骨折予防ワクチンとなったらBRONJの対応は?

年1回投与型ビスホスホネートの実力と注意点
海外では全死亡減少のエビデンスも

今年11月、百花繚乱の骨粗鬆症治療薬にニューフェースが登場した。年1回の静注薬ゾレドロン酸(商品名リクラスト、製造販売元:旭化成ファーマ)である。海外では使用実績があるビスホスホネート製剤だが、どれほどの実力を持ち、治療ガイドラインではどのように位置付けられるのだろうか。
ゾレドロン酸は、国内では悪性腫瘍による高カルシウム血症や骨病変を適応とする薬剤(ゾメタ)として使われてきたが、海外では骨粗鬆症治療薬として既に115カ国以上で承認され実績を持つ成分である。
日本骨粗鬆症学会・日本骨代謝学会・骨粗鬆症財団編『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版』刊行から1年半しか経過していないため、そこにはゾレドロン酸に対する記述はない。
しかし、同ガイドライン作成委員会のメンバーで鳥取大学保健学科教授(同大附属病院リハビリテーション部長)の萩野浩氏は、骨密度の上昇、椎体骨折、非椎体骨折、大腿骨近位部骨折の各予防の評価指標において、アレンドロン酸やリセドロン酸と同等レベルのAランクに相当すると太鼓判を押す。

非椎体骨折を初めて有意に抑制した薬剤
実際、665例を対象に実施された国内の治験(ZONE study)では、主要評価項目の新規椎体骨折の発生をプラセボ群に比べて65%(P=0.0029)、副次評価項目の非椎体骨折を45%(P=0.0292)と、それぞれ有意に抑制した。国内試験において非椎体骨折の抑制に関して有意差が得られた初の骨粗鬆症治療薬だという。
大腿骨近位部骨折後患者に対する海外の試験では、プラセボとの比較で二次骨折の発生の抑制(P=0.001)のみならず、全死因死亡も28%(P=0.01)と有意に減少しており(P=0.01)、骨折予防で生命予後を改善できることが示唆されている(N Engl J Med. 2007;357:1799-809.)。
ゾレドロン酸の作用機序は他のビスホスホネートと同様、破骨細胞のアポトーシス誘導および機能喪失によって骨吸収を抑制するというもの。活性化された破骨細胞が骨を吸収する際に、骨に沈着したビスホスホネートが破骨細胞内に移行して、アポトーシスを誘導する。
ヒドロキシアパタイトに対する親和性がビスホスホネート製剤の中で最も高いために骨への取り込み量が多く、いったん溶出しても再吸収されてリサイクルされる可能性が示されている(Bone. 2006;38:617-27.)。骨組織中での半減期は150~200日とされ、長期間骨に取り込まれ、中断後も残存効果が期待できる(Drug Metab Dispos. 2008;36:2043-9.)。

萩野氏は、「長期間にわたり骨折が抑制でき、高リスクだが頻回受診できない人にとって、年1回の注射薬であることはメリット。ポリファーマシー(多剤併用)を防げるという利点も大きい」と語る。
使用可能な骨粗鬆症治療薬の強度は、デノスマブ(抗RANKL 抗体)とテリパラチド(副甲状腺ホルモン薬)が双璧とされる。ゾレドロン酸も、70歳以上で骨折がある人、あるいは骨折に至らないまでも骨密度が低い人が投与対象になるとみられている。
「重篤な患者には、まず2年ほど骨形成促進薬であるテリパラチドを用いて骨量を増やした後、デノスマブを5~10回打ち、ゾレドロン酸を2~3回投与するのが望ましい。テリパラチドの後治療としてゾレドロン酸あるいはデノスマブ単独というリレーもあり得る」(萩野氏)。
一方、ゾレドロン酸の国内第3相試験では、安全性評価対象症例333例中197例(59.2%)に副作用が認められている。頻度の高い副作用は、発熱、関節痛、筋肉痛、倦怠感などだが、いずれも重症には至らず、顎骨壊死の症例も国内の2年間の試験では報告されていないが、あらかじめリスクを伝えておくことが重要になる。

