薬価の毎年改定に対しての日医のスタンスは?

「断固反対」、薬価の毎年改定、製薬団体
薬価専門部会、関係団体ヒアリング、「改定財源」論議にも発展

中央社会保険医療協議会の薬価専門部会(部会長:西村万里子・明治学院大学法学部教授)で12月9日、日本製薬団体連合会(日薬連)、米国研究製薬工業協会(PhRMA)、欧州製薬団体連合会(EFPIA)の日米欧3団体は、企業の競争力の弱体化などの理由から「毎年の薬価改定には断固反対」と主張した。日本医薬品卸売業連合会も、医薬品の安定供給に支障を生じかねないことから同様に反対した。
9日の同部会の議題は、薬価制度改革に関する関係団体へのヒアリング。オプジーボに代表される高額薬剤問題に端を発した改革は、中医協でも議論してきたが、12月7日の経済財政諮問会議で、「薬価の毎年改定」でほぼ意見が一致、安倍晋三首相も同会議の議論を踏まえ、塩崎恭久厚労相ら4大臣で改革案を取りまとめるよう指示しており、関係団体の姿勢が注目されていた。

製薬3団体は、毎年改定の反対理由として、(1)企業の競争力を一様に弱体化、(2)イノベーションの創出や医薬品の安定供給に支障――などを挙げ、「2年に一度の診療報酬改定と合わせて薬価改定を行うことが、医薬品と技術の適正な評価とバランスの確保につながると考えており、薬価のみ毎年改定を行うことは、診療報酬体系とのバランスを損なうことになる」「薬価制度には、さまざまな政策的なルールが導入されており、改定に当たって、その効果を検証し、十分な議論を行うためには、少なくとも2年の間隔が必要」と主張した。日薬連会長の多田正世氏は、「9日の議論が、4大臣会合において反映されることを期待している」と求めた。
もっとも、仮に毎年改定を実施する場合、全医薬品を対象にするか一部に限るかについての意見や、塩崎厚労相が経済財政諮問会議に提案していた、「効能効果が審議・承認された医薬品」や「当初の予想販売額を上回る医薬品」の新薬収載(年4回)時の薬価見直しに関する言及はなかった。

日本医師会副会長の中川俊男氏は、製薬3団体の意見に対し、薬価改定財源を診療報酬改定財源に充てることを念頭に置いているのかなど、毎年改定に反対する理由を質問。多田氏は、「医療保険制度全体を見据えた議論が必要。改定は、保険医療の環境変化に対応するのが目的。診療報酬と薬価制度は、一体の制度であるため、その一部のみを取り出した改定には反対という意味だ」と述べ、財源問題は別の話と回答した。中川氏は「一体の制度」との考えは支持したものの、財源については「私は別の問題とは考えていない」と返した。
全国健康保険協会理事の吉森俊和氏は、「2年に1回の改定がベストという合理的理由はあるか」と質問。多田氏は、「経営は、予見性を持ってやるべき。毎年改定や期中の改定は、経営の前提条件が変わること」と述べた上で、「できれば長い方がありがたい」としたものの、薬価と実勢価格の乖離が続く問題もあるとし、「2年はバランスのいい期間ではないか」と回答した。
この回答を捉え、中川氏は、「頻回に薬価を改定する必要が生じないよう、抜本的に制度を改革するのが我々の目的」と指摘した。

毎年の薬価改定、「流通改善に逆行」
卸連は、薬価の毎年改定に反対する理由の一つに、「流通慣行に逆行」を挙げた。医療機関と医薬品卸との価格交渉において、個別の医薬品ごとに納入価を決める「単品単価取引」を進めない限り、実勢価格を薬価改定に反映するのは難しい。しかし、毎年改定になれば、より短期間での価格交渉が求められるため、購入する医薬品全体の納入価を決める「総価取引」がかえって増加し、個別の納入価が分からなくなり、流通改善に逆行すると指摘。そのほか、改定前の買い控えと返品も増え、結果として必要な医薬品の欠品、緊急配送が増加するなど、卸に多大な負担がかかりかねない点も懸念した。

