FNNニュース「インプラント治療の光と影」

ここ数年、急速に普及しているインプラント治療の光と影を取材しました。

20歳以上のおよそ9割が虫歯になっている日本で、ここ数年、急速に普及しているインプラント治療の光と影を取材しました。

今、インプラント治療は歯を失ってしまった人にとって最後のよりどころとなっている。
東京医科歯科大学インプラント・口腔(こうこう)再生医学の春日井 昇平教授は「ほかの治療法である『ブリッジ』だとか、取り外しのきく『入れ歯』に比べると、義歯がしっかり安定する、すなわちすごくよくかめるということが一番のメリット」と話した。
自分の歯と同じように強くかめるインプラント。
インプラント治療の一般的な手術は、「歯槽骨」に直接穴を開けて、チタン製の「人工歯根」を埋め込み、いったん歯肉で完全にふさぐ。
すると3カ月ほどの間に、新たな骨が人工歯根に形成されていく。
これはチタン特有の性質で、骨と人工歯根が強力に結合する。
その後、セラミックなどの義歯を装着して治療は終了。
費用は、1本あたり10万円台~60万円以上と、歯科医院によって大きな開きがある。
インプラント治療を受けた男性は「満足しています。何でも食べられるし、自分の一生の財産」と話した。
ただし、インプラント治療は、高度な技術と経験が必要とされ、最近はトラブルが目立っているという。
春日井教授は「神経だとか血管を避けながら、なおかつ残っている骨の少ないところにドンピシャにピタッとインプラントを入れるとなると、かなり熟練しないと難しい」、「特にここ数年、ほかの歯科医院でやったインプラントのリカバリーとか、問題のケースがすごく増えてますね。それが今悩ましくて」と語った。
人工歯根がぽっかりと抜け落ちてしまったケースでは、外れた人工歯根が患者の副鼻腔(びこう)の中に入り込んでしまっていた。
このほか、神経の損傷による顔面神経痛などの後遺症や、手術中の死亡事故も起きている。
インプラント治療に30年の経験を持つ、堤デンタルクリニックの堤 一純院長のもとには、ほかの歯科医院で失敗した患者が、相次いで訪れている。
堤院長は「インプラントのボディー(人工歯根)が、本来なら歯茎の粘膜の下に入ってなければいけないんですね。長さ自体が11mm前後のものですから、3分の1が露出してしまっている。中にはやっぱり、とんでもない手術をしていただいている先生もいらっしゃることは事実なんですよ」と話した。
インプラント手術を2年前に受けた男性は、傷口から感染を起こしたため、歯科医に抗議した。
男性は「『失敗じゃない』と、突っ張っていましたね」、「その先生は最後に何を言い出すかというと、『わたしは借金している』という話、膨大な借金ですよ...、聞いたら」と話した。
歯科医院の経営が厳しいという、意外な現実がある。
理由は、保険の診療報酬の引き下げが続いていること、歯科医がおよそ9万7,000人と増えて、供給過剰になったことがある。
そうした中で、保険の対象ではないインプラント治療は、費用を自由に設定でき、一部の歯科医院にとってドル箱となった。
すでに、15年ほど前に確立されたインプラント治療が、今になって急激に伸びている要因の1つに、経済事情がからんでいる。
インプラント治療を受ける歯科医院の選び方に、堤院長は警鐘を鳴らしている。
堤院長は「インターネットのみで行かれることは、本当に危険そのものだと思います」、「(ウェブサイトに)非常にきれいなスライドがたくさん出ていますが、その中にはメーカーさんが提供してしまっているスライドが結構たくさん見受けられるんですよ。あれで、痛い目に遭って、来られている方が結構いらっしゃるんで」と話した。
インターネットに掲載されている「インプラント専門医」という肩書について、厚労省は、「医療法上の広告として認めていない」という見解だが、インターネットに関しては規制の対象外として、特に指導はしていない。
さらに大半の歯科医は、大学でインプラント治療を学んでいないという。
メーカーや学会による講習会のみで治療を始めるケースも多く、患者が歯科医の技術レベルを知ることは極めて難しい。
歯科医の技術格差について、春日井教授は情報公開の必要性を説いている。
春日井教授は「全部入れたインプラントを(第3者機関などで)ちゃんとフォローするようなシステムをつくる。そうすると(手術ミスなどの)問題も全部あぶり出されてくる。今は(インプラントが)落ちてもデータとして残らない。そういうシステムをつくると、ある医院とか、あるドクターでは脱落が多いとか、そういう話になってくる」と話した。
全国およそ6万5,000人の歯科医が加盟する日本歯科医師会が、インプラント問題について危機感を抱き、対応策を検討している。
日本歯科医師会の小谷田 宏常務理事は「トラブル事例については、個別にたくさんの情報が都道府県単位で集まっております」、「その辺の分析については、これからの作業になります」、「(トラブルの多い医院の公表は?)個人情報の問題もありますので、それが本当にできるかどうかについては、十分に検討しなければならないというふうに思います」と話した。
メリットと、リスクの二面性を抱えるインプラント治療。
患者にとって必要な情報の整備が、今、強く求められている。

http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00149366.html

【FNNニュース:02/14 02:08】
by kura0412 | 2009-02-14 11:43 | 歯科 | Comments(0)