全体にしっかりと行き届き、顔色、体つきが元に戻っていくことを複雑な思いで見守り…そしてその思いも薄れ、約10年間、胃ろうでの食事が続いています。
夏になれば水分量を増やしたり…病気になったらカロリー食を減らしたり、増やしたり…主治医の指示のもと、何気無く、当たり前のように胃ろうからの経管栄養食を注入し続けています。しかし、そんな状況に疑問を投げかける出来事が身近で起きたのです。

後悔先に立たず…
昨年末、誤嚥性肺炎で入院した従姉妹が亡くなりました。口からの食事ができなかったため胃ろう造設をしたのですが、身体が胃ろうからの注入を受けつけず…。口からの摂取を禁止された状態で、従姉妹は叔母(母親)に、「コーヒーを飲ませて欲しい」と訴えたそうです…しかし禁止されている…「味わうだけでも…1滴だけでも…」と、主治医に直訴したそうですが…ダメだったそうです。
それがずっと悔いとして心に残り、従姉妹を看取ったあとも、叔母は心が晴れずにいるようです。この件があり、約10年間、口から摂取していない義母に《口から…味わう楽しみ》って復活できないかな?という思いが湧き上がりました。
訪問看護時に、雑談のようにその思いを告げると、「いいかも!」という看護師さんからの返事。ケアマネに伝えると、「いいと思う」という返事。主治医にこの思いを伝えると、「お義母さんの現状、自分の立場では『やれるよ』とか、『やっていいよ』とは言えない。摂取するために検査すればOKが出るとは思えない。しかし、家族の思いを尊重するよ」と、心強い言葉をもらいました。
口からの摂取を…味わう程度でいいから…義母と私にとって大きな一歩を踏み出しました。

周囲の協力あってこそ実現
担当者会議が開かれ、主治医から、家族や関わっている事業所へ、リスクや摂取前後の口腔ケアの大切さなどの説明がありました。何かあっても誰の責任でもないこと、連携して本人・家族を支援するという共通の思いを確認し、「何かあった時にはすぐに駆けつけますよ」と、心強い後押しをしていただきました。そして、訪問看護の時に、小さな小さなスプーン1杯のジュースを舌の上にのせることから始まりました。
あれから5ヶ月が過ぎました。胃ろうは変わらず続いています。しかし今では、ST(言語聴覚士)さんのアドバイスをいただきながら、小さなアイスクリームや果物の汁にとろみをつけ、10回ほどに分けてモグモグごっくんと味を楽しめる?ようになりました。

私が感じた義母の変化と在宅介護に必要なもの
ほとんど反応がなく過ごしていた義母が、嫌なことを声や顔で表すようになりました。家事をしながら義母のそばに近付くと、声をあげて私を呼ぶようになりました。排便をした時に、声を出して教えてくれるようになりました。
もしかしたら、気のせいかもしれません(笑)でも、そう感じるのです。主治医からは、「咀嚼することは、脳にとってとてもいい刺激なんだよ。頑張れ!」と、激励されました。
この頃、在宅介護において、《支援の輪を広く持つこと》《思いを伝えること》が、介護の負担軽減や喜びに繋がると、つくづく感じています。関わってくださる方々に、心から感謝しています。

【認知症ONLINE】
by kura0412 | 2016-08-06 10:49 | 嚥下摂食 | Comments(0)

嚥下リハや口腔ケアはどこまで有効?

これまで2回にわたって、高齢者肺炎に対する抗菌薬治療のジレンマについて解説してきました。今回は、シリーズの締めくくりとして、高齢者肺炎に対する抗菌薬以外の治療・ケアについて考えます。

嚥下リハと口腔ケアはセットで実施を
高齢者肺炎のほとんどは誤嚥性肺炎だと言われています。
誤嚥性肺炎の評価方法としては嚥下内視鏡検査(VE)や嚥下造影検査(VF)がありますが、これらの検査はあくまでも嚥下機能評価法であって、誤嚥性肺炎のリスク評価法ではありません。たとえこれらの検査で異常を認めなくても、誤嚥は生じます1)。これらはあくまでも座位での検査であり、夜間の不顕性誤嚥のリスクは評価できません。脳梗塞やパーキンソン病といった基礎疾患、CT画像なども考慮して、総合的に誤嚥性肺炎を診断する必要があります。

