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次の医療計画、「地域包括ケア計画に」-厚労省医政局長

厚生労働省の神田裕二医政局長は19日、各自治体の厚生労働行政の担当者を集めた「全国厚生労働関係部局長会議」で、2018年度から6か年の次期医療計画について、「実質的に地域包括ケア計画といえるもの」にするよう呼び掛けた。
25年には団塊世代が75歳以上となる。国は、重度な要介護状態になった人でも住み慣れた地域で暮らし続けられるように、必要な医療・介護サービスなどを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の構築を、同年を目途に推進している。
19日の同会議で神田局長は、必要な医療提供体制を確保するために都道府県が定める医療計画と、必要な介護サービスを確保するために市町村が定める介護保険事業計画などが、いずれも18年度から次期計画に移る予定だと指摘。2つの計画の整合性を取る必要性を強調した。

■基金、医療構想実現に向けた計画踏まえ配分
また神田局長は、17年度の「地域医療介護総合確保基金」の交付について、「地域医療構想」に盛り込まれた将来の必要病床数の実現に向け、具体的な整備計画が策定されているかどうかなどを踏まえて配分する方針を示した。
同基金は、地域包括ケアシステムの構築などを進めるため、各都道府県に設置されたもので、医療分と介護分がある。医療分は、▽地域医療構想の実現に向けた整備▽在宅医療の提供▽医療従事者の確保―のいずれかに関する事業が交付対象。16年度は904億円のうち、同構想の実現に向けた整備に関する事業に458億円(50.7%)が配分された。
17年度の医療分の交付額は、16年度と同額の見込みだが、神田局長は、39都道府県が昨年末までに同構想を策定済みで、残る8府県も年度内に策定する予定だと指摘。同構想に向けた整備事業への配分を、より重点化させる考えを示した。
一方、在宅医療の提供や医療従事者の確保に関する事業への配分については、「継続実施が不可欠な事業に配慮しながら調整を行っていきたい」と述べ、例えば院内保育所の新設などには別の政府予算の活用を検討するよう促した。

■医療構想実現へ、権限の行使検討して
神田局長は、地域医療構想の実現に向けた調整についても言及し、地域の医療機関の関係者同士が話し合って進めるのが基本だと強調した。その上で、例えば話し合いが前に進まない場合には、都道府県知事が権限を行使し、公的医療機関に指示を出すことなどを検討してほしいと呼び掛けた。
現行のルールでは、関係者同士の話し合いが進まない場合に、都道府県知事が医療審議会の意見を聴いた上で、地域で不足している医療機能を担うよう公的医療機関に指示することなどが認められている。一方、民間医療機関に対する指示は認められていない。
神田局長は、「権限の施行状況を踏まえて、(権限などについて)また検討することになっている」とも述べた。

■かかりつけ薬剤師の実績積み重ねて
19日の同会議で同省の医薬・生活衛生局の武田俊彦局長は、地域包括ケアシステムの中で、薬剤師・薬局が積極的に職能を果たし、患者の「かかりつけ」となることが必要だと強調した。特に、18年度に診療報酬・介護報酬の同時改定が予定されていることも踏まえて「実績を積み重ねることが大事」だと訴えた。
武田局長は、「かかりつけ」の薬剤師・薬局に求められる機能などは15年10月に同省が示しており、16年度はその機能のモデル事業を実施していると紹介。17年度も、予算を増額してモデル事業を実施する予定で、3月までに募集を開始したいとした。

【キャリアブレイン】
by kura0412 | 2017-01-20 11:14 | 医療政策全般 | Comments(0)

診療報酬と介護報酬、同時改定に向けた議論開始…中医協

厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会(中医協)は11日、総会を開き、2018年度の診療報酬と介護報酬の同時改定に向けた議論を始めた。
高齢化の進展を踏まえ、医療・介護の連携強化や在宅医療の充実などが主な検討テーマで、18年2月までに結論を出す。
診療報酬は、2年ごとに見直される医療サービスや薬剤の公定価格。介護サービスを提供した事業者が受け取る対価である介護報酬の改定は3年ごとで、18年度は、6年に1度の同時改定となる。
介護報酬の改定は、社会保障審議会介護給付費分科会で4月頃から議論が始まる見込みだ。医療・介護の連携強化については、中医協と分科会の委員が意見交換を行う場を設けて議論する方針だ。

【読売新聞】
by kura0412 | 2017-01-13 14:50 | 医療政策全般 | Comments(0)

[ローソン玉塚会長]厳罰で健診受診率100%に
私の「カラダ資本論」

仕事においては、やはりカラダが資本。多忙な中でも最高のパフォーマンスを発揮し続けるには、日ごろからの健康管理が欠かせない。一流人が実践する健康マネジメント術を紹介する本コラム、ローソンの玉塚元一会長CEOの最終回は、自らチーフ・ヘルス・オフィサー(CHO:最高健康責任者)として取り組む「健康経営」についてうかがいました。健診受診率100%を達成した秘訣とは?

