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『予防医療で医療費を減らせるか』

予防医療で医療費を減らせるか(1)健康の維持・増進には寄与

予防医療とは病気になることを防いだり、病気を早期発見・早期治療することで病気による障害や死亡を減らすことを目指す医療です。規則正しい生活習慣、バランスのとれた食事、適度な運動などにより、生活習慣病やがんの発生を抑制することを一次予防といいます。定期健診やがん検診などにより、無症状の早期の段階で病気を発見し、早期の治療につなげることを二次予防といいます。
健康はすべての国民にとってかけがえのない便益と言えます。予防医療によって病気の発生や進行を抑え、健康を維持・増進することは、国家レベルでも個人レベルでも優先度が高いと言えるのではないでしょうか。そのため、予防医療の推進そのものに異を唱える人はあまりいません。
予防医療を推進することは、病気の発生・進行を抑え、結果的に医療費の抑制につながる、と一般には考えられがちです。政府は、高騰を続ける国民医療費を抑制する手段の一つとして予防医療の推進をたびたび掲げています。最近では、健康診断の受診など健康管理に努めた人に公的医療保険の自己負担割合を引き下げることを若手政治家グループが提言したというニュースもありました。
しかし、予防医療を推進することによって国民医療費を削減することは可能でしょうか。実際には、これまでの医療経済学の多くの研究によって、予防医療による医療費削減効果には限界があることが明らかにされています。
それどころか、大半の予防医療は、長期的にはむしろ医療費や介護費を増大させる可能性があります。そのことは医療経済学の専門家の間ではほぼ共通の認識です。しかしながら、まだ一般には、その事実があまり浸透していないように見受けられます。
「予防医療は医療費・介護費を抑制できない」というメッセージを読んで、驚いた読者がいるかもしれません。次回から予防医療が医療費・介護費に与える短期的・長期的な影響について、具体的な事例を紹介しながら詳しく解説します。

【日経新聞・東京大学教授 康永秀生】
by kura0412 | 2017-01-05 10:24 | 医療政策全般 | Comments(0)

来年の歯科界話題のキーワード「薬価改定」

2016けいざいあの時(4)オプジーボ薬価下げ 厚労省、主導権奪われ

がん治療薬オプジーボ。今年初めにはごく限られた人しか名前を知らなかった薬の価格を巡り、政府や医療関係者を巻き込んだ論争が沸き起こった。膨張する医療費の象徴として、2017年2月に今の価格を半分にすることが急きょ決まった。いくつもの誤算が重なった厚生労働省は薬価改定の主導権を奪われた。

「オプジーボ狙い撃ちと言われても仕方ない」。厚労省幹部は5月下旬、消費増税の再延期を伝える報道にうめいた。17年4月に予定していた消費増税に合わせ、厚労省は増税分を薬価に反映する改定を予定していた。全薬品の価格改定とともに、オプジーボを値下げする腹づもりだった。当てが外れ、一つの薬に限った異例の改定が動き出す。誤算の始まりだった。
オプジーボは体内の免疫細胞に作用し、人間の持つ異物を排除する能力を高めてがんを治療する。一部のがんに画期的な効果が確認された。想定する対象患者は470人と少ないことから高額な薬価が付いた。

「夢の薬」が医療保険制度を脅かす――。財務省が4月に開いた財政制度等審議会でこんな認識が広がった。5万人が1年間使えば1兆7500億円かかるとの試算が示された。
厚労省は中央社会保険医療協議会(中医協)で今年夏から値下げに向けた議論に入った。日本医師会の松原謙二副会長は「薬の価格が高くなり過ぎるのは速やかに改善してほしい」と要求。薬価の引き下げ分を医師の診察料など診療報酬本体に回すのが医師会の伝統的な行動原理だ。「技術革新を阻害する」と主張する製薬業界は劣勢だった。
値下げが決まったのは10月。厚労省は17年度に25%下げる方針で中医協の了承を得た。18年度に薬価制度を抜本的に変え、さらに値下げする案を温めていた。段階値下げで製薬業界の反発を和らげる狙いだった。
思わぬ伏兵となったのが共産党の小池晃書記局長だ。10月6日の参院予算委員会で「25%では不十分」と安倍晋三首相に迫った。野党の質問にもかかわらず、厚労省案への疑問が首相官邸で広がった。
10月14日の経済財政諮問会議でも民間議員が50%の引き下げを突き付けた。「なぜ1回でできないのか」。首相官邸も同調。厚労省職員は説明に回ったが、理解は得られない。次第に大幅値下げに傾いていった。
「国民の納得が得られる対応を講じていくことが大事だ」。50%値下げが固まった11月10日、菅義偉官房長官は記者会見で述べた。
厚労省には誤算が重なる。薬価改革の主導権を諮問会議が握ったことだ。民間議員は11月、2年に1度の改定を毎年にするよう提言。毎年改定は安倍首相の指示ですんなり決まった。
勢いに乗る民間議員は12月21日、診療報酬も議論すべきだと発言。診療報酬は病院経営に直結するため、医師会は横倉義武会長名で翌日、「大それた発言で青天のへきれき」とのコメントを出した。「聖域」の診療報酬本体に手を付ければ、震度はオプジーボの比ではなくなる。

【日経新聞】



来年の歯科界の話題のキーワードが「薬価改定」になるかもしれません。
by kura0412 | 2016-12-30 09:42 | 医療政策全般 | Comments(0)

『高齢者受難の時代到来』

高齢者受難の時代到来、70歳以上の高額療養費がアップ

12月15日、自民・公明両党の厚生労働部会が医療・介護制度改革案を承諾。これを受けて、2017年度の政府予算案が22日に閣議決定された。
社会保障にかかる費用は、新薬や医療機器の開発などによる医療の高度化、人口の高齢化などによって自動的に増える宿命を背負っている。厚生労働省の予測では、この社会保障費の自然増が、2017年度分は6400億円になると予測していた。
だが、安倍政権は「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太方針2015)」で、2020年まで社会保障の自然増を年間5000億円以内に収めるという具体的な数値目標を提示し、社会保障費を厳しく抑制することを政策に据えている。そのため、2017年度の予算も自然増を5000億円以内に抑制することが至上命令となっていたのだ。
そこで、今回、ターゲットとなったのが高齢者の医療・介護だ。なかでも大きな割合を占めるのが、これまで本コラムで何度も取り上げてきた70歳以上の人の高額療養費で、来年8月から低所得層を除いて限度額が引き上げられる。
ただし、70歳以上の人の医療費の引き上げは、高齢者の票離れを進め、政局にも影響を及ぼす。そのため、自己負担限度額の決定までには、最後までせめぎあいがあった。いったい、いくらで決着したのだろうか。

高齢者の高額療養費は通院のみの限度額がある
通常、病院や診療所を受診すると、年齢や所得に応じてかかった医療費の1~3割の一部負担金を支払う。だが、治療が長引いたり、手術を受けたりして、医療費が高額になると、その一部負担金を支払うだけでも大変になる。
そこで、健康保険では、患者が1ヵ月に支払う医療費の自己負担額に上限を設けており、医療費が家計の過度な負担にならないように配慮している。これが高額療養費で、年齢や所得に応じた限度額が決まっている。
70歳未満の人の限度額は、2015年1月から所得に応じて5段階に分類され、年収約770万円以上の高所得層は限度額が引き上げられた。
70歳以上の人の限度額も、過去に何度も見直しの議論は行われてきたものの、高齢者の反発を恐れた歴代政権は、特例措置によって据え置きを続けてきたのだ。
だが、今回は、社会保障費の自然増を5000億円に抑制するという安倍政権が掲げたミッションを遂行するために、最後の砦にも手をつけざるを得なくなった。
70歳以上の人の高額療養費の限度額は、所得に応じて4段階となっており、これまで通院(外来)のみの上限も別枠で設けられてきた。この外来特例は、2002年10月に、70歳以上の人の一部負担金が1割になり、それまでの老人医療制度の月額上限を廃止したことによる経過措置で、いずれは70歳未満の人と同じように入院もした場合の金額に一本化するはずだった。
高齢者の外来特例は導入から14年が経過し、1割負担が定着したこともあり、厚生労働省の審議会では、経済界側の委員から外来特例の撤廃を求める意見が相次いでいた。
だが、今回また政治的な理由によって、当面は外来特例が維持されることになった。また、自己負担額の引き上げ幅も、当初、提案されていた金額よりも低く抑えられた。

