日本の歯科界を診る(ブログ版)


コラムニスト・鞍立常行が日本の歯科界に直言
by kura0412
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「医療従事者はあくまでも性善説でいるべき」

病院内犯罪はなぜ起こる?元殺人担当刑事の“院内ポリス”に聞く

大口病院(横浜市神奈川区)の入院患者連続殺害事件は、世間や病院関係者に大きな衝撃を与えた。そもそも病院は、犯罪者の立場から見れば非常に「無防備な場所」であるといわれ、最近は元刑事などの警察OBをセキュリティ担当として配置する病院も増えてきた。その草分けとなった東京慈恵会大学では“院内交番”と呼ばれる24時間体制の渉外室を設置している。初代室長として勤務した元警視庁捜査一課管理官の横内昭光氏に話を聞いた。

全国の大学病院では初だった“院内交番”の横内氏
9月に明るみになった大口病院の入院患者殺害事件は、容疑者逮捕に至らぬまま2週間以上が過ぎようとしている。捜査関係者の弁によれば「被害者は二ケタ」にのぼる可能性もあるという。日頃から、同院を利用してきた近隣住民にとってはたまったもんじゃないし、同院とは縁がない一般市民でも、市中の病院でこんなにも凶悪な連続犯罪が割と簡単に実行されできてしまったことに衝撃を覚えた人は少なくないと思う。
病院とは、こんなにも無防備な場所なのか? どうしたら、安心・安全な場所にできるのか?――次々と湧き起こる疑問と不安を、病院における防犯のスペシャリスト横内昭光氏にぶつけてみた。
横内氏は、元警視庁捜査一課管理官(殺人捜査担当)。定年退職後、警察OBとして全国の大学病院では初めて、東京慈恵会医科大学に就任し、“院内交番”と呼ばれる、24時間体制の渉外室の初代室長として勤務した。現在、“院内交番”は、全国の国立病院、大学病院等に開設されている。

病院は泥棒にとって「修業の場」無防備で仕事しやすく病院専門の泥棒も

――病院は、本当は危険な場所なのでしょうか。
危険というか、無防備な場所ですね。入院患者、見舞客、付き添い家族など、不特定多数の人が昼夜を問わず常に出入りしている。夜間は正面出入口が閉まっているとしても、緊急の出入口は開けられており、自由な出入りが可能です。しかも白衣にマスクなど、医療従事者の格好をしていたら、職員との区別もつきません。
「病院は街の中と同じ。コンビニもあるし、消防署のような部署もある。犯罪も起こる可能性が常にあるのだから、“院内交番”も必要」と、最近、ある医療関係者が話していました。

――どのような犯罪が起きていますか。
窃盗犯(泥棒)にとって、病院は“修業の場”です。病院ほど盗みを働きやすい場所はない。病室は基本的に出入り自由ですし、どこに貴重品があるのかが一目瞭然。セーフティボックスなんて、ドライバー1本で簡単に開けられますからね。検査などでベッドから離れる時間を狙って犯行におよぶ、病院専門の窃盗犯もいます。
一般的に、薬や医療器具の窃盗は、医療従事者、すなわち内部の人間による犯行が大半です。自殺や殺人の目的で危険薬が持ちだされる事件も起きています。大口病院の事件でも、院内の点滴が犯行に使われた疑いがありますね。
患者や医師を狙った傷害・殺人事件も多いですよ。「医療ミスがあった」と思い込んだ精神疾患の患者に医師が射殺された事件や、入院中の男性が暴力団の組員に人違いで射殺された事件など、たくさんあります。余命を宣告されたがん患者が、自暴自棄になり、看護師らを道連れとして殺害したこともありました。
犯罪に至らないまでも、悪質クレーマーや院内暴力の事例は、日常茶飯事です。

犯罪にはすべて前兆があるが患者の目を見ない医師は気がつかない

――それらの犯罪に、共通点はありますか。
犯罪にはすべて兆し、前兆があります。精神的な病を持つ人は、なんら前兆のないところから突然、犯行におよぶこともありますが、一般的な人は、必ず兆しを残しているものです。
クレームや不満を言っているうちは、まだ凶器は持って来ません。しかし凶行におよぶ頃には、口では言わず、目で訴えるようになります。
「俺の病気治してくれよ」とか、「私の話を聞いてちょうだい、助けてよ」ってね。命や健康にかかわる場ですから、深刻度も高い。
そこで医師なり、病院なりが上手く対応していないと、次の外来の時には凶器を持ってくる。殺意が芽生え、準備をするのです。
そういう意味では、病院はやはり怖い。ところが、被害者になる可能性が一番高い医師が、結構、他人事なんですよ。危機感が薄い。