日医副会長の松原謙二氏も、「年1回の薬価調査は手間がかかる」としたほか、価格交渉は医療機関にとっても負担のため、「総価取引」が増加するほか、交渉努力をしなくなり、かえって薬価が下がらなくなる懸念もあり、結局はプラスにはならないとの見解を示した。
健康保険組合連合会理事の幸野庄司氏は、毎年改定の可否を判断するために、薬価改定後2年間の間に、実勢価格がどのように動いているのかについて質問。「改定直後に価格を下がるのか、それとも経年的に変化していくのか、あるいは高止まりして、薬価調査後に下がるのか」(幸野氏)。卸連の村井泰介氏は、個別の医療機関と卸との関係で納入価が決まるため、全体の納入価の推移についてのデータは持ち合わせていないと回答。
そのほか、幸野氏は、「業務量が増え、多忙なことは分かるが、毎年改定は、物理的にできないわけではなく、克服できるということでいいのか」とも確認。

「薬価制度改革の議論、あくまで中医協」
もっとも、9日の議論で、診療側と支払側ともに、最も問題視したのは、薬価制度の改革論議の進め方だ。
吉森氏は、12月7日の経済財政諮問会議に、塩崎厚労相が資料を提出したことに触れ、「中医協での議論が十分になされないままに、『年内(の結論)ありき』で、物事が進むのは問題。鉄は熱いうちに打て、と言うが、何が正しい打ち方なのかをきちんと議論する必要がある」と指摘。さらに薬価の毎年改定は以前から中医協でも議論になっているとし、「一から議論するより、過去にどんな議論があったのか、想定されるメリット、デメリットを整理した資料を出してもらいたい」と厚労省に求めた。

続いて中川氏も、「前回の中医協でも言ったが、薬価制度改革の議論を進めるのは、経済財政諮問会議から指示されたからではなく、中医協で自主的かつ自律的に議論を進めていくべきという議論に至ったからだ」と述べ、薬価制度改革論議は、あくまで中医協主導で進めるべきと釘を刺した。
その上で、中川氏は、中医協の議論は、高額薬剤が公的医療保険制度を揺るがしかねないことに端を発しているとし、厳しい保険財政下、「原価計算方式と類似薬効比較方式も含め、薬価制度自体を抜本的に見直すのが目的」と改めて確認。これに対し、塩崎厚労相の資料では、「実勢価格・量を機動的に少なくとも年1回薬価に反映」としている一方、「製薬産業について、より高い創薬力を持つ産業構造に転換」と記載していることから、「国民皆保険が危機に陥っている状況を、厚労省として何とかしようという思いが伝わらない」と中川氏は指摘した。

厚労省保険局医療課長の迫井正深氏は、薬価制度改革の目的は「イノベーションの推進」と「国民皆保険の持続性」の両立にあるとし、中川氏の指摘事項は重要で、同様の認識であると説明した。
この迫井課長の発言を受け、中川氏は、仮に薬価の毎年改定が導入された場合でも、「薬価改定財源を、診療報酬本体の改定財源に充てる従来の方針は、厚労省として今後も変わることはないのか」と改めて質した。迫井課長は、「従来から、改定率や改定財源は、政府の予算編成過程の中で議論してきた。そのプロセス自体は今後とも続けていく」と回答。対して中川氏は、「プロセスとしてはそうだが、それ(改定財源を本体財源に充当すること)を要求していくべき」と要求した。「厚労省は、財政当局なのか、国民皆保険を守る省庁なのかが分からなくなってきている」(中川氏)。

外国平均価格調整、「米国を外すべき」
薬価制度改革の個別課題として、議論になったのは、「外国平均価格調整」だ。これは薬価を算定した結果、外国平均価格(米、英、独、仏の4カ国)の1.25倍を上回る場合は引き下げ調整、0.75倍を下回る場合は引き下げ調整をする仕組み。ただし、4カ国の最高価格が最低価格の3倍以上の場合、当該最高価格を除外した外国平均価格を用いる。

中川氏は、米国の場合、薬価は公定価格ではなく、「メーカー希望小売価格」であるため、「外国平均価格調整」の在り方を抜本的に見直すべき、という持論を展開。具体的には、同調整の対象から、米国を除外すべきとした。
これに対し、日本製薬工業協会会長の畑中好彦氏は、「米国の価格は従来から問題になっている」と認めたものの、「米国は世界最大のマーケット」とし、海外の企業も日本の薬価の在り方を注視しているとし、米国価格の除外には、慎重な議論が必要だとした。