2017年8月から段階的に限度額の引き上げが開始
このなかで、いちばん対象者が多いのが、住民税課税世帯で年収約370万円以までの「一般」の所得区分の人で、約1250万人が影響を受ける。
一般の人の高額療養費は、当初予定では通院のみの限度額を現行の1万2000円から2万4600円に引き上げる案が濃厚だった。しかし、最終的には引き上げ幅は抑えられ、2017年8月から1万4000円、2019年8月に1万8000円にすることで決着。
また、通院の高額療養費については、1年間の上限額を14万4000円にする新たな制度が導入されることになったため、1年を通じた限度額はこれまでと同じになる。がんの通院治療などで継続的に医療費がかかっている人は、医療費が大幅に増える心配はない。
入院もした場合の世帯の1ヵ月の限度額は、これまで4万4400円だったが、来年8月から5万8000円に引き上げられる。ただし、こちらも多数回該当(過去12ヵ月間に、高額療養費に該当する月が3回以上あると、4回目から限度額が引き下げられる制度)が導入され、4回目以降は4万4400円になる。
厚生労働省の審議会で、「低所得層への配慮」はほとんどの委員の一致した意見だったこともあり、住民税が非課税の低所得層の限度額は据え置かれることになった。
一方、負担が大幅に増えるのが、150万人程度いる年収約370万円以上の「現役並み所得者」の人たちだ。
まず、通院のみの限度額は、現行の4万4400円から2017年8月から5万8000円に引き上げられ、2018年8月からは外来特例そのものが廃止される。同時に、上図のように所得区分は細分化され、通院も入院も関係なく限度額は一本化される。お金のある高所得層には70歳以下の人たちと同じ医療費の負担をしてもらおうというわけだ。
たとえば、年収1160万円以上の人で、1ヵ月の通院の医療費が100万円だった場合の自己負担額は、これまでの万4400円から、2018年8月以降は25万4180円と大幅にアップする。
これは、「年齢ではなく負担能力に応じた公平な負担」をという観点によるものだという。もちろん、社会保険は応能負担が原則だが、それを病気やケガをした患者という立場の人に背負わせるのは正しいことなのか。
とくに、高齢者は医療機関の受診率が高く、実際に自己負担している金額は現状でも現役世代の2倍になっている。今後、高所得高齢者世帯では、家計に占める医療費の割合はますます増えていくことが予想されるが、その先に待っているのはどのような社会なのか。

小泉改革による医療崩壊を彷彿とさせる安倍政治
前出の「骨太方針2015」では、社会保障費の自然増を年間5000億円に抑えるという具体的な数値を示す一方、2013年8月に出された社会保障制度改革国民会議の報告書で何度も用いられた「社会保障の機能強化」という言葉が消えた。
こうした医療費や介護費の厳しい抑制政策は、小泉改革を彷彿とさせる。小泉内閣時代に出された「骨太の方針2006」では、社会保障関連費の自然増を年間2200億円削減する政策が強行されたが、その結果、「医療崩壊」という言葉を生み出すまでに医療の現場を疲弊させることになった。
今回の社会保障費の自然増の抑制は、小泉改革よりも厳しい数字だ。その数字合わせのために、高齢者の高額療養費の負担増だけではなく、今回は後期高齢者医療制度の保険料軽減特例の見直し、入院時のホテルコストの見直しなども同時に行われ、病気やケガをした人の負担はどんどん増すことになるだろう。
「高齢者の高額療養費の限度額引き上げ」は、たんに制度改革のひとつかもしれないが、それを導火線として、小泉改革で経験したような貧困の増大、医療・介護の現場の疲弊につながる可能性は否定できない。
だが、少し前の過去は、そうした数字合わせの政策は都合よく運ばないことを教えてくれている。小泉改革は結局のところ実現せず、反対に社会保障を機能強化しようという大きな社会運動に発展したからだ。
今回の安倍政権による社会保障費の大幅削減は、2017年の日本の社会をどのように導くのか。目を凝らして見ていきたいと思う。

【DAIAMOND ONLINE・早川幸子】



こうゆう考えもあります。
by kura0412 | 2016-12-29 10:11 | 医療政策全般 | Comments(0)

『社会保障費「5000億円増に抑制」では甘すぎる』

社会保障費「5000億円増に抑制」では甘すぎる
不足財源を賄うため、いずれは大幅増税に

国の一般会計歳出の3割超を占め、最大の費目となっている社会保障費。12月22日に閣議決定された2017年度予算でも、2016年度の当初予算から4997億円増加し、32兆4735億円まで膨らんだ。今や社会保障費は、日本の財政を左右する大問題となっている。
当初、厚生労働省からは高齢化に伴う自然増として対当初予算比6400億円増の要求があったが、「経済・財政再生計画」の目安である5000億円増の範囲に抑制された。70歳以上の高額療養費制度の見直し(224億円削減)、後期高齢者の保険料軽減特例の見直し(187億円削減)、高額薬剤(がん治療薬「オプジーボ」)の薬価引き下げ(196億円削減)、介護納付金の総報酬割(所得に応じて介護保険料の負担を算出する方法)の導入(443億円削減)などが盛り込まれた。

数字合わせのための一時しのぎの抑制策だけ
全般的に70歳以上の高齢者や高所得者の負担を求めるものだが、「なんとか5000億円増という目標値に合わせた印象だ。一時的な効果しかなく、歳出への切り込みが不十分」と、日本総合研究所の湯元健治副理事長は指摘する。過去には補正予算で当初予算の抑制額を上回ったこともあり、補正予算での追加を含めた決算ベースの数字にも注目する必要がある。
年金については、12月14日に年金制度改革関連法が成立。賃金スライド(賃金上昇率によって年金額を改定する仕組み)を強化するなど、将来世代への影響の軽減に向けて一定の前進があった。一方で医療・介護費は急膨張が見込まれる。2025年までには団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となるからだ。後期高齢者は前期高齢者(65~74歳)と比べ、1人あたり医療費の国庫負担分が約5倍、介護費が約10倍になるとされる(2014年、財務省)。後期高齢者の人口が増えればその分医療費が膨らみ、財政に与える影響も大きくなる。

日本総研の湯元氏は、根本的な給付抑制につながる、以下のような制度設計を議論すべきだと指摘する。
(1)医療機関への「フリーアクセス」の制限、かかりつけ医の強化
日本では一般的に、患者が自由に病院を選び診療を受けることができる。そのため軽症であっても高度な医療設備を持った大病院を受診して過剰な医療サービスを受けたり、受診回数が多くなったりするケースが指摘される。病院側も診療報酬を得られるため、医療行為を抑制するインセンティブが働きにくい。
欧州では原則としてまずはかかりつけ医の診断を受け、症状が重篤な場合はかかりつけ医の紹介状を持って大病院に行くという病院の機能分化が進んでいる。日本でもかかりつけ医の受診へと誘導するため、かかりつけ医以外の病院では定額負担を課す案が厚生労働省で審議されたが、かかりつけ医の定義や負担額をめぐり議論は難航している。