年1投与でも定期的なフォローは不可欠
萩野氏によれば、発熱、関節痛、筋肉痛、倦怠感といった副作用は、初回投与時だけで2回目以降は起きにくい。元々ビスホスホネートを使用している人、高齢者なども頻度は低いという。一方、ビスホスホネート関連顎骨壊死は、投与期間が長くなるほどリスクが高まる。なお、重度の腎障害(CCr<35mL/分)がある場合には用いることはできない。
年1回の投与では、その後患者が来院しなくなるなどの懸念もある。しかし投与対象となる高齢患者などでは、糖尿病や高血圧、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節リウマチなどの基礎疾患を持っていたりするケースは多い。投与の有無にかかわらず、かかりつけ医として内科的なフォローは不可欠だ。そのようなハイリスク患者にはゾレドロン酸を、“予防注射”的に年1回投与できれば理想的だという。
また、ステロイド内服者のステロイド性骨粗鬆症を早めにキャッチすることも大事だが、これに対するゾレドロン酸の骨折予防効果の報告はまだないため、アレンドロン酸もしくはリセドロン酸が第一選択となる。

「骨粗鬆症治療薬は、全般的に有害事象が少ない。骨密度測定などは連携病院で行うようにすれば、プライマリ・ケア医で十分対応可能だ」と萩野氏は語る。
  東永内科リウマチ科(大阪市東淀川区)は、骨粗鬆症を積極的かつ専門的に診療している診療所の1つ。リウマチ専門医である院長の兪炳碩(ゆう・へいせき)氏は骨粗鬆症の罹患率の高さに注目し「骨粗鬆症外来」を掲げ、リウマチ診療とともに同院の柱としている。
日本骨粗鬆学会が2015年に開始した認定医(第1期)の資格も取得。骨密度の測定については、DXA(デキサ)X線骨密度測定装置が高額であるため、かつての勤務先である淀川キリスト教病院(東淀川区)、近隣の済生会吹田病院(吹田市)などに測定を依頼している。骨密度とは無関係に、X線上で椎体骨折を認めれば治療を開始している。

毎年の“骨折予防ワクチン”として
兪氏は、「骨粗鬆症治療の最大の目的は、大腿骨近位部骨折の予防。X線があれば、低コストで簡便に脊椎の骨折をチェックできる。かかりつけ患者のうち高リスク者は、半年ないし1年に1回大腿骨骨折リスクを見極めている」と語る。
同院では、2012年からの4年間で、2600枚以上の紹介状・診療情報提供書を作成している。そのうち、「ビスホスホスネート関連顎骨壊死に対するポジションペーパー」に基づき、歯科医に注意を促すための紹介状・情報提供書は150枚を超えている。
ゾレドロン酸について兪氏は、「薬価も抑えめであり、毎年の“骨折予防ワクチン”という感覚で打とうという患者もいるのではないか。特に消化器症状や嚥下に問題を抱えて内服が難しい患者、コンプライアンスの悪い患者にとって有力な選択肢になり得る」とみる。
ゾレンドロン酸の薬価は約4万円と一見高額な印象だが、従来の月1回投与型ビスホスホネートの年間の薬剤費(約3500円×12回)を超える額ではない。
大腿骨近位部骨折が起これば高齢者の生活は一変し、その質は著しく低下する。そうしたリスクに対するアンテナの感度を高めて、治療効果のある薬剤を選択することは患者を利するのみならず、介護などに要する社会的費用の軽減にもつながるはずだ。

【日経メディカル】



骨折予防に対しては有用であっても、BRONJの可能性は大幅に高まります。
by kura0412 | 2016-12-20 10:18 | 歯科 | Comments(0)