治療を行うならば感染症という面では抗菌薬が手段となりますが、誤嚥性肺炎では抗菌薬以外の介入、とりわけ嚥下機能障害への対処が必要となります。そして、嚥下機能障害の鍵となる物質がサブスタンスPです。サブスタンスPは嚥下反射や咳反射において重要な物質ですが2)3)、加齢や脳血管障害、神経変性疾患では減少してしまい、誤嚥の要因となります。
サブスタンスPを増加させる方法として、薬剤では葉酸や降圧薬のアンギオテンシンII変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)が知られていますが、これだけでは不十分です(そのほかにも嚥下機能改善に有効な薬剤としてはシロスタゾール、アマンタジン、半夏厚朴湯などが知られています)。他の手段としては、食事の形態や摂取方法の変更、嚥下リハビリテーション(以下、嚥下リハ)、口腔ケアなどを行います。これらは肺炎が治癒してからではなく同時進行で進めていき、再誤嚥を防ぐ必要があります。

言うまでもなく重要なのが嚥下リハと口腔ケアです。
嚥下リハは嚥下状態に対する介入であり、誤嚥する菌量は減らしますが、当然ながら口腔内にいる菌の質は改善できません。一方、口腔ケアは口腔内の菌の質を改善しますが、毎日行ったとしても要介護高齢者では1日で元に戻ってしまい、菌量は減らせません。つまり、この2つの介入は相補的な関係にあって、両方とも必須です。
また、口腔ケアを歯ブラシで食後5分程度行うと嚥下反射が改善したという報告4)もあり、口腔ケアの刺激でサブスタンスPが放出されるからと考えられています。歯があることは菌が付着する要因ですが、歯のない患者への口腔ケアも無駄ではありません。歯のない人への口腔ケアは歯のある人と同等の肺炎予防効果をもたらしたと報告されており5)、サブスタンスPの放出促進がいかに重要であるかが分かります。
食事形態も患者に合わせて変えていく必要がありますが、盲点になりやすいのが食べ物の温度です。食事の際に食べ物が熱い/冷たいという刺激がサブスタンスP放出には必要であり、それにより嚥下反射は改善されます6)。食べ物が生ぬるい状態は避けるべきです。
患者の入院後、誤嚥性肺炎だからという理由でルーチンで絶食にされていることはないでしょうか?
大量の酸素投与が必要である、嘔吐を繰り返している、喀痰の量が多すぎる、といった場合は難しいですが、そうでないならば入院初日から積極的に経口摂取を行う方がいいと思います。絶食期間が少しでも続けば、嚥下機能の廃用がさらに進む恐れがあるからです。
嘔吐または呼吸不全などの患者を除外した上で、発症前に食事の経口摂取をしていた誤嚥性肺炎患者331人を対象とした研究7)によると、絶食管理では、入院早期から経口摂取を開始した患者と比較して、入院から1週間の毎日の栄養摂取量が不良で、治療期間が長くなり、治療経過において嚥下機能がより大きく低下していたとのことです。

高齢者肺炎の治療の意味とは…
私の勤務するのは急性期病院ということもあり、高齢肺炎患者が入院したら、挿管人工呼吸管理まで希望されるケースはほとんどありません。ただ、それ以外については積極的加療を行い、抗菌薬に加え、上記のようなケアを行っています。誤嚥性が強く疑われても可能な限り初日から経口摂取を開始し、嚥下困難例は早期から一時的に経鼻胃管を挿入して栄養管理しながら嚥下・運動リハビリテーションを行います。敗血症性ショック例も、ICUでなく一般病棟で治療する場合であっても、プロトコル導入により救命率が向上しました。
このように、急性期の救命という意味では当院の高齢者肺炎の治療成績は非常に良くなったのですが、果たして、それは意味があることでしょうか?仮に高齢者肺炎の平均死亡率よりも当院の死亡率が非常に低かったとしても、それはより良い医療を提供していることになるでしょうか?ひょっとしたら、QOLの下がった高齢者を増やしているだけなのかもしれません。