(2)終末期医療の制限
高齢者などで回復の見込みがないと判断された場合でも、家族の希望に応じて胃ろうや点滴などによる延命治療が行われるケースもある。諸外国では延命治療が制限されることも多いが、日本ではかつて患者の人工呼吸器を外した医師が警察の捜査を受けた事件もあり、延命治療の差し控えはタブー視される傾向にある。そもそも、どこからが「終末期」なのかといった定義も難しく、終末期にかかる医療費の試算や削減の検討はほとんどなされていない。

(3)要介護認定基準の厳格化
介護費用は介護保険制度の始まった2000年度(3.6兆円)から急激に増え、2016年度には10.4兆円に達している。うち、4割弱は生活支援を中心とする要介護1〜2とその前段階の要支援1〜2に相当する軽度者が中心であり、本当に介護サービスが必要か、どのような介護サービスが必要かといった内容を精査する必要がある。また、限度額の範囲内であれば原則1割(高所得者は2割)の自己負担額の引き上げについても議論されている。

不足財源を消費税でカバーなら税率は17%に
以上のような医療・介護費の抑制策は不利益を被る人も少なくないため、これまでは不人気政策として先送りされてきた。今後も給付削減が困難であるとすれば、財源確保のために10%を超える消費税率の引き上げも検討しなければならない。
湯元氏の試算によれば「今後の社会保障の不足財源をすべて消費税でカバーする場合、17%への消費税引き上げ率が必要となる」という。さらに、子育て支援など現役世代への給付も充実させるとすれば、それ以上の引き上げも視野に入る。政治家も国民も、現実を直視しなければならない時期に来ている。

【東洋経済ONLINE】




後段の抜本的改正と称する3つの考え方は、考えることは理解できても、実際、医療・介護現場ではそう簡単に対応できるものではありません。
by kura0412 | 2016-12-29 09:56 | 医療政策全般 | Comments(0)

『「最大の目的は国民皆保険の維持」のはず』

「薬価制度の抜本改革、メーカーの成長戦略か」と疑念
中川日医副会長、「中医協の自主性低下」も危惧

中央社会保険医療協議会薬価専門部会(部会長:西村万里子・明治学院大学法学部教授)は12月21日、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」を議論した。同基本方針は、薬価調査を毎年実施し、価格乖離が大きい品目について、薬価改定を行うことが骨子で、前日20日に開かれた塩崎恭久厚労相ら4大臣会合で合意していた。

日本医師会副会長の中川俊男氏は、基本方針に対し、「改めて読むと、非常に大きな問題がある。薬価改定財源を国民皆保険制度の維持ではなく、製薬企業の成長戦略のために充てる方針のように見える」と疑念を呈した。毎年の薬価改定を打ち出す一方、「費用対効果の高い薬には薬価を引き上げることを含め、費用対効果評価を本格的に導入」「より高い創薬力を持つ産業構造への転換」などと記載しているからだ。
さらに中川氏は、薬価専門部会でも薬価制度改革について議論しており、本来は中医協マタ―であるにもかかわらず、「4大臣合意」として基本方針が取りまとめられたことを踏まえ、「中医協の自主性が少しずつ失われつつあるのではないか」とも懸念、中医協での主体的な議論を訴えた。

一方、支払側の全国健康保険協会理事の吉森俊和氏は、薬価の毎年改定に向けた薬価調査の在り方をはじめ、基本方針には「来年中に結論を得る」とされている点について、その主体を質した上で、「一方的に経済財政諮問会議からボールが投げられることがないように留意してもらいたい。検討項目は多岐にわたり、相当ハードな議論になるだろう。優先順位を付けて、納得性のある議論をするためにも早く議論を開始してもらいたい」と中医協で主体的に議論していくよう、釘を刺した。
厚労省保険局医療課薬剤管理官の中山智紀氏は、吉森氏の質問に対し、2017年の年初から、薬価専門部会で議論を開始し、基本的な内容については同部会で議論を深めていくと説明。ただし、その結論は、関係省庁や経済財政諮問会議と最終的に調整をして、2017年末までに得るとした。
健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、各論について質問。薬価の毎年改定のための薬価調査が、「大手事業者等を対象に行い」とされている点について、大手4社で取り扱う医薬品の数量シェアは約75%だが、中小卸を外すことで、実勢価格を正しく評価できるか」と質問。さらに、DPCなど薬剤費が包括されている点数の扱いのほか、薬価制度と同様に特定保険医療材料の価格算定方式についても検討が必要だとした。

抜本改革の基本方針には、薬価の毎年改定のほか、
(1)オプジーボに代表されるように効能追加等に伴い、市場が一定規模以上拡大した薬については、新薬収載の機会を最大限活用して、年4回薬価を見直す、
(2)新薬創出・適応外薬解消等加算制度をゼロベースで見直し――が盛り込まれており、12月21日の経済財政諮問会議に報告される。
今後の焦点は、毎年改定の薬価調査の方法、「価格乖離の大きい品目」の定義、毎年薬価改定の財源の取り扱いだ。通常の薬価調査の在り方なども含め、2017年中に結論を得ることになっており、2017年の年明けから議論がスタートする。

「最大の目的は国民皆保険の維持」のはず
中川氏はまず、「このような基本方針を、中医協が主体的かつ自律的にまとめることなく、4大臣合意という形でまとまったのは、非常に遺憾」と述べ、「来年末までに結論を得る」などと指示されていることなども踏まえ、「中医協の自主性が少しずつ失われつつあるのではないか」と指摘し、診療側と支払側ともに自戒すべきと語った。
吉森氏が、今後の議論はハードであり、時間がかかると見通した点については、中川氏はこれまでも議論を重ねてきたことから、それほど時間はかからないとし、厚労省に対し、スピード感を持って議論を進めるよう求めた。「のんびり議論していたのでは、経済財政諮問会議が何らかの意見が出てきかねない。そうした危機感を持ってやってもらいたい」(中川氏)。

その上で、中川氏は、基本方針が、安倍政権がかかげる成長戦略を狙った方針に映ると指摘した。
基本方針は、序文に「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」の両立を基本理念として掲げている。中川氏は、オプジーボ(一般名ニボルマブ)の薬価引き下げを求めていたのは、公的国民皆保険の維持が最大の目的であり、現実にはこれらの両立は容易ではないと指摘。
基本方針には、「革新的新薬創出を促進するため、新薬創出・適応外薬解消等促進加算をゼロベースで抜本的に見直すこととし、併せて費用対効果の高い薬には薬価を引き上げることを含め、費用対効果評価を本格的に導入」「我が国の製薬産業について、長期収載品に依存するモデルから、より高い創薬力を持つ産業構造に転換するため、革新的バイオ医薬品およびバイオシミラーの研究開発支援方策等の拡充を検討、ベンチャー企業への支援」など、イノベーション評価や研究開発投資の促進を狙った記載が多い。