中川氏はそのほか、製薬3団体資料の「外国平均価格調整」における、「薬理作用類似薬との価格バランスや、為替レート変動の影響という観点も踏まえ、極端な乖離が生じた場合のみに限定的に適用する方向で検討すべきと考える」との記述の意味を質した。
専門委員の加茂谷佳明氏(塩野義製薬株式会社常務執行役員)は、「今は1.25倍を上回ったら、引き下げの対象になる。それが妥当なのかどうか。(類似薬効比較方式や原価計算方式による)算定値の補正措置という概念から言えば、こうしたルールは趣旨から逸脱しているのではないか、という問題認識を我々は持っている」と回答した。
中川氏は回答を受け、「外国平均価格調整」の在り方を議論する以前の問題として、(類似薬効比較方式や原価計算方式による)薬価算定が妥当かを見直すことが必要、と返した。

「製造総原価」の公表めぐり議論
そのほか中川氏は、製薬3団体が、「新薬を原価計算方式で算定する場合、医薬品の価値を十分に反映することには限界がある」とし、「製造総原価は、企業秘密であり、公表できない」とした点も、不透明感があるとし、「身も蓋もない」と問題視した。
多田氏は、「製造総原価は、企業秘密」と答え、不当競争防止法などを踏まえても、「原価などの公表はあり得ない、というのが産業界のルール」と述べ、「薬価を決める非公開の場では、製造総原価を説明し、最終的に納得を得ているとした。中川氏は、対象疾患が拡大した場合の薬価引き下げについての考えを質すと、多田氏は「大きく原価が下がる状況になった場合、薬価を下げるのが我々の考え」と回答した。

【m3.com】



製薬業界が反対するのは分かりますが、この問題に対しての日医のスタンスは?
そして日歯は??
by kura0412 | 2016-12-10 09:24 | 医療政策全般 | Comments(0)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


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ミラー片手に歯科医師の本音

『口腔健康管理とかかりつけ歯科医』

今回の改定を医療全体的にみると三つの注目すべき特徴がありました。一つは伸び続けていた調剤には厳しい結果となったこと。7対1の入院基本料の要件の厳格化。そして改定の中で「かかりつけ」という概念が明確に組みこまれまれました。
「かかりつけ」に関しては医師、薬剤師に加え歯科でも導入されていますが、「かかりつけ歯科医」はあくまでも「保険用語に一つ」というイメージがあります。しかしながら医科、薬科ではこの「かかりつけ」を軸に医療体制の新しいイメージを描きつつ、今後の政策を積み重ねる意気込みを感じます。そこにあるのは、地域包括ケアの推進がベースにあっての考えです。例えば、今回の改定では紹介状のない大病院の初診・再診料自己負担は大幅なアップとなりました。また、調剤の方ではかかりつけ薬剤師指導料算定をきっかけに、患者とのコミニュケーションを密に図ろうとする試みを目指します。
一方、医療政策として改定と対をなす基金は、歯科医療の環境整備にも益々重要な意味を持ちます。ただ、今回改定の中でも可能性の秘めた項目としていくつか点数化は見られましたが、基金が改定とリンクすることなく、独立しての事業になっている印象は拭えません。限られた予算の中でのやり繰りです。W改定に向けての改定と基金との相乗効果を目指す為の戦略と、それに沿った事業の立案が必要となってきます。
包括ケアを視野に入れての「かかりつけ歯科医」でポイントとなるのが口腔ケアです。その有用性は医科からも視線が注がれています。然るに、口腔ケアという言葉が、ブラッシングのみの狭義に捉えられている現状があり、本来の口腔ケアの意味する嚥下機能も含めた口腔全体を管理する視点の広がりが不足しています。その観点からみると、今回日本歯科医学会が「口腔健康管理」と称した新たな口腔ケアの概念の提唱は機知を得た提案です。摂食機能療法などを加えた従来の歯科治療を「口腔機能管理」、歯石除去、PTCなど歯科衛生士の実施するエリアを「口腔衛生管理」、そして一般の方が実施する口腔清拭、食事介助などを「口腔ケア(狭義)」として、この三点を総じて「口腔健康管理」としました。
広義の口腔ケアとして定義する考えは、真の意味での「かかりつけ歯科医」が目指す所です。既にW改定に向けての作業が進む中で、この概念を一日も早く歯科界内部で意見の確認をしながら、国民への認知を広めなければなりません。
日医はかかりつけ医機能研修制度を創設し、独自の「かかりつけ医」というものを推し進めようしています。そしてその講習の中に「かかりつけ医の摂食嚥下障害」のメニューも組み込まれています。また、地域包括ケアに向けた「かかりつけ連携手帳」の作成に着手し、そのスピードは目を見張るものがあります。『かかりつけ歯科医』、『口腔健康管理』、『摂食嚥下障害』のキーワードは、地域包括ケアの中で育ちそうな芽であることは間違いありません。残す課題は、地域包括ケアを主導する日医、地区医師会との更なる連携の強化と事業実現に向けてのスピードを加速させることです。