嚥下リハと口腔ケアを積極導入することで早期回復・退院を目指す医療介入を行っても嚥下困難となり、依然として日本では高齢肺炎患者の約4割で経口摂取以外の栄養経路が必要となってしまう現実があります8)。では、胃瘻にすればいいかというと、そう簡単には解決しません。こうした患者は嚥下機能を含む様々な機能低下をきたしており、その機能を戻すことはもはや困難です。とりわけ重症の高齢者肺炎の救命は、患者に侵襲を与え、身体機能・精神機能を大幅に低下させ、かつ元の状態にはもう戻せない患者を生み出しているという現状が、急性期病院の肺炎診療に当たる医療従事者に突き付けられています。加えて、リハビリテーションなどを行うことは診療報酬改定によりハードルが高くなり、受け皿となる長期療養型病床も減らす方向に国は動いているという情勢もあります。
しかしながら、在宅で最期を迎えるという選択を一般市民がすることは社会的にも経済的にも困難です。米国で導入されている「入院しない意思表示」(do-not-hospitalized order;DNH)という概念を日本で普及させるには、法整備と共に自宅や介護施設で看取りができる社会環境の整備がまず必要であり、加えて、国民にも「老衰」の認識を考えてもらう必要があります。とはいえ、日本は、風邪一つを取っても分かる通り、「病気になったら病院へ」「何はともあれ点滴を」の文化が定着しており、国民皆保険制度により安く医療を受けられる環境でもある以上、「入院しない意思表示」はなかなか根付かないと思われます。
高齢者肺炎で救急搬送されてくる患者の家族は、そのほとんどが患者の嚥下機能の衰えを認識しておらず、肺炎が治れば元通りになると考えている方が非常に多いです。そのため、肺炎は治療したが嚥下機能は廃絶していることを告げると、あたかも癌告知のようなショックを受ける家族もいます。誤嚥性肺炎を起こすことは、たとえそれが初めての誤嚥性肺炎であっても嚥下機能がギリギリの状態にまで衰退している場合も少なくはなく、癌の進行と似たようなものなのかもしれません。少なくとも、患者の機能が相当に衰えていること、人生の最期についてそろそろ考えるべき時期がきていることを十分な時間をかけて本人や家族に伝えるという意味で、入院・救命の意義はあるかもしれません。

【日経メディカルナーシング】
by kura0412 | 2016-02-08 15:04 | 嚥下摂食 | Comments(0)

肺炎で「とりあえず禁食」はもうやめよう
NHCAP診療ガイドラインが明らかにした現実

肺炎治療において薬物治療の標準化が進み、肺炎そのものの治療成績は向上している。しかし、誤嚥性肺炎の高齢者など、肺炎が治っても退院できない患者が増えている。高齢肺炎患者の予後を改善するにはどうしたらよいのだろうか。

「なかなか退院できない肺炎患者の対応に全国の医療機関が苦慮している状況を明らかにできたこと。そして、誤嚥性肺炎では、普通の肺炎と異なり、肺炎が治ることと最終的に退院できるかどうかの間にギャップがあることを示したのが、ガイドラインのインパクトだったと思う」──。
東北薬科大学病院呼吸器内科・感染管理対策室の関雅文氏は、自身がとりまとめに関わったNHCAP診療ガイドラインをこう評する。NHCAP診療ガイドラインとは、日本呼吸器学会が2011年に発行した医療・介護関連肺炎(nursing and healthcare-associated pneumonia:NHCAP、エヌエイチキャップと読む)を対象としたガイドライン。院内肺炎(HAP)ではないが、市中肺炎(CAP)とも異なる、介護施設に入所している高齢者や在宅介護、長期療養型病床に入院している患者などの肺炎を指す。「多くの臨床医が漠然と感じていた、市中肺炎とも院内肺炎とも異なる患者像にNHCAPは合致し、ガイドラインは歓迎された」と関氏は振り返る。
さらに「NHCAP診療ガイドラインでは、抗菌薬の選択をはじめとして治療については非常に良いものを提案できた」と関氏は語る。しかし、その後、検証が進み、「ガイドラインで推奨された強力な抗菌薬レジメンを選択した場合、炎症反応は改善する、つまり肺炎そのものは治療できる。しかし、30日後の生存率を評価すると、少し弱めの抗菌薬レジメンを選択した場合に差がないといった報告が学会などで発表されるようになった」(関氏)。そして、その原因の1つが低栄養とみられている。
「これがガイドラインを発行したことの“成果”であり、浮かび上がってきた次の課題だ」と関氏は語る。