中川氏は、創薬支援の対象となる「我が国の製薬産業」とは、内資系企業に限るのか、外資系企業も含まれるかを質問。「新薬創出・適応外薬解消等促進加算で恩恵を受けたのは、内資系ではなく、外資系企業であるという歴史的な経緯がある」(中川氏)。厚労省保険局医療課長の迫井正深氏は、「我が国に必要な医薬品を提供するという制度設計を行っている」と述べ、内資系か外資系かを問わず、日本の医療において薬を提供する企業全体を指すと説明。
そのほか、現在は試行的に導入されている「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」について、ゼロベースで見直すとされている点も質問。中川氏は従来から、革新的新薬創出の支援は、診療報酬ではなく、補助金等で対応すべきと主張してきた。中山薬剤管理官は、「現行の加算について、どのような課題があるかを洗い出して、研究開発投資の促進という観点で見た場合、どんな制度であるべきかをしっかり考え直すことだと理解している」と述べるにとどまった。
中川氏はそのほか、オプジーボの類薬に当たるキイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)の薬価の問題にも言及。
キイトルーダは12月19日、悪性黒色腫に続いて、PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対する効能・効果について薬事承認された。オプジーボはセカンドラインに使用するが、キイトルーダはファーストラインにも使用可能だ。早ければ2017年2月にも薬価収載される見通し。この点も踏まえ、中川氏はオプジーボの患者からの変更だけでなく、対象患者の拡大が見込まれる上、今後も他の癌種でも効能・効果の拡大が検討されていることから、厚労省に対し、迅速な対応を求めた。

【m3.com 】
by kura0412 | 2016-12-27 10:13 | 医療政策全般 | Comments(0)

『「全員加盟の医師の団体」の是非を議論、日医 』

「全員加盟の医師の団体」の是非を議論、日医
委員長には京都大名誉教授の本庶佑氏

日本医師会の今村聡副会長は12月21日の定例記者会見で、日医内に設置した「医師の団体の在り方検討委員会」の検討状況の中間報告を説明、「医師偏在を含む医療のさまざまな問題をどのように解決するのか、そのためにどのような団体の在り方が必要なのかを検討している」と語った。
委員長は京都大名誉教授の本庶佑氏、副委員長は今村副会長で、委員には地域医療機能推進機構(JCHO)や日本病院会のトップなどが参加している。10月31日に第1回、12月8日に第2回の検討会を開いており、2017年春に最終報告を行う。議論の結果は厚生労働省の医師需給分科会などにも報告する方針。

今後の議論の方向性として、
(1)医師の団体が自主的・自律的に何らかの仕組みを作ることについて、その必要性の有無、(2)全員加盟の団体を形成することの是非や可能性・実効性の検討、
(3)全国的な視野に立ちつつ、都道府県を単位として、医師の団体等が大学等と協働し、また行政   とも連携して問題解決にあたる仕組みの検討、
(4)これらについて、例えば保険医や保健医療機関の在り方等も含め、議論の深化を図っていく――の4点を掲げている。

今村副会長は「医師が一つの団体に所属をして自主的・自律的に活動していくことが望ましいというのは、日医だけでなくさまざまな医療団体、学術会議で提言されていること。今回は本庶先生から、そうした団体の必要性が指摘され、とりあえず日医という場の中で議論をしていくことになった」と説明。
「全員加盟の医師の団体」が日医を指すのかという質問に対しては、「現実問題として、医師会以外に医師が加盟する団体を作るのは困難だと思うが、組織が必要かどうかということをゼロベースで議論していく」と今村副会長は回答。政治とのかかわりを含めて日医の在り方も検討の対象になるかについては「公益社団法人である日医と、政治活動を行う日本医師連盟とは別組織になっており、本来的には一緒にする話ではないと思うが、いろいろな意見が出てくるとは思うので、そのような話しも出てくるかもしれない」と述べた。

【m3.com】
by kura0412 | 2016-12-27 09:05 | 医療政策全般 | Comments(0)

『保険医療制度、“焼野原”にするな 』

保険医療制度、“焼野原”にするな
第57回日本肺癌学会学術集会、國頭・日赤医療センター

第57回日本肺癌学会学術集会(福岡市)で企画された12月20日のシンポジウム「医療経済から観た適正な肺癌診療」で、日本赤十字社医療センター化学療法科部長の國頭英夫氏が登壇、「私の第一の目的は、次の世代に今の医療システムを、焼野原にせずに、いかに引き継いでいくかにある」と述べ、高額薬剤の登場が相次ぐ時代にあって、「効果と副作用が同等なら、安い方の薬を使う」など、費用対効果を念頭に置いた処方行動の重要性を訴えた。

オプジーボ(一般名ニボルマブ)に代表される昨今の高額薬剤が社会問題化したのは、國頭氏が2015年の同学術集会で問題提起し、メディアで大々的に取り上げられたのが、一つのきっかけだ。國頭氏は、「オプジーボを非小細胞肺癌の適応用量で使用した場合、1人当たりの薬剤費は、年3500万円、5万人に使用すると年間約1兆7500億円」という試算を提示。國頭氏は、2016年4月の財務省の財政制度等審議会財政制度分科会でもプレゼンテーションした。
オプジーボの薬価は、2017年2月から50%引き下げられることになった(『オプジーボ、来年2月から50%引き下げへ』を参照)。國頭氏は20日の講演では、この薬価引き下げ問題には言及せず、批判の矛先は現場の臨床医だった。「新しいものはいいと、無条件で考えられている」(國頭氏)現状があり、結果的に効果や副作用が同等でも、新規、かつ多くの場合は高額な治療法に向かう傾向を問題視。オプジーボなどの高額薬剤については、最適な使用法を見いだすための臨床研究に取り組む重要性を強調した。
国際医療福祉大学大学院薬学研究科教授で、医療経済が専門で医師の池田俊也氏も、カナダのpCODR(pan Canadian Oncology Drug Review)でのオプジーボの評価などを紹介し、費用対効果評価が世界的な潮流になっていると説明。費用対効果評価に当たっては、将来の予後予測等も含めて行うため、推計が入るなど、手法の限界もあるものの、今後は医療経済の専門家と臨床医が協力体制を構築し、エビデンスを構築していく必要性を指摘した。
もっとも、せっかく費用対効果評価を実施しても、その結果を基にした医療が実践されなければ意味がないため、池田氏は「その辺りについて、医療者の合意形成に至っていないのではないのか」と問題提起した。「目の前の患者に最善を尽くすことは必要だが、我々は無償で医療を提供しているわけではない。その費用は、誰かが負担している。同じ効き目だったら、安い方の薬を使うという合意形成すらなされていない。医療者の間での意思統一がないと、国民を巻き込んだ議論に至らない」と述べ、医療者の取り組みに期待した。

オプジーボ、「無駄打ち」のコスト高く
國頭氏は、自身のCOIとして、日本イーライリリーからの講演収入を挙げて、講演をスタート。
まず問題視したのは、「Low benefit,High cost」の化学療法が採用されている現状だ。「効果も副作用も同じなのに、価格だけ数倍。なぜこうした治療法が取り入れられるのかが不思議だ。新しいものはいいと、無条件で信じられている」(國頭氏)。
幾つかの例を挙げたが、その一つが、サイラムザ(一般名: ラムシルマブ)。製造販売元は、日本イーライリリー。日赤医療センター化学療法委員会では、本剤の大腸癌に対する使用を全員一致で見送った。既存薬と効果・副作用が同じで価格が2.8倍であるためだ。
一方で問題になるのが、「High benefit,High cost」、つまりコストも効果も高い抗癌剤だ。その代表例がオプジーボ。同薬の有効率は20~30%と必ずしも高くはないが、効果持続期間が長いのでベネフィットは大きい。しかし、事前に有効な患者を見極めるバイオマーカーは現時点では確立されていない。また一過性に画像診断で陰影が大きくなり、その後に縮小して効果が明らかになるという「偽増悪」もあり、臨床的に無効であるとの判断、つまり「諦め時」が見極めにくい。さらに、有効の場合でも、いつまで投与を続けるべきかについては現時点では確立されておらず、無期限の投与になっているなどの問題もある。結果的に、オプジーボの場合、「無駄打ち」のコストがかかる可能性が高い、と國頭氏は指摘する。