ローソンは2013年に、コーポレートスローガンを「マチのほっとステーション」から「マチの健康ステーション」に変更しました。少子高齢化が進み、医療費をはじめ社会保障費の増大が国の深刻な課題となっており、私たち一人ひとりが健康へのアクションを起こして、医師や薬に依存しない生活を目指すことが大切と考えています。ローソンとしても、お客様の「未病」「予防」につながる事業展開を強化することで、マチの健康に貢献していきたいと考えています。
ローソンでは、医薬品取り扱い店舗を拡充し、低糖質のブランパン、グリーンスムージーといった健康志向の商品を展開しています。そうした取り組みのなかで、お客様の健康に対する意識やニーズが高まっていることを実感しています。かつて健康志向の商品は美容に関心の高い若い女性やシニアの利用が多かったのですが、現在は老若男女関係なく広がってきています。実際、4年ほど前には、健康に関する商品の構成比はごくわずかだったものの、今ではおよそ2500億円の売上規模となっています。
実は、東京にある本社には社員食堂がないのですが、ビル内にローソンの店舗があり、健康志向の商品が多いということもあって、そこでランチ用の食品を購入する社員も多いのです。

2018年までに高い目標値を設定
2015年10月にチーフ・ヘルス・オフィサー(CHO)に就任してからは、お客様の健康はもとより、ローソングループの社員や加盟店オーナーの健康増進、改善も重要なテーマと位置づけて、様々な取り組みを行っています。
2013年度に実施した、社員の健康診断の受診率100%を目指した取り組みもその一つです。仕事が忙しいことを理由に健診を受けなかった結果、体調を害してしまう社員を減らすことが目的で、ペナルティも科しました。健診を受けなかった社員に数回、受診を勧める通知をしても受けなかった場合は、本人の賞与を15%、直属の上司の賞与も10%減額するという厳しい措置です。その結果、受診率100%を達成しました。
ただ、受診率100%を実現したのは、厳しいペナルティを科したことよりも、経営トップ直下、人事本部内に設置した「社員健康チーム」や、健康保険組合、労働組合とも連携して、常に社員へメッセージを発信し、コミュニケーションを図ったことが大きかったと思います。管理職には、部下の健康を管理するのも上司の役目の一つと理解してもらいました。やはり、お客様の健康をサポートするローソングループとしては、社員一人ひとりの健康を維持することが重要であり、社員の健康は会社の業績にも直結すること。仕事で最高のパフォーマンスを発揮するためには、健康が欠かせないこと。元気で働くことが本人や家族の幸せにつながること。そうした背景や目的をしっかり伝えて、腹落ちしてもらうことが大切ですね。

また、コンビニという業態に特有の健康課題もあります。
社員の4割はスーパーバイザーといって、会社から貸与された車で店舗を回り、アドバイスを行っています。勤務は不規則ですし、加盟店オーナーに新商品を案内するための試食もする。そのため、必然的に歩いたり運動をしたりする機会が少なくなり、肥満や高血糖を指摘される人の割合が、一般企業よりも高くなっています。
そこで、ローソンでは2018年までに、肥満や血糖値などが正常でない人の割合を減らす目標を定めました。とくに肥満者(BMIが25以上)の割合は、2014年の実績で男性37.2%を2018年は27.7%に、女性18.6%を17.0%に減らす目標を掲げています。こうした目標達成に向けて、2015年6月からは「ローソンヘルスケアポイント」を導入しました。これは、健診結果から各自が取り組むべき健康目標を3つ設定し、90日間欠かさずに行動チェックをすることでポイントが付与され、目標を達成すればさらにポイントが加算されるというものです。獲得したポイントは「Ponta」の加盟店で利用できます。

スポーツで職場環境も向上
職場の活性化を目的としたスポーツ大会も実施しています。2009年から毎年続いていて、今年はソフトボール大会を開催。私が率いる「たまちゃんドリームチーム」が地区大会で見事優勝を果たしました。役員が主体の平均年齢が一番高いチームが勝ち上がっていったので、大いに盛り上がりましたよ。ただ、実は野球部出身の若手社員を助っ人に加え、戦力をアップしていたのですが(笑)。
そのほか、4人制で柔らかいボールを使う、ソフトバレーを毎週行っている支店(各地にある運営事務所)もあります。そうした職場では、ソフトバレーの日は定時で仕事を終わらせるために、効率良く仕事をするようになったと聞いています。職場での会話やコミュニケーションが増えて、業績の向上につながっている支店も多いようです。スポーツでのチームプレーが、職場のチームワークにも生かされる。スポーツは今後も積極的に採り入れていきたいと思っています。
最近は、ローソンの中でラグビー経験者20人ほどを集めて、タッチラグビーのチームを結成しました。やはり最後はラグビーになるのかな(笑)。2カ月に1度、1時間程度汗を流して、飲み会を開いています。タッチラグビーはタックルやスクラムのない、いわば簡易版ラグビーですが、これが意外ときついんですよ。ラグビー経験者とはいえ、練習を始めて15分もすると、吐きそうになっている部員もいます(笑)。結成からまだ日が浅いものの、タッチラグビーの協会にチーム登録もしたようなので、対戦などもしていけるといいですね。

今後もCHOとして、自身の健康、グループ社員や関係者の健康維持・増進に取り組むと同時に、健康志向商品の品揃えをより充実させていきたい。とはいっても、押し売り型の店舗にするつもりはありません。私自身も、健康志向の食事をすることもあれば、覚悟を決めるような日はガツンとしたラーメンを食べることもある。お客様の多様なニーズに応えるためには、ドカ弁もたばこもそろえます。そのなかでの選択肢として、健康志向商品の品揃えや開発は、他社に負けないように進めていきたい。そして、よりマチの健康に貢献できる企業であり続けたいと思っています。

【日経ビジネス】
by kura0412 | 2017-01-06 15:21 | 医療政策全般 | Comments(0)