「とりあえず禁食」が予後を悪化させる
従来、高齢肺炎患者の診療においては、治療開始から10日間ほど肺炎を治すことに専念するため、禁食にして、できるだけ肺の炎症を抑える処置を行うのが一般的だった。抗菌薬を投与している一方で、誤嚥を繰り返して炎症の改善が遅れがちになるのは避けたいし、経口摂取で窒息が起こるリスクを懸念するからだ。そのために、「とりあえず禁食」を選択するわけだ。
しかし今では、「やや極端な言い方だが、誤嚥してでも食べて、栄養を摂取しないと最終的な予後の改善にはつながらないという考え方が広がり始めた」(関氏)。

熊本県玉名地域保健医療センター摂食嚥下栄養療法科でNSTチェアマン、内科医長を務める前田圭介氏も「とりあえず禁食」に疑問を感じていた一人だ。前田氏は、自施設の誤嚥性肺炎患者を対象に、入院時に「とりあえず禁食」した患者群と、入院時から経口摂取(もしくは経口摂取を念頭に置いて入院初日から嚥下機能評価などを行った)患者群に分けて、予後への影響を後ろ向きに評価した結果を、2015年に報告した(Clin Nutr. 2015 Oct 9. pii: S0261-5614(15)00245-9.)。
こうした研究を手がけたのは、消化器外科や一般内科として診療をしている中で、「(患者が)食べると元気になるのに…」「食べていない患者はどんどん嚥下機能が低下している」という指摘を看護師などから聞いていたからだ。外科医として胃瘻造設の経験は豊富にあったのに、嚥下機能や栄養についてほとんど知らなかったことに、自身の親族が摂食嚥下障害を起こして気がついたという経緯もある。
研究の対象としたのは、2011年2月から2014年5月までに同施設に入院した65歳以上の誤嚥性肺炎患者331例。高度の嚥下障害で経口摂取が制限されていたり、入院直前に嘔吐していたり、3L/分以上の酸素療法を受けていたりする患者は除外した。後ろ向き研究であるため、患者背景の影響をできるだけ排除して2群間を比較できるIPTW法という解析法を用いている。
解析対象となった患者は平均85.7歳。「とりあえず禁食」した群は、入院時から経口摂取をした(もしくは経口摂取を念頭に置いて入院初日から嚥下機能評価などを行った)患者群と比べて、入院から1週間の栄養摂取量が有意に少なく、治療期間が有意に長かった(治療期間中央値が経口摂取群8日間に対し13日)。嚥下機能も治療期間中に有意に低下していることが示された。

前田氏は、「近年、サルコペニアと誤嚥性肺炎の関係が注目されている」と紹介する。
寝たきりや要介護など筋力の低下(サルコペニア)が認められる高齢者が、肺炎罹患前は経口摂取ができていたのに、肺炎になって禁食したのをきっかけに栄養不足になり、その影響でサルコペニアが進んで嚥下機能も一気に低下し、二度と経口摂取に戻れなくなる──という悪循環に陥っているのではないか、というわけだ。
「大切なことは、嚥下“障害”を引き起こすのは加齢ではないということ。嚥下機能が低下している患者が経口摂取する機会を奪われてはじめて嚥下障害になるということだ」(前田氏)。元気な患者であれば入院時に食事をやめても問題なく食べられるようになるが、寝たきりや要介護者の禁食はその後、食べられなくなる可能性が高い。さらに「経口摂取に勝る栄養療法はない。我々の検討でも、経口摂取した方が摂取できる栄養量が多かった」と指摘する。