オプジーボを効率的に使用するため、幾つかの臨床試験が現在進行もしくは検討中だ。
國頭氏が挙げたのは、無効であることを早めに判断するための観察研究。検討中なのは、有効な場合に、いつまで投与を継続するかという判断のための臨床試験だ。「開発者である本庶先生(京都大学名誉教授の本庶佑氏)は、オプジーボは半年程度の投与で十分、とおっしゃっている。それでその後も効果が続くなら、以降の投与は無駄であり、中止できればコストと副作用の削減につながる」(國頭氏)。
もっとも、これらの臨床試験は、「No excitement,No breakthrough」。國頭氏は、「こうした研究は今までの薬の効果をより高めはせず、ブレークスル―にはならない。だから面白くない。なのに、なぜわざわざこんな研究をしなければいけないのか」と問いかけた。
今後、日本では人口の高齢化が進み、高齢者人口が急増する。「安易に『全ての人を助けたい』と言えればいいが、保険財政が破たんしてしまったのでは、『この人たち』を捨てることと同じだ。それは最悪の選択だろう」(國頭氏)。「この人たち」とは、次世代を担う若者たちであり、「私の第一の目的は、次の世代に今の医療システムを、焼野原にせずに、いかに引き継いでいくかにある」と述べ、國頭氏は講演を締めくくった。

カナダ、オプジーボは「費用対効果の改善が条件」
池田氏は、英国のNICEのほか、カナダのpCODRなどの実例を基に、臨床効果だけでなく、費用対効果という社会的な価値を含めて、欧米諸国では医療技術の評価に取り組んでいる現状を紹介。評価の指標としては、ドイツを除いて、「QALY」(質調整生存年)を用いる国が多く、同指標には限界があるものの、「QALY」より優れた指標が現時点では見当たらないと説明。
費用対効果評価に取り組んでいる代表例が、イギリス。NICE(National Institute for Health and Care Excellence)という組織が取り組んでいる。全ての医薬品について評価しているわけではなく、国民保健サービス(NHS)を所掌する英保健省と相談して、対象品目を決めている。
NICE の2008年から2014年11月までのデータを見ると、評価対象となった267品目のうち、医薬品が246品目、うち抗癌剤の占める割合は多く、88品目に上る。ただし、評価結果は厳しく、医薬品全体では「推奨」となったのは49%だが、抗癌剤に限ると「推奨」は40%と下がり、「非推奨」43%、「一部推奨」7%、「その他」11%――という結果だ。
池田氏は、「日本でも、次々と出てくる新しい技術に対して、どう対応していくか」が課題になるとした。費用対効果評価の試行が、2016年4月から始まっており、2018年度診療報酬改定で、その評価結果も踏まえて価格の見直しを行う予定になっている。医薬品は7品目で、オプジーボも含まれる。

池田氏が紹介した、もう一つの海外の例が、カナダのpCODR。
抗癌剤を専門に分析している組織であり、オプジーボの評価結果を紹介した。非小細胞肺癌の場合、「ICER」(増分費用効果比)は、企業提出データは15万1560カナダドルと、通常受け入れられる水準である10万カナダドルを超えていた。企業が想定した予後予測モデルをpCODRが見直した場合の再分析結果は19万3918~21万9660カナダドルと、費用対効果はさらに悪化した。「最終的にpCODRは、『オプジーボには臨床的な効果があり、ぜひ保険償還すべきだが、費用対効果が一定の水準まで改善することが条件』と判断。つまりカナダの各州政府が企業と交渉して一定の価格まで下がった場合に限り、保険で使いましょう、という判断だ」(池田氏)。
費用対効果評価に当たっては、無増悪の状態から増悪の状態にどのくらいのスピードで悪化するか、悪化した場合の死亡率などのデータが必要になるが、短期的な臨床試験の結果を基に、長期的な予後を推計することになる。前提条件や推計モデルをによって推計結果が変わるため、その精度の改善は今後の課題でもあるとしたものの、池田氏は「エビデンスが十分そろわないからと言って、評価を先伸ばしにするのはおかしい。今、償還するか否か、現場で使用するかどうかを判断しなければならないので、エビデンスがそろった頃に費用対効果を評価しても、手遅れになる。現在利用し得る情報を最大限に活用して費用対効果評価を実施し、不確実性を考慮した上で、総合的に判断することが求められている」と述べ、費用対効果評価の重要性を強調した。

医師でもある池田氏は、「目の前の患者に最善を尽くす、という医学教育を受け、これまでやってきた。ところが、社会から見た価値や財源の問題を無視していいのか、という問題が生じている。患者だけでなく、財源のことも踏まえながら、総合的に判断していくことがこれからの医師に求められる役割」と指摘した上で、「薬の価格を細かく調整しても、結局、臨床現場で薬がコスト意識を持たずに使われていては意味がない。われわれ医療者が費用対効果をどう考えていくのか、ガイドラインに経済性の観点をどう取り入れていくかなどは、学会を中心に議論していくべき課題」と訴えた。

【m3.com】
by kura0412 | 2016-12-27 09:00 | 医療政策全般 | Comments(0)

『「中医協の自主性低下」も危惧』

「薬価制度の抜本改革、メーカーの成長戦略か」と疑念
中川日医副会長、「中医協の自主性低下」も危惧

中央社会保険医療協議会薬価専門部会(部会長:西村万里子・明治学院大学法学部教授)は12月21日、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」を議論した。同基本方針は、薬価調査を毎年実施し、価格乖離が大きい品目について、薬価改定を行うことが骨子で、前日20日に開かれた塩崎恭久厚労相ら4大臣会合で合意していた。

日本医師会副会長の中川俊男氏は、基本方針に対し、「改めて読むと、非常に大きな問題がある。薬価改定財源を国民皆保険制度の維持ではなく、製薬企業の成長戦略のために充てる方針のように見える」と疑念を呈した。毎年の薬価改定を打ち出す一方、「費用対効果の高い薬には薬価を引き上げることを含め、費用対効果評価を本格的に導入」「より高い創薬力を持つ産業構造への転換」などと記載しているからだ。
さらに中川氏は、薬価専門部会でも薬価制度改革について議論しており、本来は中医協マタ―であるにもかかわらず、「4大臣合意」として基本方針が取りまとめられたことを踏まえ、「中医協の自主性が少しずつ失われつつあるのではないか」とも懸念、中医協での主体的な議論を訴えた。
一方、支払側の全国健康保険協会理事の吉森俊和氏は、薬価の毎年改定に向けた薬価調査の在り方をはじめ、基本方針には「来年中に結論を得る」とされている点について、その主体を質した上で、「一方的に経済財政諮問会議からボールが投げられることがないように留意してもらいたい。検討項目は多岐にわたり、相当ハードな議論になるだろう。優先順位を付けて、納得性のある議論をするためにも早く議論を開始してもらいたい」と中医協で主体的に議論していくよう、釘を刺した。
厚労省保険局医療課薬剤管理官の中山智紀氏は、吉森氏の質問に対し、2017年の年初から、薬価専門部会で議論を開始し、基本的な内容については同部会で議論を深めていくと説明。ただし、その結論は、関係省庁や経済財政諮問会議と最終的に調整をして、2017年末までに得るとした。
健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、各論について質問。薬価の毎年改定のための薬価調査が、「大手事業者等を対象に行い」とされている点について、大手4社で取り扱う医薬品の数量シェアは約75%だが、中小卸を外すことで、実勢価格を正しく評価できるか」と質問。さらに、DPCなど薬剤費が包括されている点数の扱いのほか、薬価制度と同様に特定保険医療材料の価格算定方式についても検討が必要だとした。