――危機感が薄いのはなぜだと思いますか。
一つには、患者さんの目を見ていないのだと思います。診察の際など、目を見ていれば、敵意を持っているか否かは、すぐにわかるでしょう。忙しすぎるからなのかもしれませんが、パソコンの画面ばかり見て、患者さんの顔を見ない医師は増えていると聞いています。
もう一つは「性善説」が基本姿勢であることです。診療行為は相手が反社会勢力だろうが誰だろうが関係なしに、目の前の患者を治すことに集中して行うので、殺人を犯すかもという視点では見ません。もちろん、看護師らのスタッフに対しても、チームで動いていますから、信頼関係を大切にします。
病院のサポート体制の問題も大きいでしょうね。どこの病院でも、院内のトラブルについて、医師や職員にアドバイスやサポートを行っているかといったら、そうではない。病院によって温度差があります。

――大口病院事件でも、前兆がありましたね。
白衣の切り裂きや、看護師の飲料に漂白剤のようなものが混入されるなど、事件につながる予兆はありましたよね。それを警察に通報せず、行政に連絡したのは問題です。病院というところは昔から、警察に届けたがらない体質がある。抵抗があるんですね。

殺人は恨み、妬み、つらみの「三み」が動機
事件の発覚」が犯人の狙いだったのか?

――犯人の心情をどう推察しますか。
事件が発覚し、警察の捜査が入ったことで、犯罪の目的は達成できたと満足しているかもしれませんね。当初は、警察に相談しなかったので、犯人としては苛立っていたと思います。
殺人というのは、恨み、妬み、つらみの「三み」が動機で起こるものです。
だから、今回の事件の犯人も誰かに、三みのうちのいずれかの感情があるのでしょう。院長か、4階にいる職員か、患者さんか、誰に対してかはわかりませんが。
さらに、トラブルを起こしても、警察に届けない、そういう体質・体制に不満を抱いている可能性も大きいですね。事件が発覚しないで、患者さんだけが死んでしまったのでは、犯人は消化不良。事件が発覚したことで、犯人は拍手しているのではないでしょうか。
それからね、昔から、放火犯と毒殺は、“女性犯罪”といわれています。
力の弱い女性でも人が殺せますしね。「できたら自分がいない時に死んでほしい」、という心理が働いているような気がします。

――こうした事件を防ぐには、どうしたらよいでしょう。
大口病院には、病棟に監視カメラがなかったことが問題になっていますが、患者さんのプライバシー保護を考えるとカメラの設置は慎重に行われるべきでしょうね。さらに、「監視されている」と意識させることが、スタッフ同士の信頼関係に影響を与え、病院全体の雰囲気がギスギスしたものになることも懸念されます。
防犯システムや警備の導入も当然考えられますが、それよりも大切なのはやはり、兆しを大切にすることだと思います。兆しを見逃さず、速やかに手を打ち、対応する。
兆しを見つけるために重要なのは、基本的なコミュニケーションです。相手の目を見て話す、院内で困っているような人や見慣れない人を見かけたら声をかける、ミスや不備を指摘されたら素直に謝る、相手の立場になって考え、一言でもいい、思いやりの言葉をかけてあげる……などです。
大口病院の場合も、誰かが、病院のなかで不満を抱いていた。恨み、妬み、つらみの「三み」を抱いていたわけです。その矛先が、患者さんという一番弱い人へと向けられた。これは、あってはいけないことです。

“院内交番”で私は、医師や職員の個人的な相談にも乗っていました。病院の職員に限らず、人は誰しも、いろいろな悩みを抱えながら仕事をしています。警察官も同様です。例えば、悩みを持ちながら、警官が拳銃を持って仕事をしていたら危険です。警察官が拳銃で自殺をする事件だって起きていますよね。同じように、異性関係やら借金やら、悩みを持つ医師や職員が悩みを抱えて仕事していれば、医療ミスや犯罪を起こす確率は高くなるのではないでしょうか。
普通の社会と同じように、病院内でも、いじめ、セクハラ、パワハラなど、さまざまなトラブルが起きています。病院が特別なわけではありません。
職員をサポートしてあげることは、患者さんを守る事にもなるのです。

