AI分析本格活用へ

AI分析、病を封じる 医療ビッグデータ本格活用へ

近い将来、医師の診療を受けたら激変ぶりに驚くかもしれない。従来なら見つけられなかった病気がわずかな兆候から早期に見つかったり、普段の生活習慣などから将来の病気のリスクを指摘されたり――。医療に関するビッグデータの本格活用が始まるからだ。カルテ(診療録)やコンピューター断層撮影装置(CT)画像、検査データを匿名で集めて分析し、サービスや新商品開発などに生かす。

「むかしは膵臓(すいぞう)がんの生存率は本当に低かったんですよ」。202X年、医師は早期に膵臓がんが見つかった患者のAさんに話しかけた。「でもAIのおかげでがらっと変わりました。頑張りましょう」

膵臓がんはいま発見3年後の生存率は15%程度。このパーセンテージが大幅に高まる可能性がある。膵臓がん患者の内視鏡やCTの画像を大量に集め、人工知能(AI)に学習させる。我々のCTや内視鏡の画像データをそのAIに分析させれば過去の事例をもとにがんの検出率が上がる。早期の発見・治療ができれば生存率の向上につながる。

「10年後に脳梗塞になる可能性が30%あります」。Bさんは健康診断後に医師から指摘された。磁気共鳴画像装置(MRI)の結果は「何も異常がない」だったから安心していたのに――。

「健康診断やMRIの結果から、脳梗塞の発生を分析する精度やスピードが上がるかも」。医療データの活用を目指すスタートアップ、MICIN(マイシン、東京・千代田)の担当者は話す。
同社はAIによるビッグデータ分析とオンライン診療を合わせたサービスを計画中だ。健康診断やMRIの結果で脳梗塞の発生を分析できるか研究している。MRIで異常が分からなくても、過去の脳梗塞患者の大量な医療データに共通の兆候があるかもしれない。ある検査値が5年以上、正常値を超えている人は発症率が高い、などだ。
マイシンは国立がん研究センターや東京女子医大、名古屋大などと個別に協議し、匿名データの提供を受ける。いまは各大学の倫理委員会の審査が必要だ。データ分析前に多大な労力や時間がかかる。新制度下でより大量のデータを取得できれば手間が省ける。AIの能力が高まり、病気の予見可能性が上がる。

深夜に交通事故で救急病院に運ばれたCさん。CT画像のデータからAIがすぐ最適な治療法を提案。早期の治療で回復も早かった。

AIを活用して医療画像の診断を支援する技術の開発を進めるエルピクセル(東京・千代田)。肺がんのCTなどのデータを使って研究開発をしている。島原佑基社長は新制度で新たに大量のビッグデータが出てくれば「サービス開発のラインアップをさらに広げられる」と期待する。
「世界中の企業を日本に呼び込むデータになる可能性もある」。みずほ銀行産業調査部の吉田篤弘氏は語る。
デンマークは政府主導で電子カルテの導入を進め、個人の遺伝情報も匿名化されて活用することができる。その結果、世界の製薬企業や医療機器メーカーが集まり、欧州最大級の医療産業集積地「メディコンバレー」が発展した。
医療制度が充実し、高齢化が進む日本には、大量の医療データが眠る。サービス向上だけでなく優れた薬が日本発で誕生する可能性もある。

▼医療のビッグデータ制度 政府は今年5月、医療データを匿名化して民間が利用できるようにする次世代医療基盤法を施行した。制度の核となるのは医療機関からデータを集めて匿名化し、企業や研究機関に有料で提供する「代理機関」だ。政府は今年、代理機関の成り手の募集を始めた。いまは日本医師会などが関心を示している。
代理機関は2019年中にも認定する見込みだが、いつどれだけの機関が認定を得るかは不透明だ。どのような形式でデータを集め、提供するかは代理機関の裁量が大きい。市場参入を狙う企業や研究機関は制度の詳細が明らかになるのを待つ状態だ。データを提供するか否かは医療機関の任意のため、大規模なデータが集まるには実際に運用が始まってから時間がかかる可能性がある。

(日経新聞)


将棋の世界のように、医療も人間がAIに負かされる時代が来ることもあるのかもしれません。侮ってはいけないし、ある意味この分野でも取り組みが遅れている歯科においても、検討を始める必要があります。
by kura0412 | 2018-12-11 10:37 | 医療政策全般

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