予防医療で医療費を減らせるか(1)健康の維持・増進には寄与

予防医療とは病気になることを防いだり、病気を早期発見・早期治療することで病気による障害や死亡を減らすことを目指す医療です。規則正しい生活習慣、バランスのとれた食事、適度な運動などにより、生活習慣病やがんの発生を抑制することを一次予防といいます。定期健診やがん検診などにより、無症状の早期の段階で病気を発見し、早期の治療につなげることを二次予防といいます。
健康はすべての国民にとってかけがえのない便益と言えます。予防医療によって病気の発生や進行を抑え、健康を維持・増進することは、国家レベルでも個人レベルでも優先度が高いと言えるのではないでしょうか。そのため、予防医療の推進そのものに異を唱える人はあまりいません。
予防医療を推進することは、病気の発生・進行を抑え、結果的に医療費の抑制につながる、と一般には考えられがちです。政府は、高騰を続ける国民医療費を抑制する手段の一つとして予防医療の推進をたびたび掲げています。最近では、健康診断の受診など健康管理に努めた人に公的医療保険の自己負担割合を引き下げることを若手政治家グループが提言したというニュースもありました。
しかし、予防医療を推進することによって国民医療費を削減することは可能でしょうか。実際には、これまでの医療経済学の多くの研究によって、予防医療による医療費削減効果には限界があることが明らかにされています。
それどころか、大半の予防医療は、長期的にはむしろ医療費や介護費を増大させる可能性があります。そのことは医療経済学の専門家の間ではほぼ共通の認識です。しかしながら、まだ一般には、その事実があまり浸透していないように見受けられます。
「予防医療は医療費・介護費を抑制できない」というメッセージを読んで、驚いた読者がいるかもしれません。次回から予防医療が医療費・介護費に与える短期的・長期的な影響について、具体的な事例を紹介しながら詳しく解説します。

【日経新聞・東京大学教授 康永秀生】
by kura0412 | 2017-01-05 10:24 | 医療政策全般 | Comments(0)

2016けいざいあの時(4)オプジーボ薬価下げ 厚労省、主導権奪われ

がん治療薬オプジーボ。今年初めにはごく限られた人しか名前を知らなかった薬の価格を巡り、政府や医療関係者を巻き込んだ論争が沸き起こった。膨張する医療費の象徴として、2017年2月に今の価格を半分にすることが急きょ決まった。いくつもの誤算が重なった厚生労働省は薬価改定の主導権を奪われた。

「オプジーボ狙い撃ちと言われても仕方ない」。厚労省幹部は5月下旬、消費増税の再延期を伝える報道にうめいた。17年4月に予定していた消費増税に合わせ、厚労省は増税分を薬価に反映する改定を予定していた。全薬品の価格改定とともに、オプジーボを値下げする腹づもりだった。当てが外れ、一つの薬に限った異例の改定が動き出す。誤算の始まりだった。
オプジーボは体内の免疫細胞に作用し、人間の持つ異物を排除する能力を高めてがんを治療する。一部のがんに画期的な効果が確認された。想定する対象患者は470人と少ないことから高額な薬価が付いた。

「夢の薬」が医療保険制度を脅かす――。財務省が4月に開いた財政制度等審議会でこんな認識が広がった。5万人が1年間使えば1兆7500億円かかるとの試算が示された。
厚労省は中央社会保険医療協議会(中医協)で今年夏から値下げに向けた議論に入った。日本医師会の松原謙二副会長は「薬の価格が高くなり過ぎるのは速やかに改善してほしい」と要求。薬価の引き下げ分を医師の診察料など診療報酬本体に回すのが医師会の伝統的な行動原理だ。「技術革新を阻害する」と主張する製薬業界は劣勢だった。
値下げが決まったのは10月。厚労省は17年度に25%下げる方針で中医協の了承を得た。18年度に薬価制度を抜本的に変え、さらに値下げする案を温めていた。段階値下げで製薬業界の反発を和らげる狙いだった。
思わぬ伏兵となったのが共産党の小池晃書記局長だ。10月6日の参院予算委員会で「25%では不十分」と安倍晋三首相に迫った。野党の質問にもかかわらず、厚労省案への疑問が首相官邸で広がった。
10月14日の経済財政諮問会議でも民間議員が50%の引き下げを突き付けた。「なぜ1回でできないのか」。首相官邸も同調。厚労省職員は説明に回ったが、理解は得られない。次第に大幅値下げに傾いていった。
「国民の納得が得られる対応を講じていくことが大事だ」。50%値下げが固まった11月10日、菅義偉官房長官は記者会見で述べた。
厚労省には誤算が重なる。薬価改革の主導権を諮問会議が握ったことだ。民間議員は11月、2年に1度の改定を毎年にするよう提言。毎年改定は安倍首相の指示ですんなり決まった。
勢いに乗る民間議員は12月21日、診療報酬も議論すべきだと発言。診療報酬は病院経営に直結するため、医師会は横倉義武会長名で翌日、「大それた発言で青天のへきれき」とのコメントを出した。「聖域」の診療報酬本体に手を付ければ、震度はオプジーボの比ではなくなる。

【日経新聞】



来年の歯科界の話題のキーワードが「薬価改定」になるかもしれません。
by kura0412 | 2016-12-30 09:42 | 医療政策全般 | Comments(0)

高齢者受難の時代到来、70歳以上の高額療養費がアップ

12月15日、自民・公明両党の厚生労働部会が医療・介護制度改革案を承諾。これを受けて、2017年度の政府予算案が22日に閣議決定された。
社会保障にかかる費用は、新薬や医療機器の開発などによる医療の高度化、人口の高齢化などによって自動的に増える宿命を背負っている。厚生労働省の予測では、この社会保障費の自然増が、2017年度分は6400億円になると予測していた。
だが、安倍政権は「経済財政運営と改革の基本方針2015(骨太方針2015)」で、2020年まで社会保障の自然増を年間5000億円以内に収めるという具体的な数値目標を提示し、社会保障費を厳しく抑制することを政策に据えている。そのため、2017年度の予算も自然増を5000億円以内に抑制することが至上命令となっていたのだ。
そこで、今回、ターゲットとなったのが高齢者の医療・介護だ。なかでも大きな割合を占めるのが、これまで本コラムで何度も取り上げてきた70歳以上の人の高額療養費で、来年8月から低所得層を除いて限度額が引き上げられる。
ただし、70歳以上の人の医療費の引き上げは、高齢者の票離れを進め、政局にも影響を及ぼす。そのため、自己負担限度額の決定までには、最後までせめぎあいがあった。いったい、いくらで決着したのだろうか。

