「正確な医療情報 医師監修で発信 」
2019年 01月 07日
正確な医療情報 医師監修で発信
ネット上で事典公開広がる 患者の判断力向上も重要
医師が監修したインターネット上の医療事典を公開する動きが広がりつつある。医師と患者の間の知識の差を埋め、患者がネット上にあふれる不確かな情報に惑わされないようにするためだ。何人もの医師の目を通すことで、中立性や正確性の高さを担保する。何が本当に信じられる情報なのか。患者自身のリテラシーも求められる。
メドレー(東京・港)の作るオンライン医療事典「MEDLEY」は10人弱の医師を中心に作成。2016年から執筆や監修を担当する園田唯医師(38)はもともと呼吸器内科の臨床医。「患者と接するなかで医師と患者の持つ知識の差が大きく、うまくコミュニケーションがとれていないことが気になっていた」と話す。今も週2日は臨床の現場に出るという。
編集する上で心を砕くのは中立性と信頼性だ。
医療情報は医師によって採用する学説に差があり、結論や治療方針が異なることもある。メドレーでは専門外の項目は外部の臨床医数十人に執筆を依頼するほか、700人ほどが登録する協力医師が各項目のチェックにあたる。1カ月当たり、50項目以上が修正され続けているという。
結論が分かれる部分は両論を併記し、誤解を招く部分ははっきりと書くことにした。例えばB型肝炎の項目では「ジュースの回し飲みや共同入浴程度ではうつることはまずありません」などと記載されている。
現在、閲覧できる病名は1500ほどで、それぞれ1千~3万字程度。病名だけでなく、症状や薬名、病院名でも検索できる。風邪や糖尿病、がんなどのほか、「いじめ」などの項目もつくった。
園田医師は「患者の目線で分かりやすい言葉を心がけている。多くの医師の目線で修正していき、医師が作るウィキペディアを目指す」と話す。
米製薬大手メルクの日本法人MSD(東京・千代田)はインターネット上で無料で閲覧できる医療事典「MSDマニュアル」を公開している。
米国版の翻訳だが、米国では医師による8段階の審査を経るほか、翻訳の際にも国内の医療の専門家数十人がチェックにあたる。MSDマニュアルの担当者、大村雅之氏は「安心して使ってもらえるはず」と胸を張る。
インターネット上の医療情報の信ぴょう性が問題になったのは医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」。画像の盗用や委託ライターによる安易な記事作成などが16年11月に表面化し、運営していたDeNAは計10サイトを閉鎖することになった。
その後の第三者委員会による報告書では、▽掲載されていた記事の内容に医師のチェックがなかった▽他のウェブサイトからの不正確な引用があった▽実際に健康被害があったとのクレームが相次いでいた――ことなどが指摘されている。
ヘルスリテラシーに詳しい聖路加国際大学(東京・中央)の中山和弘教授(看護情報学)は「本来ならば正確な医療情報は国など公の機関がまとめて出すべきだ」と指摘する。米国では最新の研究成果をまとめた国立の医学図書館があるほか、公の機関が市民向けにインターネットで医療情報を公開しているウェブサイトが多くある。
日本でも国立がん研究センターや医師がつくる学会などが同様の取り組みをしているものの、中山教授は「様々な病気を広く取り上げたウェブサイトは少なく、患者にとっては内容が難しいのが現状」という。
中山教授は、患者などが医療情報に接する際に注意してほしいのは(1)いつ書かれたのか(2)何のために書かれたのか(3)書いたのは誰か(4)元ネタは何か(5)違う情報と比べたか――の5つ。これらの最初の一文字をつないで「いなかもち」と覚えてほしいと求めている。
中山教授は「目の前にいる医師よりも週刊誌の記事を信じる患者もいる。自分の健康を守るため、患者自身も情報の確かさを自分で判断する力をつける必要がある」とアドバイスしている。
(日経新聞)
ネット上で事典公開広がる 患者の判断力向上も重要
医師が監修したインターネット上の医療事典を公開する動きが広がりつつある。医師と患者の間の知識の差を埋め、患者がネット上にあふれる不確かな情報に惑わされないようにするためだ。何人もの医師の目を通すことで、中立性や正確性の高さを担保する。何が本当に信じられる情報なのか。患者自身のリテラシーも求められる。
メドレー(東京・港)の作るオンライン医療事典「MEDLEY」は10人弱の医師を中心に作成。2016年から執筆や監修を担当する園田唯医師(38)はもともと呼吸器内科の臨床医。「患者と接するなかで医師と患者の持つ知識の差が大きく、うまくコミュニケーションがとれていないことが気になっていた」と話す。今も週2日は臨床の現場に出るという。
編集する上で心を砕くのは中立性と信頼性だ。
医療情報は医師によって採用する学説に差があり、結論や治療方針が異なることもある。メドレーでは専門外の項目は外部の臨床医数十人に執筆を依頼するほか、700人ほどが登録する協力医師が各項目のチェックにあたる。1カ月当たり、50項目以上が修正され続けているという。
結論が分かれる部分は両論を併記し、誤解を招く部分ははっきりと書くことにした。例えばB型肝炎の項目では「ジュースの回し飲みや共同入浴程度ではうつることはまずありません」などと記載されている。
現在、閲覧できる病名は1500ほどで、それぞれ1千~3万字程度。病名だけでなく、症状や薬名、病院名でも検索できる。風邪や糖尿病、がんなどのほか、「いじめ」などの項目もつくった。
園田医師は「患者の目線で分かりやすい言葉を心がけている。多くの医師の目線で修正していき、医師が作るウィキペディアを目指す」と話す。
米製薬大手メルクの日本法人MSD(東京・千代田)はインターネット上で無料で閲覧できる医療事典「MSDマニュアル」を公開している。
米国版の翻訳だが、米国では医師による8段階の審査を経るほか、翻訳の際にも国内の医療の専門家数十人がチェックにあたる。MSDマニュアルの担当者、大村雅之氏は「安心して使ってもらえるはず」と胸を張る。
インターネット上の医療情報の信ぴょう性が問題になったのは医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」。画像の盗用や委託ライターによる安易な記事作成などが16年11月に表面化し、運営していたDeNAは計10サイトを閉鎖することになった。
その後の第三者委員会による報告書では、▽掲載されていた記事の内容に医師のチェックがなかった▽他のウェブサイトからの不正確な引用があった▽実際に健康被害があったとのクレームが相次いでいた――ことなどが指摘されている。
ヘルスリテラシーに詳しい聖路加国際大学(東京・中央)の中山和弘教授(看護情報学)は「本来ならば正確な医療情報は国など公の機関がまとめて出すべきだ」と指摘する。米国では最新の研究成果をまとめた国立の医学図書館があるほか、公の機関が市民向けにインターネットで医療情報を公開しているウェブサイトが多くある。
日本でも国立がん研究センターや医師がつくる学会などが同様の取り組みをしているものの、中山教授は「様々な病気を広く取り上げたウェブサイトは少なく、患者にとっては内容が難しいのが現状」という。
中山教授は、患者などが医療情報に接する際に注意してほしいのは(1)いつ書かれたのか(2)何のために書かれたのか(3)書いたのは誰か(4)元ネタは何か(5)違う情報と比べたか――の5つ。これらの最初の一文字をつないで「いなかもち」と覚えてほしいと求めている。
中山教授は「目の前にいる医師よりも週刊誌の記事を信じる患者もいる。自分の健康を守るため、患者自身も情報の確かさを自分で判断する力をつける必要がある」とアドバイスしている。
(日経新聞)
by kura0412
| 2019-01-07 11:09
| 医療全般