『「名医」検索サービスは、どう名医を判断しているのか』

「名医」検索サービスは、どう名医を判断しているのか

名医を見つける方法を知っているか?
みなさんは病院を選ぶとき、どうしているだろうか。掛かりつけのクリニックへ行く、ネットの口コミサイトで良さそうな病院を探す、友人・知人に評判を聞いてみる……。
軽症の場合は良いけれど、重篤な病気になった場合は、そう簡単には決められない。
特に外科手術を行うとなると、症状によっては命に関わる場合もあり、どの医師に執刀してもらうかが心身ともに大きな負担を強いられるからだ。
とはいえ、良い医師を見つけるには情報が少なすぎるのが、日本の医療界の現状だ。書店に行けば、名医を特集した本も並んでいるが、どんな基準で選ばれているのか一般人にはなかなかわかりにくい。なかには掲載料という名目の広告費を取って、医師を紹介しているケースもある。病院のホームページで検索しても、手術実績などのデータを掲載しているところは意外にも少ない。技術面では優れていても、情報公開に関しては、日本は「医療後進国」と言っても過言ではない。
こういう現状を打破しようと始まったサービスがある。それは、名医を本気で探している人向けに作られた名医検索サイト「クリンタル」だ。2015年8月にリリースされ、現在、月に数十万の閲覧数、月に10%以上の割合で伸びている、知る人ぞ知るサイトである。
検索は、「有数の専門医検索」と、「街の名医検索」の2つがある。サイトの手順に沿って検索をすると、その疾患に関する名医が一覧表示される。ドクターは「臨床実績」「学術活動」「受診のしやすさ」の3項目が5段階評価で表示。2016年11月30日現在、有数の専門医検索の場合は24の診療科、129の疾患、街の名医検索の場合は36の診療科に対応している。
例えば、消化器外科では、胃がんに始まり、食道がん、肝臓がん、膵臓がん、胆道がん、大腸がんなどが細かく分類されており、その手術の実績がある名医が表示される仕組みだ。有数の専門医は3686名が名医として登録(同11月30日現在)をされており、この数は、日本の医師20万人の約1.8%にあたる。

どのように「名医」と判断しているのか?
では、どうやって名医と判断しているのか、誰もが気になるところだ。開発にあたった株式会社クリンタル代表取締役社長の杉田玲夢(すぎた・れいむ)氏にきいてみた。
「このサービスには、診療科ごとに3、4名の現役医師に協力をしてもらっています。彼らがまず、専門医資格を所持している医師から候補者を抽出します。手術数や論文数などの定量的データによってさらに絞り込みます。その上で、医師から見た信頼性、業界内での評判など定性的な指標をかけ合わせ、名医と称するにふさわしいドクターを選んでいます」
名医となれば、多忙を極め、受診にこぎ着けるのが難しいこともある。そんな場合は、有料(6000円)の名医紹介サービスも用意されている。
こちらは、患者の症状や希望なども加味して、クリンタルの協力医師が実際に適切な受診先の判断を行う。その上で、「紹介時には掛かりつけの医療機関からFAXをその医師宛てに送ってもらってください」とか「この曜日のこの時間帯に受診してください」といったアドバイスをしてくれると言う。

患者が得られる医療情報が少なすぎる!
杉田氏が名医検索サービスを立ち上げた背景には、当時、東京大学医学部附属病院で眼科の医師をしていた杉田氏自身の体験がある。ある日、父親が網膜剥離になってしまう。網膜剥離は最悪の場合、失明の恐れのある病気である。急を要する状況であった杉田氏は、適切な医師を探すのに苦労をしたという。
「勤務医をしていると、友人や知人から良いドクターを知らないか、と尋ねられることが多かったんです。そういった数々の体験から、一般の人が得られる医療情報があまりに少ないと気づき、これはなんとかしなければ、と思いました」
その後、アメリカのビジネススクールへ留学し、現地で様々な医療事情を学んできた。
「アメリカでは、クリンタルと同じようなサービスがすでに行われており、導入している企業は、従業員の医療費を削減することに成功していました。これを日本で行えば、医療費削減につなげられるかもしれないと思ったのがきっかけです」
現在、クリンタルの検索数で多いのは、がんや小児科、婦人科関連の疾患だという。ユーザーからは「受診先のあてがなく困っていたが、光が射した」、「今の治療で良いのか自信がなかったので、セカンドオピニオンの目的で利用した」――こんな声が多い。

ドクターの技術向上には医療の“機能分化”が必要
「このサービスを通じて目指しているのは、実は医療の“機能分化”なのです。例えば、総合病院は便利ですが、何が得意なのか一般人にはわからない。しかし、「がんセンター」とか「循環器センター」といった専門施設ならすぐにわかります。そのように医療機関を専門化していくことで、同じ領域の患者さんが集まります。そうなればドクターも経験を積むことができ、技術が向上していきます。結果として入院期間が短くなり、医療費を抑えることにつながると考えています」と杉田氏は言う。
医療の“機能分化”を取り入れようとする背景には、日本では患者が得られる情報が少なく、「医療後進国」といわれる現状を打破したいという杉田氏の思いが強くにじみ出ている。
「海外ではこういう“機能分化”が盛んに行われています。一例を挙げると、カナダには鼠径ヘルニアの専門病院があるんです。鼠径ヘルニアは再発率の高い病気ですが、全米から患者さんが集まることでトップレベルの技術を維持することができ、再発も減りました。結果、医療費削減に寄与したのです」(同氏)
日本の医療費について言えば、2015年度に40兆円を突破した。厚生労働省によると「2020年には66.9兆円、2025年には76.4兆円にまで膨れ上がる」と予測しているようだ。
今や国家的急務である医療費の削減が高まっている中で、クリンタルの名医検索サービスはその一助となる可能性を秘めている。
同サイトは、名医以外に地域の信頼できる医師を検索することもできる。軽症や掛かりつけ医のいない方は、このサイトの活用をお勧めしたい。

【DAIAMOND ONLINE】
by kura0412 | 2016-12-01 08:57 | 医療全般

コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言


by kura0412