高齢者の高額療養費は通院のみの限度額がある
通常、病院や診療所を受診すると、年齢や所得に応じてかかった医療費の1~3割の一部負担金を支払う。だが、治療が長引いたり、手術を受けたりして、医療費が高額になると、その一部負担金を支払うだけでも大変になる。
そこで、健康保険では、患者が1ヵ月に支払う医療費の自己負担額に上限を設けており、医療費が家計の過度な負担にならないように配慮している。これが高額療養費で、年齢や所得に応じた限度額が決まっている。
70歳未満の人の限度額は、2015年1月から所得に応じて5段階に分類され、年収約770万円以上の高所得層は限度額が引き上げられた。
70歳以上の人の限度額も、過去に何度も見直しの議論は行われてきたものの、高齢者の反発を恐れた歴代政権は、特例措置によって据え置きを続けてきたのだ。
だが、今回は、社会保障費の自然増を5000億円に抑制するという安倍政権が掲げたミッションを遂行するために、最後の砦にも手をつけざるを得なくなった。
70歳以上の人の高額療養費の限度額は、所得に応じて4段階となっており、これまで通院(外来)のみの上限も別枠で設けられてきた。この外来特例は、2002年10月に、70歳以上の人の一部負担金が1割になり、それまでの老人医療制度の月額上限を廃止したことによる経過措置で、いずれは70歳未満の人と同じように入院もした場合の金額に一本化するはずだった。
高齢者の外来特例は導入から14年が経過し、1割負担が定着したこともあり、厚生労働省の審議会では、経済界側の委員から外来特例の撤廃を求める意見が相次いでいた。
だが、今回また政治的な理由によって、当面は外来特例が維持されることになった。また、自己負担額の引き上げ幅も、当初、提案されていた金額よりも低く抑えられた。

2017年8月から段階的に限度額の引き上げが開始
このなかで、いちばん対象者が多いのが、住民税課税世帯で年収約370万円以までの「一般」の所得区分の人で、約1250万人が影響を受ける。
一般の人の高額療養費は、当初予定では通院のみの限度額を現行の1万2000円から2万4600円に引き上げる案が濃厚だった。しかし、最終的には引き上げ幅は抑えられ、2017年8月から1万4000円、2019年8月に1万8000円にすることで決着。
また、通院の高額療養費については、1年間の上限額を14万4000円にする新たな制度が導入されることになったため、1年を通じた限度額はこれまでと同じになる。がんの通院治療などで継続的に医療費がかかっている人は、医療費が大幅に増える心配はない。
入院もした場合の世帯の1ヵ月の限度額は、これまで4万4400円だったが、来年8月から5万8000円に引き上げられる。ただし、こちらも多数回該当(過去12ヵ月間に、高額療養費に該当する月が3回以上あると、4回目から限度額が引き下げられる制度)が導入され、4回目以降は4万4400円になる。
厚生労働省の審議会で、「低所得層への配慮」はほとんどの委員の一致した意見だったこともあり、住民税が非課税の低所得層の限度額は据え置かれることになった。
一方、負担が大幅に増えるのが、150万人程度いる年収約370万円以上の「現役並み所得者」の人たちだ。
まず、通院のみの限度額は、現行の4万4400円から2017年8月から5万8000円に引き上げられ、2018年8月からは外来特例そのものが廃止される。同時に、上図のように所得区分は細分化され、通院も入院も関係なく限度額は一本化される。お金のある高所得層には70歳以下の人たちと同じ医療費の負担をしてもらおうというわけだ。
たとえば、年収1160万円以上の人で、1ヵ月の通院の医療費が100万円だった場合の自己負担額は、これまでの万4400円から、2018年8月以降は25万4180円と大幅にアップする。
これは、「年齢ではなく負担能力に応じた公平な負担」をという観点によるものだという。もちろん、社会保険は応能負担が原則だが、それを病気やケガをした患者という立場の人に背負わせるのは正しいことなのか。
とくに、高齢者は医療機関の受診率が高く、実際に自己負担している金額は現状でも現役世代の2倍になっている。今後、高所得高齢者世帯では、家計に占める医療費の割合はますます増えていくことが予想されるが、その先に待っているのはどのような社会なのか。

小泉改革による医療崩壊を彷彿とさせる安倍政治
前出の「骨太方針2015」では、社会保障費の自然増を年間5000億円に抑えるという具体的な数値を示す一方、2013年8月に出された社会保障制度改革国民会議の報告書で何度も用いられた「社会保障の機能強化」という言葉が消えた。
こうした医療費や介護費の厳しい抑制政策は、小泉改革を彷彿とさせる。小泉内閣時代に出された「骨太の方針2006」では、社会保障関連費の自然増を年間2200億円削減する政策が強行されたが、その結果、「医療崩壊」という言葉を生み出すまでに医療の現場を疲弊させることになった。
今回の社会保障費の自然増の抑制は、小泉改革よりも厳しい数字だ。その数字合わせのために、高齢者の高額療養費の負担増だけではなく、今回は後期高齢者医療制度の保険料軽減特例の見直し、入院時のホテルコストの見直しなども同時に行われ、病気やケガをした人の負担はどんどん増すことになるだろう。
「高齢者の高額療養費の限度額引き上げ」は、たんに制度改革のひとつかもしれないが、それを導火線として、小泉改革で経験したような貧困の増大、医療・介護の現場の疲弊につながる可能性は否定できない。
だが、少し前の過去は、そうした数字合わせの政策は都合よく運ばないことを教えてくれている。小泉改革は結局のところ実現せず、反対に社会保障を機能強化しようという大きな社会運動に発展したからだ。
今回の安倍政権による社会保障費の大幅削減は、2017年の日本の社会をどのように導くのか。目を凝らして見ていきたいと思う。

