介護福祉士の資格試験、受験者半減のインパクト


2月初旬、高齢者ケアの担い手である介護福祉士の受験者が半減したという報道に接し、愕然とした。
団塊世代が後期高齢者になる2025年にかけて医療・介護需要が急増する「2025年問題」を考えると、現場でケアに携わりながら他の介護職の指導も行う介護福祉士は1人でも多く確保したい。国家資格を持ち、登録した介護福祉士は約150万人(2016年度)で、例年14万~16万人が介護福祉士の国家試験を受験してきた。
ところが、2016年度は受験者が8万人足らずに落ち込んだという。主因と考えられているのが、ケア現場で3年以上の実務経験を積んだ人が国家試験を受ける「実務経験ルート」の条件変更。2016年度から、国家試験を受ける前に「450時間(無資格者の場合)の実務者研修」が義務化され、資格取得にお金と時間の負担がかかるようになった。
この実務者研修の多くは通信教育で可能だが、最長で半年程度かかり、費用は10万~20万円程度だという。介護技術のほか、痰の吸引などの医療的ケアについては養成施設に出向いて学ばねばならない。制度変更のしわ寄せが受験者に向かってしまっている。
介護福祉士の資質や社会的評価などの向上につなげる狙いがあるようだが、どうも順序が逆なような気がしてならない。実務者研修の範囲や内容は、資格取得のための国家試験の内容と似ているとのことで、民間研修機関による実務者研修は国家試験の準備講座としての色合いも帯びている。資格ビジネスの関連業界は潤うのかもしれないが、ほかにやるべきことがあるのではないか。
介護福祉士の養成コースには、上記の「実務経験ルート」の他に、大学や専門学校などで教育を受ける「養成施設ルート」もある。こちらも定員割れが常態化している。日本介護福祉士養成施設協会によれば、20164月の入学者は7752人で、定員の46.6%にとどまるという(信濃毎日新聞2017114日朝刊)。
人材の質を高めるための研修は必須だろう。「研修」を否定するものではない。しかし、まずは介護分野に若者が入りたいと思うような環境づくりが求められる。介護福祉士の平均月給は約24万円だ(2015年度)。無資格の介護職員よりは約4万円高いけれど、全産業の平均よりは低い水準となっている。介護事業者が処遇改善を図る上でのインセンティブとなる制度を手厚くするなど、介護人材の雇用・定着や育成に向けた大胆な予算投入が必要ではないか。

(日経メディカル・色平哲郎)