抜本改革の基本方針には、薬価の毎年改定のほか、
(1)オプジーボに代表されるように効能追加等に伴い、市場が一定規模以上拡大した薬については、新薬収載の機会を最大限活用して、年4回薬価を見直す、
(2)新薬創出・適応外薬解消等加算制度をゼロベースで見直し――が盛り込まれており、12月21日の経済財政諮問会議に報告される。
今後の焦点は、毎年改定の薬価調査の方法、「価格乖離の大きい品目」の定義、毎年薬価改定の財源の取り扱いだ。通常の薬価調査の在り方なども含め、2017年中に結論を得ることになっており、2017年の年明けから議論がスタートする。

「最大の目的は国民皆保険の維持」のはず
中川氏はまず、「このような基本方針を、中医協が主体的かつ自律的にまとめることなく、4大臣合意という形でまとまったのは、非常に遺憾」と述べ、「来年末までに結論を得る」などと指示されていることなども踏まえ、「中医協の自主性が少しずつ失われつつあるのではないか」と指摘し、診療側と支払側ともに自戒すべきと語った。
吉森氏が、今後の議論はハードであり、時間がかかると見通した点については、中川氏はこれまでも議論を重ねてきたことから、それほど時間はかからないとし、厚労省に対し、スピード感を持って議論を進めるよう求めた。「のんびり議論していたのでは、経済財政諮問会議が何らかの意見が出てきかねない。そうした危機感を持ってやってもらいたい」(中川氏)。

その上で、中川氏は、基本方針が、安倍政権がかかげる成長戦略を狙った方針に映ると指摘した。
基本方針は、序文に「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」の両立を基本理念として掲げている。中川氏は、オプジーボ(一般名ニボルマブ)の薬価引き下げを求めていたのは、公的国民皆保険の維持が最大の目的であり、現実にはこれらの両立は容易ではないと指摘。
基本方針には、「革新的新薬創出を促進するため、新薬創出・適応外薬解消等促進加算をゼロベースで抜本的に見直すこととし、併せて費用対効果の高い薬には薬価を引き上げることを含め、費用対効果評価を本格的に導入」「我が国の製薬産業について、長期収載品に依存するモデルから、より高い創薬力を持つ産業構造に転換するため、革新的バイオ医薬品およびバイオシミラーの研究開発支援方策等の拡充を検討、ベンチャー企業への支援」など、イノベーション評価や研究開発投資の促進を狙った記載が多い。

中川氏は、創薬支援の対象となる「我が国の製薬産業」とは、内資系企業に限るのか、外資系企業も含まれるかを質問。「新薬創出・適応外薬解消等促進加算で恩恵を受けたのは、内資系ではなく、外資系企業であるという歴史的な経緯がある」(中川氏)。厚労省保険局医療課長の迫井正深氏は、「我が国に必要な医薬品を提供するという制度設計を行っている」と述べ、内資系か外資系かを問わず、日本の医療において薬を提供する企業全体を指すと説明。
そのほか、現在は試行的に導入されている「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」について、ゼロベースで見直すとされている点も質問。中川氏は従来から、革新的新薬創出の支援は、診療報酬ではなく、補助金等で対応すべきと主張してきた。中山薬剤管理官は、「現行の加算について、どのような課題があるかを洗い出して、研究開発投資の促進という観点で見た場合、どんな制度であるべきかをしっかり考え直すことだと理解している」と述べるにとどまった。
中川氏はそのほか、オプジーボの類薬に当たるキイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)の薬価の問題にも言及。
キイトルーダは12月19日、悪性黒色腫に続いて、PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対する効能・効果について薬事承認された。オプジーボはセカンドラインに使用するが、キイトルーダはファーストラインにも使用可能だ。早ければ2017年2月にも薬価収載される見通し。この点も踏まえ、中川氏はオプジーボの患者からの変更だけでなく、対象患者の拡大が見込まれる上、今後も他の癌種でも効能・効果の拡大が検討されていることから、厚労省に対し、迅速な対応を求めた。

【m3.com】
by kura0412 | 2016-12-22 10:24 | 医療政策全般 | Comments(0)

『薬価にメス、医療費抑制 毎年改定 品目など次の焦点 』

薬価にメス、医療費抑制 毎年改定 品目など次の焦点

政府は20日、薬価制度の抜本改革に向けた基本方針をまとめた。2年に1回変えてきた薬の公定価格を毎年の改定に改めるのが柱だ。市場の実勢に近い価格に下げやすくし、医療費の抑制につなげる。日本医師会や製薬業界の反対が強かった毎年改定に踏み込んだが、改革がうまくいくかどうかは今後の具体策づくりがカギを握る。
塩崎恭久厚生労働相、菅義偉官房長官、麻生太郎財務相ら関係4閣僚が20日、会合を開いて基本方針を決めた。21日に開く政府の経済財政諮問会議で示し、新制度の具体策は中央社会保険医療協議会(中医協)を中心に決める。

薬価の毎年改定は2018年度から実施する。
公的保険を適用する薬の価格は国が決定権を持つ。今の制度では2年に1回見直す決まりだ。1度決まれば2年間、薬価(公定価格)は変わらないが、医療機関の仕入れ値に近い市場価格は後発薬の普及などで下がる傾向にある。
この差額は製薬会社や医療機関の収益となっている。超高額のがん治療薬オプジーボのように海外より2倍以上高い薬が登場し、政府は見直しの頻度を高める必要があると判断した。

今後は(1)対象品目(2)薬価見直しの条件(3)浮いた財源――の3つが焦点になる。
市場で流通する医薬品は2万~3万。対象品目を巡っては、日本医師会の横倉義武会長が今月14日の記者会見で「オプジーボや外国に比べて高いものは一定の理解をせざるを得ない」としつつも、品目は限定すべきだとの認識を示した。
政府の経済財政諮問会議の民間議員は全品目を対象にすべきだとの立場だった。しかし、最後は医師会などに配慮せざるを得なかった。
もう1つの焦点になる毎年改定の条件として、基本方針は実勢価格と薬価の差が大きいことを盛りこんだ。この条件次第で品目は大きく変わる。厚労省が15年に実施した2年に1回の医薬品価格調査(速報値)では実勢価格と薬価の差は平均8.8%だった。単純計算で年間の下落率は5%弱だ。例えば、毎年改定の条件を5%以上の価格差とすれば、対象は大幅に狭まる見通しだ。
毎年改定で浮いた財源の扱いも現時点では不透明だ。医師会は薬価の引き下げ財源は医師の技術料など診療報酬本体に上乗せすべきだとの立場だ。医療費の伸びを抑制して、財政再建につなげる必要がある。

【日経新聞】
by kura0412 | 2016-12-22 10:18 | 医療政策全般 | Comments(0)

『高齢者医療、チェックなき膨張』

高齢者医療、チェックなき膨張
2030年 不都合な未来(1)

暮らしや老後を守る社会保障が日本経済を揺るがそうとしている。止めどない高齢化で医療や介護、年金にかかるお金が膨張。財政も刻一刻と危うさを増す。団塊の世代が80代を迎える2030年はどのような社会になるのか。経験したことのない選択を迫られることだけは間違いない。