【DAIAMOND ONLINE・早川幸子】



こうゆう考えもあります。
by kura0412 | 2016-12-29 10:11 | 医療政策全般 | Comments(0)

社会保障費「5000億円増に抑制」では甘すぎる
不足財源を賄うため、いずれは大幅増税に

国の一般会計歳出の3割超を占め、最大の費目となっている社会保障費。12月22日に閣議決定された2017年度予算でも、2016年度の当初予算から4997億円増加し、32兆4735億円まで膨らんだ。今や社会保障費は、日本の財政を左右する大問題となっている。
当初、厚生労働省からは高齢化に伴う自然増として対当初予算比6400億円増の要求があったが、「経済・財政再生計画」の目安である5000億円増の範囲に抑制された。70歳以上の高額療養費制度の見直し(224億円削減)、後期高齢者の保険料軽減特例の見直し(187億円削減)、高額薬剤(がん治療薬「オプジーボ」)の薬価引き下げ(196億円削減)、介護納付金の総報酬割(所得に応じて介護保険料の負担を算出する方法)の導入(443億円削減)などが盛り込まれた。

数字合わせのための一時しのぎの抑制策だけ
全般的に70歳以上の高齢者や高所得者の負担を求めるものだが、「なんとか5000億円増という目標値に合わせた印象だ。一時的な効果しかなく、歳出への切り込みが不十分」と、日本総合研究所の湯元健治副理事長は指摘する。過去には補正予算で当初予算の抑制額を上回ったこともあり、補正予算での追加を含めた決算ベースの数字にも注目する必要がある。
年金については、12月14日に年金制度改革関連法が成立。賃金スライド(賃金上昇率によって年金額を改定する仕組み)を強化するなど、将来世代への影響の軽減に向けて一定の前進があった。一方で医療・介護費は急膨張が見込まれる。2025年までには団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となるからだ。後期高齢者は前期高齢者(65~74歳)と比べ、1人あたり医療費の国庫負担分が約5倍、介護費が約10倍になるとされる(2014年、財務省)。後期高齢者の人口が増えればその分医療費が膨らみ、財政に与える影響も大きくなる。

日本総研の湯元氏は、根本的な給付抑制につながる、以下のような制度設計を議論すべきだと指摘する。
(1)医療機関への「フリーアクセス」の制限、かかりつけ医の強化
日本では一般的に、患者が自由に病院を選び診療を受けることができる。そのため軽症であっても高度な医療設備を持った大病院を受診して過剰な医療サービスを受けたり、受診回数が多くなったりするケースが指摘される。病院側も診療報酬を得られるため、医療行為を抑制するインセンティブが働きにくい。
欧州では原則としてまずはかかりつけ医の診断を受け、症状が重篤な場合はかかりつけ医の紹介状を持って大病院に行くという病院の機能分化が進んでいる。日本でもかかりつけ医の受診へと誘導するため、かかりつけ医以外の病院では定額負担を課す案が厚生労働省で審議されたが、かかりつけ医の定義や負担額をめぐり議論は難航している。

(2)終末期医療の制限
高齢者などで回復の見込みがないと判断された場合でも、家族の希望に応じて胃ろうや点滴などによる延命治療が行われるケースもある。諸外国では延命治療が制限されることも多いが、日本ではかつて患者の人工呼吸器を外した医師が警察の捜査を受けた事件もあり、延命治療の差し控えはタブー視される傾向にある。そもそも、どこからが「終末期」なのかといった定義も難しく、終末期にかかる医療費の試算や削減の検討はほとんどなされていない。

(3)要介護認定基準の厳格化
介護費用は介護保険制度の始まった2000年度(3.6兆円)から急激に増え、2016年度には10.4兆円に達している。うち、4割弱は生活支援を中心とする要介護1〜2とその前段階の要支援1〜2に相当する軽度者が中心であり、本当に介護サービスが必要か、どのような介護サービスが必要かといった内容を精査する必要がある。また、限度額の範囲内であれば原則1割(高所得者は2割)の自己負担額の引き上げについても議論されている。

不足財源を消費税でカバーなら税率は17%に
以上のような医療・介護費の抑制策は不利益を被る人も少なくないため、これまでは不人気政策として先送りされてきた。今後も給付削減が困難であるとすれば、財源確保のために10%を超える消費税率の引き上げも検討しなければならない。
湯元氏の試算によれば「今後の社会保障の不足財源をすべて消費税でカバーする場合、17%への消費税引き上げ率が必要となる」という。さらに、子育て支援など現役世代への給付も充実させるとすれば、それ以上の引き上げも視野に入る。政治家も国民も、現実を直視しなければならない時期に来ている。

【東洋経済ONLINE】




後段の抜本的改正と称する3つの考え方は、考えることは理解できても、実際、医療・介護現場ではそう簡単に対応できるものではありません。
by kura0412 | 2016-12-29 09:56 | 医療政策全般 | Comments(0)

「薬価制度の抜本改革、メーカーの成長戦略か」と疑念
中川日医副会長、「中医協の自主性低下」も危惧

中央社会保険医療協議会薬価専門部会(部会長:西村万里子・明治学院大学法学部教授)は12月21日、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」を議論した。同基本方針は、薬価調査を毎年実施し、価格乖離が大きい品目について、薬価改定を行うことが骨子で、前日20日に開かれた塩崎恭久厚労相ら4大臣会合で合意していた。

