『薬価改定 崩れる聖域』

薬価改定 崩れる聖域(下)医師会の懸念払拭なら… 絶対阻止派に綻びも

薬価の毎年改定に対する反対派の巻き返しは、驚くほど早かった。
「必要なら反対理由の説明に人を派遣します」。11月24日、塩崎恭久厚生労働相の携帯電話に医療機器メーカー幹部からけん制メールが届いた。
薬価の毎年改定が提案された経済財政諮問会議の前日のことだ。同じ日に都内で開かれた製薬関係者の会合では、日本製薬団体連合会の多田正世会長と、日本医師会の中川俊男副会長が気勢を上げた。「一緒に毎年改定を絶対阻止しよう」
薬価の毎年改定は何度議論されても実現しなかった「岩盤」だ。最近では甘利明前経済財政・再生相が2014年の骨太の方針に盛り込もうとしたが、厚労族の議員や医師会の反発で断念した。

薬価引き下げの影響をもろに受ける製薬会社が反対なのはわかるが、なぜ医師会が乗るのか。
ポイントは2年に1度、医師の技術料などを変更する診療報酬改定だ。薬価は診療報酬と同時に改定され、原則2年間固定される。ただ実際に病院や薬局が仕入れる価格は、時間がたつと公定価格である薬価より下がっていく。薬価改定はこうした実勢価格に公定価格を合わせる作業で、通常はマイナス改定になる。

下げ分を上乗せ
薬価引き下げで浮いた分の一部は医師の技術料など診療報酬本体に上乗せされてきた。毎年改定になれば上乗せの“原資”が半減する可能性がある。これこそが医療関係者の懸念だ。
ある自民党のベテラン厚労族議員は「引き下げ分を診療報酬本体に充当するのはルール化されている」と主張する。
その根拠の一つは1972年、中央社会保険医療協議会の建議だ。そこには「薬価の引き下げで生じる余裕を(医師の)技術料を中心に上積みする」とある。背景には医療保険制度の改正を巡って対立していた当時の佐藤栄作首相と日本医師会の武見太郎会長の手打ちがあったとされる。

反対大義に無理
薬価が急に下がると院内で薬を処方する病院の経営全体に響きかねない――。当初は「技術料の上乗せは激変緩和措置」との解釈もあったとされるが医薬分業が進み、院内処方は減っている。財政赤字も膨大になる中、40年以上前の建議を毎年改定に反対する大義にするのには無理がある。
政府は薬の効能や対象となる患者が増えたタイミングで価格を動かす「随時改定」も同時に実施する方針。反対派はこれを容認し「全医薬品の毎年改定」の阻止に絞る。
ただ反対派に綻びがないわけではない。「引き下げ分を技術料に少し上乗せすることを担保すれば、医師会は毎年改定を容認してしまうのではないか」(製薬大手幹部)。製薬会社側にはこんな不安もよぎっている。

【日経新聞】
by kura0412 | 2016-12-13 09:38 | 医療政策全般 | Comments(0)