医療従事者はあくまでも性善説であるべきトラブル発生時には素早い、適切な対応を

――性善説ではなく、性悪説で防犯対策を行う必要性はありませんか。
いやいや、医療従事者はあくまでも性善説でいるべきです。その上で、病院の安心・安全を守るために、我々のような警察OBを活用していただきたい。
“院内交番”のように、気軽に相談できる関係をつくっておけば、大口病院で起きたような、「警察に届けるべきかどうか迷うトラブル」が発生した場合にも、素早く、適切な対応が可能になるでしょう。
大口病院事件の場合も、早い段階で、警察に通報するなど、毅然とした対応がなされていれば、犯行のエスカレートに歯止めがかかり、事件は未然に防げたかもしれません。


医師の心構えに「病を見ずして人を見よ」という言葉がある。犯罪捜査や防犯の基本も「犯罪を見ずして人を見よ」なのかもしれない。

【DAIAMOND ONLINE】




大病院に行った時感じたのですが、病院内は患者、医療関係者以外のいろいろな人が出入りしています。性善説だなければ、普段の医療も非常にやりずらくなってきます。この事件は、今後の医療現場に大きく影響を与えます。それだけに早期に犯人を逮捕してもらいたいものです。
by kura0412 | 2016-10-13 17:27 | 医療全般 | Comments(0)
ミラーを片手に歯科医師の本音
回想

本紙閉刊に伴いこのコラムも今回で最後となります。平成10年9月から19年間、筆が進まない時もありましたが、締め切りを遅らせることもなく、また大きなトラブルもなく終えることにある意味安堵しております。ただその中で一度だけで校正まで終えながら書き直したことがありました。それはあの「日歯連事件」と称された事件が勃発した時でした。
あの時は一人の開業医でしかない私が、社会事件になるほどの大事件に対して実名で書くことに躊躇しましたが、事件に対していろいろな観点から憤りを感じ、もし問題となれば歯科医師を辞める覚悟をもって書きました。この事件によって日本の歯科界に大きな変化があったことは多くの先生方が感じられたことです。今思えばその内容は別として、あの時書き綴っておいたことが、その後連載を続けられた源になっていたかもしれません。
然るに風化しつつあるあの事件の本質は何だったのか。その手法に対しては司法判断が下った結果が示されていますが、事件の根本には、現在も続く歯科医療に対する公的評価の低さを何とか打開しようと考え方がありました。この点を誰もが分かっているのに言葉に出ていません。但し結果的には中医協委員が1名減員、事件後の懲罰的な18年度改定となり、歯科界の思いとは反対の流れを作ってしまいました。特に改定では、それまでの改定時で、技術料を引き下げながら作った僅かな財源を「かかりつけ歯科医」初再診料に振り分けながらも、「かかりつけ歯科医」を一気に消し去られたことによって、保険点数全体が縮小したと共に、時代の流れである「かかりつけ歯科医」という名称、概念をも否定されることになってしまいました。そして事件によって植え付けられた歯科界の負のイメージは現在も引きずっています。
日本の歯科界は今、大きな分岐点に差し掛かかり、新しい息吹が入る機運も高まっています。但し、この負のイメージを引きずったままでは大きな壁が存在します。あの事件は終わったのでなく、まだ背負っており、それを回顧することで歯科界の課題を改めて見出すことが必要です。
残念ながら現在、日歯、日歯連盟共に入会者、特に若い先生の入会が減少しています。事件の影響、また、入会することへの利点を見出せず、医療環境向上寄与への期待が薄らいでいるからです。個人で個々の臨床現場での対応出来ても、政策を変えるには一つの塊にでなければパワーが発揮できないだけに、この問題は歯科界発展の最大の課題です。その為には、過去の問題となった出来事を背景も含めて改めて見直し、そして新しい目標を示す。それも抽象的でなく、具体的な分かりやすい政策を提示することで歯科界の展望が分かることで推進力の働きとなります。
最後に、本コラムを続けなければ会うことの出来なかった全国の先生方と交流できたことは、私の歯科医師人生としての財産となりました。そして、好き気ままに綴ることを甘受して頂き、連載を許して頂いた歯科時報新社・吉田泰行社長に感謝を述べ終わります。ありがとうございました。
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