日本医師会副会長の中川俊男氏は、基本方針に対し、「改めて読むと、非常に大きな問題がある。薬価改定財源を国民皆保険制度の維持ではなく、製薬企業の成長戦略のために充てる方針のように見える」と疑念を呈した。毎年の薬価改定を打ち出す一方、「費用対効果の高い薬には薬価を引き上げることを含め、費用対効果評価を本格的に導入」「より高い創薬力を持つ産業構造への転換」などと記載しているからだ。
さらに中川氏は、薬価専門部会でも薬価制度改革について議論しており、本来は中医協マタ―であるにもかかわらず、「4大臣合意」として基本方針が取りまとめられたことを踏まえ、「中医協の自主性が少しずつ失われつつあるのではないか」とも懸念、中医協での主体的な議論を訴えた。

一方、支払側の全国健康保険協会理事の吉森俊和氏は、薬価の毎年改定に向けた薬価調査の在り方をはじめ、基本方針には「来年中に結論を得る」とされている点について、その主体を質した上で、「一方的に経済財政諮問会議からボールが投げられることがないように留意してもらいたい。検討項目は多岐にわたり、相当ハードな議論になるだろう。優先順位を付けて、納得性のある議論をするためにも早く議論を開始してもらいたい」と中医協で主体的に議論していくよう、釘を刺した。
厚労省保険局医療課薬剤管理官の中山智紀氏は、吉森氏の質問に対し、2017年の年初から、薬価専門部会で議論を開始し、基本的な内容については同部会で議論を深めていくと説明。ただし、その結論は、関係省庁や経済財政諮問会議と最終的に調整をして、2017年末までに得るとした。
健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、各論について質問。薬価の毎年改定のための薬価調査が、「大手事業者等を対象に行い」とされている点について、大手4社で取り扱う医薬品の数量シェアは約75%だが、中小卸を外すことで、実勢価格を正しく評価できるか」と質問。さらに、DPCなど薬剤費が包括されている点数の扱いのほか、薬価制度と同様に特定保険医療材料の価格算定方式についても検討が必要だとした。

抜本改革の基本方針には、薬価の毎年改定のほか、
(1)オプジーボに代表されるように効能追加等に伴い、市場が一定規模以上拡大した薬については、新薬収載の機会を最大限活用して、年4回薬価を見直す、
(2)新薬創出・適応外薬解消等加算制度をゼロベースで見直し――が盛り込まれており、12月21日の経済財政諮問会議に報告される。
今後の焦点は、毎年改定の薬価調査の方法、「価格乖離の大きい品目」の定義、毎年薬価改定の財源の取り扱いだ。通常の薬価調査の在り方なども含め、2017年中に結論を得ることになっており、2017年の年明けから議論がスタートする。

「最大の目的は国民皆保険の維持」のはず
中川氏はまず、「このような基本方針を、中医協が主体的かつ自律的にまとめることなく、4大臣合意という形でまとまったのは、非常に遺憾」と述べ、「来年末までに結論を得る」などと指示されていることなども踏まえ、「中医協の自主性が少しずつ失われつつあるのではないか」と指摘し、診療側と支払側ともに自戒すべきと語った。
吉森氏が、今後の議論はハードであり、時間がかかると見通した点については、中川氏はこれまでも議論を重ねてきたことから、それほど時間はかからないとし、厚労省に対し、スピード感を持って議論を進めるよう求めた。「のんびり議論していたのでは、経済財政諮問会議が何らかの意見が出てきかねない。そうした危機感を持ってやってもらいたい」(中川氏)。

その上で、中川氏は、基本方針が、安倍政権がかかげる成長戦略を狙った方針に映ると指摘した。
基本方針は、序文に「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」の両立を基本理念として掲げている。中川氏は、オプジーボ(一般名ニボルマブ)の薬価引き下げを求めていたのは、公的国民皆保険の維持が最大の目的であり、現実にはこれらの両立は容易ではないと指摘。
基本方針には、「革新的新薬創出を促進するため、新薬創出・適応外薬解消等促進加算をゼロベースで抜本的に見直すこととし、併せて費用対効果の高い薬には薬価を引き上げることを含め、費用対効果評価を本格的に導入」「我が国の製薬産業について、長期収載品に依存するモデルから、より高い創薬力を持つ産業構造に転換するため、革新的バイオ医薬品およびバイオシミラーの研究開発支援方策等の拡充を検討、ベンチャー企業への支援」など、イノベーション評価や研究開発投資の促進を狙った記載が多い。

中川氏は、創薬支援の対象となる「我が国の製薬産業」とは、内資系企業に限るのか、外資系企業も含まれるかを質問。「新薬創出・適応外薬解消等促進加算で恩恵を受けたのは、内資系ではなく、外資系企業であるという歴史的な経緯がある」(中川氏)。厚労省保険局医療課長の迫井正深氏は、「我が国に必要な医薬品を提供するという制度設計を行っている」と述べ、内資系か外資系かを問わず、日本の医療において薬を提供する企業全体を指すと説明。
そのほか、現在は試行的に導入されている「新薬創出・適応外薬解消等促進加算」について、ゼロベースで見直すとされている点も質問。中川氏は従来から、革新的新薬創出の支援は、診療報酬ではなく、補助金等で対応すべきと主張してきた。中山薬剤管理官は、「現行の加算について、どのような課題があるかを洗い出して、研究開発投資の促進という観点で見た場合、どんな制度であるべきかをしっかり考え直すことだと理解している」と述べるにとどまった。
中川氏はそのほか、オプジーボの類薬に当たるキイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)の薬価の問題にも言及。
キイトルーダは12月19日、悪性黒色腫に続いて、PD-L1陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに対する効能・効果について薬事承認された。オプジーボはセカンドラインに使用するが、キイトルーダはファーストラインにも使用可能だ。早ければ2017年2月にも薬価収載される見通し。この点も踏まえ、中川氏はオプジーボの患者からの変更だけでなく、対象患者の拡大が見込まれる上、今後も他の癌種でも効能・効果の拡大が検討されていることから、厚労省に対し、迅速な対応を求めた。

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by kura0412 | 2016-12-27 10:13 | 医療政策全般 | Comments(0)