1回の誤嚥だけで禁食にしない
食べることができれば、嚥下機能を維持し、栄養も十分に摂取できるため、自ずと肺炎の予後も改善する。それは理解できても、やはり誤嚥による肺炎の繰り返しや窒息リスクに対する懸念は残る。

では、高齢肺炎患者の経口摂取の可否をどう判断するのか。耳鼻咽喉科専門医として嚥下リハビリテーションに精力的に取り組む浜松市リハビリテーション病院「えんげと声のセンター」副センター長の金沢英哲氏は、「経口摂取ができていない患者で、栄養状態も悪化しており、それが1カ月間以上継続していて、その結果として肺炎を発症したような場合、経口摂取は慎重に判断するべき」と指摘する。こうした場合、焦らずにまずは肺炎の治療と状態の安定に尽力し、その後、リハビリテーションや経管栄養などで全身状態を回復させてから食事を開始するという姿勢で取り組むと良いという。

もっとも、金沢氏も「高齢肺炎患者でも、肺炎発症直後から経口摂取はできるだけ止めずに食べた方がいい」というのが基本スタンス。中でも、一度に大量の誤嚥が起きて肺炎を発症した場合、いわば、「“あのときの1回の誤嚥”で肺炎になった患者では禁食は不要」と強調する。また、唾液や逆流した胃液の誤嚥で肺炎になったケースでも、食事を止めても状況に変わりはないし、食事を止めてしまうとかえって口腔内細菌が増えてしまうので、禁食はデメリットでしかない。
慢性的に誤嚥が起こっていて、炎症と軽快を繰り返しているような場合、炎症の積み重ねによって末梢気道にダメージが蓄積し、感染に対する抵抗力が低下していることがある。このようなケースでも、肺炎による体力の低下が著しいものの、食べることで体力を立て直していく方が良い場合が少なくない。「嚥下機能検査をして、ただ誤嚥が認められるからというだけで禁食にすることは避けるべきだ」と金沢氏は話している。
NHCAP診療ガイドラインの作成に関わり、誤嚥性肺炎に詳しいひたちなか総合病院呼吸器内科の寺本信嗣氏も、「誤嚥は健康人でも起こり得る、いわば普通のこと。気管にものが入り込むということはそんなに珍しいことではない」と語る。

肺炎は誤嚥で起こるのではなく、細菌が繁殖して起こる。例えば、胃食道逆流により胃液を誤嚥しても一過性の上皮障害は起こるが、ほとんどの場合、肺炎は起こらない。細菌が入り込み、繁殖してしまう環境が存在することが肺炎発症につながる。
85歳の肺炎予後が改善しないのは、その肺炎が老化の過程で起こっているから。老化の最たるものの1つが嚥下機能の低下で、嚥下機能は栄養不足でさらに低下する。こうした結果として肺炎を発症していると寺本氏はいう。
寺本氏によれば、発声ができて、嚥下反射が確認できて、座位がとれる患者であれば、ある程度、経口摂取は可能ではないかと指摘する。そして、患者を一日中、寝かせっぱなしにするのではなく、起きるべき時間には起こしていく取り組みが重要だという。
また、経口摂取を開始し、多少誤嚥していても、2日後に胸部X線をチェックして、誤嚥が肺炎に結びついていないことが確認できれば、経口摂取をステップアップしていくという考え方を寺本氏は勧める。あるいは、食事をすると熱を発生するため、食事当日だけ発熱する“なんちゃって誤嚥性肺炎”では、すぐに熱は下がるので抗菌薬投与は不要だ。こうした患者の状態や変化を評価し、経口摂取にGOサインを出せるのは肺炎に詳しい医師しかできない。「肺炎に詳しい医師が、経口摂取可能な患者にはできる限り経口摂取を進める方針を持ち、看護師をはじめとするチームを引っ張っていく姿勢が大事」と寺本氏は語っている

患者の嚥下機能の「トレンド」をつかむ
東京医科歯科大学老化制御学系口腔老化制御学講座高齢者歯科学分野の戸原玄氏も「1回の誤嚥を過度に気にするべきではない」と訴える。戸原氏は、厚生労働科学研究費補助金長寿科学総合研究事業「高齢者の摂食嚥下・栄養に関する地域包括的ケアについての研究」の一環として、摂食・嚥下機能の評価に訪問歯科が貢献できるという考えで、「摂食嚥下関連医療資源マップ」の作成などに取り組んでいる。