その男性は西日本の病院で最期を迎えた。享年80。12年に受けた弁膜症の術後の経過が悪く、感染症を繰り返した。透析や胃ろうの処置などあらゆる医療行為を受けた。

■医療費、計7400万円
レセプト(診療報酬明細書)には70以上の病名が並ぶ。「本人も知らなかっただろう」と関係者は話す。3年半の医療費は約7400万円。男性の自己負担は約190万円。残りの大半は税金と現役世代の支援金だ。
高齢者医療費が歯止めを失いつつある。社会保障給付費は30年に今より約50兆円増えて170兆円程度に達する可能性がある。影響が大きいのが医療費。とりわけ75歳以上の後期高齢者医療費は約1.5倍の21兆円に達する公算が大きいことが全国調査をもとにした分析で分かった。
取材班は全国約1740市区町村の後期高齢者の1人当たり医療費を調べた。厚生労働省は都道府県単位の数値を集計しているが、市区町村の全容は初めて判明した。
1人につき年100万円以上の医療費を使っている市区町村は14年度分で347に及ぶ。30年の人口推計などから試算すると、全体の後期高齢者医療費は現在の約14兆円から大きく膨れ上がる。
最多と最少の自治体格差は14年度時点で2.6倍。東京都台東区など都市部の自治体も上位に入った。大きな医療費格差はなぜ生じるのか。
1人当たり医療費が133万4453円と全国最多の福岡県宇美町。高齢者らが長期入院する療養病床は人口対比で全国平均の3倍超。在宅療養を支援する診療所は乏しく医療費がかさむ入院に頼りがちだ。

息子夫婦と暮らし、通所介護を利用する80代女性は約1年前、軽い胃の不調を訴え、町内の病院を受診した。「検査に時間がかかるので療養病床に入れる」。病院からこう聞いた担当のケアマネジャーは1カ月後に確認したが「退院したら連絡する」と告げられ、検査入院が長期化。ケアマネによると、女性は現在も入院したままだという。
高齢者医療制度はチェック機能を担う広域連合が市町村の合議体で、責任の所在が曖昧という問題を抱える。保険者としての機能不全は覆い隠せない。その裏側で高齢者医療費の4割を支える現役世代の負荷が高まる。
「手取りが……」。オムロングループの30代女性は10月の給与明細に目を疑った。1年前より1万円ほど減っていた。30万円台前半の基本給は7000円ほど上がったが、健康保険料が3600円、厚生年金保険料が7800円増えた。会社の方針で残業手当が減ったことも誤算だった。

■賃上げむなしく
「今の制度はもたない」。創業100年超の化学メーカー、第一工業製薬の赤瀬宜伸常務(57)は断言する。同社は単一の健康保険組合を維持するのは困難と判断し、自主的に解散した。05年度に6.6%だった保険料率は9.5%に上昇。人間ドック補助の削減などを重ねたが万策尽きた。
07年度に1518あった健保組合は100以上が消え、経団連によると13、14年度の賃上げ効果の46%分は社会保険料として吸い上げられた。
たとえ高齢者医療の綻びを繕えても、それだけで光明が差すわけではない。学習院大学の鈴木亘教授の試算では、年金や医療、介護にかかわる債務は30年時点で今より350兆円増えて2000兆円規模に達する。
支えを求める高齢者が増え続け、細る現役がその負担を迫られる。制度を根本から作り替えないまま、不都合な未来はもう目の前に来ている。

【日経新聞】



この記事は今朝の1面・全面での掲載です。
by kura0412 | 2016-12-19 09:13 | 医療政策全般 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


by kura0412

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ミラー片手に歯科医師の本音

『口腔健康管理とかかりつけ歯科医』

今回の改定を医療全体的にみると三つの注目すべき特徴がありました。一つは伸び続けていた調剤には厳しい結果となったこと。7対1の入院基本料の要件の厳格化。そして改定の中で「かかりつけ」という概念が明確に組みこまれまれました。
「かかりつけ」に関しては医師、薬剤師に加え歯科でも導入されていますが、「かかりつけ歯科医」はあくまでも「保険用語に一つ」というイメージがあります。しかしながら医科、薬科ではこの「かかりつけ」を軸に医療体制の新しいイメージを描きつつ、今後の政策を積み重ねる意気込みを感じます。そこにあるのは、地域包括ケアの推進がベースにあっての考えです。例えば、今回の改定では紹介状のない大病院の初診・再診料自己負担は大幅なアップとなりました。また、調剤の方ではかかりつけ薬剤師指導料算定をきっかけに、患者とのコミニュケーションを密に図ろうとする試みを目指します。
一方、医療政策として改定と対をなす基金は、歯科医療の環境整備にも益々重要な意味を持ちます。ただ、今回改定の中でも可能性の秘めた項目としていくつか点数化は見られましたが、基金が改定とリンクすることなく、独立しての事業になっている印象は拭えません。限られた予算の中でのやり繰りです。W改定に向けての改定と基金との相乗効果を目指す為の戦略と、それに沿った事業の立案が必要となってきます。
包括ケアを視野に入れての「かかりつけ歯科医」でポイントとなるのが口腔ケアです。その有用性は医科からも視線が注がれています。然るに、口腔ケアという言葉が、ブラッシングのみの狭義に捉えられている現状があり、本来の口腔ケアの意味する嚥下機能も含めた口腔全体を管理する視点の広がりが不足しています。その観点からみると、今回日本歯科医学会が「口腔健康管理」と称した新たな口腔ケアの概念の提唱は機知を得た提案です。摂食機能療法などを加えた従来の歯科治療を「口腔機能管理」、歯石除去、PTCなど歯科衛生士の実施するエリアを「口腔衛生管理」、そして一般の方が実施する口腔清拭、食事介助などを「口腔ケア(狭義)」として、この三点を総じて「口腔健康管理」としました。
広義の口腔ケアとして定義する考えは、真の意味での「かかりつけ歯科医」が目指す所です。既にW改定に向けての作業が進む中で、この概念を一日も早く歯科界内部で意見の確認をしながら、国民への認知を広めなければなりません。
日医はかかりつけ医機能研修制度を創設し、独自の「かかりつけ医」というものを推し進めようしています。そしてその講習の中に「かかりつけ医の摂食嚥下障害」のメニューも組み込まれています。また、地域包括ケアに向けた「かかりつけ連携手帳」の作成に着手し、そのスピードは目を見張るものがあります。『かかりつけ歯科医』、『口腔健康管理』、『摂食嚥下障害』のキーワードは、地域包括ケアの中で育ちそうな芽であることは間違いありません。残す課題は、地域包括ケアを主導する日医、地区医師会との更なる連携の強化と事業実現に向けてのスピードを加速させることです。