「全員加盟の医師の団体」の是非を議論、日医
委員長には京都大名誉教授の本庶佑氏

日本医師会の今村聡副会長は12月21日の定例記者会見で、日医内に設置した「医師の団体の在り方検討委員会」の検討状況の中間報告を説明、「医師偏在を含む医療のさまざまな問題をどのように解決するのか、そのためにどのような団体の在り方が必要なのかを検討している」と語った。
委員長は京都大名誉教授の本庶佑氏、副委員長は今村副会長で、委員には地域医療機能推進機構(JCHO)や日本病院会のトップなどが参加している。10月31日に第1回、12月8日に第2回の検討会を開いており、2017年春に最終報告を行う。議論の結果は厚生労働省の医師需給分科会などにも報告する方針。

今後の議論の方向性として、
(1)医師の団体が自主的・自律的に何らかの仕組みを作ることについて、その必要性の有無、(2)全員加盟の団体を形成することの是非や可能性・実効性の検討、
(3)全国的な視野に立ちつつ、都道府県を単位として、医師の団体等が大学等と協働し、また行政   とも連携して問題解決にあたる仕組みの検討、
(4)これらについて、例えば保険医や保健医療機関の在り方等も含め、議論の深化を図っていく――の4点を掲げている。

今村副会長は「医師が一つの団体に所属をして自主的・自律的に活動していくことが望ましいというのは、日医だけでなくさまざまな医療団体、学術会議で提言されていること。今回は本庶先生から、そうした団体の必要性が指摘され、とりあえず日医という場の中で議論をしていくことになった」と説明。
「全員加盟の医師の団体」が日医を指すのかという質問に対しては、「現実問題として、医師会以外に医師が加盟する団体を作るのは困難だと思うが、組織が必要かどうかということをゼロベースで議論していく」と今村副会長は回答。政治とのかかわりを含めて日医の在り方も検討の対象になるかについては「公益社団法人である日医と、政治活動を行う日本医師連盟とは別組織になっており、本来的には一緒にする話ではないと思うが、いろいろな意見が出てくるとは思うので、そのような話しも出てくるかもしれない」と述べた。

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by kura0412 | 2016-12-27 09:05 | 医療政策全般 | Comments(0)

保険医療制度、“焼野原”にするな
第57回日本肺癌学会学術集会、國頭・日赤医療センター

第57回日本肺癌学会学術集会(福岡市)で企画された12月20日のシンポジウム「医療経済から観た適正な肺癌診療」で、日本赤十字社医療センター化学療法科部長の國頭英夫氏が登壇、「私の第一の目的は、次の世代に今の医療システムを、焼野原にせずに、いかに引き継いでいくかにある」と述べ、高額薬剤の登場が相次ぐ時代にあって、「効果と副作用が同等なら、安い方の薬を使う」など、費用対効果を念頭に置いた処方行動の重要性を訴えた。

オプジーボ(一般名ニボルマブ)に代表される昨今の高額薬剤が社会問題化したのは、國頭氏が2015年の同学術集会で問題提起し、メディアで大々的に取り上げられたのが、一つのきっかけだ。國頭氏は、「オプジーボを非小細胞肺癌の適応用量で使用した場合、1人当たりの薬剤費は、年3500万円、5万人に使用すると年間約1兆7500億円」という試算を提示。國頭氏は、2016年4月の財務省の財政制度等審議会財政制度分科会でもプレゼンテーションした。
オプジーボの薬価は、2017年2月から50%引き下げられることになった(『オプジーボ、来年2月から50%引き下げへ』を参照)。國頭氏は20日の講演では、この薬価引き下げ問題には言及せず、批判の矛先は現場の臨床医だった。「新しいものはいいと、無条件で考えられている」(國頭氏)現状があり、結果的に効果や副作用が同等でも、新規、かつ多くの場合は高額な治療法に向かう傾向を問題視。オプジーボなどの高額薬剤については、最適な使用法を見いだすための臨床研究に取り組む重要性を強調した。
国際医療福祉大学大学院薬学研究科教授で、医療経済が専門で医師の池田俊也氏も、カナダのpCODR(pan Canadian Oncology Drug Review)でのオプジーボの評価などを紹介し、費用対効果評価が世界的な潮流になっていると説明。費用対効果評価に当たっては、将来の予後予測等も含めて行うため、推計が入るなど、手法の限界もあるものの、今後は医療経済の専門家と臨床医が協力体制を構築し、エビデンスを構築していく必要性を指摘した。
もっとも、せっかく費用対効果評価を実施しても、その結果を基にした医療が実践されなければ意味がないため、池田氏は「その辺りについて、医療者の合意形成に至っていないのではないのか」と問題提起した。「目の前の患者に最善を尽くすことは必要だが、我々は無償で医療を提供しているわけではない。その費用は、誰かが負担している。同じ効き目だったら、安い方の薬を使うという合意形成すらなされていない。医療者の間での意思統一がないと、国民を巻き込んだ議論に至らない」と述べ、医療者の取り組みに期待した。

オプジーボ、「無駄打ち」のコスト高く
國頭氏は、自身のCOIとして、日本イーライリリーからの講演収入を挙げて、講演をスタート。
まず問題視したのは、「Low benefit,High cost」の化学療法が採用されている現状だ。「効果も副作用も同じなのに、価格だけ数倍。なぜこうした治療法が取り入れられるのかが不思議だ。新しいものはいいと、無条件で信じられている」(國頭氏)。
幾つかの例を挙げたが、その一つが、サイラムザ(一般名: ラムシルマブ)。製造販売元は、日本イーライリリー。日赤医療センター化学療法委員会では、本剤の大腸癌に対する使用を全員一致で見送った。既存薬と効果・副作用が同じで価格が2.8倍であるためだ。
一方で問題になるのが、「High benefit,High cost」、つまりコストも効果も高い抗癌剤だ。その代表例がオプジーボ。同薬の有効率は20~30%と必ずしも高くはないが、効果持続期間が長いのでベネフィットは大きい。しかし、事前に有効な患者を見極めるバイオマーカーは現時点では確立されていない。また一過性に画像診断で陰影が大きくなり、その後に縮小して効果が明らかになるという「偽増悪」もあり、臨床的に無効であるとの判断、つまり「諦め時」が見極めにくい。さらに、有効の場合でも、いつまで投与を続けるべきかについては現時点では確立されておらず、無期限の投与になっているなどの問題もある。結果的に、オプジーボの場合、「無駄打ち」のコストがかかる可能性が高い、と國頭氏は指摘する。