戸原氏は、「これまで訪問歯科は歯を治して終わりだった。しかし、主治医が求めているのは、患者が問題なく経口摂取ができることだ。そこで、人数が多い歯科医が摂食嚥下に関わり、主治医と情報共有していけば患者の予後改善に貢献できると考えた」と嚥下研究との出会いを振り返る。
その戸原氏も1回の誤嚥で判断するのは過ちだと主張する。
「往診したときの一時点だけを見て、『誤嚥がありますから禁食』とコメントしていてはいけない。大切なのは、誤嚥が認められても、それが数カ月前は問題なかったのに徐々に悪化している誤嚥なのか、最近ずっと誤嚥はしているが悪くなっていないか、といった傾向をとらえるスタンス」と戸原氏は指摘する。誤嚥はしているが食事はとれているし、体重減少もないならば、「誤嚥です。禁食では?」と主治医に伝える必要はないというわけだ。逆に、体重減少が進んでいて、食事量も減ってきているならば、「誤嚥が肺炎につながる可能性がある」と主治医に伝えるという、変化を評価する視点が重要だ。
訪問歯科医がこうした視点で患者の嚥下機能の評価に参加すれば、患者の様子を観察し、アドバイスできる医療職が増える。「学生に教えるとすんなりと受け入れてくれる。前向きに取り組む歯科医がもっと増えてほしい」と戸原氏は語っている。

【日経メディカル】
by kura0412 | 2016-02-05 10:09 | 嚥下摂食 | Comments(0)

院内・院外の歯科医師と連携した栄養サポートを診療報酬で評価―中医協総会

2016年度の次期診療報酬改定では、栄養サポートチームに歯科医師を配置した場合の評価や、院外から歯科医師が訪問して院内スタッフと共同して栄養サポートを行った場合の評価を行ってはどうか―。このような医科・歯科連携推進方策が、4日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会に厚生労働省から提案されました。
また栄養食事指導料の対象に「がん、摂食・嚥下困難、低栄養の患者」を加えるほか、入院・外来・在宅を通じた栄養食事指導料の整合性を図ることなども提案されています。

医科・歯科連携の更なる推進を目指す
かねてから医科・歯科連携の重要性が指摘され、▽周術期口腔機能管理料の創設(2012年度改定)▽歯科医療機関連携加算の創設(2014年度改定)―など診療報酬上の評価も進められています。
また、2010年度改定では「栄養サポートチーム(NST)加算」が創設されました。この加算は、専任の医師・看護師・薬剤師・管理栄養士からなるNSTを組織し、▽回診・カンファレンス▽栄養治療実施計画の作成▽退院時などの指導―を行うことを評価するものです。

栄養サポートチーム加算の施設基準では、歯科医師の参加は必須ではない
この加算に「歯科医師の参加」は義務付けられていませんが、NSTに歯科医師が参加することで、「口腔内の環境が改善し、食事の経口摂取が可能となる」→「栄養摂取量が増加」→「一時退院も可能になる」などの大きな効果があることが分かりました。

栄養サポートチームに歯科医師が参加することで、大きな効果が上がることが分かっている
もっとも、歯科医師を配置している医療機関はそう多くはありません。そうした場合、院外の歯科医師と連携することが同様の効果が上がることが期待できます。
こうした状況を踏まえ、厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長補佐は次の2つの提案を行いました。
(1)NSTに歯科医師が配置されている場合の評価を行う
(2)院外の診療所などから歯科医師が訪問した上で、院内スタッフと協働で栄養サポートを実施することを評価する
この提案に特段の反論は出ておらず、今後は具体的な制度設計(例えば、(1)をNST加算の加算とするのかなど)を厚労省内で行うことになります。ただし、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「院内に専任の歯科医師がいる(1)のケースと、院外の歯科医師と連携をする(2)では、評価(点数)に差を付けるべきであろう」と注文を付けています。

