『高額薬オプジーボ異例の薬価引き下げが起こす波紋』

高額薬オプジーボ異例の薬価引き下げが起こす波紋

さまざまながんで効果が期待される治療薬「オプジーボ」の薬価引き下げ議論で、厚生労働省は10月5日、最大25%減とする案を中央社会保険医療協議会で示し了承された。
薬価は原則2年に1回改定されており、次回は2018年度に実施予定だった。期中での引き下げは異例で、15年度医療費(速報)が41.5兆円と13年連続過去最高を更新する中、国民皆保険制度の維持のため狙い撃ちにした形だ。

「肺がん患者約5万人が1年使ったら総額1兆7500億円」と國頭英夫・日本赤十字社医療センター化学療法科部長が指摘し、高額薬剤費問題に火が付いた。ただしこの数字は「非現実的な設定」との批判があり、販売する小野薬品工業も今年度予想売り上げを1260億円とする。いずれにせよ高額であることは確か。業界は「イノベーションに反する」と猛反対したが、厚労省は「効能追加などで大幅に市場拡大し、緊急対応が必要」とし、まとまった。
小野薬品へのねたみも抱えつつ、「企業経営の安定性、予見性から見てひとごとではない」というのが業界共通の思いなのだろう。ただある業界関係者は「非常に良い薬であり、ルール通りにして今の薬価が付いたのに、悪く言われてかわいそう。『引き下げは痛いが、早く悪い話題から消えたい』のが小野薬品の本音では」と言う。
同社幹部が一息ついたかは知る由もないが、オプジーボと同じ免疫チェックポイント阻害薬であるMSDの「キイトルーダ」は近く薬価収載される見通しで、競合薬の市場参入がひたひたと迫る。

次世代のため本質的議論を
「オプジーボだけが騒がれて終わってしまうのが一番怖い」と懸念するのは前述の國頭医師だ。新タイプの高額薬は次々と現れ、薬剤費は膨張するとし、「誰のせいでもなく医学の進歩、人口高齢化が原因。本質的議論を」と主張する。
開発コストが上がる中、薬価を下げ過ぎてメーカーが市場から撤退すれば元も子もない。ある程度までしか下げられないならば、限られた医療財政の中、入りを増やすか出を削るしかない。何もしなければ「高齢世代は満足でも、負担は若い世代にいく。少子高齢化の中、現役世代の負担をまだ増やせるのか」と疑問を呈する。
國頭医師が思い浮かべるのは、スペインの画家・ゴヤが晩年に描いた「我が子を食らうサトゥルヌス」だ。「自分たちの姿じゃないかと真面目に思いますよ。財政がずっと健全なら全部撤回して謝ります。でも僕が聞いたら、誰もが下を向いてしまう」。
「唯一考えついたのが年齢で投与制限をかけること。財政破綻したら『夢の薬』以前に、貧乏人は痛い苦しいもほったらかされて野垂れ死にする。そっちがグローバルスタンダード。それでいいのですか」と國頭医師は問うのだ。

【週刊ダイヤモンド】
by kura0412 | 2016-10-18 10:41 | 医療政策全般 | Comments(0)

コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30