オプジーボを効率的に使用するため、幾つかの臨床試験が現在進行もしくは検討中だ。
國頭氏が挙げたのは、無効であることを早めに判断するための観察研究。検討中なのは、有効な場合に、いつまで投与を継続するかという判断のための臨床試験だ。「開発者である本庶先生(京都大学名誉教授の本庶佑氏)は、オプジーボは半年程度の投与で十分、とおっしゃっている。それでその後も効果が続くなら、以降の投与は無駄であり、中止できればコストと副作用の削減につながる」(國頭氏)。
もっとも、これらの臨床試験は、「No excitement,No breakthrough」。國頭氏は、「こうした研究は今までの薬の効果をより高めはせず、ブレークスル―にはならない。だから面白くない。なのに、なぜわざわざこんな研究をしなければいけないのか」と問いかけた。
今後、日本では人口の高齢化が進み、高齢者人口が急増する。「安易に『全ての人を助けたい』と言えればいいが、保険財政が破たんしてしまったのでは、『この人たち』を捨てることと同じだ。それは最悪の選択だろう」(國頭氏)。「この人たち」とは、次世代を担う若者たちであり、「私の第一の目的は、次の世代に今の医療システムを、焼野原にせずに、いかに引き継いでいくかにある」と述べ、國頭氏は講演を締めくくった。

カナダ、オプジーボは「費用対効果の改善が条件」
池田氏は、英国のNICEのほか、カナダのpCODRなどの実例を基に、臨床効果だけでなく、費用対効果という社会的な価値を含めて、欧米諸国では医療技術の評価に取り組んでいる現状を紹介。評価の指標としては、ドイツを除いて、「QALY」(質調整生存年)を用いる国が多く、同指標には限界があるものの、「QALY」より優れた指標が現時点では見当たらないと説明。
費用対効果評価に取り組んでいる代表例が、イギリス。NICE(National Institute for Health and Care Excellence)という組織が取り組んでいる。全ての医薬品について評価しているわけではなく、国民保健サービス(NHS)を所掌する英保健省と相談して、対象品目を決めている。
NICE の2008年から2014年11月までのデータを見ると、評価対象となった267品目のうち、医薬品が246品目、うち抗癌剤の占める割合は多く、88品目に上る。ただし、評価結果は厳しく、医薬品全体では「推奨」となったのは49%だが、抗癌剤に限ると「推奨」は40%と下がり、「非推奨」43%、「一部推奨」7%、「その他」11%――という結果だ。
池田氏は、「日本でも、次々と出てくる新しい技術に対して、どう対応していくか」が課題になるとした。費用対効果評価の試行が、2016年4月から始まっており、2018年度診療報酬改定で、その評価結果も踏まえて価格の見直しを行う予定になっている。医薬品は7品目で、オプジーボも含まれる。

池田氏が紹介した、もう一つの海外の例が、カナダのpCODR。
抗癌剤を専門に分析している組織であり、オプジーボの評価結果を紹介した。非小細胞肺癌の場合、「ICER」(増分費用効果比)は、企業提出データは15万1560カナダドルと、通常受け入れられる水準である10万カナダドルを超えていた。企業が想定した予後予測モデルをpCODRが見直した場合の再分析結果は19万3918~21万9660カナダドルと、費用対効果はさらに悪化した。「最終的にpCODRは、『オプジーボには臨床的な効果があり、ぜひ保険償還すべきだが、費用対効果が一定の水準まで改善することが条件』と判断。つまりカナダの各州政府が企業と交渉して一定の価格まで下がった場合に限り、保険で使いましょう、という判断だ」(池田氏)。
費用対効果評価に当たっては、無増悪の状態から増悪の状態にどのくらいのスピードで悪化するか、悪化した場合の死亡率などのデータが必要になるが、短期的な臨床試験の結果を基に、長期的な予後を推計することになる。前提条件や推計モデルをによって推計結果が変わるため、その精度の改善は今後の課題でもあるとしたものの、池田氏は「エビデンスが十分そろわないからと言って、評価を先伸ばしにするのはおかしい。今、償還するか否か、現場で使用するかどうかを判断しなければならないので、エビデンスがそろった頃に費用対効果を評価しても、手遅れになる。現在利用し得る情報を最大限に活用して費用対効果評価を実施し、不確実性を考慮した上で、総合的に判断することが求められている」と述べ、費用対効果評価の重要性を強調した。

医師でもある池田氏は、「目の前の患者に最善を尽くす、という医学教育を受け、これまでやってきた。ところが、社会から見た価値や財源の問題を無視していいのか、という問題が生じている。患者だけでなく、財源のことも踏まえながら、総合的に判断していくことがこれからの医師に求められる役割」と指摘した上で、「薬の価格を細かく調整しても、結局、臨床現場で薬がコスト意識を持たずに使われていては意味がない。われわれ医療者が費用対効果をどう考えていくのか、ガイドラインに経済性の観点をどう取り入れていくかなどは、学会を中心に議論していくべき課題」と訴えた。

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by kura0412 | 2016-12-27 09:00 | 医療政策全般 | Comments(0)