『食べる=生きる』

地方消滅で日本の少子化高齢化に対して大きな警笛を鳴らした日本創成会議が「高齢者の終末医療を考える」と称したシンポジュウムを先日開催しました。その議論を聞くに、地方消滅と終末医療?そんな一見結びつかない二つが、これからの日本の大きな課題となっています。それと共に、改めて人の死という死生観を医療分野の一角に位置する歯科医師として、見つめ直す時期が今あるものと感じます。
高齢化になって、いわゆる寝たきり老人に対していろいろな考え方が示され、特に胃瘻の是非については大きな意見が分かれるところです。欧米においては日本で常習化している高齢者、寝たきり老人への適応が少ないとのこと。この点に関しては中医協でも前回の改定では、嚥下検査の有無によって評価を変えるという対応がなされ、また今回の改定での議論では、その経過の調査結果も示されています。しかしその一方、この問題が話題になって、胃瘻によって日常生活が暮らせるレベルになる患者さんまで拒否するような実例があり、医療現場その対応に苦慮する場面が多々見られる話も聞きます。
この問題は、医療、介護費増大から語られることが多かったのですが、タブー視されていた死に対する考え方が社会問題の遡上に挙がっていることは、大きな時代の変化として捉えられます。そして、食べることは従来から歯科界も提唱するように、単に延命だけが目的ではありません。生きていることの喜びを感じる、人間としての尊厳に係わる重要な日常生活の一つなのです。
医療関係者以外でも「食べる=生きる」を唱える人がいます。「食べることは、呼吸と等しく、いのちの仕組みに組み込まれているもの。」とは、料理研究家・辰巳芳子氏が唱えている私の好きな一文です。そして欧米での判断基準となる「食べる」ことの有無が延命治療の是非判断の基準となる考え方は、経済問題を抜きにしてもその専門家集団である歯科界の属するものが改めて真摯に議論し、一つの考え方を社会に示す責務があると考えます。
然るに、だかからといって歯科界が社会の先頭に立って、自らが死生観の変更を訴える必要はありません。これは社会全体で既にうごめく潮流であり、歯科界はあくまでもこの分野に特化した専門家として食べることの重要性、必要性を改めて世に唱え、それを臨床の場で実践を積み重ねれば良いのです。果たしてこれをも医科が歯科から奪い取り、領域拡大を目指すのでしょうか。
この死生観の議論の推移を見守ると共に、食べることへの支援を更に強める為に、摂食嚥下への歯科領域からの積極的なアプローチが必要となってきています。何故ならば、咀嚼と嚥下は対となって多くの結果を導き出すことが立証され、食べることを特化した専門家としての医療人としては、現状のままでは取り組みが不十分だからです。歯科医療は新たなる視点をもって社会に貢献する時代の到来です。あとはそれを導き、フォローする具体的な政策を積みかさねることです。歯科医療は真の意味での生きる喜びを支援する世界を導きます。