『食べる=生きる』

地方消滅で日本の少子化高齢化に対して大きな警笛を鳴らした日本創成会議が「高齢者の終末医療を考える」と称したシンポジュウムを先日開催しました。その議論を聞くに、地方消滅と終末医療?そんな一見結びつかない二つが、これからの日本の大きな課題となっています。それと共に、改めて人の死という死生観を医療分野の一角に位置する歯科医師として、見つめ直す時期が今あるものと感じます。
高齢化になって、いわゆる寝たきり老人に対していろいろな考え方が示され、特に胃瘻の是非については大きな意見が分かれるところです。欧米においては日本で常習化している高齢者、寝たきり老人への適応が少ないとのこと。この点に関しては中医協でも前回の改定では、嚥下検査の有無によって評価を変えるという対応がなされ、また今回の改定での議論では、その経過の調査結果も示されています。しかしその一方、この問題が話題になって、胃瘻によって日常生活が暮らせるレベルになる患者さんまで拒否するような実例があり、医療現場その対応に苦慮する場面が多々見られる話も聞きます。
この問題は、医療、介護費増大から語られることが多かったのですが、タブー視されていた死に対する考え方が社会問題の遡上に挙がっていることは、大きな時代の変化として捉えられます。そして、食べることは従来から歯科界も提唱するように、単に延命だけが目的ではありません。生きていることの喜びを感じる、人間としての尊厳に係わる重要な日常生活の一つなのです。
医療関係者以外でも「食べる=生きる」を唱える人がいます。「食べることは、呼吸と等しく、いのちの仕組みに組み込まれているもの。」とは、料理研究家・辰巳芳子氏が唱えている私の好きな一文です。そして欧米での判断基準となる「食べる」ことの有無が延命治療の是非判断の基準となる考え方は、経済問題を抜きにしてもその専門家集団である歯科界の属するものが改めて真摯に議論し、一つの考え方を社会に示す責務があると考えます。
然るに、だかからといって歯科界が社会の先頭に立って、自らが死生観の変更を訴える必要はありません。これは社会全体で既にうごめく潮流であり、歯科界はあくまでもこの分野に特化した専門家として食べることの重要性、必要性を改めて世に唱え、それを臨床の場で実践を積み重ねれば良いのです。果たしてこれをも医科が歯科から奪い取り、領域拡大を目指すのでしょうか。
この死生観の議論の推移を見守ると共に、食べることへの支援を更に強める為に、摂食嚥下への歯科領域からの積極的なアプローチが必要となってきています。何故ならば、咀嚼と嚥下は対となって多くの結果を導き出すことが立証され、食べることを特化した専門家としての医療人としては、現状のままでは取り組みが不十分だからです。歯科医療は新たなる視点をもって社会に貢献する時代の到来です。あとはそれを導き、フォローする具体的な政策を積みかさねることです。歯科医療は真の意味での生きる喜びを支援する世界を導きます。



『飲み込みは大丈夫ですか』

基金における事業が一つのきっかけとなって、在宅診療、医療連携が新たな展開に進み始めています。それぞれの医療環境の実情を踏まえて、地域独自の取り組むこの基金を利しての新たな事業は、診療報酬と対になるこれからの歯科医療全体へ大きく波及する政策です。そしてこの基金は、来年度において今年度予算規模に介護関係が上乗せされる計画となっており、医療介護の垣根を越えた地域包括ケアシステム構築としての発想が必要となっています。
歯科における在宅診療の中心は、従来の診療所における診療の延長としての義歯調整から始まり、口腔ケアの対応へと進んでいます。口腔ケアの効果は、既に誤嚥性肺炎予防という観点から医科の関係者は元より介護関係者にも認知されています。それに加えてここきてスポットライトが浴びているのが、今回の基金でもいくつかの地域で事業が計画される摂食嚥下の分野です。
しかしながら、介護保険の認定審査項目にも「えん下」という項目がありながら、実際に摂食嚥下の対応は、一部の大学病院、リハビリテーション、耳鼻科があって積極に取り組んでいる病院以外、殆ど対応出来ていないのが介護、医療の世界の現状です。その理由は簡単です。採算が合わないからです。特に歯科においては無報酬に等しい状態です。
 嚥下の対応は、適応が少ない耳鼻科領域の手術以外その改善方法の中心は訓練、姿勢の改善、食形態変更のアドバイスなどで薬の処方もありません。検査も歯科では保険算定が認められていない内視鏡・造影検査と問診を中心としたスクーリングテストです。近年、摂食機能療法が歯科でも算定可能となりましたが、それは鼻腔栄養、胃瘻増設患者に限定されており、重度になる前の本来対応が必要な患者さんには算定出来ません。
そしてもう一つこの分野を歯科が推し進めるハードルとなるのが、隣接する医科の反応です。現在、摂食嚥下リハビリテーションは歯科医師を中心としたアプローチと耳鼻科、あるいはリハビリテーション科の医師を中心としたアプローチの二つがあります。本来ならば他の疾患でもあるように医科が歯科は口腔内のみと突っぱねるところですが、儲からない中で耳鼻科医の成り手が減少し忙しく手が回りません。それと共に、「摂食・嚥下リハビリテーション学会」の「・」がなくなり「摂食嚥下リハビリテーション学会」に名称を変えたように、嚥下と摂食、咀嚼は一連の動作であり、咀嚼のプロである歯科医師を係わりから排除することは出来ません。咀嚼して嚥下することによって食べることが出来るのです。
もし、嚥下を歯科の領域と社会から認知されれば、歯科診療所が「食べる」ことの社会ステーションと成り得ます。口から食べることへの支援が生きる為、生活を支える源であることが歯科診療所から発信が可能と成ります。したがって報酬的評価は低くても、嚥下に問題ある人が歯科診療所に相談することへの広がり目指し、その実現に向かっての政策を積み重ねる必要があります。先ずは先生方が診療所で「飲み込みは大丈夫ですか」の一言を問える環境作りがその第一歩です。




『この道しかなかった中で』

この原稿を書いている今、衆議院選挙の結果は分かっていません。しかし事前の各マスコミみれば自民党圧勝予測です。選挙は投票箱が閉められるまで何が起こるか分かりませんが、少なくても安倍退陣はなく、任期2年を残しての安倍首相の解散の決断は見事成功となりそうです。
メディアは大義ない解散と騒ぎましたが、今回の安倍首相の解散目的は明確です。日本の経済再生を目指し、自らが提唱したアベノミクスの敢行の為の長期政権への道を切り開くことです。無論、長期政権となってもアベノミクス成功の確定はありません。しかし野党からは、アベノミクスに代わって日本経済再生を可能とする具体的な対案は示されませんでした。マニフェストに踊らされて政権交代を選択したことを悔やむ多くの有権者は、その提示なしで現在の野党にもう投票することは出来ません。また第三極への期待感も、離れたりよりを戻したりの腰の落ち着きのなさを感じ、一時のブームに終わりそうです。となると自民党のキャッチフレーズ「この道しかない」、安倍政権に託すしか今回の選挙では有権者に選択肢がなかったことになります。では長期政権となるこれからの政治情勢を踏まえて、歯科界はどう安倍政権と向き合わなければいけないのでしょうか。
今回の総選挙でのマスコミの世論調査では、有権者は社会保障に対しては経済再生と並び非常に関心をもっていましたが、その政策論戦は殆ど成されませんでした。特に自民党が示した政策は、医療に関してはないも等しいような扱いです。唯一あったのが、既にスタートしている社会保障改革のプログラム法案のスケジュールに則って進めるということです。但しこのプログラム法案の対となす消費税増税が延期となったわけですので、そのスケジュールの変更は必要になってきました。恐らく16年度改定に対しては、これを理由に財務省から厳しい対応を迫られるのは必至です。
この現実の意味するものは、現行の医療制度、水準を是とする考え方がベースにあります。消費税増税、経済再生となって税収が増えたとしても、けっして医療の大幅な拡充が成されるわけではありません。それどころか、もし経済再生と成らなければ医療費はそぎ落とされる可能性もあります。これからは少子高齢化、財政再建を踏まえて、いかにレベルを落とすことなく現行の医療を保つことへの模索が始まります。しかしながら理不尽な政策に対して、責任ある医療人として対応することは当然であり、大きな改善が必要な歯科と、既に一定の医療経営環境を維持している医科とでは立ち位置が異なります。先ずはこの点への内外の理解を求めることがスタートとなります。
選挙終わるのを待って各種医療政策への対応が加速的に進みます。幸いにして政治の世界では現在の歯科医療の現状は理解されつつあり、一つ一つの政策毎の対応スタンスが求められています。果たしてこの道しかなかった中で、歯科界はどう歩みを進めるべきなのでしょうか。歯科界の政策対応能力と政治力の真価が問われています。




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