入院栄養食事指導料、がん患者なども対象に
栄養食事指導は、慢性期はもちろん、急性期でも高齢の患者が増加する中で重要性を増していきます。現在、診療報酬上は次のような評価が行われています。
▽入院:入院栄養食事指導料、栄養サポートチーム加算など
▽外来:外来栄養食事指導料など
▽在宅:在宅患者訪問栄養食事指導料など

栄養に関する診療報酬上の主な評価
入院・外来・在宅それぞれの栄養食事指導料は、医師の指示に基づいて管理栄養士が「具体的な献立によって指導を行う」ことを評価するものです。この指導には、平均で初回は45分、2回目以降は30分程度かかることが日本栄養士会全国病院栄養士協議会の調査からわかっています。また、高齢者では指導内容の理解に時間がかかるケースも少なくなく、高齢患者の増加によって「より長時間、しっかりとした指導を行うべきではないか」との指摘もあります。

栄養食事指導について、入院・外来ともに一定程度の時間(初回は45分、2回目以降は30分)が必要である
この点、在宅の指導料を算定するためには「30分以上の指導」をしなければいけませんが、入院と外来の指導料は「15分以上の指導」をすれば算定でき、実態に合致していないと厚労省は考えているようです。
また、栄養食事指導料の対象は「特別食(腎臓食、肝臓食、糖尿職、無菌食など)が必要な患者」に限られています。しかし、例えば、化学療法中の患者では「症状などに応じたきめ細かな食事の工夫と指導を行うことで、低栄養のリスク軽減に効果がある」ことなどが研究から明らかになっています。
こうしたことを踏まえて宮崎医療課長は、栄養食事指導について次のような見直しを行ってはどうかと提案しました。この提案に特段の反対意見は出ていません。
▽入院栄養食事指導料、外来栄養食事指導料について、より長い時間の指導(例えば30分以上)を評価する
▽入院・外来・在宅それぞれの栄養食事指導料の対象に、「がん患者」「摂食・嚥下困難患者」「低栄養の患者」を含める
▽在宅患者訪問栄養食事指導料について、指導内容に「在宅での栄養の改善に有効な実践的な指導」を含める

【メディ・ウォッチ】

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-HokenkyokuーIryouka/0000103119.pdf



前段は領域拡大として進展ですが、後段は歯科医師が加わらず領域を限定させる可能性があります。摂食嚥下も歯科医師が関与出来てこそ、医科歯科連携の意義があります。
by kura0412 | 2015-11-05 18:06 | 嚥下摂食 | Comments(0)

摂食・嚥下支援する医療機関をマップで紹介- 退院後の検査や訓練につなげる

摂食・嚥下に関する支援を行う医療機関のマップがこのほど公開された。厚生労働科学研究委託費長寿・障害総合研究事業の研究班によるもので、各地域で「訪問診療」「嚥下訓練」「嚥下内視鏡検査(VE)」「嚥下造営検査(VF)」を提供している医療機関を探すことができる。
摂食・嚥下の検査や訓練については、病院関係者でも地域でサポートが可能な医療機関を把握していないことも多く、退院後に患者が口から食べ続けるための訓練を受けられないといった問題が見られた。

「摂食嚥下関連医療資源マップ」を提供する「高齢者の摂食嚥下・栄養に関する地域包括的ケアについての研究」業務主任者の戸原玄氏(東京医科歯科大大学院高齢者歯科学分野)は、病院のソーシャルワーカーや介護施設にマップを活用してもらい、地域での継続支援につなげてほしいと話している。
医療資源マップには、現時点で800近い医療機関が登録されているが、戸原氏はさらに登録を呼び掛けている(ウェブ上で登録が可能)。
研究班では今後調査を進め、摂食・嚥下の地域連携についてのガイドブックを作成していく予定だ。

摂食嚥下関連医療資源マップ
http://www.swallowing.link/

【キャリアブレイン】




サポート体制がまだ確立されてなく、現状ではある意味暗中模索的な対応となっています。本来は厚労省がもっと積極的に対応すべき課題なのですが。
by kura0412 | 2015-10-02 10:42 | 嚥下摂食 | Comments(0)