『飲み込みは大丈夫ですか』

基金における事業が一つのきっかけとなって、在宅診療、医療連携が新たな展開に進み始めています。それぞれの医療環境の実情を踏まえて、地域独自の取り組むこの基金を利しての新たな事業は、診療報酬と対になるこれからの歯科医療全体へ大きく波及する政策です。そしてこの基金は、来年度において今年度予算規模に介護関係が上乗せされる計画となっており、医療介護の垣根を越えた地域包括ケアシステム構築としての発想が必要となっています。
歯科における在宅診療の中心は、従来の診療所における診療の延長としての義歯調整から始まり、口腔ケアの対応へと進んでいます。口腔ケアの効果は、既に誤嚥性肺炎予防という観点から医科の関係者は元より介護関係者にも認知されています。それに加えてここきてスポットライトが浴びているのが、今回の基金でもいくつかの地域で事業が計画される摂食嚥下の分野です。
しかしながら、介護保険の認定審査項目にも「えん下」という項目がありながら、実際に摂食嚥下の対応は、一部の大学病院、リハビリテーション、耳鼻科があって積極に取り組んでいる病院以外、殆ど対応出来ていないのが介護、医療の世界の現状です。その理由は簡単です。採算が合わないからです。特に歯科においては無報酬に等しい状態です。
 嚥下の対応は、適応が少ない耳鼻科領域の手術以外その改善方法の中心は訓練、姿勢の改善、食形態変更のアドバイスなどで薬の処方もありません。検査も歯科では保険算定が認められていない内視鏡・造影検査と問診を中心としたスクーリングテストです。近年、摂食機能療法が歯科でも算定可能となりましたが、それは鼻腔栄養、胃瘻増設患者に限定されており、重度になる前の本来対応が必要な患者さんには算定出来ません。
そしてもう一つこの分野を歯科が推し進めるハードルとなるのが、隣接する医科の反応です。現在、摂食嚥下リハビリテーションは歯科医師を中心としたアプローチと耳鼻科、あるいはリハビリテーション科の医師を中心としたアプローチの二つがあります。本来ならば他の疾患でもあるように医科が歯科は口腔内のみと突っぱねるところですが、儲からない中で耳鼻科医の成り手が減少し忙しく手が回りません。それと共に、「摂食・嚥下リハビリテーション学会」の「・」がなくなり「摂食嚥下リハビリテーション学会」に名称を変えたように、嚥下と摂食、咀嚼は一連の動作であり、咀嚼のプロである歯科医師を係わりから排除することは出来ません。咀嚼して嚥下することによって食べることが出来るのです。
もし、嚥下を歯科の領域と社会から認知されれば、歯科診療所が「食べる」ことの社会ステーションと成り得ます。口から食べることへの支援が生きる為、生活を支える源であることが歯科診療所から発信が可能と成ります。したがって報酬的評価は低くても、嚥下に問題ある人が歯科診療所に相談することへの広がり目指し、その実現に向かっての政策を積み重ねる必要があります。先ずは先生方が診療所で「飲み込みは大丈夫ですか」の一言を問える環境作りがその第一歩です。




『この道しかなかった中で』

この原稿を書いている今、衆議院選挙の結果は分かっていません。しかし事前の各マスコミみれば自民党圧勝予測です。選挙は投票箱が閉められるまで何が起こるか分かりませんが、少なくても安倍退陣はなく、任期2年を残しての安倍首相の解散の決断は見事成功となりそうです。
メディアは大義ない解散と騒ぎましたが、今回の安倍首相の解散目的は明確です。日本の経済再生を目指し、自らが提唱したアベノミクスの敢行の為の長期政権への道を切り開くことです。無論、長期政権となってもアベノミクス成功の確定はありません。しかし野党からは、アベノミクスに代わって日本経済再生を可能とする具体的な対案は示されませんでした。マニフェストに踊らされて政権交代を選択したことを悔やむ多くの有権者は、その提示なしで現在の野党にもう投票することは出来ません。また第三極への期待感も、離れたりよりを戻したりの腰の落ち着きのなさを感じ、一時のブームに終わりそうです。となると自民党のキャッチフレーズ「この道しかない」、安倍政権に託すしか今回の選挙では有権者に選択肢がなかったことになります。では長期政権となるこれからの政治情勢を踏まえて、歯科界はどう安倍政権と向き合わなければいけないのでしょうか。
今回の総選挙でのマスコミの世論調査では、有権者は社会保障に対しては経済再生と並び非常に関心をもっていましたが、その政策論戦は殆ど成されませんでした。特に自民党が示した政策は、医療に関してはないも等しいような扱いです。唯一あったのが、既にスタートしている社会保障改革のプログラム法案のスケジュールに則って進めるということです。但しこのプログラム法案の対となす消費税増税が延期となったわけですので、そのスケジュールの変更は必要になってきました。恐らく16年度改定に対しては、これを理由に財務省から厳しい対応を迫られるのは必至です。
この現実の意味するものは、現行の医療制度、水準を是とする考え方がベースにあります。消費税増税、経済再生となって税収が増えたとしても、けっして医療の大幅な拡充が成されるわけではありません。それどころか、もし経済再生と成らなければ医療費はそぎ落とされる可能性もあります。これからは少子高齢化、財政再建を踏まえて、いかにレベルを落とすことなく現行の医療を保つことへの模索が始まります。しかしながら理不尽な政策に対して、責任ある医療人として対応することは当然であり、大きな改善が必要な歯科と、既に一定の医療経営環境を維持している医科とでは立ち位置が異なります。先ずはこの点への内外の理解を求めることがスタートとなります。
選挙終わるのを待って各種医療政策への対応が加速的に進みます。幸いにして政治の世界では現在の歯科医療の現状は理解されつつあり、一つ一つの政策毎の対応スタンスが求められています。果たしてこの道しかなかった中で、歯科界はどう歩みを進めるべきなのでしょうか。歯科界の政策対応能力と政治力の真価が問われています。




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